Kate Bush – The Kick Inside (1978)
Kate Bush『The Kick Inside』について
Kate Bushのデビュー・スタジオ・アルバムが、1978年2月17日に発売された『The Kick Inside』だ。前年にシングル「Wuthering Heights」で一気に注目を集めたKate Bushの、最初のフル・アルバムとして位置づけられる作品である。ロックやポップの枠に収まりきらない曲作りと、物語性の強い歌詞が早い段階から表れている1枚。
この時点のKate Bushはまだ19歳。デビュー作でありながら、すでに作家性が強く、一般的な英米ポップスとは少し違う感触を持っている。のちの長いキャリアの出発点として見ると、声の使い方、曲の展開、言葉の運び方など、すでに本人の個性がはっきりしている作品だ。
作品の位置づけ
Kate Bushは、David Gilmourに才能を見出されてEMIと契約した経緯でも知られる。『The Kick Inside』は、その背景から生まれたデビュー作であり、当時の英国シーンの中でもかなり異色の存在だった。プログレッシブ・ロック周辺の流れや、シンガー・ソングライター的な文脈とも接点があるが、どちらにも完全には回収されない独自性がある。
同時代の英国ポップを思い浮かべると、緻密なアレンジと強い歌唱で押し切るタイプの作品として受け取られやすい。とはいえ、単に技巧的というより、曲ごとに情景や人物像を描く方向が目立つアルバムだ。
代表曲とアルバム内の流れ
このアルバムを語るうえで外せないのが「Wuthering Heights」だ。1978年にシングルとして発売され、複数国で1位を記録した代表曲である。高い声のフレーズと、エミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』を下敷きにした歌詞が印象的で、Kate Bushの名を広く知らしめた。
ほかにも「The Man With The Child In His Eyes」や「The Kick Inside」など、後のKate Bush像につながる曲が並ぶ。ピアノを軸にした曲でも、ただ静かにまとめるのではなく、声の表情やフレーズの切り替えで曲の景色を変えていく作りが目立つ。
収録曲全体を見ると、シングルで強く押し出された曲と、アルバム単位で流れを作る曲が同居している。デビュー作らしいまとまりと、すでに個人作家としての輪郭が出ている両方の印象がある。
日本盤について
日本盤は、欧米盤とはフロント・カバーが異なる仕様になっている。さらに帯付きで、2面のインサートには写真、曲目、和文バイオグラフィー、歌詞の日本語訳が付属する。内袋もポリエチレン製のU字型タイプという、当時の国内盤らしい丁寧な作りだ。
日本盤では、帯に「Angel and Devil」という別タイトルが使われている点も特徴的である。盤面の表記では「Strange Phenomena」が「Strange Phenemena」となっている誤記が知られている。
聴きどころ
実際に聴くと、まず声の存在感が大きい。音数を詰め込むよりも、フレーズの間合いで引っ張る場面が多く、歌そのものが曲の中心にある。ピアノ、ギター、リズム隊の配置は比較的明快だが、その上で旋律が予想外の方向へ動くことがある。
アルバム全体は、のちの大作志向や実験性の強い作品ほど複雑ではない。けれど、すでに「曲の中で物語を進める」感覚ははっきりしていて、デビュー作でここまで輪郭があるのはかなり印象的だ。
まとめ
『The Kick Inside』は、Kate Bushの出発点であり、代表曲「Wuthering Heights」を含む初期の核となる作品だ。1978年の英国ポップ/ロックの中でも、声、曲、言葉の結びつきが独特で、後の長いキャリアを見通せる内容になっている。日本盤はジャケットや付属物も含めて、オリジナル盤との違いがはっきりした一枚である。
トラックリスト
- A1 – Moving (3:06)
- A2 – The Saxophone Song (3:47)
- A3 – Strange Phenomena (2:53)
- A4 – Kite (2:58)
- A5 – The Man With The Child In His Eyes (2:39)
- A6 – Wuthering Heights (4:29)
- B1 – James And The Cold Gun (3:35)
- B2 – Feel It (3:00)
- B3 – Oh To Be In Love (3:17)
- B4 – L’Amour Looks Something Like You (2:25)
- B5 – Them Heavy People (3:04)
- B6 – Room For The Life (4:03)
- B7 – The Kick Inside (3:34)
RAH Band – Producers Choice (2020)
RAH Band『Producers Choice』について
RAH Bandは、Richard A. Hewsonを中心に動くUKのスタジオ・プロジェクト。70年代後半から80年代にかけて、ジャズ・ファンク、シンセポップ、ポップの要素を行き来しながら、UKチャートでも結果を残してきたユニットだ。
『Producers Choice』は2020年にUKでリリースされた2枚組アナログ盤。Record Store Day 2020向けの限定盤として出た作品で、RAH Bandの各アルバムから選ばれた楽曲を、オリジナル・テープからリマスターしてまとめた編集盤になっている。印刷スリーブ付きの仕様で、Atjazz Record Companyからのライセンス盤でもある。
作品の位置づけ
RAH Bandの代表曲を、あらためてまとまった形で聴ける一枚という位置づけ。70年代のスタジオ志向の作り込みと、80年代のダンス寄りの感触、その両方を横断する内容になっている。
Richard Hewsonは、編曲家、指揮者、マルチ・インストゥルメンタリストとして活動を始めたのち、自身のイニシャルを冠したRAH Band名義で制作、作曲、演奏まで手がけるようになった。そうした個人プロジェクトとしての性格が、編集盤であってもはっきり見えるのがこの作品の面白さだ。
収録曲の中心となる代表曲
この盤の核としてまず挙がるのが「Clouds Across The Moon」と「Messages From The Stars」。どちらもRAH Bandを語るときによく触れられる曲で、前者はUKヒットとして知られ、後者も後年まで広く親しまれてきた。
「Clouds Across The Moon」は、曲名のイメージどおり宇宙的な題材を持ちながら、打ち込みとバンド的な演奏感が同居するところが特徴。RAH Bandのシンセポップ面と、ソウル寄りの感触が重なる1曲として位置づけられる。
「Messages From The Stars」は、80年代のRAH Bandらしい軽快さと電子音の整理された鳴りが前に出る楽曲。のちにクラブ文脈や再評価の流れでも名前が出やすい代表曲だ。
聴きどころ
この編集盤は、曲ごとの年代差をそのまま並べるというより、RAH Bandの制作スタイルの変化を追いやすい構成になっている。ジャズ・ファンク寄りの楽器の運び、ポップとしての覚えやすさ、シンセを使った音の設計、その3つが曲ごとに違う比重で現れる。
リマスター盤なので、オリジナル盤で聴かれていた曲も、現在の再生環境で輪郭をつかみやすい。とくに低音のラインやシンセのレイヤー、コーラスの重なり方は、編集盤としてまとめて聴くと整理して追いやすい印象がある。
同時代の文脈
RAH Bandは、UKの70年代後半から80年代初頭にかけての、スタジオ主導のポップ/ダンス音楽の流れに位置する。派手なバンド・サウンドというより、作曲、編曲、録音の作業を前面に出したタイプで、同時代のシンセポップやジャズ・ファンクと接点を持つ。
その意味では、ディスコ以後のダンス・ミュージックや、英国のソウル/ファンク寄りポップと並べて語られることが多い存在だ。RAH Bandの曲は、ラジオ向けのポップ感と、スタジオ作品としての細かな構成が同居している。
まとめ
『Producers Choice』は、RAH Bandの主要曲をオリジナル・テープからリマスターし、2枚組LPにまとめた2020年の編集盤。代表曲「Clouds Across The Moon」や「Messages From The Stars」を軸に、Richard Hewson主導のスタジオ・プロジェクトとしてのRAH Band像をつかみやすい内容だ。
70年代のジャズ・ファンク的な流れと、80年代のシンセポップ/ダンス・ポップの接点を一度にたどれる盤、という見方がしやすい。
トラックリスト
- A1 – Beyond
- A2 – Downside Up
- A3 – Out On The Edge
- B1 – Float
- B2 – Perfumed Garden
- B3 – Shadow Of Your Love
- C1 – Clouds Across The Moon (Supanova Mix)
- C2 – Electric Fling
- C3 – Messages From The Stars
- D1 – Falcon
- D2 – Slide
- D3 – Riding On A Fantasy
関連動画
- The RAH Band – Downside Up (Remaster)
- The RAH Band – Beyond (Remaster)
- The RAH Band – Out On The Edge (Remaster)
- The RAH Band – Float (Remaster)
- The RAH Band – Perfumed Garden (Remaster)
- The RAH Band – Shadow Of Your Love (Remaster)
- The RAH Band – Clouds Across The Moon (Supanova Mix Remaster)
- The RAH Band – Electric Fling (Remaster)
- The RAH Band – Messages From The Stars (Remaster)
- The RAH Band – Falcon (Remaster)
Lily & Maria – Lily & Maria (1968)
Lily & Maria『Lily & Maria』について
Lily & Mariaの『Lily & Maria』は、1968年に発表されたデュオ唯一のアルバムである。メンバーはMaria Neumannと、Lily FiszmanあらためLily Isaacs。アメリカ出身のフォーク・ポップ・デュオとして、21歳のときにこの1枚を残した、という位置づけの作品である。のちに2008年に180g仕様の再発盤が登場し、ゲートフォールド仕様、ライナー・ノーツ付きの形で出ている。
作品の全体像
音楽性は、アコースティックを軸にしたフォーク、バラード、ポップ・ロックの要素が中心である。ジャンル表記としてはRock、Pop、Folk、World, & Countryが並び、スタイル面ではAcoustic、Ballad、Folk、Pop Rockに分類されている。デュオ編成らしい声の重なりと、当時のフォーク・ポップの感触がまとまっている1枚といえる。
アーティストの紹介では「one lone album」とされており、このアルバムがLily & Mariaというユニットの核になる作品であることがわかる。活動終了後も二人は友人関係を保ったというプロフィールも残っている。
再発盤について
2008年盤は、180g virgin vinyl、Mastered at Abbey Road、All-analogue audiophile pressingという表記がある再発盤である。裏ジャケットには「Mastered […] at Hiltongrove, London, March 2008」と記されており、オリジナル1968年盤とは別に、2008年時点で新たにマスタリングされた盤として流通したことがうかがえる。
パッケージはゲートフォールド仕様で、ライナー・ノーツも付属している。オリジナル盤の詳細な仕様との比較はここでは触れないが、少なくとも2008年盤は音質面と装丁面を意識した再発として作られている。
同時代の文脈
1968年という時期は、フォークとポップの接点が広がっていた時代である。Lily & Mariaも、その流れの中で、アコースティック主体の楽曲とポップな構成を行き来する作品として受け取れる。デュオの歌声を軸にした作りは、同時代のフォーク・ポップ系の作品群と並べて語られることが多いタイプのものだろう。
このアルバムについては、アーティスト紹介ページとして挙げられているGalactic Rambleの「Search Music」記事でも取り上げられている。埋もれやすい作品を掘り起こす文脈で参照されることがある、という立ち位置のアルバムである。
まとめ
Lily & Maria『Lily & Maria』は、1968年に残されたデュオ唯一のアルバムで、アコースティック主体のフォーク・ポップ作品である。2008年には180gの再発盤がゲートフォールド仕様で登場し、Abbey Roadでのマスタリングやアナログ・プレスを前面に出した形で再提示された。作品そのものは、短い活動の中で残された、二人の歌の関係性を軸にした記録として見ることができる。
トラックリスト
- Ismenè-Jasmine
- A1 – Subway Thoughts
- A2 – Everybody Knows
- A3 – I Was
- A4 – Ismenè – Jasmine
- A5 – There’ll Be No Clowns Tonight
- Scatterings
- B1 – Aftermath
- B2 – Morning Glory Morning
- B3 – Melt Me
- B4 – Fourteen After One
関連動画
Piramis – 3 (1979)
Piramis『3』について
『3』は、ハンガリーのロック・バンド、Piramisが1979年に発表したアルバムである。バンドは1970年代から活動を続ける長寿グループで、ハンガリー国内のポップ・ロック/ハード・ロックの文脈で知られ、場面によってはプログレッシブ寄りの曲調も取り入れてきた。西欧圏でも一定の反応を得たバンドとして紹介されることがある。
作品の位置づけ
この『3』は、タイトルどおりバンド名義の3作目にあたる1979年作として捉えられる。クレジット上の編成は、Köves Miklós、Som Lajos、Gallai Péter、Révész Sándor、Závodi János。ハンガリー産ロックの中でも、歌ものの推進力とバンド・アンサンブルのまとまりを両立させた時期の記録として見やすい1枚である。
録音とミックスはブダペストのPepita Studiosで行われ、ハンガリー盤として同年にリリースされている。収録曲名はハンガリー語表記で統一されている点も、当時の国内盤らしい特徴といえる。
音の印象
全体の軸はロックとポップ・ロックで、そこにプログレッシブ・ロック寄りの展開が差し込まれる構成。演奏時間はA面19分35秒、B面19分00秒と、LPとしては比較的コンパクトだが、曲ごとの密度は高めで、歌を前に出しながらバンド・サウンドをしっかり鳴らしていくタイプの作品に見える。
Révész Sándorのボーカルを中心に、ギターとキーボードが曲の輪郭を作り、メロディを押し出す場面と、やや組曲的な流れを持つ場面が並ぶ。ハンガリー国内の同時代ロックと比べると、単純なハードロック一辺倒ではなく、歌謡性と構成の組み立てが同居している印象である。
同時代の文脈
1970年代後半の東欧ロックでは、英米のハードロックやプログレの影響を受けつつ、母語の歌詞とローカルなメロディ感を前面に出すバンドが多かった。Piramisもその流れの中にあり、国内のロック・リスナーに向けたわかりやすさと、演奏面の厚みを両立させたグループとして位置づけられる。
同時代の西側バンドと単純比較できる作品ではないが、歌を主役に置きながらアンサンブルで押し切る姿勢には、ハードロック寄りのバンド感と、プログレ寄りの構成意識の両方が見て取れる。
ヒット曲・代表曲について
このアルバム単体で広く知られる代表曲については、ここでは断定しない。ただし、Piramis自体はハンガリー国内で認知度の高いバンドであり、アルバム単位で耳にすると、バンドの持つ歌の強さと演奏の推進力が伝わりやすい。
まとめ
『3』は、1979年時点のPiramisの持ち味をそのまま封じ込めたハンガリー産ロック作品である。ポップ・ロックの聴きやすさ、ハードロックの押し、そして部分的なプログレ的展開が、国内盤らしいまとまりの中で並ぶ1枚。Piramisというバンドの輪郭をつかむうえで、重要な時期の記録として扱える作品である。
トラックリスト
- A1 – Kóbor Angyal
- A2 – Nem Tudom
- A3 – Az Idö Nekünk Dolgozik
- A4 – A Dal
- B1 – Túl Nagyra Nöttél
- B2 – Vágyakozás
- B3 – Gyere Szorits Erösen
- B4 – Más Helyen Keress
- B5 – Amikor Veled Vagyok
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The Battered Ornaments – Mantle Piece (1969)
The Battered Ornaments『Mantle Piece』
The Battered Ornamentsは、Creamの作品でも知られる作詞家Pete Brownが、Cream解散後に組んだロック・バンドである。1969年に結成され、Brownのボーカルとトランペットを軸に、Chris Spedding(ギター)、Charlie Hart(オルガン、バイオリン)、George Khan(サックス)、Butch Potter(ベース)、Rob Tait(ドラムス)、Pete Bailey(パーカッション)らが参加していた。
『Mantle Piece』は、その流れの中で完成したセカンド・アルバムで、オリジナルは1969年の作品。UK制作の作品として、当時のブリティッシュ・ロックがジャズやサイケデリックな要素を取り込んでいた時期の空気がよく出ている。録音はロンドンのE.M.I. Studios, St John’s Woodで行われている。
作品の位置づけ
このバンドにとっては、Pete Brownが主導したプロジェクトのひとつとして見ていくと分かりやすい。The Battered Ornamentsは、初期LP『A Meal You Can Shake Hands With in the Dark』に続いて本作を残し、その後にBrownが離脱したことで、バンドの形も変わっていく。つまり『Mantle Piece』は、バンドの初期活動をまとめるうえで重要な一枚という位置づけになる。
クレジット面ではやや事情がある。オリジナルLPのクレジットが再発盤にそのまま載っているわけではなく、GI Recordsの限定的な再発シリーズでは、収録音源のライセンスのみを得ていたため、ジャケットは白紙に近い体裁で、タイプライター風の最小限の情報だけが記されている。1982年盤は、そうした再発の文脈で出たものとして見るとよさそうだ。
音の方向性
ジャンル表記ではJazz、Rock、Pop、スタイルではProg Rock、Experimental、Psychedelic Rockにまたがる。実際、この時期の英国ロックらしく、曲の骨格はロックに置きつつ、サックスやオルガン、バイオリンが前に出る場面もある。Chris Speddingのギターも、後年のソロ活動を知っていると、かなり早い時期から輪郭のはっきりした演奏をしていたことが分かる。
また、Pete BrownがCreamで見せたような、歌詞の感覚や言葉の運びを期待すると、ここでもその延長線上の作家性が感じられる。Cream解散直後の時代背景を踏まえると、単なるサイド企画ではなく、ブリティッシュ・ロックの拡張路線の中に置ける作品と言えそうだ。
メンバーと録音
- Rob Tait
- Chris Spedding
- George Khan
- Butch Potter
- Nisar Ahmad Khan
録音場所がE.M.I. Studios, St John’s Wood, Londonと明記されている点も、この時代の英国制作盤らしい。スタジオ作品としてのまとまりを重視した作りが想像しやすい。
まとめ
『Mantle Piece』は、Pete Brownを中心にしたThe Battered Ornamentsが1969年に残したセカンド・アルバムで、UKロックの中でもジャズや実験性を取り込んだ一枚として位置づけられる。オリジナル盤の文脈を知ると、後年の再発盤の簡素な装丁も含めて、作品の周辺情報まで含めて面白いレコードである。
トラックリスト
- A1 – Sunshades
- A2 – Late Into The Night
- A3 – Then I Must Go
- A4 – The Crosswords And The Safety Pins
- B1 – Staggered
- B2 – Twisted Track
- B3 – Smoke Rings
- B4 – Take Me Now
- B5 – My Love’s Gone Far Away
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- The Battered Ornaments – My Love’s Gone Far Away (1969) HQ
- The Battered Ornaments – Sunshades
- The Battered Ornaments. Late Into The Night
- Battered Ornaments – Take Me Now
- The Battered Ornaments – The Crossword and the Safety Pins
- Smoke Rings
- The Battered Ornaments-Living Life Backwards-1969-[UK PSYCH ROCK]
- Then I must go
- The Battered Ornaments – My Love’s Gone Far Away
The Babys – The Babys (1976)
The Babys『The Babys』(1976)について
The Babysは、イギリス出身のロック・グループによる1976年のデビュー作で、バンド名をそのまま冠したセルフタイトル作品。オリジナルのリリースは同年、レーベルはChrysalis Recordsで、クレジット上も1976年の作品として整理されている。
メンバー構成は、結成時の中心人物であるキーボード/ギターのMichael Corby、ボーカル/ベースのJohn Waite、ドラムスのTony Brock、ギターのWally Stockerという基本線が知られている。後年のメンバー名も資料には並ぶが、この1枚はグループ初期の輪郭をつかむうえで重要な位置づけのアルバムとして見られている。
作品の輪郭
ジャンル表記はRock、Pop、スタイルはPop Rock。演奏の骨格はロック寄りだが、メロディの押し出しはかなり強いタイプの作品で、The Babysらしいポップな感触が前面に出る。英国バンドとして紹介されることが多い一方で、活動の展開や受容のされ方を含めると、同時代のUKメロディック・ロックやAOR寄りの文脈でも語られることがある。
この時期のChrysalis周辺のロック作品らしく、硬さだけで押すというより、歌と曲の流れを重視した作り。John Waiteのボーカルを軸に、ギターとキーボードがきっちり役割分担するバンド・サウンドという印象につながる。
収録曲と知られているポイント
本作で特に知られる曲としては「I Love How You Love Me」がある。もともとScreen Gems-EMI Music Inc.表記の曲で、このアルバムではバンドの解釈で収められている。作品クレジット上でもこの曲だけ出版社表記が分かれていて、アルバム全体の中で少し異なる位置にあることがわかる。
その他の楽曲はThe Hudson Bay Music Company出版。アルバム全体としては、単発の派手さよりも、曲ごとの輪郭を揃えた構成が印象に残るタイプの1枚。
アーティストにとっての位置づけ
The Babysにとっては、まず最初の名刺代わりとなるアルバム。のちにバンドはメンバーの入れ替わりや活動の変化を経験していくが、このデビュー作には、John Waite、Tony Brock、Wally Stockerを中心にした初期バンドの基本形がはっきり刻まれている。後年の代表曲や洗練された時期と比べると、まだバンドの輪郭を探りながら進む段階の記録としても読める。
聴きどころの整理
- 1976年オリジナルのデビュー作という位置づけ
- John Waiteのボーカルを軸にしたポップ・ロック路線
- 「I Love How You Love Me」の収録
- Chrysalis Recordsの当時のロック作品らしい明快なバンド・サウンド
The Babysの初期像をつかむには、まずこのセルフタイトル盤が基準になりそうだ。バンド名と同じタイトル、1976年という時代の空気、そしてメロディを前に出したロック・アプローチ。そうした要素がまとまった、初期The Babysの出発点となる作品である。
トラックリスト
- A1 – Looking For Love (4:43)
- A2 – If You’ve Got The Time (2:38)
- A3 – I Believe In Love (4:17)
- A4 – Wild Man (3:29)
- A5 – Laura (5:02)
- B1 – I Love How You Love Me (2:21)
- B2 – Rodeo (2:58)
- B3 – Over And Over (4:47)
- B4 – Read My Stars (2:43)
- B5 – Dying Man (6:30)
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Gruppo Sportivo – Sombrero Times (1984)
Gruppo Sportivo「Sombrero Times」について
「Sombrero Times」は、オランダのニューウェイブ/ポップ・バンド、Gruppo Sportivoが1984年に発表した作品。バンドは1976年にハーグで結成されていて、この時期にはすでにユーモアを含んだポップ感覚と、ひねりのあるバンド・サウンドで知られていた。
この作品は、Rock、Popを軸にしながら、New Wave、Prog Rock、Indie Rockの要素も並ぶ1枚。録音はオランダのSpitsbergen Studioで行われている。レコードには歌詞入りのインナーシートが付属していた。
作品の位置づけ
1984年という年は、Gruppo Sportivoにとって、80年代前半の流れの中で活動を続けていた時期にあたる。バンド名義の中心はHans Vandenburgで、メンバーにはMartin Bakker、Max Mollinger、Eric Wehrmeyer、Josee Van Ierselらが並ぶ。複数のメンバーがクレジットされているところからも、バンドとしてのアンサンブルを前面に出した作品だったことがうかがえる。
Gruppo Sportivoは、同時代の欧州ニューウェイブやポップ・ロックの文脈で語られることが多い。ひとことで言えば、軽いノリだけで押し切るタイプではなく、メロディの作り方や曲の組み立てに少し癖があるバンド。そのため、単純なポップ・バンドとも、硬質なニューウェイブ・バンドとも少し違う立ち位置にある。
サウンドの印象
「Sombrero Times」は、タイトルから受ける陽気さだけでなく、実際の中身もリズムの立ち方やギターの刻み、コーラスの運びに特徴があるタイプの作品として見られる。ニューウェイブらしい乾いた感触を持ちながら、ポップ・ロックとしての聴きやすさも残している構成。そこに、少しプログレッシブな展開や、インディー寄りの距離感が重なる形。
このバンドの持ち味としては、英米勢のコピーに寄りきらないところが挙げやすい。たとえば、同時代の英国ニューウェイブやポップ・ロックと比較すると、よりコミカルで、曲の見せ方に遊びがある印象になりやすい。とはいえ、音だけでふざけているというより、演奏はきちんとまとまっているタイプ。
楽曲と資料面
このレコードについて、特定の代表曲やヒット曲の情報は確認できる範囲では目立っていない。とはいえ、インナーシートに歌詞が付いている点からも、楽曲そのものを追いやすい作りになっているのは確かだ。歌詞を読みながら聴くことで、Gruppo Sportivoらしい言葉遊びや軽妙さを追う楽しみが出てくる構成だろう。
また、1984年のヨーロッパ盤として出ているので、オリジナル時点の空気をそのまま伝える資料性もある。再発盤ではなく当時のリリースなので、80年代前半のバンドの音像やパッケージをそのまま知る手がかりになっている。
まとめ
「Sombrero Times」は、Dutch new wave/popの流れの中で、Gruppo Sportivoの個性が出やすい時期の作品。ロック、ポップを土台にしつつ、ニューウェイブ的な軽さと、少しひねった曲づくりが同居した1枚として捉えやすい。バンドのディスコグラフィーの中でも、80年代前半の活動を追ううえで押さえておきたいタイトルのひとつだ。
トラックリスト
- A1 – Radar (3:03)
- A2 – Why-Oh-Why (5:29)
- A3 – Give It Up (4:38)
- A4 – Get Up Enjoy (4:00)
- A5 – Two Tickets For Rio (3:23)
- B1 – Good In Bad (3:20)
- B2 – Family Life (4:22)
- B3 – Girls In Slow Motion (4:06)
- B4 – Mumbo Jumbo (3:25)
- B5 – What Kind Of Normal Guy Am I (3:49)
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- Gruppo Sportivo Sombrero Times Radar
- Gruppo Sportivo Sombrero Times Why-O-Why
- Gruppo Sportivo Sombrero Times Give It Up
- Gruppo Sportivo – Get Up Enjoy
- Gruppo Sportivo Sombrero Times Two Tickets For Rio
- Gruppo Sportivo – Good In Bad
- Gruppo Sportivo – Family Life
- Gruppo Sportivo – Girls In Slow-Motion (Eating A Banana)
- Gruppo Sportivo – Mumbo Jumbo
- Gruppo Sportivo – What Kind Of Normal Guy Am I?
Fabrizio De André – Fabrizio De Andre’ (1981)
Fabrizio De André『Fabrizio De Andre’』について
イタリアのシンガーソングライター、Fabrizio De Andréが1981年に発表したアルバム『Fabrizio De Andre’』。通称では「L’Indiano」と呼ばれる作品で、フレデリック・レミントンの絵画「The Outlier」をジャケットに使ったことでも知られている。2010年には、Sony Italiaによるブルー・ヴァイナルの限定再発盤が出ている。
De Andréは、イタリアのカンタウトーレを代表する存在のひとりで、社会性のある視点、物語性の強い歌詞、民謡や地方の言葉を取り入れた作風で語られることが多い。この1981年作も、その流れの中にある1枚で、80年代以降の彼の活動を語るうえで外せない位置づけの作品。
作品の位置づけ
1981年は、De Andréがすでに長く第一線で活動していた時期。1960年代のデビューから、1968年の「La Canzone di Marinella」の成功を経て、イタリアの大衆音楽の中で確かな地位を築いていた。その後も、単なるヒットメーカーというより、歌詞の内容や視点そのものに重心を置く表現者として評価されていく。
この『Fabrizio De Andre’』は、そうした彼の作家性が成熟した時期のアルバムで、ポップ・ロックの形式の中に、語り口のある歌、社会や土地の記憶に触れる要素が入り込んでいる。80年代のイタリア音楽の文脈で見ると、より洗練されたアレンジや制作を採り入れながらも、De Andréらしい歌の中心はぶれない、という印象の作品。
ジャケットとタイトル「L’Indiano」
この作品は「L’Indiano」の名でも流通している。ジャケットに使われたのは、アメリカの画家フレデリック・レミントンによる1909年の絵画「The Outlier」。ブルックリン美術館所蔵の作品で、イメージ面でもアルバムの記憶に残る要素になっている。
イタリアのカンタウトーレ作品では、音だけでなく装丁や題材の選び方も重要になりやすいが、この盤もその例に入る。音楽とビジュアルの結びつきが強い1枚。
収録曲の特徴
このアルバムでは、「Ave Maria」が特に知られている。リリースノートにもある通り、この曲はサルデーニャの伝統的なイタリア民謡をもとにした再構成・翻案で、De Andréが地方の音楽素材を自分の言葉に置き換える姿勢がよく出ている。
彼は1980年代以降、ジェノヴァ方言やガッルーラ方言、ナポリ方言なども歌に取り入れていくが、その背景には、標準語だけでは拾いきれない土地の感情や生活の手触りを、歌の中に残そうとする意識があるように見える。このアルバムも、その延長線上の作品として聴ける。
オリジナル盤と2010年再発盤の違い
オリジナルは1981年のDischi Ricordi S.p.A.からのリリース。2010年盤はSony Italiaによる限定再発で、ブルー・ヴァイナル仕様、かつ番号入りステッカー付きの仕様になっている。コレクター向けの再発としての性格が強い盤。
表記面では、アーティスト名の綴りがジャケットの表、裏、スパイン、CDで異なる形になっている点も特徴。再発盤を手に取ると、オリジナル時代の作品が後年に色付き盤としてシリーズ化され、別のかたちで流通していることがわかる。
まとめ
『Fabrizio De Andre’』は、Fabrizio De Andréのディスコグラフィーの中でも、作家性と歌の親しみやすさが同居した1981年の作品。イタリアのカンタウトーレ文化、ポップ・ロック、民謡の再解釈という複数の要素が、彼らしい距離感でまとまっている1枚。
「Ave Maria」のような伝統曲の扱い、レミントンの絵画を使ったジャケット、そして後年のブルー・ヴァイナル再発まで含めて、作品そのものだけでなく、周辺の情報も印象に残るアルバム。
トラックリスト
- A1 – Quello Che Non Ho (5:48)
- A2 – Canto Del Servo Pastore (3:11)
- A3 – Fiume Sand Creek (5:16)
- A4 – Ave Maria (5:42)
- B1 – Hotel Supramonte (4:31)
- B2 – Franziska (5:28)
- B3 – Se Ti Tagliassero A Pezzetti (4:58)
- B4 – Verdi Pascoli (5:12)
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- Quello che non ho – Fabrizio De Andrè
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- Hotel Supramonte – Fabrizio De Andrè
- Fabrizio de Andrè – FRANZISKA (Indiano)
- Se ti tagliassero a pezzetti – Fabrizio De Andrè
- Fabrizio de Andrè – VERDI PASCOLI (Indiano)
- Quello che non ho
Kate Bush – Never For Ever (1980)
Kate Bush『Never For Ever』――1980年のKate Bushを押し広げた3作目
Kate Bushの『Never For Ever』は、1980年9月にリリースされた3作目のスタジオ・アルバムだ。前作までで確立していた独自の歌世界を保ちながら、より曲ごとの表情がはっきりした作品として知られている。ロックとポップの枠に収まりきらない書き方、歌い方、音の置き方が、この時点ですでにかなり強い。
日本盤は帯付きの見開きジャケット仕様で、歌詞の日本語インサートやファンクラブ案内も封入された。盤面そのものより、当時の日本向けリリースらしい情報量のある作りになっている。
作品の位置づけ
Kate Bushは1978年のデビュー以来、作家性の強い作品を継続して発表してきたが、『Never For Ever』はその中でも重要な節目にあたる。デビュー作『The Kick Inside』、続く『Lionheart』に続いて出たこのアルバムでは、作曲家としての視野がさらに広がっている。のちの作品ほど大作志向ではないが、歌詞の題材やアレンジの振れ幅はかなり広い。
全体を通して、ピアノを核にしつつ、打楽器、シンセサイザー、ギター、コーラスが場面ごとに入れ替わる。ひとつの雰囲気を長く引っぱるというより、曲ごとに景色が切り替わる構成だ。
代表曲とアルバムの流れ
この時期のシングルとして知られるのが「Babooshka」「Breathing」「Army Dreamers」だ。いずれもアルバムの中で存在感が大きい。
「Babooshka」は、フックの強いリフと物語性のある歌詞が印象に残る曲で、Kate Bushの代表曲のひとつとして挙げられることが多い。曲としての分かりやすさがありつつ、声の使い分けや言葉の運びに彼女らしさが出ている。
「Breathing」は、原子力と生命の不安を題材にした曲として知られ、A面の最後に置かれている。静かな導入から緊張感を積み上げていく流れで、80年代初頭のポップ・アルバムの中でもかなり異色の存在感がある。
「Army Dreamers」は、戦争と若者の喪失を描いた曲で、メロディは穏やかでも内容は重い。単純に派手なヒット曲というより、アルバム全体の温度を決める1曲という印象だ。
なお、後年にクリスマス期の楽曲として知られる「December Will Be Magic Again」も、この時期のシングルとして並ぶ。アルバム本編とは別の流れで出た曲だが、同時代のKate Bushの制作活動の広がりを示している。
曲ごとの手触り
『Never For Ever』は、1曲ごとの輪郭がはっきりしている。奇妙な題材を扱っていても、音の組み立てが散らかりすぎない。むしろ、短い曲でも場面転換が明確で、歌詞の細部とアレンジの相互作用で聴かせるタイプだ。
たとえば「Delius (Song of Summer)」のような曲では、題材の取り方そのものがKate Bushらしい。クラシックや文学、演劇的な感覚を、ロック/ポップのフォーマットにそのまま押し込まず、別の形に変えている。
一方で「The Wedding List」や「The Infant Kiss」のような曲では、物語を追う感覚が強く出る。歌声の抑揚とアレンジの切り替えで、短編を読むような感触がある。
同時代の文脈
1980年という時期を考えると、ニュー・ウェイヴやシンセ・ポップが広がる中で、Kate Bushはそのどこにも完全には属していない。実験性はあるが、前衛音楽として閉じてもいない。ポップの形式を使いながら、演劇性や文学性を強く持ち込んでいる点で、同時代の一般的なロック/ポップ作品とはかなり距離がある。
比較対象としては、同じく作家性の強い英国のポップ作家たちが思い浮かぶが、Kate Bushの場合は歌唱のレンジと曲構成の独特さが際立つ。ソングライターであり、歌手であり、作品全体の演出家でもある、という印象だ。
日本盤の仕様
この日本盤には、見開きジャケット、帯、両面印刷のインサートが付く。インサートには日本語歌詞が載り、Kate Bush Fan Clubへの案内も入っている。さらに「Babooshka」のシングル紹介用の小さな案内もあり、当時の日本盤らしい資料性がある。
曲順や収録内容はオリジナルの流れを踏まえているが、インサートの表記による再生時間が他国盤と少し異なる点もある。こうした差も、日本盤を手に取る楽しみのひとつだ。
まとめ
『Never For Ever』は、Kate Bushが初期の段階ですでに独自の語り口を完成させつつあったことを示すアルバムだ。ヒット曲の「Babooshka」、緊張感のある「Breathing」、物語性の強い「Army Dreamers」と、印象の異なる曲が並びながら、全体としてはひとつのまとまりを保っている。
1980年の作品として見ると、当時のポップやロックの流れから少し外れた場所で鳴っている感じがある。その距離感こそが、このアルバムの大きな特徴だ。
トラックリスト
- A1 – Babooshka (バブーシュカ) (3:20)
- A2 – Delius (Song Of Summer) (ディーリアス(夏の歌)) (2:49)
- A3 – Blow Away (For Bill) (死者たち (ビルに捧く)) (3:32)
- A4 – All We Ever Look For (わずかな真実) (3:45)
- A5 – Egypt (エジプト) (4:10)
- B1 – The Wedding List (ウエディング・リスト) (4:15)
- B2 – Violin (バイオリン) (3:14)
- B3 – The Infant Kiss (少年の口づけ) (2:55)
- B4 – Night Scented Stock (木の精は夜の香り) (0:48)
- B5 – Army Dreamers (夢みる兵士) (2:55)
- B6 – Breathing (呼吸) (5:25)
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Of Montreal – Jon Brion Remix EP (2009)
Of Montreal『Jon Brion Remix EP』について
『Jon Brion Remix EP』は、Athens, Georgia出身のOf Montrealによる2009年の作品。バンドの中心人物であるKevin Barnesを軸に、初期は60年代ポップやサイケデリックの感触を通し、後年はエレクトロニカ、ファンク、グラム、アフロビートまで取り込んでいく、このバンドの変化がよく知られている。その流れの中にある1枚がこのEPだ。
ジャンル表記はElectronic、Rock、Pop。スタイルとしてはArt Rock、Pop Rock、Experimentalに置かれている。タイトルからもわかる通り、Jon Brionによるリミックスを中心にした内容で、Of Montrealの楽曲を別の切り口から聴かせる作品として位置づけられる。
作品の位置づけ
2009年のOf Montrealは、もともとのインディー・ポップ/サイケ寄りの感覚に加えて、より広い編成感や加工の強いサウンドへと進んでいた時期。そうした時代の流れの中で出たこのEPは、バンドの原曲をそのまま並べるのではなく、Jon Brionの手つきで再構成された音像を味わうタイプのリリースになっている。
Polyvinyl Record Companyのカタログでは、この作品は「An Eluardian Instance EP」としても参照されている。作品名の扱いに揺れがある点は、レーベル資料を追ううえで目に入る情報だ。
Of Montrealというバンドの文脈
Of MontrealはKevin Barnesのプロジェクトとして語られることが多いバンドで、メンバーの入れ替わりが多いことでも知られる。提示されているメンバー一覧からも、その流動性が見えてくる。Derek Almstead、Julian Koster、Dottie Alexander、K Ishibashi、Jojo Glidewellら、多彩な演奏家が関わってきた。
音楽的には、初期のポップ・サイケ路線から、PrinceやDavid Bowieを思わせる要素を取り込んだ時期まで幅がある。2000年代後半のインディー・ロック界では、同じくアート性の高いポップを扱うアーティストとして、Animal CollectiveやThe Fiery Furnacesのような名前と並べて語られることもあった流れ。
聴きどころ
リミックスEPという形式上、ここでの聴きどころは楽曲そのものの展開よりも、元の曲がどのように切り分けられ、別の質感に置き換えられているかという点にある。Jon Brionは、映画音楽やプロデュースでも知られる人物で、細かな音の配置や和声の扱いに特徴がある。その手癖がOf Montrealの楽曲に入ることで、原曲の輪郭が少しずつずらされるタイプの作品になっている。
Of Montrealの代表曲という文脈でいえば、この時期は『Hissing Fauna, Are You the Destroyer?』の流れが大きく、そこから派生する作品群のひとつとして見ると整理しやすい。バンドのコアなファンにとっては、アルバム本編とは違う角度で曲を確認できる資料的な意味合いもあるだろう。
まとめ
『Jon Brion Remix EP』は、2009年のOf Montrealを、Jon Brionのリミックスという形で切り取った1枚。アート・ロック寄りの構成感と、ポップな手触りが同居するバンドの性格が、そのまま別の編集で見えてくる作品だ。作品名の扱いに別表記がある点も含めて、Of Montrealのカタログを追ううえで押さえておきたいEPといえる。
トラックリスト
- A1 – First Time High (Reconstructionist Remix Of “An Eluardian Instance”) (4:03)
- A2 – First Time High (Of Chicago Acoustic Version) (4:34)
- B1 – Gallery Piece (JB Remix) (3:54)
- B2 – Gallery Piece (Long Version) (8:16)
- B2 – Gallery Piece (Instrumental) (3:54)
Lift – Spiegelbild (1981)
Lift『Spiegelbild』(1981)
『Spiegelbild』は、東ドイツのロック・バンド、Liftが1981年に発表した作品。バンドはもともと1969年に
Liftというバンドの流れ
Liftは、東ドイツのロック史の中でもよく語られる存在。ロックを土台にしながら、シンフォニック・ロック、プログレッシブ・ロック、ポップ・ロックの要素を取り込み、長い活動の中で編成も変化してきた。提示されているメンバー名も多く、時期ごとに人員の入れ替わりがあったことがうかがえる。
この『Spiegelbild』も、そうしたLiftの歩みの中で出た1981年作品として見ると、バンドの成熟した時期の記録という印象が強い。東ドイツのロック・シーンでは、演奏力を前提にした組み立てのしっかりした作品が多く、Liftもその文脈の中で語られることが多いバンドだ。
音の特徴
この作品は、ジャンル表記としてRock、Pop、スタイルとしてSymphonic Rock、Pop Rock、Prog Rockが挙がっている。実際の聴感としても、ロックの骨格に、鍵盤やアレンジの厚みを持たせたタイプの作品として受け取られることが多いはずだ。リフやメロディを前面に出しつつ、曲の流れを大きく取る作りがLiftらしいところ。
歌を中心に据えながらも、単純なポップス寄りに寄り切らず、展開や間の取り方にプログレ的な感触が残る。とはいえ難解さを押し出す方向ではなく、曲としての輪郭を保ったまま進むあたりに、この時期のLiftの持ち味がある。
1981年という時期の位置づけ
1981年は、Liftにとって活動歴の中盤以降にあたる時期。デビュー直後の勢いをそのまま残すというより、バンドとしての作法が固まったあとに出る作品の雰囲気がある。東ドイツのロックという枠の中でも、派手な実験性より、演奏とアンサンブルの安定感が印象に残る年代だ。
同時代の文脈で見ると、英国のシンフォニック・ロックやプログレッシブ・ロックの影響を感じさせつつも、Liftの場合はより歌ものの感覚、つまりメロディの分かりやすさが前に出やすい。そういう意味では、欧州のロック・バンド群の中でも、組曲性一辺倒ではない立ち位置にある。
作品としての見どころ
『Spiegelbild』というタイトル自体は「鏡像」を意味するので、曲順やアルバム全体の構成を意識して聴くと、バンドの内側を映すような感覚がある。Liftの作品は、単曲の強さだけでなく、アルバム単位で流れを追うとまとまりが見えやすいタイプだ。
代表曲の明示的な情報はここでは挙げられていないが、Liftの作品群では、バンド名を広く知らしめた楽曲や歌詞で語られる曲がいくつかある。『Spiegelbild』も、その時期のLiftのサウンドを知るうえで外しにくい一枚として扱われることが多い。
まとめ
『Spiegelbild』は、東ドイツのLiftが1981年に残したロック作品。シンフォニック・ロック、ポップ・ロック、プログレッシブ・ロックの要素を持ちながら、演奏のまとまりと歌の流れを重視した作りが特徴の一枚だ。バンドの長い歴史の中で、成熟した時期のLiftを映す作品として見てよさそうだ。
トラックリスト
- A1 – Rückblick (0:45)
- A2 – Sindbad (3:29)
- A3 – Märchenland (3:58)
- A4 – Alptraum (3:01)
- A5 – Erinnerung (4:27)
- A6 – Am Abend Mancher Tage (3:45)
- B1 – Zwischenzeit (4:04)
- B2 – Liebeslied (2:40)
- B3 – Vincent Van Gogh (8:27)
- B4 – Einsamkeit (3:05)
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Diana Ross – Ross (1983)
Diana Ross『Ross』(1983)について
Diana Rossの『Ross』は、1983年にリリースされた14作目のソロ・スタジオ・アルバムである。録音は1982年から1983年にかけて行われ、USでは1983年6月9日にMotownから発売された。ソロ転向後のDiana Rossが、80年代前半のポップ/R&B路線をそのまま反映した一枚として位置づけられる作品だ。
作品の輪郭
この時期のDiana Rossは、60年代のThe Supremesでの成功を経て、ソロ・アーティストとして長く活動を続けていた。『Ross』は、そのソロ期の中でも1980年代のシンセサイザー主体のサウンドを前面に出したアルバムで、Electronic、Funk / Soul、Popの要素を持ち、スタイルとしてはSynth-pop、Soul、Discoにまたがる内容である。
タイトルがそのまま自身の名前である点も印象的で、アーティスト名を冠した作品らしく、当時のDiana Rossの現在形を示す役割を持つアルバムと見られる。Motown期のディスコ・イメージを引き継ぎつつ、80年代らしい打ち込みやシンセの質感が加わった時代性のある仕上がりである。
サウンドと聴きどころ
このアルバムでは、リズムの輪郭がはっきりしたトラックと、艶のある歌声の組み合わせが軸になる。Diana Rossのボーカルは、前に出すぎず、それでも曲の中心を外さないタイプで、ソウルやダンス寄りの曲でもポップ・シンガーとしての明瞭さが保たれている。
1983年という年を考えると、同時代にはMichael JacksonやWhitney Houstonの大ブレイク前夜の空気があり、R&Bとポップの境界がより近づいていた。『Ross』もその流れの中にある作品で、ディスコ以後のダンス・ミュージックとポップ・アルバムの接点に置かれる一枚といえる。
作品の位置づけ
Diana Rossのキャリアの中では、ソロ・アルバムを継続して重ねていた時期の作品であり、80年代の音像へ自然に移行していく過程を示すアルバムでもある。1970年代のディスコ時代に強い印象を残した彼女が、その後の時代にどう対応していたかを知るうえで、ひとつの手がかりになる。
なお、この盤はSterling SoundでTed Jensenによってマスタリングされている。フロント・カバーにはエンボス加工のタイトル表記がある点も、物理メディアとしての存在感を持たせる要素である。
ヒット曲・代表曲について
『Ross』については、アルバム全体の流れを追う聴き方がしやすい作品で、シングル単位の強い記憶だけで語るタイプというより、80年代初頭のDiana Ross像をまとめて示す内容として捉えやすい。ソロ・キャリアの中で、ダンス・ポップとソウルの接点を確認できるアルバムである。
まとめ
『Ross』は、Diana Rossのソロ・キャリアの中で1983年という時代の空気をはっきり映した作品である。Motownの伝統を背にしつつ、当時のポップ/R&Bの音作りへ寄せたアルバムとして、1980年代前半の彼女の立ち位置を知るには見やすい一枚だ。
トラックリスト
- A1 – That’s How You Start Over (4:09)
- A2 – Love Will Make It Right (4:44)
- A3 – You Do It (4:31)
- A4 – Pieces Of Ice (4:54)
- B1 – Let’s Go Up (4:01)
- B2 – Love Or Loneliness (4:17)
- B3 – Up Front (3:56)
- B4 – Girls (3:58)
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The Patron Saints – Fohhoh Bohob (1969)
The Patron Saints『Fohhoh Bohob』
The Patron Saintsは、1966年にニューヨークで結成された米国のバンド。The Stones、The Beatles、Jimi Hendrix、Cream、The Butterfield Blues Band、The Doors、Moby Grape、The Yardbirdsなどの影響を受けた5人編成として出発し、1969年には3人編成になっている。そんな流れのなかで録音されたのが『Fohhoh Bohob』で、オリジナルは1969年にバンド自身が100枚限定で自主制作・自主発表した作品である。
2007年にUS盤として再発されたこのレコードは、限定1000枚のリリース。オリジナルの流通がごく少なかった作品だけに、再発盤の存在はこのバンドの記録をたどるうえで重要な位置づけになっている。
作品の位置づけ
このアルバムは、The Patron Saintsが5人編成から3人編成へ移ったあとの時期に残した記録。プロフィールにある通り、1969年6月にアルバムを録音している。バンドが当時どんな音を鳴らしていたかを知るうえで、中心的な資料といえる作品だろう。
また、バンドは現在も活動を続け、新作も発表している。そうした長い活動歴のなかでは、初期の自主制作盤として『Fohhoh Bohob』が特別な意味を持つ。デビュー作というより、バンドの初期像をそのまま封じ込めたアーカイブ的な一枚、という見方がしやすい。
音の方向性
ジャンル表記はRock、Pop、Folk、World, & Country。スタイルにはPower Pop、Psychedelic Rock、Folk、Prog Rock、Honky Tonkが挙がっている。バンドの背景にある60年代後半の米国ロックの文脈を思わせる並びで、同時代のThe Beatles、The Doors、Moby Grape、The Yardbirdsあたりを参照点にした音作りが想像しやすい。
パワー・ポップ寄りのメロディ感、サイケデリック・ロックの感触、フォークやホンキートンクの要素まで含む構成は、当時のロックがひとつの型に収まりきらなかった時期らしい面白さがある。プログレッシブ・ロックの要素も含まれていて、単純なガレージ・ロックに回収されない広がりを持つ作品として見られることが多そうだ。
再発盤について
2007年盤は、オリジナルの100枚限定盤に対して1000枚限定での再発。オリジナル盤が極端に少ないため、この再発盤は作品に触れる現実的な入口になっている。盤の流通量が大きく違う点は、この作品の受け取られ方にも影響していそうだ。
まとめ
『Fohhoh Bohob』は、The Patron Saintsが1969年に残した初期記録。60年代末の米国ロックの気配をまといながら、ポップ、サイケデリック、フォーク、プログレ、ホンキートンクまでを含む広い射程を持つ一枚として整理できる。バンドの出自と活動の継続性を踏まえると、単なる珍盤ではなく、グループの出発点を示す作品として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – Flower (4:28)
- A2 – Nostalgia Trip (3:30)
- A3 – Reflections (3:41)
- A4 – Do You Think About Me? (3:10)
- A5 – White Light (5:40)
- B1 – Relax (6:15)
- B2 – My Lonely Friend (4:01)
- B3 – Andrea (5:58)
- B4 – The Goodnight Song (4:20)
- C – Shine Of Heart
- D – Do It Together
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The Waitresses – Wasn’t Tomorrow Wonderful? (1982)
The Waitresses『Wasn’t Tomorrow Wonderful?』について
The Waitressesは、アメリカ・オハイオ州アクロン出身のニュー・ウェイヴ/ポストパンク・バンド。のちにニューヨークへ拠点を移し、鋭いギター・ワークと、話し言葉に近いボーカル、軽妙なユーモアを含む楽曲で知られるグループだ。本作『Wasn’t Tomorrow Wonderful?』は1982年に登場した作品で、同年リリースの日本盤として流通している。
バンド名を聞いてまず思い浮かぶのは、やはりPatty Donahueのボーカルと、Chris Butlerを中心にしたひねりのある曲作り。The Waitressesは、同時代のニュー・ウェイヴの中でも、単にシンセや速いビートを並べるだけではない、言葉の運びや曲の切り方に特徴があるグループとして語られることが多い。本作も、その輪郭がはっきり出る時期の一枚として捉えやすい。
作品の位置づけ
1982年という時期は、The Waitressesにとって比較的知られた楽曲が広く流通していた時期でもある。代表曲としては「I Know What Boys Like」がよく挙がり、バンドの名前を外へ押し出した曲として扱われることが多い。そうした流れの中で聴くと、『Wasn’t Tomorrow Wonderful?』は、バンドの持ち味をアルバム単位で確認するための作品として見えやすい。
アメリカのニュー・ウェイヴやポストパンクの文脈では、Talking HeadsやB-52’sのように、ロックの基本形をそのままなぞらずに、リズムや言葉の置き方で個性を作るバンドが並ぶ。その中でもThe Waitressesは、より都会的で、少し乾いた感触のある仕上がりが印象に残るタイプだ。
音の特徴
クレジット上のジャンルはElectronic、Rock、Pop、スタイルはNew Wave。実際の印象としては、ロックの骨格を土台にしながら、電子音やキーボードの配置で空気を整え、ポップなフックを曲の中に通していく作り。演奏の熱量を前面に押し出すというより、フレーズの置き方や間の取り方で曲を進める場面が目立つ。
この手のニュー・ウェイヴ作品は、派手さよりも、短い言葉、反復、少しずらしたノリで印象を残すことが多い。本作もその系譜にある一枚として見やすい。Patty Donahueの歌い回しに耳が向く人は多そうで、バンドのユーモアや距離感は、そうしたボーカルの立ち方にも支えられている。
参加メンバーについて
クレジットにはChris Butler、Mars Williams、Ralph Carney、Holly Beth Vincent、David Hofstra、Billy Ficca、Dan Klayman、Tracy Wormworth、Patty Donahue、Stuart Austin、Ariel Warner、Patty Darlingの名が並ぶ。The Waitressesの中心人物としてはChris ButlerとPatty Donahueがまず挙がり、そこにサックスやリズム隊、補助的なプレイヤーが加わる形。ニュー・ウェイヴ期らしい柔軟な編成感がある。
日本盤としての特徴
この日本盤には、歌詞シートと帯が付属する。日本で流通した当時の洋楽LPらしい仕様で、コレクション面でもわかりやすいポイントだ。マスタリングはSterling Soundで行われ、Ze Recordsからのライセンス盤として出ている。
オリジナルの1982年作品として見た場合、日本盤は作品内容そのものに大きな変更があるタイプではなく、当時の国内流通向けのパッケージ違いとして捉えるのが自然だろう。帯や歌詞シートの有無は、聴く体験というより、手元に置く楽しさに関わる要素になっている。
まとめ
『Wasn’t Tomorrow Wonderful?』は、The Waitressesというバンドの個性を、1982年時点のニュー・ウェイヴの空気の中で確認できる作品。アクロン発のバンドがニューヨークへ移りながら形にしていった、言葉の切れ味とリズム感のバランスが、この時期の重要な手がかりになっている。
代表曲で知られるバンドを、アルバム単位で追う入口としても位置づけやすい一枚。派手な大ヒットだけではなく、当時のポップ/ロック/電子音の交差点にあった感触を残す作品として記憶されることが多い。
トラックリスト
- A1 – No Guilt
- A2 – Wise Up
- A3 – Quit
- A4 – It’s My Car
- A5 – Wasn’t Tomorrow Wonderful?
- B1 – I Know What Boys Like
- B2 – Heat Night
- B3 – Redland
- B4 – Pussy Strut
- B5 – Go On
- B6 – Jimmy Tomorrow
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- I Know What Boys Like – The Waitresses (HQ Audio)
- The Waitresses – I Know What Boys Like (1982)
- THE WAITRESSES- Wasn’t Tomorrow Wonderful
- The Waitresses – Christmas Wrapping (Music Video)
- The Waitresses – No Guilt (Live TV 1982)
- The Waitresses – I Know What Boys Like (Excerpt from the Sitcom “Square Pegs”, 1982)
- No Guilt
- Wise Up
- Quit
- It’s My Car
Algy Lord Gray – Bertie (1970)
Algy Lord Gray『Bertie』について
Algy Lord Grayの『Bertie』は、オリジナルは1970年の作品として扱われる1枚で、2021年にUKで再発盤が出ている。ジャンル表記はRock / Pop、スタイルはPsychedelic Rock、Pop Rock、Art Rock。アーティストの説明文からも、ただのソロ作品というより、当時の英国ロックの周縁で生まれた、かなり個性的な録音物として位置づけられている。
この作品の背景には、Algyと仲間たちがウェールズに移り、Plas Llechaという放棄された邸宅で録音を進めたという経緯がある。素朴な環境の中で制作が行われ、手作りで個別のカバーを持つ盤として出回ったことも、この作品の特徴として語られている。John Peelに1枚送られ、返事が来て、その後にPeel Sessionの機会につながった、というエピソードも残っている。
作品の位置づけ
『Bertie』は、Algy Lord Grayの活動の中でも、後のThe Great Crashへつながる流れの出発点として語られている。プロフィールでは、この盤に見られる感覚が「英国の風変わりな伝統」に連なるものとして説明されており、James Joyce、The Goons、Hawkwind、Monty Pythonといった名前が並ぶ。つまり、単なるポップ作品というより、ユーモアと実験性、英国的な遊び心が同居した作品として扱われている。
その後のThe Great Crashでは、1971年から1974年にかけて、ピアノ中心のメロディックなArt Rockを30曲ほど録音したとされている。『Bertie』は、その前段階にあたる作品として、より自由で、より手作り感の強い出発点と見てよさそうだ。
音の方向性
ロックとポップを軸にしつつ、サイケデリックな感触とアート志向が混ざった内容がうかがえる。派手なスタジオ・プロダクションよりも、場所そのものの空気や演奏の癖が前に出るタイプの記録として受け取れる。
比較の手がかりとしては、同時代の英国ロックの中でも、整ったポップスよりは、少し外側にある感覚が近い。後年のThe Great CrashがElton John初期、10cc、Deja Vu的な要素に触れられているのに対し、『Bertie』はその前の段階として、もう少し荒削りで、発想先行の雰囲気が強い作品と見られる。
2021年盤について
2021年のUK盤は、オリジナル作品の再発にあたる。手作りで少量流通したとされる初出盤の性格を踏まえると、再発盤はこの作品に触れる入口としての役割が大きい。オリジナル盤は入手性がかなり限られるはずで、2021年盤はその歴史的な位置をあらためて示す形のリリースになっている。
関連エピソード
- ウェールズのPlas Llechaという廃屋のような邸宅で録音されたこと
- 盤が手作りで、1枚ごとに異なるカバーが付けられたこと
- John Peelに送られ、返事が来て、Peel Sessionにつながったこと
- 後年、同じ場所がOasisやThe Verveの録音でも知られるようになったこと
まとめ
『Bertie』は、1970年という時代の英国ロックの中で、かなり個人的な環境から生まれた作品として見るのが自然だ。ロック、ポップ、サイケデリック、アート志向が入り混じる一方で、手作り盤、ウェールズでの共同生活、John Peelとの接点など、音以外の履歴も強い。Algy Lord Grayという名前を追ううえでの起点であり、The Great Crashへと続く流れの前史としても重要な1枚だ。
トラックリスト
- A1 – Would You Like A Brown Ale?
- A2 – Giraffe Song
- A3 – Get Involved With Your Work
- A4 – Post Orgasm Confessions
- A5 – Do You Know Where I Can Score?
- B1 – Bloated Fridge Road
- B2 – Dragonfly Wings
- B3 – Biafra
- B4 – Bertie, Where Are Your Trousers?
- B5 – The Nice Game
- B6 – Can’t Escape Your Fate
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- Algy Lord Gray – Bertie (1970) (2021 Seelie Court CD Reissue)
- Algy Lord Gray – Would You Like A Brown Ale?
- Algy Lord Gray – Giraffe Song
- Algy Lord Gray – Get Involved With Your Work
- Algy Lord Gray – Post Orgasm Confessions
- Algy Lord Gray – Do You Know Where I Can Score?
- Algy Lord Gray – Bloated Fridge Road
- Algy Lord Gray – Dragonfly Wings
- Algy Lord Gray – Biafra
- Algy Lord Gray – Bertie, Where Are Your Trousers?
Alice Island Band – Splendid Isolation (1974)
Alice Island Band『Splendid Isolation』について
Alice Island Bandの『Splendid Isolation』は、1974年に作品としてまとまった、スペイン発のレコードです。盤としては2019年にリリースされたもので、オリジナル作品をあらためて楽しめる形になっています。収録内容は、フォークやバラードの要素を軸にした、歌もの中心の作品と見てよさそうです。
作品の成り立ち
このアルバムは1968年の夏に構想され、1973年のクリスマスに録音されたとされています。制作の時間差がはっきりしていて、完成までにかなり長い期間を経た作品です。2019年盤には4ページの歌詞インサートが付属し、限定500枚でのリリースでした。
クレジット上で確認できるメンバーはTim Phillipsです。アーティストの詳細プロフィールや関連情報は多く出ていませんが、作品単位で見ると、かなり個人的な視点と手触りを持ったレコードに見えます。
音の方向性
ジャンル表記はPop、Folk、World、& Country、スタイルはFolk、Ballad。実際のところ、派手なアレンジを前面に出すタイプというより、歌と曲の流れを中心に聴かせる作りが想像しやすいです。タイトルの『Splendid Isolation』という言葉にも、外側へ広く開くというより、内側に向かって丁寧に組み上げた印象があります。
フォーク寄りのバラード作品は、同時代のシンガーソングライターや英国圏のフォーク作品と並べて語られることが多いですが、この作品もその流れの中で、語り口の強さや曲の輪郭を味わうタイプのアルバムとして受け取れそうです。
2019年盤について
2019年盤は再発としての位置づけで、オリジナルの1974年盤に対して、歌詞インサート付きで入手しやすい形になっているのが特徴です。限定500枚という点も含めて、コレクション性のあるリリースでした。オリジナル盤との細かな音質差や編集差については、確認できる範囲では明記されていません。
聴きどころの見方
- 1968年に構想、1973年に録音という制作の時間差
- 歌詞インサート付きの2019年再発盤
- フォーク、バラード寄りの曲作り
- 限定500枚のプレス
曲名や代表曲の情報は確認できませんでしたが、アルバム単位でじっくり聴くことで、制作時期の長さや歌詞の存在感が見えてくるタイプの作品といえそうです。
トラックリスト
- A1 – Goodbye Cindy
- A2 – Smoke
- A3 – She Is An Island
- A4 – Stranger In A Crowd
- A5 – Anna Clare
- A6 – The Man That I Am
- A7 – Everything That Meets My Eyes
- B1 – Sleepiness
- B2 – The Lover
- B3 – Hostages
- B4 – Devil’s Island
- B5 – Nickel Island
- B6 – As I Get Older
- B7 – Package Tour Mona Lisa
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Sally Oldfield – Playing In The Flame (1981)
Sally Oldfield「Playing In The Flame」について
「Playing In The Flame」は、Sally Oldfieldが1981年にUKで発表したアルバムです。ジャンルとしてはRockとPopにまたがり、スタイル面ではDowntempo、Pop Rock、Synth-popの要素が並ぶ作品として位置づけられています。Sally Oldfieldは、Mike Oldfieldの姉としても知られるUK出身のシンガーで、この時期にはソロ作を通じて自分の歌声と楽曲の輪郭をはっきり打ち出していった流れの中にある作品です。
作品の位置づけ
1981年という年代を考えると、アコースティック寄りのフォーク的な感触よりも、当時のポップ・ロックやシンセを使ったサウンドの空気が前に出やすい時期です。Sally Oldfieldの作品群の中でも、ソロ・アーティストとしての表現を、同時代の英国ポップスの文脈に置いて聴ける1枚といえます。妹や弟という家族関係で語られがちなアーティストですが、この作品ではそうした話題だけでなく、ひとりの歌い手としての存在感が中心にある印象です。
盤の仕様
このUK盤にはプリント入りのインナー・スリーブが付属しています。発売当時のパッケージとして、作品の世界観をそのまま補強する要素のひとつです。
サウンドの印象
実際に聴くと、曲ごとにリズムの置き方や鍵盤の使い方が変わり、歌を支えるアレンジの設計がはっきりしているタイプのアルバムとして受け取れます。派手な押し出しだけで引っ張るのではなく、声と曲の流れを軸にまとめていく作りで、1980年代初頭の英国ポップ・ロックらしい整理された響きが見えます。シンセの使い方も、装飾というより曲の骨格に関わる役割として機能しているように聴こえます。
同時代の文脈
同じ時期のUKでは、ポップ・ロックとシンセ・ポップの境目をまたぐ作品が多く出ていました。「Playing In The Flame」もそうした流れの中で理解しやすいアルバムです。フォーク由来の繊細さを持ちながら、80年代的な音像へ寄せていく感覚は、同時代の英国女性シンガー・ソングライターの作品とも並べて語られやすい部分です。
アーティストについて
Sally Oldfieldは1947年にダブリンで生まれ、幼少期をイングランドのReadingで過ごしています。バレエやクラシック・ピアノの学習歴を持ち、音楽活動は1960年代後半にMike Oldfieldとのデモ録音から始まりました。その後、兄MikeとともにThe Sallyangieを結成し、1968年にはアルバム「Children of the Sun」を録音しています。そうした背景を踏まえると、「Playing In The Flame」は、彼女がソロの表現を継続しながら、より洗練されたポップ寄りの形に向かっていた時期の記録として見えてきます。
まとめ
「Playing In The Flame」は、1981年のUKポップ・ロックの空気をまといながら、Sally Oldfieldの歌と楽曲の作りを確認しやすいアルバムです。Mike Oldfieldの家族という文脈だけでなく、ソロ作品としてのまとまりを持った1枚として、1980年代初頭の英国作品らしい手触りが残ります。
トラックリスト
- A1 – Playing In The Flame (5:03)
- A2 – Love Of A Lifetime (4:08)
- A3 – River Of My Childhood (3:57)
- A4 – Let It All Go (2:55)
- A5 – Song Of The Lamp (3:16)
- B1 – Rare Lightning (4:45)
- B2 – Man Child (3:57)
- B3 – It’s A Long Time (3:35)
- B4 – Song Of The Being (4:41)
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Prince And The Revolution – Parade (1986)
Prince And The Revolution「Parade」について
1986年にリリースされた、Prince And The Revolution名義の8作目のスタジオ・アルバムが「Parade」です。Princeの作品の中でも、The Revolutionをバンドとして前面に出した最後のアルバムとして知られていて、ソロ色の強い次の展開へ向かう前の節目の一枚という位置づけです。ジャンル表記としてはRock、Funk / Soul、Pop、スタイルではFunk、Minneapolis Sound、Pop Rockにまたがる内容で、Princeらしいリズムの強さと、曲ごとの色分けがはっきりした構成になっています。
作品の輪郭
このアルバムは、Prince And The Revolutionという編成のまとまりを感じさせる内容です。メンバーにはLisa Coleman、Matt Fink、Brownmark、Wendy Melvoin、Prince Rogers Nelson、Bob Rivkinがクレジットされていて、キーボード、ギター、ベース、ドラムがしっかり絡み合うバンド感が土台になっています。とはいえ、中心にいるのはやはりPrinceで、楽曲の方向性や音の設計には彼の個性が強く出ている作品です。
同時代のポップやファンクの流れの中でも、ミネアポリス・サウンドの代表的な一枚として見られることが多いアルバムです。シンセサイザーの使い方、リズムの切れ味、メロディの立ち上がり方などに、その時期のPrince作品らしい特徴がまとまっています。ファンクの躍動感とポップな聴きやすさのあいだを行き来する作りで、アルバム全体の流れも比較的コンパクトにまとまっています。
代表曲「KISS」
この作品を語るうえで外せないのが「KISS」です。シングルとして大きく知られた曲で、アルバムの中でも特に印象の強いトラックです。ギター、リズム、ファルセットの使い方がはっきりしていて、Princeの曲作りの輪郭がわかりやすい一曲になっています。ほかの楽曲も含めて、派手さだけで押すのではなく、音数や配置で引っかかりを作る感じがこのアルバムらしいところです。
映像作品とのつながり
リリース時のシュリンクには、Warner Bros.の映画「Under the Cherry Moon」の音楽であることと、「KISS」がヒットシングルであることが告知されています。つまり、このアルバムは単独の音源作品としてだけでなく、当時のPrinceの映像作品とも地続きの文脈で出てきたものです。音だけでなく、映像やキャラクター性も含めて展開していた時期の記録としても見やすい一枚です。
日本盤としての仕様
この日本盤はゲートフォールド仕様で、オビには「Prince 8th」と入っています。シュリンク上のステッカーには「KISS」のヒットを含むことや、「Under the Cherry Moon」との関連が記されています。付属品としては、英和対訳のクレジット・インサート、英和歌詞インサート、アルバム・カタログ付きのマーケティング/アンケート・カードが確認できます。レーベル表記には1986年の表記があり、Warner-Pioneer Corporation, Japanによるライセンス盤です。
ひとこと
「Parade」は、Prince And The Revolutionという名義の終盤に置かれたアルバムでありながら、曲の強さと構成のまとまりがしっかり感じられる作品です。特に「KISS」の存在で広く知られていますが、アルバム全体として見ると、ファンク、ポップ、ロックの要素がPrince流に整理された時期の記録としても興味深い内容です。
トラックリスト
- Intro
- A1 – Christopher Tracy’s Parade (2:11)
- A2 – New Position (2:21)
- A3 – I Wonder U (1:40)
- A4 – Under The Cherry Moon (2:57)
- A5 – Girls & Boys (5:30)
- A6 – Life Can Be So Nice (3:12)
- A7 – Venus De Milo (1:54)
- End
- B1 – Mountains (3:58)
- B2 – Do U Lie? (2:43)
- B3 – Kiss (3:38)
- B4 – Anotherloverholenyohead (3:58)
- B5 – Sometimes It Snows In April (6:50)
関連動画
Areski – Brigitte Fontaine – Je Ne Connais Pas Cet Homme (1973)
Areski – Brigitte Fontaine「Je Ne Connais Pas Cet Homme」
フランスのAreski BelkacemとBrigitte Fontaineによる共作名義、Areski – Brigitte Fontaineの一枚。1973年のオリジナル作品として知られるタイトルで、ここに収められているのはシャンソンを軸にしながら、アヴァンギャルドや実験的な要素を前面に出した世界観だ。
作品の輪郭
Brigitte Fontaineの語りかけるような歌唱と、Areskiの多彩な演奏・構成がぶつかり合うというより、同じ空間の中で少しずつ形を変えていく作り。ロックやポップの枠に置かれながらも、一般的な歌モノの流れには収まらない、ひっかかりのある音像がこの作品の中心にある。
この二人の共同作業は、単独名義の作品とは少し違って、作品全体がひとつの会話のように進むところが特徴的だ。メロディが前に出る場面もあれば、言葉の運びや間の取り方が主役になる場面もあり、シャンソンの伝統と前衛的な感覚が同居している。
聴きどころ
この手のAreski-Fontaine作品では、派手な展開や分かりやすいサビよりも、音の配置や声の置き方に耳が向く。Brigitte Fontaineの声は、歌うというよりも言葉を音楽の中に置いていくようで、Areskiの側はその動きを受け止めながら、楽曲の輪郭を少しずつずらしていく印象がある。
70年代フランスのシャンソン周辺には、BarbaraやJacques Higelin、Magma周辺のように既存の形式を崩しながら独自の表現へ向かう動きがあったが、この作品もその流れの中で語られることがありそうだ。とはいえ、ロックの推進力だけでも、実験音楽の硬さだけでもなく、その中間にある独特の距離感が残る。
リリースについて
盤として流通しているものは1990年代後半から2000年代初頭の再発盤とみられ、オリジナルの1973年盤とは別の時代のプレスになる。再発盤としては、価格コードやバーコードが付かない仕様という点が目立つ。
アーティストのキャリアの中では、AreskiとBrigitte Fontaineの共同名義作品の一つとして位置づけられる一枚。二人の関係性そのものが作品の核にあるタイプで、単なる客演ではなく、名前どおりの共同制作として捉えるのが自然だ。
まとめ
「Je Ne Connais Pas Cet Homme」は、フランスのシャンソンを土台にしながら、ポップ、ロック、実験性が同じ画面に並ぶ作品。歌と演奏の役割分担が固定されず、曲ごとに表情が変わっていくところが面白い。
トラックリスト
- A1 – Depuis (1:54)
- A2 – J’ai 26 Ans, Madame (1:15)
- A3 – La Fille Du Curé (2:04)
- A4 – Comment Ca Va (1:40)
- A5 – Montparnasse (1:23)
- A6 – La Recherche De L’Hiver (3:44)
- A7 – Les Blanchisseuses (1:09)
- A8 – C’est Normal (4:21)
- B1 – Dis-moi (4:03)
- B2 – Insert (0:25)
- B3 – On N’est Pas Des Arbres (1:45)
- B4 – La Renarde Et Le Bélier Touffu (3:56)
- B5 – Insert (0:25)
- B6 – Je Ne Connais Pas Cet Homme (2:18)
- B7 – Nous Ne Pourrons Plus Dormir (1:32)
- B8 – La Morvien (2:37)
- B9 – Le Silence (1:52)
- B10 – Final (0:35)
関連動画
- Areski et Brigitte Fontaine – C’est Normal
- La fille du curé
- Montparnasse
- La recherche de l’hiver
- Les blanchisseuses
- Brigitte Fontaine – C’est normal
- Areski et Brigitte Fontaine “Dis-moi”
- Areski & Brigitte Fontaine – On N’Est Pas Des Arbres (1973)
- Brigitte Fontaine et Areski Belkacem – La renarde et le bélier touffu
Harris Chalkitis – Marita (1975)
Harris Chalkitis「Marita」
「Marita」は、フランスで1975年にリリースされたHarris Chalkitisの作品。作曲、編曲、歌唱、マルチインストゥルメンタリストとして知られるHarris Chalkitisが、パリのBarclay Studiosで1975年4月から5月にかけて録音した一枚である。ジャズ、ロック、ファンク、ポップ、フォークの要素をまたぐ作風で、ジャズロック、ジャズファンク、プログレッシブ・ロック、ディスコの文脈でも語られる作品になっている。
作品の輪郭
Harris Chalkitisは1945年にカイロで生まれ、幼少期に家族とともにギリシャへ移った人物。作曲家、オーケストレーター、シンガー、マルチインストゥルメンタリストとして活動し、後年はQueen Samanthaのプロデュースでも知られるほか、Demis Roussos、Mireille Mathieu、Dalidaなどの作曲も手がけている。その経歴を踏まえると、「Marita」も単独の歌手作品というより、作編曲の手腕が前面に出るタイプのレコードとして位置づけやすい。
録音はパリのBarclay Studios。℗表記も1975年のBarclayで、フランス盤として同年の空気をそのまま閉じ込めた資料性のあるレコードといえる。ジャズ寄りのリズム感、ロックの推進力、ファンクのうねり、そして当時のポップ/ディスコの感触が並ぶところに、この時代のヨーロッパ制作らしい混ざり方が見える。
サウンドの印象
この作品のポイントは、ジャンルの切り替えがはっきりしていること。ジャズ・ロックやジャズ・ファンクの文脈では演奏の密度が前に出やすく、プログレッシブ・ロックの要素では展開の組み立てが目立つ。そこにディスコ的なビート感や、ポップ、フォーク、ワールド・ミュージックの要素が重なっているため、単一の型に収まらない作りになっている。
実際に聴くと、歌ものとしての輪郭と、編曲の細かい動きの両方が見えやすいタイプの作品になりそうだ。メロディを追いながらも、伴奏のリズムや管弦の配置に耳が向く盤だろう、という印象である。
時代背景とつながり
1975年という年は、ヨーロッパのポップスやフュージョン、ディスコ前夜のサウンドが交差していた時期。フランス制作のレコードとして見ると、シャンソン的な歌心と、当時の国際的なソウル/ファンク感覚の接点にある作品とも捉えやすい。Harris Chalkitisの後年のプロデュースワークや大衆歌謡への関わりを考えても、この時期の仕事は彼の幅広い作曲・編曲感覚を示す一枚といえる。
代表曲やヒット曲として広く知られる定番曲の情報は見当たらないが、制作年、録音場所、参加した音楽的文脈をたどると、70年代フランス盤の中でも作り手の個性が出る作品として見ていける。
盤について
この盤は1975年のフランス盤。ラベルにはMade in Franceの表記があり、当時のBarclay系プレスとして出回ったものだとわかる。プレスリングの仕様も1975年のフランス国内プレスに特徴的なものとされている。
Harris Chalkitisのキャリアを追ううえで、「Marita」は、作曲家・編曲家としての感覚と、当時のフランス録音の空気が重なる一枚として押さえておきたい作品である。
トラックリスト
- A1 – Marita (3:45)
- A2 – Funny She Loves Me (2:18)
- A3 – Right On Moving (2:49)
- A4 – Always On My Mind (2:37)
- A5 – Without You (4:15)
- B1 – Introduction Moog (0:59)
- B2 – Glory Of A Love Song (3:25)
- B3 – Morning Sunshine (2:47)
- B4 – New York City (3:47)
- B5 – With A Smile (2:35)
- B6 – Let Me Go My Way (2:42)
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Alberto Radius – Che Cosa Sei (1976)
Alberto Radius / Che Cosa Sei
Alberto Radiusの「Che Cosa Sei」は、1976年に発表された作品で、ロックとポップの要素を軸にしたポップ・ロックの一枚だ。アルベルト・ラディウスはイタリア出身のギタリスト、シンガーで、60年代後半から70年代にかけてのイタリアン・ロック・シーンで存在感を示した人物として知られる。
アーティストの立ち位置
Radiusは、バンド活動を通してキャリアを積み上げたあと、1969年にFormula 3を結成したことで広く知られる。Lucio BattistiのレーベルNumero Unoからデビューし、代表曲「Questo Folle Sentimento」がイタリアのチャートで上位に入ったことでも知られる。そうした流れを踏まえると、「Che Cosa Sei」は、バンド・ミュージシャンとしての経験と、ソロでの表現がつながる時期の作品として位置づけられる。
作品の印象
この作品は、ギターを前面に押し出したロック色と、歌ものとしての聴きやすさが同居するタイプのアルバムとして捉えやすい。70年代イタリアのポップ・ロックには、メロディを重視しつつ演奏にも力が入る作品が多いが、本作もその文脈の中にある一枚と言えそうだ。曲の輪郭を保ちながら、演奏の細部で個性を見せる流れが見えやすい。
作曲者としてのRadiusの持ち味は、バンド時代に培ったギターの感覚と、歌のフレーズの運びの両方にある。Formula 3や、同時代のイタリアン・ロックに通じる耳なじみのよさと、ロック寄りの音作りが近い距離にあるのがこの時代の特徴でもある。
盤について
ここにある盤は1982年リリースのもの。作品そのものは1976年の発表なので、70年代オリジナルの流れを後年の盤で聴く形になる。ジャケットや音質の細かな違いは盤ごとに変わることがあるが、作品の核になる部分は1976年時点のものとして受け止めやすい。
関連する文脈
- イタリアン・ロックの流れの中にあるソロ作品
- Formula 3での活動を経たギタリスト/シンガーとしての一面
- ロックとポップの間を行き来する70年代イタリア作品の一例
「Che Cosa Sei」は、Alberto Radiusの経歴を踏まえて聴くと、演奏家としての手触りとポップ・ソングとしてのまとまりが見えやすい作品だ。派手さよりも、曲と演奏の組み合わせで聴かせるタイプのアルバムとして記憶しやすい。
トラックリスト
- A1 – Che Cosa Sei (3:58)
- A2 – L’Asino (3:58)
- A3 – Il Respiro Di Laura (5:12)
- A4 – La Meta’ (5:07)
- B1 – Sound (3:40)
- B2 – Salamoia (3:42)
- B3 – Suoni (4:47)
- B4 – Zenit (4:47)
- B5 – Pop Star (4:00)
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Kings Of Convenience – Peace Or Love (2021)
Kings Of Convenience『Peace Or Love』について
Kings Of Convenienceは、ノルウェー・ベルゲン出身のデュオ。Erlend ØyeとEirik Glambek Bøeの2人によるユニットで、どちらも歌い、どちらも作曲を手がける。細かなギターの絡みと、落ち着いた歌声で知られるグループだ。
『Peace Or Love』は2021年にリリースされた作品で、Kings Of Convenienceにとってこの時期の活動をそのまま反映したアルバムとして聴ける1枚。リリース国はヨーロッパ盤。ジャンル表記はPop、Folk、World, & Country、スタイルはFolk、Indie Popとなっている。
作品の印象
この作品では、Kings Of Convenienceらしい、音数を抑えたアレンジと、2人の歌声の呼吸が前に出る構成が中心になる。ギターのフレーズは細かく、演奏の隙間がそのまま曲の輪郭になっているタイプ。派手な展開で押す作品というより、声と弦の動きで曲を組み立てる作りだ。
聴き進めると、メロディの見せ方がかなり丁寧なことがわかる。短いフレーズの反復や、声の重なり方で曲を進める場面が多く、Kings Of Convenienceの既知の持ち味がそのまま出ている印象。いわゆるインディー・フォークやインディー・ポップの文脈に置くと、余白のある編曲と柔らかい歌唱が軸になる作品として見やすい。
アーティストにとっての位置づけ
Kings Of Convenienceは、デビュー以降、派手さよりも曲の細部を積み上げるスタイルで知られてきたユニット。この『Peace Or Love』も、その延長線上にあるアルバムとして捉えやすい。ベルゲン出身という背景も含め、北欧のインディー・フォークらしい静かな手触りを感じさせる。
同時代のインディー・フォーク、インディー・ポップの流れの中では、Broken Social Sceneのような大編成の動きとは対照的で、Sufjan StevensやThe Acornの一部作品に見られるような、音の配置を細かく整える方向と比べやすい。とはいえ、Kings Of Convenienceはあくまで2人の声とギターのやり取りに重心がある。
ひとこと
『Peace Or Love』は、Kings Of Convenienceの名前から連想しやすい、控えめな編曲とデュオの歌の組み合わせがそのまま表に出た作品。2021年作として、彼らの持ち味を確認できるアルバムだ。
トラックリスト
- A1 – Rumours (4:09)
- A2 – Rocky Trail (3:30)
- A3 – Comb My Hair (3:06)
- A4 – Angel (3:15)
- A5 – Love Is A Lonely Thing (2:45)
- A6 – Fever (3:56)
- B1 – Killers (3:53)
- B2 – Ask For Help (4:07)
- B3 – Catholic Country (3:00)
- B4 – Song About It (3:04)
- B5 – Washing Machine (2:46)
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The Beach Boys – Shut Down Volume 2 (1964)
The Beach Boys『Shut Down Volume 2』について
The Beach Boysの『Shut Down Volume 2』は、1964年に発表された5作目のスタジオ・アルバムだ。アメリカ西海岸のサーフ・カルチャーと結びついた初期の代表作のひとつで、Brian Wilsonを中心にした緻密なコーラスと、車や海辺を題材にした楽曲が並ぶ一枚になっている。
この時期のThe Beach Boysは、サーフ・ロックのイメージを強く打ち出しながら、ポップ・グループとしての完成度も高めていた。The Beatlesや同時代のブリティッシュ・インヴェイジョン勢と並べて語られることも多いが、こちらはあくまでアメリカン・ポップの文脈で存在感を示した作品群のひとつだ。
作品の位置づけ
『Shut Down Volume 2』は、初期The Beach Boysの流れをつかむうえで重要なアルバムだ。デビュー後の勢いをそのまま持ち込みつつ、グループ独自のハーモニーやアレンジが少しずつ洗練されていく段階が見える。後年の実験的な作品に比べると、ここでは曲ごとの役割がはっきりしていて、当時のバンドの輪郭がつかみやすい。
代表曲と内容
収録曲の中では、「Fun, Fun, Fun」や「Don’t Worry Baby」といった曲がよく知られている。「Fun, Fun, Fun」はThe Beach Boysらしい車と若さのイメージを前面に出した曲で、イントロから推進力がある。「Don’t Worry Baby」は、同じアルバムの中でも少し温度の違う楽曲で、コーラスの重なりが印象に残る。どちらもグループの初期を代表する定番曲として扱われている。
全体としては、ロックンロールの勢い、サーフ・ミュージックの要素、そしてボーカル・ハーモニーが中心。演奏面ではシンプルに聞こえる部分もあるが、声の配置やフレーズのまとまりで曲を引っ張る作りになっている。
日本盤としてのリリース
ここで扱うのは1977年に日本で出た盤だ。オリジナルの1964年盤から時間を置いた再登場で、当時の日本のリイシュー盤として受け取られたものになる。オリジナル盤と比べると、時代を経た後の再発売という位置づけがはっきりしている。
録音年代の空気感は当然1960年代前半のままだが、1970年代の日本盤として手に取ると、The Beach Boysの初期像を改めて確認するような感覚がある。アルバム単位で追うと、のちの『Pet Sounds』以降の流れに至る前段階としても見えてくる一枚だ。
まとめ
『Shut Down Volume 2』は、The Beach Boysの初期を象徴するサーフ/カー・ソング集として機能しつつ、バンドのハーモニーの強さをよく示すアルバムだ。ヒット曲を含みながら、1964年当時のアメリカン・ポップの輪郭をそのまま残した内容になっている。
トラックリスト
- A1 – Fun, Fun, Fun
- A2 – Don’t Worry Baby
- A3 – In The Parkin’ Lot
- A4 – “Cassius” Love Vs. “Sonny” Wilson
- A5 – The Warmth Of The Sun
- A6 – This Car Of Mine
- B1 – Why Do Fools Fall In Love
- B2 – Pom Pom Play Girl
- B3 – Keep An Eye On Summer
- B4 – Shut Down, Part II
- B5 – Louie, Louie
- B6 – Denny’s Drums
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Peter Gabriel – I/O (Dark-Side Mixes) (2023)
Peter Gabriel『I/O (Dark-Side Mixes)』について
Peter Gabrielの『I/O (Dark-Side Mixes)』は、2023年に登場した通算10作目のスタジオ・アルバム『i/o』の「Dark-Side Mixes」版。ロック、ポップを軸にしながら、Art RockやPop Rockの要素を前面に出した作品で、全12曲を収めた大作になっている。
Peter Gabrielは、Genesisの元フロントマンとして知られる英シンガー/ソングライター/マルチ・インストゥルメンタリスト。ソロ転向後は、オリジナル作の間隔が長くなる時期もありつつ、アルバム単位で強い存在感を保ってきた。本作は、2002年の『Up』以来となる新作オリジナル・アルバムで、ソロ名義のスタジオ作としてはかなり久しぶりの一枚という位置づけになる。
作品の構成
『I/O』は、各曲に「Bright-Side Mix」と「Dark-Side Mix」の2種類のミックスが用意されているのが大きな特徴だ。この『Dark-Side Mixes』は、そのうちのダーク側にあたるミックスをまとめた内容。アルバム全体としては68分を超え、Peter Gabrielのオリジナル・スタジオ作の中でも最長クラスのボリュームになっている。
曲数は12曲。単なる新曲集というより、同じ楽曲を別の角度から聴かせる構成で、ミックス違いを聴き比べる楽しみがあるタイプの作品だ。
Peter Gabrielにとっての位置づけ
本作は、長い制作期間を経て完成した新作であり、Peter Gabrielのキャリアの中でも節目感のあるアルバムだ。Genesis脱退後のソロ活動、ワールド・ミュージックの文脈ともつながる活動、そしてアルバム制作に時間をかける姿勢。その延長線上にある作品として見ると、かなり自然に受け止められる。
また、Peter GabrielはWOMADの創設者としても知られていて、音楽の広がり方そのものに関心を持ち続けてきた人物でもある。『I/O』でも、そうした制作へのこだわりがアルバム全体の設計に表れているように見える。
サウンドの印象
『Dark-Side Mixes』というタイトルどおり、音の輪郭や空気感に重心を置いた聴こえ方になっている。ロックの骨格を保ちながらも、音の配置や質感をじっくり追うタイプのミックスで、曲ごとの細部が見えやすい構成だ。
実際に聴くと、派手な即効性よりも、じわじわと曲の輪郭が立ち上がってくる感触がある。Peter Gabrielらしい緻密なアレンジの積み重ねが前に出る作りで、同じ楽曲でもミックスによって印象が変わるのがわかりやすい。
同時代・ジャンルの文脈
Art RockやPop Rockの文脈で見ると、70年代から続くプログレ寄りの構成感と、80年代以降の洗練されたポップ感覚、その両方をまたぐ立ち位置の作品と言える。Genesis周辺の系譜を思わせつつ、ソロ期のPeter Gabrielが積み上げてきた実験性や音響志向も感じられる。
同時代の大物ロック・アーティストが新作を出す際の「懐かしさ」に寄りすぎない作りとは少し違って、Peter Gabrielの場合はアルバムそのものを作品として組み上げる姿勢が強い。そうした意味で、単発の楽曲集というより、1枚通して聴く前提の構成になっている。
まとめ
『I/O (Dark-Side Mixes)』は、Peter Gabrielの長いキャリアの中でも、かなり重要な新作オリジナル・アルバム『i/o』のダーク側ミックス版。12曲それぞれを別の質感で聴かせる構成が特徴で、久々の新作であること自体も含めて、ソロ活動の節目を示す内容になっている。
トラックリスト
- A1 Panopticom (5:16)
- A2 Playing For Time (6:17)
- A3 The Court (4:21)
- B1 Four Kinds Of Horses (6:47)
- B2 I/O (3:52)
- B3 Love Can Heal (5:59)
- C1 Road To Joy (5:21)
- C2 So Much (4:51)
- C3 Olive Tree (5:58)
- D1 This Is Home (5:04)
- D2 And Still (7:42)
- D3 Live And Let Live (7:11)