Red Eye – The Cycle (2022)
スペイン南部のアンダルシア州アンテケラを拠点に活動するヘヴィ・サイケ/ストーナー・ドゥーム・トリオ、レッド・アイ(Red Eye)。彼らが2022年2月にスペインのAlone Recordsから発表したセカンド・アルバム『ザ・サイクル(The Cycle)』は、デビュー作『Tales From the Days of Yore』(2019年)で見せたオカルト調のストーナー・ロックから長足の進化を遂げ、長尺の組曲形式へと舵を切った意欲的なコンセプト作だ。
先史時代の大地を舞台にした三幕構成の神話叙事詩
本作の根底を貫いているのは、古代アンダルシアの鬱蒼とした森林や荒涼としたカルスト大地を舞台に、人間と自然、そして終わりなき再生の環を描く神話的な物語だ。アルバム全体が「プロローグ」と「第1幕〜第3幕」という明確な章立てで構築されており、初回プレスの限定アナログ盤(150枚プレス)に付属するフルカラーのブックレットには、この叙事詩的な物語のテキストが克明に綴られている。
プロローグ「Foresaga」では、歪んだエレクトリック・ギターではなく、アコースティック・ギターと土着的なパーカッション、そして儀式めいた歌声が静かに立ちのぼる。北欧ネオフォークのヴァルドルナ(Wardruna)あたりにも通じる儀式的な空気感から幕を開ける展開は、ステレオタイプなストーナー・メタルの枠組みを軽々と飛び越える大胆なアプローチだ。
地を這うリフとサイケデリックな静寂が織りなすダイナミズム
儀式の静けさを切り裂くように始まる第1幕「Flyht」から「Gaderung」へと至る流れでは、アントニオ・カンポスとパブロ・テロルが放つ超重量級のファズ・リフが炸裂する。新ベーシストのアントニオ・ムリエルを迎えた強靭なボトムと、アンヘル・アルカスの粘り気のあるドラミングが地鳴りのようなグルーヴを生み出し、引きずるようなドゥーム・メタルの重圧感でリスナーを圧倒していく。
特筆すべきは、力任せのヘヴィネス一辺倒に陥らない巧みな緩急だ。9分超に及ぶ「Gaderung」や第2幕の「Tempel」などでは、ブラック・サバス直系のドゥーム・リフがうねりを上げる合間に、乾いたアルペジオとディレイを効かせたサイケデリックな静寂パートが差し挟まれる。重低音の壁と幽玄なアンビエンスが交互に押し寄せる構造が、物語の緊張感とスケール感を際立たせている。
アンダルシアの風土が宿るヘヴィ・サイケの新境地
終幕を飾る「Beorg」から「Æsce」にかけては、プログレッシブ・ロック的な展開力とスラッジ・メタルの激情が融合し、アルバムが描く物語のクライマックスを重厚に締めくくる。アンダルシアの乾いた空気と悠久の古代史を音像化したようなシネマティックなスケール感は、ヨーロッパのアンダーグラウンド・ヘヴィシーンのなかでも確固たる個性を放っている。
トラックリスト
- Prologue
- AI - Foresaga (2:48)
- First Act
- Flyht (5:25)
- Gaderung (9:26)
- Second Act
- Tempel (7:19)
- Morþor (6:43)
- Third Act
- Beorg (6:48)
- BVI - Æsce (7:37)