Wapassou – Wapassou (1973)
Wapassou『Wapassou』について
Wapassouのデビュー作『Wapassou』は、1973年にフランスで登場した作品だ。ストラスブールを拠点にしたこのグループは、1970年代初頭に結成されたシンフォニック/プログレッシブ・ロック・バンドとして知られている。初期の作品はサイケデリック色が強く、その後はギター、ヴァイオリン、キーボード、女性ヴォーカルを軸にした長尺の組曲形式へと進んでいくが、このアルバムはその出発点にあたる一枚になる。
作品の位置づけ
このアルバムは、Wapassouの最初期の姿を示す作品として見ると分かりやすい。後年の作品で見られるような、クラシック由来の構成感や組曲的な展開に向かう前段階であり、より心理的な揺らぎや、当時の欧州サイケデリック・ロックに近い感触が前に出ている。バンドのプロフィールでも、このデビューLPは「よりサイケデリック寄り」とされており、のちの独自路線とは少し違う入口になっている。
同時代のフランス・ロックの文脈で見ると、後のWapassouは長い曲構成、室内楽的な楽器編成、女性ヴォーカルの存在などから、一般的なハードロック系とも、単純なプログレ・バンドとも少し異なる位置にあった。比較対象としては、同じフランスのアンダーグラウンド寄りのサイケ/プログレ勢や、叙情性と構成美を重視する欧州系の作品群が思い浮かぶ。
サウンドの特徴
このデビュー作の情報から読み取れる範囲では、後年の大作志向よりも、まずはバンドの輪郭を作る段階の演奏が中心と見られる。Wapassouはのちに、ギター、ヴァイオリン、キーボード、女性の声を組み合わせた独特の編成で知られるが、その基礎がすでにこの時点で形になっていたはずだ。特に、フランスのプログレでも珍しい「打楽器の少なさ」がバンドの個性として語られることが多く、その特徴が後の作品に通じている。
実際に聴いた印象として語られやすいのは、音の厚みよりも、旋律の流れと楽器同士の受け渡しが前面に出るタイプの進行だという点だ。ロックの推進力だけで押し切るのではなく、フレーズの反復や展開で曲を組み立てる感触がある。
1987年盤について
今回の盤は1987年のフランス盤で、Wotre Music向けのOméga Studio再発盤にあたる。スリーヴには「Made in France – Imp. S.N.A.」、レーベル面には「Made in France」と記されている。オリジナル1973年盤と比べると、作品そのものは同じデビュー作でも、流通経路や盤の製造時期が異なる再発盤という見方になる。
再発盤であるため、1973年当時の初出盤をそのまま追う資料というよりは、後年に改めて入手しやすくした版として扱うのが自然だ。Wapassouのようにオリジナル盤が流通しにくい作品では、この1987年盤が実際の聴取環境において重要な役割を持つこともある。
参加メンバー
クレジットには Freddy Brua、Jacques Lichti、Karin Nickerl、Jean-Pierre Schall、Jean-Michel Biger、Geneviève Moerlen、Jean-Jacques Bacquet、Monique Fizelson、Charly Kolb、Francis Gentel、Christine Maillard、Michel Lacour、Dominique Kihm、Dominique Metz の名前が並ぶ。Wapassouは固定のロック・バンドというより、編成の広がりを持ったアンサンブルとして捉えたほうが近い。
まとめ
『Wapassou』は、フランスのストラスブールから現れたWapassouの出発点を記録したアルバムだ。のちの組曲志向、室内楽的な響き、女性ヴォーカルを含む独自のプログレ表現へ向かう前の、サイケデリックな輪郭を持つ初期像がここにある。1973年のオリジナル盤と、1987年のWotre Music向け再発盤という時間差も、この作品の聴かれ方を考えるうえでひとつのポイントになる。
トラックリスト
- A1 – Mélopée (4:02)
- A2 – Rein (10:38)
- A3 – Musillusion (Wapassou) (4:00)
- B1 – Châtiment (6:54)
- B2 – Trip (13:41)
関連動画
The Patron Saints – Fohhoh Bohob (1969)
The Patron Saints『Fohhoh Bohob』
The Patron Saintsは、1966年にニューヨークで結成された米国のバンド。The Stones、The Beatles、Jimi Hendrix、Cream、The Butterfield Blues Band、The Doors、Moby Grape、The Yardbirdsなどの影響を受けた5人編成として出発し、1969年には3人編成になっている。そんな流れのなかで録音されたのが『Fohhoh Bohob』で、オリジナルは1969年にバンド自身が100枚限定で自主制作・自主発表した作品である。
2007年にUS盤として再発されたこのレコードは、限定1000枚のリリース。オリジナルの流通がごく少なかった作品だけに、再発盤の存在はこのバンドの記録をたどるうえで重要な位置づけになっている。
作品の位置づけ
このアルバムは、The Patron Saintsが5人編成から3人編成へ移ったあとの時期に残した記録。プロフィールにある通り、1969年6月にアルバムを録音している。バンドが当時どんな音を鳴らしていたかを知るうえで、中心的な資料といえる作品だろう。
また、バンドは現在も活動を続け、新作も発表している。そうした長い活動歴のなかでは、初期の自主制作盤として『Fohhoh Bohob』が特別な意味を持つ。デビュー作というより、バンドの初期像をそのまま封じ込めたアーカイブ的な一枚、という見方がしやすい。
音の方向性
ジャンル表記はRock、Pop、Folk、World, & Country。スタイルにはPower Pop、Psychedelic Rock、Folk、Prog Rock、Honky Tonkが挙がっている。バンドの背景にある60年代後半の米国ロックの文脈を思わせる並びで、同時代のThe Beatles、The Doors、Moby Grape、The Yardbirdsあたりを参照点にした音作りが想像しやすい。
パワー・ポップ寄りのメロディ感、サイケデリック・ロックの感触、フォークやホンキートンクの要素まで含む構成は、当時のロックがひとつの型に収まりきらなかった時期らしい面白さがある。プログレッシブ・ロックの要素も含まれていて、単純なガレージ・ロックに回収されない広がりを持つ作品として見られることが多そうだ。
再発盤について
2007年盤は、オリジナルの100枚限定盤に対して1000枚限定での再発。オリジナル盤が極端に少ないため、この再発盤は作品に触れる現実的な入口になっている。盤の流通量が大きく違う点は、この作品の受け取られ方にも影響していそうだ。
まとめ
『Fohhoh Bohob』は、The Patron Saintsが1969年に残した初期記録。60年代末の米国ロックの気配をまといながら、ポップ、サイケデリック、フォーク、プログレ、ホンキートンクまでを含む広い射程を持つ一枚として整理できる。バンドの出自と活動の継続性を踏まえると、単なる珍盤ではなく、グループの出発点を示す作品として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – Flower (4:28)
- A2 – Nostalgia Trip (3:30)
- A3 – Reflections (3:41)
- A4 – Do You Think About Me? (3:10)
- A5 – White Light (5:40)
- B1 – Relax (6:15)
- B2 – My Lonely Friend (4:01)
- B3 – Andrea (5:58)
- B4 – The Goodnight Song (4:20)
- C – Shine Of Heart
- D – Do It Together
関連動画
Yes – Time And A Word (1970)
Yes『Time And A Word』について
Yesの『Time And A Word』は、1970年に発表された2作目のアルバムで、バンド初期の姿を知るうえで重要な作品だ。プログレッシブ・ロックの文脈では、のちの大作志向や緻密なアンサンブルへ向かう前段階として位置づけられることが多い。既にYesらしい構築感は見えつつ、まだ初期のロックバンドとしての輪郭も残している時期の録音である。
この日本盤は1979年のリリースで、オリジナルの1970年盤からは時間が経っている。表記上は日本で製造された盤で、℗1970 Atlantic Recording Corporation、Made by Warner-Pioneer Corporation, Japan とある。つまり、作品そのものは1970年のアルバム、手元の盤は後年の国内流通盤という整理になる。
作品の位置づけ
本作は、Yesの初期メンバー編成を聞ける最後のアルバムでもある。マスターノートにある通り、後にスティーヴ・ハウがピーター・バンクスと交代するが、その変更はアルバム発表の前後に起きている。結果として、アメリカ盤のジャケットではスティーヴ・ハウが登場する一方、実際の演奏には参加していないという、少しややこしい事情を持つ作品でもある。
また、トニー・コックスによるライブのオーケストラ・アレンジが加わっている点も特徴的だ。バンドの演奏に弦の厚みが重なり、当時のYesがただのギターロックではなく、オーケストラ的な発想を取り込み始めていたことがわかる。
内容と曲の印象
収録曲では、タイトル曲「Time and a Word」が中心的な存在だ。のちのYesが得意とする長尺組曲とは少し違い、楽曲のまとまりを重視した構成で、メロディとアレンジの両方を前に出している。「Sweet Dreams」も初期Yesを代表する曲として知られ、シングルとして切られたことからも、この時期のバンドがアルバム全体だけでなく単独曲としての印象も意識していたことがうかがえる。
実際に聴くと、演奏の芯はロックバンドそのものだが、そこにオーケストラが入ることで空間の広がりが出る。後年のYesにあるような複雑な変拍子の積み重ねよりも、曲の展開と音色の変化で聴かせる場面が目立つ。ジョン・アンダーソンの声はすでに明確に存在感があり、クリス・スクワイアのベースも前に出る。初期盤らしい、音の密度よりも曲の流れを追うタイプのアルバムという印象である。
同時代との関係
1970年という時期を考えると、イギリスではプログレッシブ・ロックが形を整えつつあったころだ。King Crimson、Genesis、Emerson, Lake & Palmer などと並べて語られることもあるが、Yesはその中でも、メロディの明瞭さとアンサンブルの推進力を重視する方向に進んでいく。この『Time And A Word』は、その後の『Fragile』や『Close to the Edge』のような完成形へ向かう前の、まだ試行の段階が見える作品といえる。
日本盤としてのポイント
1979年の日本盤という点では、オリジナルの1970年盤とは発売時期が異なる。レコードとしては、当時の日本の流通盤らしい安定した再発の一枚として扱える。作品の中身は1970年のアルバムそのままで、初期Yesの音像を日本で改めて聴ける仕様になっている。
まとめ
『Time And A Word』は、Yesがプログレッシブ・ロックの代表格へ進む途中に置かれた、初期ならではの作品だ。オーケストラを交えたアレンジ、シングル向きの楽曲、そして初期メンバー最後の記録という要素が重なっている。後年の大作群とは違うが、Yesというバンドの出発点と方向性を確認できるアルバムである。
トラックリスト
- A1 – No Opportunity Necessary, No Experience Needed
- A2 – Then
- A3 – Everydays
- A4 – Sweet Dreams
- B1 – The Prophet
- B2 – Clear Days
- B3 – Astral Traveller
- B4 – Time And A Word
関連動画
John Wetton – King’s Road 1972-1980 (1987)
John Wetton『King’s Road 1972-1980』について
『King’s Road 1972-1980』は、John Wetton名義で1987年にUKでリリースされたコンピレーション盤。内容は、King Crimson、UK、そしてソロ作品から選ばれた楽曲をまとめた編集盤で、1972年から1980年までの活動をひとつの流れとして追える構成になっている。Wettonのキャリアを見渡すときの入口としても、各バンドでの役割の違いを確認するための資料としても、位置づけがはっきりした一枚。
John Wettonというアーティスト
John Wettonはイングランド・ダービー出身のベーシスト、シンガー、ソングライター。ベースを弾きながら歌うスタイルで知られ、1970年代の英国ロック/プログレッシブ・ロックの重要な場面に何度も関わっている人物。King Crimsonでは1970年代前半と再結成期の両方に関わり、UKではバンドの中心メンバーとして存在感を示した。後年はAsiaの結成にもつながっていくが、この編集盤が拾っているのは、まさにその前段にあたる時期の仕事である。
収録内容の性格
この作品はスタジオ・アルバムではなく、既発曲を時系列の感覚で並べた編集盤。King Crimsonの楽曲、UK時代の楽曲、ソロ名義の楽曲がひとつにまとまっているため、Wettonの声とベースを軸にした音楽がどう変化していくかが見えやすい。バンドごとに編成や作曲の重心は違うが、どの曲でもWettonの低音とボーカルが前面に出る瞬間がある。
King Crimson期では、複雑な展開の中で歌とベースがどう噛み合うかが聞きどころになる。UKでは、より洗練されたアンサンブルの中で、歌唱の輪郭がはっきり出る場面が多い。ソロ作品では、バンドの制約から少し離れた書き方が見える構成で、同じ声でも受ける印象が変わる。
1987年の編集盤としての意味
1987年という時点でこうした選曲がまとめられたことは、Wettonの70年代後半までの仕事を振り返る意図が強いリリースだったと見てよさそうだ。ひとりのアーティストを、所属バンドごとではなく、歌い手・演奏家として横断的に捉えられるのがこの種のコンピレーションの利点。特にWettonの場合、バンドが変わっても声の質感とベースの押し出しがはっきりしているので、編集盤の形でも個性が通りやすい。
同時代の文脈
1970年代の英国プログレッシブ・ロックでは、演奏の複雑さと楽曲のまとまりの両方が重視されていた。その中でWettonは、技巧だけに寄らず、ロックとしての推進力を持った歌とベースで印象を残したタイプ。King CrimsonやUKの系譜をたどると、同時代のYes、Genesis、Emerson, Lake & Palmerと比較されることもあるが、Wettonの仕事はより硬質なロックの感触を持つ場面が目立つ。
盤としてのポイント
- 1987年UKリリースの編集盤
- 収録元はKing Crimson、UK、ソロ作品
- 1972年から1980年までの活動を横断する構成
- 初回盤はインナー・スリーブ付き
まとめ
『King’s Road 1972-1980』は、John Wettonの70年代の仕事を一望できるコンピレーション盤。King Crimsonでの緊張感、UKでのバンド・サウンド、ソロでの書き手としての側面が一枚に収まっていて、Wettonという名前を軸に英国ロックの一断面をたどれる内容になっている。歌、ベース、作曲、その3つの要素がどう重なっていたかを確認するための作品としても、わかりやすい。
トラックリスト
- A1 – Nothing To Lose (3:57)
- A2 – In The Dead Of Night (5:17)
- A3 – Baby Come Back (3:24)
- A4 – Caught In The Crossfire (5:02)
- A5 – Night After Night (5:10)
- B1 – Turn On The Radio (3:41)
- B2 – Rendezvous 6:02 (4:02)
- B3 – Book Of Saturday (2:54)
- B4 – Paper Talk (3:57)
- B5 – As Long As You Want Me Here (4:59)
- B6 – Cold Is The Night (5:23)
Pink Floyd – The Dark Side Of The Moon (1973)
Pink Floyd / The Dark Side Of The Moon (1973, UK)
Pink Floydの8作目のスタジオ・アルバム。1973年にロンドンのAbbey Road Studiosで録音され、UKのHarvestから発表された。バンドにとっては、それまでのサイケデリック色と実験性を保ちながら、より構成のはっきりした作品へ進んだ時期の到達点にあたる1枚だ。
この作品は、Pink Floydの代表作として広く知られている。音のつながり、効果音、会話の断片、曲間の切れ目の少なさが、アルバム全体をひとつの流れとしてまとめている。制作面では、ジャケットをHipgnosisが手がけ、内袋にポスターとステッカーが付く初期仕様もよく知られている。
作品の位置づけ
1960年代後半の実験的なPink Floydから、70年代の大きな成功へつながる中心作といえる。Syd Barrett在籍期のサイケデリックな側面を引き継ぎつつ、Roger Waters主導の構成意識が前面に出ている。のちの『Wish You Were Here』や『Animals』へ向かう流れの中でも、特に分かりやすく完成度の高い地点に置かれる作品だ。
同時代の英国ロックの中では、YesやGenesis、King Crimsonなどのプログレッシブ・ロック勢と並べて語られることが多い。ただし本作は、長大な組曲の技巧を見せるタイプというより、音響処理やテーマの統一感で聴かせる作りになっている。
収録曲と代表曲
アルバムを通してよく知られるのは、“Time”、“Money”、“Us and Them”、“Brain Damage”、“Eclipse”あたりだ。特に“Money”は、異色の7拍子のリフとレジスター音の導入で印象が強い。“Time”は時計の音から始まる構成がはっきりしていて、アルバムの中でも曲の輪郭が見えやすい。
“The Great Gig in the Sky”では、歌詞を持たないヴォーカル・パートが置かれていて、アルバム内の役割が明確だ。Barry St. John、Doris Troy、Lesley Duncan、Liza Strikeのバック・ヴォーカル参加も、クレジット上で細かくは目立たないが、聴こえ方には確かに影響している。
音と構成
演奏は、David Gilmourのギター、Roger Watersのベース、Richard Wrightの鍵盤、Nick Masonのドラムを軸にしている。シンセサイザーやテープ効果、環境音の使い方が曲のつなぎ目に組み込まれていて、各曲が単独で完結するというより、アルバム全体でひとつのまとまりを作る方向に寄っている。
冒頭と終盤の会話の断片も有名だ。Nick Masonの著書『Inside Out – A Personal History of Pink Floyd』では、収録された発言の出どころとして、Abbey RoadのドアマンGerry O’Driscollの「There is no dark side of the moon. Matter of fact, it’s all dark.」などが挙げられている。こうした断片が、作品のテーマ性を補強している。
オリジナルUK盤について
オリジナルのUK Harvest盤は、ラベルのプリズム図柄の仕様で見分けられることで知られる。初期には、青いプリズムがはっきりしたデザインが使われている。今回の盤は1973年リリースの初期仕様に近い位置づけで、後年の再発盤とはラベルや細部の表記が異なる。
初期のジャケットには、見開き内に2枚のポスターと2枚のステッカーが付属した。コピーによっては、黒いポリライニング内袋や、ゲートフォールドの開口部の貼り方、裏面表記の位置などに違いがある。こうした差異は、UKオリジナル期のプレスを追う際の注目点になっている。
まとめ
『The Dark Side Of The Moon』は、Pink Floydの実験性、構成力、スタジオ作品としての完成度が強く出たアルバムだ。サウンドの細部、曲間のつながり、効果音の配置まで含めて、1970年代ロックの中でも特に設計の意識が見えやすい1枚である。
ヒット曲としては“Money”がまず挙がるが、アルバム全体で聴くと、単曲の人気だけでは収まらないまとまりがある。UKオリジナル盤では、その完成形に近い初期プレスならではの細部も含めて、作品の歴史を感じやすい。
トラックリスト
- A1 – Speak To Me
- A2 – Breathe
- A3 – On The Run
- A4 – Time
- A5 – The Great Gig In The Sky
- B1 – Money
- B2 – Us And Them
- B3 – Any Colour You Like
- B4 – Brain Damage
- B5 – Eclipse
関連動画
Duncan Mackay – Chimera (1974)
Duncan Mackay『Chimera』について
『Chimera』は、イギリスのキーボーディスト、シンガー、アレンジャー、作曲家として知られる Duncan Mackay の作品で、オリジナルは1974年のリリース。プログレッシブ・ロックとシンフォニック・ロックの流れの中に置かれる1枚で、1970年代前半らしい、鍵盤を中心に組み立てるロック作品として捉えやすいアルバムだ。
Duncan Mackay は 1950年7月26日、英国ヨークシャー州リーズ生まれ。ソロ活動だけでなく、鍵盤奏者としての仕事でも知られる人物で、この時期の英国ロック周辺のキーボード主体のサウンドを語るうえで名前の挙がる存在のひとりだ。『Chimera』は、そのキャリアの中でも初期のソロ作として位置づけられる作品と見てよさそうだ。
作品の内容と聴きどころ
このアルバムは、ギターのリフや歌を前面に押し出すタイプというより、キーボードの音色変化と曲展開で聴かせる作りの印象が強い。オルガン、ピアノ、シンセ系の音が場面ごとに入れ替わり、ロックの土台の上に組曲的な展開を重ねる、70年代プログレの手触りがある。
曲ごとのテンポや密度の差がはっきりしていて、静かなパートから厚みのあるセクションへ進む流れが目立つ。シンフォニック・ロックの要素としては、単なる技巧の見せ場ではなく、楽曲の構成そのものを鍵盤が支えている点が特徴的だ。
また、歌ものとしての分かりやすさだけで押す作品というより、演奏とアレンジの変化を追う楽しさがあるタイプのアルバムだ。プログレッシブ・ロック周辺の作品に慣れた耳だと、曲の切り替わりや音の重ね方に注目しやすいだろう。
1974年当時の文脈
1974年は、英国プログレッシブ・ロックがひとつの成熟期を迎えていた時期でもある。長尺の構成、鍵盤主導の展開、クラシック寄りの和声感を持つロック作品が各地で作られていた流れの中で、『Chimera』もそうした時代の空気を共有している。
同時代の鍵盤主体のロック作品と並べると、派手な超大作というより、ソロ・アーティストとしての感覚を生かした、比較的コンパクトにまとめた印象の作品として見ることができる。プログレとシンフォニック・ロックの中間にある、70年代中盤らしい1枚だ。
2010年盤について
2010年盤は、180g重量盤、ゲートフォールド仕様で、オリジナルのアナログ・マスター・テープからのカット、ファーストプレスの再現をうたうリイシューだ。コレクション性の高い作りで、ジャケットやパッケージ面でも当時の雰囲気を意識した再発盤として扱われている。
オリジナル盤との違いとしては、内容そのものを別物として作り替えた盤ではなく、当時の作品を現代の仕様で再提示したもの、という見方が自然だ。音質やプレスの安定感、パッケージの保存性を含めて、再発盤ならではの利点があるタイプといえる。
まとめ
『Chimera』は、Duncan Mackay の初期ソロ作として、鍵盤を軸にした70年代プログレッシブ・ロック/シンフォニック・ロックの文脈で聴けるアルバムだ。派手なヒット曲で押す作品というより、曲の構成と音の積み上げで聴かせる内容。2010年の再発盤では、180g重量盤とゲートフォールド仕様で、オリジナル盤の雰囲気を意識した形で復刻されている。
トラックリスト
- A1 – Morpheus
- A2 – Twelve Tone Nostalgia
- B – Song For Witches
関連動画
Stardrive – Stardrive (1974)
Stardrive『Stardrive』(1974)
Stardriveは、1974年にUSで登場したセルフタイトル作。クレジット上は「Stardrive Featuring Robert Mason」とされていて、Robert Masonを前面に出した形の作品だ。メンバーにはMichael Brecker、Steve Gadd、Harvey Sarch、Jaime Austria、Howard Rego、Robert Masonが並ぶ。
編成を見るだけでも、当時のUSロックの枠を少し広げたような顔ぶれだ。電子的な要素、ロックの推進力、ファンク寄りのリズム感が同居する作りで、スタイル欄にあるFunk、Prog Rock、Ambientの要素がそのまま結びついている印象になる。
作品の輪郭
このアルバムは、1974年という時代らしい、バンド演奏の手触りとスタジオ的な音作りが同じ場所にある1枚として捉えやすい。フュージョン以後の感覚、プログレッシブ・ロックの構成意識、ファンクのリズム処理が交差するタイプの作品だ。電子音を前に出しながらも、演奏者の身体感覚が残るところがポイントになる。
Michael BreckerとSteve Gaddの参加も目を引く。Breckerはサックス奏者としての存在感で知られ、Gaddはタイトなドラミングで多くの録音に名を残した人物だ。この2人が加わることで、作品全体に演奏面の厚みが出ている構図になる。
同時代の文脈
1974年のUSでは、ロック、ファンク、電子音楽の境界が少しずつ曖昧になっていく時期だった。Stardriveもその流れの中に置くと見えやすい。プログレッシブ・ロックの組み立て感と、ファンクの反復するグルーヴ、さらにアンビエント的な広がりを持つ音像が重なるあたり、同時代の実験的なバンドや、クロスオーバー志向の作品群と並べて語られやすいタイプだ。
ただし、前面に出るのは派手なコンセプトよりも、演奏と音の質感のほうだ。ロックのバンド編成を軸にしながら、電子的な処理で空間を作るところにこの作品の特徴がある。
リリース情報
- アーティスト: Stardrive
- タイトル: Stardrive
- オリジナルリリース年: 1974年
- リリース国: US
- ジャンル: Electronic, Rock, Funk / Soul
- スタイル: Funk, Prog Rock, Ambient
まとめ
『Stardrive』は、1974年のUSで生まれた、ロックとファンクと電子音の接点にあるアルバムだ。Robert Masonを中心に据え、BreckerやGaddを含む演奏陣が参加している点も含め、当時のクロスオーバー感覚をそのまま映したような1枚として見えてくる。セルフタイトル盤らしく、まずはバンドの輪郭そのものを示す作品という位置づけになっている。
トラックリスト
- A1 – Funkascensions (5:28)
- A2 – Ballad I (2:23)
- A3 – Jupiterjump (7:40)
- B1 – Pulsar (5:47)
- B2 – Ballad II (2:36)
- B3 – Air Sauce (5:37)
- B4 – Ballad III (3:14)
- B5 – Journey (6:55)
関連動画
Egg – Seven Is A Jolly Good Time (1970)
Egg『Seven Is A Jolly Good Time』について
Eggは、1968年にロンドンで結成されたイングランドのプログレッシブ・ロック・バンドだ。オルガンのDave Stewart、ベース/ヴォーカルのMont Campbell、ドラムのClive Brooksという編成で始まり、後にカンタベリー系の流れの中で語られることの多いグループでもある。
『Seven Is A Jolly Good Time』は、そんなEggの初のアルバム『Egg』の再発盤にあたる作品だ。オリジナルは1970年リリースで、この盤は1985年の再発。タイトルは変わっているが、内容はデビュー作の再構成盤という位置づけになる。
作品の位置づけ
Eggにとっては、バンドの出発点を示す1枚。のちの『The Polite Force』や『The Civil Surface』に続く前段階であり、バンドの基本的な性格がここでかなり見えている。Soft Machineからの影響、変拍子への強い意識、オルガン主体の音作りといった要素が前面に出る作品だ。
同時代の英国プログレの中では、派手な大作志向というより、鍵盤トリオ的なアンサンブルの緊張感や、変則的な拍の扱いで個性を出しているタイプに近い。EggやDave Stewartの周辺は、Hatfield and the North、National Health、Soft Machine周辺の流れと一緒に語られることが多い。
再発盤としての内容
この1985年盤には、1969年8月発売の7インチ・シングルから2曲がボーナス収録されている。つまり、オリジナルLPに対して補足的な形で資料性を持たせた再発盤という見方ができる。
- オリジナルLP収録曲
- 1969年のシングル音源2曲を追加
また、このアルバムには少しややこしい版違いがある。最初期プレスには「Movement 3」が収録されていたが、まもなく差し替えられ、その後のLPではこの曲が外れた状態で流通した。クレジット文言も変更されており、初期盤ではストラヴィンスキー『春の祭典』の「Danse des Adolescents」に触れた説明が付いていたが、後の版では著作権上の理由で省略された旨に改められている。
なお、2024年のEsoteric Recordings盤では「Movement 3」が復活しているが、この1985年盤については、ボーナストラック付きの再発としてオリジナルLPを補完する内容になっている。
音の印象
実際に聴くと、まずオルガンの存在感が大きい。ギター主導ではなく、キーボードが曲の輪郭を作っていくタイプで、リズム隊も含めて細かく組み立てられている印象がある。メロディを大きく押し出すというより、リフや反復、拍の切り替わりで展開していく場面が目立つ。
全体としては、後年のカンタベリー系に通じる理知的な組み立てと、サイケデリック・ロック由来の色彩が同居している感じだ。派手な即効性より、曲の構造や音の配置を追っていく面白さがある作品といえる。
代表曲について
この盤はバンドの初期アルバム再発であり、一般的な意味での大きなヒット曲が前面にある作品ではない。ただ、バンドの初期像を知るうえでは重要な1枚で、のちのEggを追うときの基点になる。
まとめ
『Seven Is A Jolly Good Time』は、Eggのデビュー作『Egg』を1985年に別タイトルで再発した盤だ。変拍子、オルガン主体のアンサンブル、Soft Machine以後の英国プログレ的な感触がまとまっていて、バンドの出発点を確認できる内容になっている。初期盤に存在した「Movement 3」をめぐる版違いの話も、この作品の背景を知るうえで興味深い。
トラックリスト
- A1 – Bulb (0:09)
- A2 – While Growing My Hair (3:53)
- A3 – I Will Be Absorbed (5:10)
- A4 – Fugue In D. Minor (2:46)
- A5 – They Laughed When I Sat Down At The Piano (1:17)
- A6 – The Song Of McGillicudie The Pusillanimous (5:07)
- A7 – Boilk (1:00)
- A8 – You Are All Princes
- Symphonie N° 2
- B2 – Seven Is A Jolly Good Time
関連動画
- Egg – Bulb ____ UK Prog Rock
- Egg – While Growing My Hair ____ UK Prog Rock
- I Will Be Absorbed
- Egg – Fugue In D Minor ____ UK Classical Influenced Prog Rock
- They Laughed When I Sat Down At The Piano…
- Egg – The Song of McGillicudie The Pusillanimous – Keyboard led Prog rock
- Boilk
- Symphony No. 2 (Movement 1, Movement 2, Blane, Movement 4)
- Egg – Symphony No 2 – 3rd Movement (Cover)
The Nice – Attention! (1973)
The Nice『Attention!』について
The Niceは、キース・エマーソンを中心に活動した英国のロック・バンドだ。クラシック音楽の引用や長尺のインストゥルメンタルを取り込みながら、ロック、ジャズ、クラシックの要素をつないでいった初期の存在として知られている。のちのEmerson, Lake & Palmerにつながる流れを考えるうえでも、重要なグループだろう。
『Attention!』は1973年に日本で出た作品で、The Nice名義の初出タイトルとして扱われている。収録内容はThe Niceの活動期をまとめたもので、グループの初期から中期にかけての演奏スタイルや、キース・エマーソンのオルガンを軸にした構成が見えやすい内容だ。
バンドの位置づけ
The Niceは、もともとソウル歌手P.P. Arnoldのバック・バンドとして始まった。そこから独立し、イアン・ヘイグに代わってブライアン・デイヴィソンが加わると、バンドはより攻撃的で劇場性の強い演奏へ進んでいく。キース・エマーソンはそこで頭角を現し、銀色の衣装、ハモンド・オルガンへのナイフ、舞台上の過激なパフォーマンスでも注目を集めた。
当時のThe Niceは、英国内では存在感を強めた一方、アメリカでは大きなブレイクには至らなかった。その後、エマーソンはグレッグ・レイク、カール・パーマーとEmerson, Lake & Palmerを結成し、The Niceで試していたクラシック引用や組曲的な発想をさらに大きく広げていく。
作品の聴きどころ
この時期のThe Niceを語るうえで外せないのは、やはりキース・エマーソンの鍵盤だ。モーツァルト、バッハ、シベリウス、チャイコフスキーなどをロックの文脈に持ち込む手つきが、すでにこの段階ではっきりしている。単なる引用ではなく、ロック・バンドの編成に置き換えて押し切るところに、このバンドの個性がある。
また、The Niceは演奏の切り替えや曲の展開にも特徴がある。ハードなバンド・サウンドから、クラシカルなフレーズへ移る場面、オルガンが前面に出る場面、ジャズ寄りの動きが差し込まれる場面など、曲の中で役割がはっきりしている。スタジオ作品でもライブ感の強さが残るのが、このグループらしいところだ。
エピソードと代表曲
The Niceの代表的なエピソードとしてよく知られているのが、レナード・バーンスタインの「America」をめぐる一件だ。ロイヤル・アルバート・ホールで同曲を演奏し、アメリカ国旗のレプリカを燃やそうとしたことで物議を醸した。バーンスタイン本人も強く反応したとされ、このバンドが当時どれほど挑発的に受け止められていたかを示す出来事だ。
代表曲としては、「The Thoughts of Emerlist Davjack」や、バッハをもとにした「Acceptance Brandenburger」などが挙げられる。前者はデビュー期を象徴する題材で、後者はThe Niceがクラシックとロックの接続をより明確にした例として見られている。
日本盤としての特徴
この日本盤は帯とインサート付きで出ている。ランアウトはスタンプ刻印とのことだ。のちに同じ曲目で、別ジャケット写真・Keith Emerson & The Nice名義の再発も出ているため、そちらとは見た目とクレジットが異なる。
タイトル初出の1973年という時期は、The Nice本体の活動史を振り返る形で作品が置かれている年でもある。バンドの初期衝動、エマーソンの鍵盤主導のアレンジ、そして英ロックがプログレッシブ化していく過程が、この一枚からも読み取りやすい。
まとめ
『Attention!』は、The Niceの特徴をコンパクトに追える作品だ。P.P. Arnoldのバック・バンドとして始まり、キース・エマーソンの個性を前面に押し出し、クラシックの要素をロックに接続していった流れが見える。英プログレの初期史、そしてELP以前のエマーソンを知るうえで、位置づけのはっきりした一枚といえる。
トラックリスト
- A1 – Third Movement Pathetique
- A2 – The Thoughts Of Emerlist Davjack
- A3 – America (2nd Amendment)
- B1 – My Back Pages
- B2 – Country Pie / Brandenburg Concerto No. 6
- B3 – One Of Those People
Camel – Nude (1981)
Camel『Nude』について
Camelの『Nude』は、1981年に発表された8作目のスタジオ・アルバムで、同年のプログレッシブ・ロックの流れの中でも、物語性を強く意識した作品として知られている。Camelは1971年結成のイングリッシュ・プログレッシブ・ロック・バンドで、初期からギターとフルートを担うAndrew Latimerを軸に、緻密なアンサンブルとメロディの明確さを持つ作風を築いてきた。
この作品は、実在の日本兵として戦後も長くジャングルに残った横井庄一のエピソードを下敷きにしたコンセプト作として語られることが多い。孤立、帰還、記憶といった要素を、曲ごとの流れでたどる構成になっている点が大きい。
作品の位置づけ
Camelは1970年代前半にデビューし、『The Snow Goose』で代表的な評価を得たバンドだが、『Nude』はその後の流れにある一枚として、よりストーリー性のある組み立てが目立つ作品。1970年代後半のメンバー変動を経たのちのアルバムで、演奏面ではLatimerを中心に、Richard Sinclair、Mel Collins、Kit Watkins、Jan Schelhaas、Colin Bassらが参加している。バンドの持つ叙情性と、曲の展開を重視する姿勢が、そのままアルバム全体に出ている印象だ。
Camelの中では、派手なヒット曲で押すタイプの作品というより、アルバム全体の流れで聴かれる性格が強い。代表曲としては、序盤の「City Life」や、組曲的に展開する後半の流れが挙げられることが多い。
曲の流れと聴きどころ
『Nude』は短い曲をつないで物語を進める構成で、各曲が場面転換のように機能している。冒頭から、静かな導入とバンドらしいリフ、キーボードのレイヤーが順に重なっていく。派手に押し切るというより、場面ごとの温度を変えながら進む作りだ。
実際に聴くと、Latimerのギターは音数を詰め込みすぎず、旋律を前に出す場面が多い。Mel Collinsのサックスやフルートも、単なる色付けではなく、場面の輪郭をはっきりさせる役割を持っている。Camelらしい歌心は保ちながら、作品全体ではやや硬質な緊張感もある。
後半に向かうにつれて、断片的だった要素がまとまり、物語の終着点へ向かう流れになる。組曲的な進行が好きな人には、曲間のつながりそのものが聴きどころになりやすいアルバムだ。
同時代の文脈
1981年という時期のプログレは、70年代前半の大作志向とは少し違う形で残っていた。Camelもその中で、GenesisやYesのような大きな成功路線とは別に、演奏の丁寧さとコンセプトの明確さを軸に作品を積み重ねている。『Nude』は、その中でもストーリーを前面に出した一枚として位置づけやすい。
同系統の英国プログレを聴く人なら、叙情面ではGenesis、曲のまとまりではPink Floyd、アンサンブルの細やかさではYesやCaravan周辺を連想するかもしれない。ただしCamelは、そうした比較の中でも、ギターを中心にした旋律の運びと、過度に技巧を見せつけない進め方が特徴になっている。
1982年盤について
今回の盤は日本盤で、盤としてのリリースは1982年。作品そのものは1981年のオリジナル作として扱われる。日本盤では、輸入盤を追いかけて入手した人にとって、国内で手に取りやすい形になった一枚だったはずだ。内容はオリジナル作に基づくため、作品の骨格は1981年盤と同じとみてよい。
まとめ
『Nude』は、Camelの持つメロディ重視のプログレ感と、コンセプト・アルバムとしてのまとまりがはっきり出た作品だ。単曲での派手さより、アルバム全体で一つの物語を追う作り。Camelのディスコグラフィの中では、バンドの叙情性と構成力がよく見える位置にある一枚といえそうだ。
トラックリスト
- A1 – City Life
- A2 – Nude
- A3 – Drafted
- A4 – Docks
- A5 – Beached
- A6 – Landscapes
- B1 – Changing Places
- B2 – Pomp & Circumstance
- B3 – Please Come Home
- B4 – Reflections
- B5 – Captured
- B6 – The Homecoming
- B7 – Lies
- B8 – The Last Farewell: The Birthday Cake / Nude’s Return
関連動画
Cosmic Cathedral – Deep Water (2025)
Cosmic Cathedral『Deep Water』について
『Deep Water』は、Neal Morse、Chester Thompson、Phil Keaggy、Byron HouseによるCosmic Cathedralのデビュー作で、2025年にInsideOutMusicからリリースされた作品です。クレジット上でも分かる通り、プログレッシブ・ロックの文脈に立ちながら、演奏経験の長い4人が集まったプロジェクトとして位置づけられているアルバムです。
メンバーを見ただけでも、かなり顔ぶれの強い作品です。Neal MorseはTransatlanticなどで知られ、Chester ThompsonはGenesisやFrank Zappaとの活動で広く知られるドラマー。Phil KeaggyはGlass Harpでの活動を持ち、Byron HouseはRobert PlantやDolly Partonらのセッションでも知られるベーシストです。いずれも長いキャリアを持つプレイヤーで、その組み合わせ自体にまず注目が集まる内容です。
制作の背景
この作品は、Neal Morseが中心となって立ち上げたプロジェクトで、ジャム・セッションを土台に制作が進められたと案内されています。長年の音響パートナーであるJerry Guidrozがセッションの良い部分をまとめ、その後にMorseとバンドが楽曲や長尺曲へ発展させたという流れです。
案内文でも、収録曲の一部、特に「Time To Fly」はジャムから直接生まれたものだとされています。即興的にその場で音を出しながら進んだ制作で、歌詞の一部まで自然に出てきたという説明もあり、通常の綿密な作曲中心のアルバムとは少し違う手触りがうかがえます。
音の方向性
Neal Morse自身は、このアルバムを「prog meets yacht rock meets The Beatles」と表現しています。そこにジャズ・フュージョンの要素も加わる、という説明です。実際の案内文でも、Steely Danを思わせるグルーヴ感、Phil KeaggyとMorseの歌声が重なったときのビートルズ的な響き、さらに「New Revelation」セクションではStingのアルバムに入っていそうな流れ、という言及があります。
つまり、『Deep Water』は、プログレッシブ・ロックの大作志向を持ちながら、リズムの運びや歌ものとしての聞きやすさも意識した作品として紹介されています。演奏の密度だけで押し切るのではなく、ジャムの流れ、コーラス、曲の展開が組み合わさったアルバムという印象です。
この作品の位置づけ
Cosmic Cathedralはデビュー作であり、『Deep Water』はプロジェクトの初出作にあたります。Neal Morseにとっては、Transatlanticやソロ作で培ってきたプログレ文脈を、別の編成と制作方法で見せる場として読める内容です。
一方で、Chester Thompsonにとっても、本人のコメントどおり「参加した作品の中でも特に好きなプロジェクト」のひとつとして扱われているようです。GenesisやFrank Zappaの経歴を持つドラマーが、ここではメンバー間のコミュニケーションの良さを強調している点も、この作品の性格を示している部分です。
収録曲・代表曲について
案内文で具体的に触れられているのは「Time To Fly」と「New Revelation」セクションです。「Time To Fly」はジャム・セッションから直接生まれた曲として紹介され、「New Revelation」はジャムから発展した、別の色合いを持つパートとして説明されています。
現時点で、作品の中で特に代表曲として広く定着している曲名は見当たらず、アルバム全体の流れで聴かれるタイプの作品として受け取れます。デビュー作らしく、個別のシングルよりも、参加メンバーの相互作用と曲の展開そのものに重きが置かれている構成です。
クレジットとリリース情報
- アーティスト: Cosmic Cathedral
- タイトル: Deep Water
- リリース年: 2025年
- リリース元: InsideOutMusic
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock
- 参加メンバー: Chester Thompson, Neal Morse, Byron House, Phil Keaggy
著作権表記では、Neal Morse、Phil Keaggy、Byron House、Chester Thompsonそれぞれの出版クレジットが記されています。2025年作品として、プロジェクトの出発点を示す1枚になっているアルバムです。
まとめ
『Deep Water』は、キャリアの長い4人が集まり、ジャムを起点に楽曲を組み立てたCosmic Cathedralのデビュー作です。プログレッシブ・ロックを軸にしながら、グルーヴ、フュージョン、ポップ寄りのメロディ感まで含んだ作品として案内されています。Neal Morse、Chester Thompson、Phil Keaggy、Byron Houseという名前が並ぶだけで成立する企画性と、実際の制作現場の流れが結びついたアルバムと言えます。
トラックリスト
- A1 – The Heart Of Life (13:37)
- B1 – Time To Fly (6:54)
- B2 – I Won’t Make It (3:55)
- B3 – Walking In Daylight (8:56)
- Deep Water Suite (38:10)
関連動画
Birdsongs Of The Mesozoic – Faultline (1989)
Birdsongs Of The Mesozoic『Faultline』(1989)
Birdsongs Of The Mesozoicは、1980年に結成されたUSのバンドで、もともとはMission of BurmaのRoger MillerとMartin Swopeによるサイドプロジェクトとして始まったグループだ。Mission of Burma解散後は本格的な活動体になり、1980年代後半には編成を入れ替えながら活動を続けていく。『Faultline』は1989年にリリースされた作品で、バンドのその時点での到達点を示す一枚として位置づけられる。
作品の輪郭
この作品は、ElectronicとRockを軸にしながら、Alternative Rock、Future Jazz、Prog Rockの要素を含む。Birdsongs Of The Mesozoicらしい、ロックの編成感とアンサンブル主体の組み立てが前面に出るタイプの作品として捉えやすい。
メンバーにはMartin Swope、Ken Field、Steve Adams、Erik Lindgren、Michael Bierylo、Roger Miller、Rick Scottの名前が挙がっている。プロフィール上では、Roger Millerは1987年に脱退し、Ken Fieldが加わり、Martin SwopeもMichael Bieryloに交代しているため、『Faultline』はそうした編成変化の流れの中にある作品でもある。
バンドの文脈
出自をたどると、Birdsongs Of The MesozoicはMission of Burma周辺の流れから生まれたバンドで、パンクやオルタナティヴの系譜に接点を持ちながら、より器楽的で構成の細かい方向へ進んでいったグループとして知られている。こうした背景は、同時代のUSオルタナティヴ・ロックの中でも少し異なる位置づけにつながっている。
同時代の文脈で見ると、単純なバンド・サウンドというより、室内楽的な組み立てや変拍子、音色の切り替えを重視するタイプのロックに近い。比較対象として名前が挙がりやすいのは、実験性の強いロック・バンドや、ジャズ寄りの発想を持つインストゥルメンタル・グループあたりだろう。
聴きどころの見方
実際に聴くと、演奏の重心は歌よりもアンサンブルにある印象になりやすい。リズムの細かな動き、キーボードや管楽器的な音の置き方、曲ごとの構成の組み替えが耳に入りやすいタイプの作品だ。ロックの推進力と、ジャズや現代音楽に接するような整理されたフレーズ感が同居しているところが、このバンドらしい特徴として受け取られやすい。
代表曲や大きなヒット曲については、この作品に関して一般的に広く知られた一曲を前提に語られることはあまり多くない。アルバム全体の流れや曲間の構成を含めて聴かれることが多いタイプの一枚といえる。
まとめ
『Faultline』は、Birdsongs Of The MesozoicがMission of Burmaの延長線上から独立した表現へ進んでいく過程にある1989年作だ。USオルタナティヴの文脈にありながら、電子的な質感、ロックの編成感、ジャズやプログレッシヴ・ロックの構成意識を一枚に収めた作品として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – The True Wheelbase (2:59)
- A2 – They Walk Among Us (3:35)
- A3 – Coco Boudakian (5:47)
- A4 – I Don’t Need No Crystal Ball (3:20)
- A5 – Chariots Of Fire (2:46)
- B1 – Faultline (4:41)
- B2 – On The Street Where You Live (4:05)
- B3 – Maybe I Will (6:08)
- B4 – There Is No One (3:44)
- B5 – Slo-Boy (4:26)
関連動画
Machiavel – New Lines (1980)
Machiavel『New Lines』について
『New Lines』は、ベルギーのプログレッシブ・ロック・バンド、Machiavelが1980年に発表した作品。バンドは1970年代前半に結成され、初期はジェネシス系のクラシカルなロックとブリティッシュ・プログレの要素を土台にしながら、その後はより自分たちの輪郭をはっきりさせていったグループとして知られている。
この時期のMachiavelは、プログレ寄りの構成感を残しつつ、曲の運びをより整理した方向へ進んでいた段階。1980年という年を考えると、70年代的な長尺の組曲感よりも、ポップ・ロック寄りの分かりやすさを備えたプログレ、という位置づけで捉えやすい作品だと思う。
バンドの流れの中での位置
Machiavelは、1976年のデビュー作でクラシック・ロックとブリティッシュ・プログレの要素を示し、その後の『Jester』『Mechanical Moonbeams』で独自色を強めていったとされる。そこから1980年の『New Lines』へつながる流れを見ると、バンドが単に「プログレの延長」をやっていたのではなく、歌ものとしてのまとまりや楽曲単位の強さを意識していった段階にある。
この少し後の時期には、シングル「Fly」が大きなヒットになったことでも知られている。『New Lines』は、その直前にあたる時期の作品として、後のより広い層への接近を予感させる立ち位置にあると言えそうだ。
サウンドの印象
この作品のスタイルは、クレジット上ではPop RockとProg Rock。実際、Machiavelの持ち味であるプログレ的な展開やバンド演奏の密度を保ちながら、曲の入口は比較的すっと入ってくるタイプの作りになっている。派手に技巧を並べるというより、曲の中でリズムやメロディをどう運ぶかに重心がある印象。
当時のヨーロッパ圏のロックの文脈で見ると、英国プログレの影響を引きずりつつも、70年代末から80年代初頭にかけての新しい空気に合わせて、よりコンパクトな楽曲へ寄っていく動きがある。Machiavelもその流れの中にあり、同時代のプログレ・バンドの中では、過度に重厚へ振り切らず、歌とバンドの一体感を前に出すタイプとして聴ける。
代表曲や注目点
『New Lines』単体での大きなヒット曲については、今回の情報からは特定しづらい。ただ、Machiavel全体の代表曲としては「Fly」がよく挙がる。1980年のヒットで、当時のThe Policeを思わせる感触を取り入れた曲として知られている。『New Lines』は、その少し前の作品なので、バンドがこの路線へ向かう前後の空気を感じるうえで重要な一枚になっている。
ラインナップ
クレジットにはRoland De Greef、Mario Guccio、Thierry Plas、Christophe Pons、Albert Letecheur、Marc Ysaye、Hervé Borbé、Jean Jacques Roskam、Jean Paul Devaux、Kevin Coolsの名が並ぶ。Machiavelは時期ごとにメンバー変遷があるバンドだが、Mario Guccioの存在は特に大きく、後年のバンド・イメージを形づくる核のひとつとして語られている。
まとめ
『New Lines』は、Machiavelがプログレ・バンドとしての出自を保ちながら、より歌ものへ接近していく過程にある1980年作。ベルギー産のアートロック/プログレ・バンドという来歴を踏まえると、70年代の大仰な様式美だけではない、80年代へつながる整理されたバンド・サウンドの入口として見えてくる作品だ。
同じMachiavelの中でも、初期のプログレ色と、後年の広い層に届く路線のあいだをつなぐ位置づけの一枚。バンドの変化を追ううえで、ひとつの節目として捉えやすいレコードだと思う。
トラックリスト
- A1 – Vocando = Fly (3:31)
- A2 – Sobre El Mundo = Lying World (2:53)
- A3 – Relajar = Relax (3:08)
- A4 – Champaña En Amsterdam = Champagne In Amsterdam (4:05)
- A5 – Recuerdos = Memories (3:56)
- B1 – Apagalo = Turn Off (3:45)
- B2 – Una Vida = A Life (3:35)
- B3 – Playboy (3:35)
- B4 – Muy Claro = So Clear (3:25)
- B5 – Desvaneciendose = Fade Away (4:38)
関連動画
Andromeda – Seven Lonely Street (1990)
Andromeda「Seven Lonely Street」について
Andromedaは、1967年末から1970年初頭にかけて活動したロンドンの英国産ヘヴィ・サイケデリック・ロック・グループである。John Du Cannのギター、Mick Hawksworthのベースとボーカルを軸に、初期にはJohn Rhymer、のちにIan McLaneがドラムを担当した。「Seven Lonely Street」は、そのバンドの1969年9月発表のアルバムで、のちに再発された1990年盤も同じ内容を収めている。
作品の位置づけ
Andromedaにとってこのアルバムは、短い活動期間の中で残された唯一のフル・アルバムとして知られている。John Peelの関心をきっかけにラジオ・セッションやライブの機会を得て、マナー・オブ・マーキーでの出演など、当時のロンドンのサイケデリック・シーンの中で存在感を示したバンドだった。アルバム制作時には演奏とプロダクションの自由度が高かったとされ、バンドの音像をそのまま記録した作品という位置づけにある。
ただし、発売後の評価やライブでの手応えとは裏腹にセールスにはつながらず、バンドは1970年3月に解散している。したがって、この1枚はAndromedaの活動をまとめて確認できる中心作といえる。
内容と音の特徴
収録曲は、ヘヴィ・ブルース寄りの土台に、サイケデリックな展開やプログレッシブな構成を重ねたものが並ぶ。ギターの前に出る感じ、ベースとドラムの押し出し、曲ごとにテンポや空気を変える進行が目立つ。Rock、Blues、Acid Rock、Psychedelic Rock、Prog Rockという整理がされるのも納得できる内容で、同時代の英国サイケやヘヴィ・ロックの文脈で語られやすいアルバムである。
John Du Cannの後のキャリアを知っていると、この作品での演奏にもつながりが見える。Andromedaは、のちのハード寄りの英国ロックへ接続する前段階としても興味深い存在だろう。比較対象としては、同時代の英国サイケデリック・バンドや、よりヘヴィな方向へ進む初期のプログレ系ロック・グループが挙がりやすい。
収録曲について
代表曲という意味では、アルバム全体が一体になっているタイプで、単独で広く知られた大ヒット曲が前面に出る作品ではない。とはいえ、曲ごとの変化ははっきりしていて、長めの展開やリフ主体の部分、ブルース色の強い場面など、当時の英国ロックの手触りがそのまま入っている。
再発盤のポイント
1990年のUK盤は、オリジナルの1969年作を元にした再発盤である。初回分では、裏ジャケットの曲目表記に誤りがあり、2面目の曲順が別バンドFuzzy DuckのLPの曲名で記されていたというエピソードが残っている。加えて、この再発盤にはBarry Wintonによる短いヒストリー小冊子が付属し、番号入りのものもある。
また、スリーブはラミネートなしの自然な質感のカード仕様とされていて、再発盤としては資料性の高い作りになっている。
まとめ
「Seven Lonely Street」は、Andromedaという短命ながら重要な英国ヘヴィ・サイケ・バンドの姿を、当時の空気ごと切り取ったアルバムである。ラジオDJのJohn Peelに認められ、ロンドンのライブ・シーンで動きながら、最終的には1枚のアルバムに集約された作品。1969年の英国ロックの一断面として、そしてJohn Du Cann周辺のキャリアをたどるうえでも、確認しておきたいタイトルである。
トラックリスト
- A1 – Let’s All Watch The Sky Fall Down (4:03)
- A2 – Keep Out ‘Cos I’m Dying (5:41)
- A3 – Darkness Of Her Room (5:09)
- A4 – Go Your Way (2:58)
- B1 – Searchin’ For You (3:07)
- B2 – Seven Lonely Street (4:00)
- B3 – Sleep (3:25)
- B4 – See Into The Stars (7:13)
関連動画
Mouse – Lady Killer (1973)
Mouse『Lady Killer』について
Mouseは、1970年代前半の短い活動期間に残した英国のプログレッシブ・ロック・バンドで、ギタリストのRay Russellを中心にしたグループだ。『Lady Killer』は1973年に発表された作品で、Ray Russellにとっては、1972年のRunning Man、1975年のChopynへとつながる一連の“一回限り”のロック・プロジェクトの中では2作目にあたる。
編成は、Ray Russell、Alan “Al” Clare、Jeff Watts、Alan Rushtonの4人。ジャズ畑でも知られるRay Russellが、ギターを軸にロック寄りの表現へ振った時期の記録として見ると、位置づけがつかみやすい作品だ。
作品の性格
クレジット上はロック、スタイルはプログレッシブ・ロック。Mouseという名義のまとまった作品としては、70年代初頭の英国プログレ周辺の空気を背景にした1枚として扱える。バンド名単位での活動期間は長くないが、Ray Russellのキャリアの流れの中では、ジャズ・ギタリストがロック・バンドでどこまで行けるかを示す記録でもある。
同時代の文脈で見ると、演奏の前面にギターを置きつつ、曲展開や構成の変化を重視するタイプの英国プログレの系譜に入る。Ray Russellの名前からは、ジャズ・ロック寄りの感触を連想しやすいが、この作品はそうした経歴を踏まえたうえでのロック・バンド作品として受け取るのが自然だ。
盤のリリースについて
手元の盤はドイツ盤で、白ラベルに黒文字のシングル・スリーブ仕様。1980年代半ばごろのブートレグ再発盤として流通したものとされる。オリジナルのカラー・カバーを白黒で再現した体裁で、見た目の情報量は絞られているが、作品自体を手に取りやすくした再発形態のひとつといえる。
聴きどころとして見える点
実際の音像を細かく書くには盤そのものの確認が必要だが、Ray Russellの参加作としては、ギターの扱いが軸になるはずの作品だ。Alan Clareのヴォーカルとキーボード、Jeff Wattsのベース、Alan Rushtonのドラムという編成からも、歌と演奏の両方で組み立てるロック・アルバムの形が見える。派手なヒット曲で知られるタイプの盤ではなく、バンドの短い歴史とRay Russellの動き方をたどるうえでの一枚という印象が強い。
まとめ
『Lady Killer』は、Ray Russellを中心にしたMouseの1973年作として、英国プログレの流れとジャズ・ギタリストの感覚が交差する作品だ。バンドの活動期間は短いが、そのぶん時代の空気とメンバーの個性がそのまま残った記録として見やすい。オリジナルの71年初頭のロック・シーンを背景にしつつ、80年代半ばの再発盤ではその断片的な存在感が改めて流通した、そんな位置づけの一枚である。
トラックリスト
- A1 – Going Out Tonight
- A2 – You Don’t Know
- A3 – Electric Lady
- A4 – All The Fallen Teen-Angels
- A5 – Ashen Besher
- B1 – We Can Make It
- B2 – East Of The Sun
- B3 – It’s Happening To Me And You
- B4 – Sunday
- B5 – Just Came Back
関連動画
Marillion – Misplaced Childhood (1985)
Marillion『Misplaced Childhood』について
Marillionの『Misplaced Childhood』は、1985年に発表された3作目のスタジオ・アルバムだ。英国のプログレッシブ・ロック・バンドとして存在感を強めていた時期の作品で、いわゆる「Fish期」の代表作としてよく挙げられる。バンド名を知る人には、この作品でMarillionの輪郭がはっきりした、と感じる人も多いはずだ。
2017年盤として出回っているこのレコードは、オリジナルの1985年作を後年に再プレス、あるいは再発したものにあたる。作品そのものは1985年のものとして受け取るのが自然だ。
作品の位置づけ
Marillionは1979年にイングランドのアリスベリーで結成され、80年代前半から活動を続けてきた。特に初期は、アート・ロックやシアトリカルな要素を含む80年代プログレの代表格として語られることが多い。『Misplaced Childhood』は、その中でも商業面・評価面の両方で大きな到達点になったアルバムだ。
この時期のMarillionは、同時代のプログレ再興組として語られることが多く、GenesisやCamel、IQ、Pallas、Pendragonといった名前と並べて語られることもある。とはいえ、単なる「復古」ではなく、Fishの語り口を前面に出したドラマ性の強い楽曲構成が、バンド独自の色になっている。
アルバムの内容と聴きどころ
『Misplaced Childhood』は全10曲で構成され、通して聴くと一つの物語のように流れていく作りだ。特にA面冒頭の「Pseudo Silk Kimono」から「Kayleigh」へのつながりは、このアルバムの入り口としてよく知られている。
なかでも「Kayleigh」は、Marillionを代表する曲としてまず名前が挙がることが多い。シングルとしても広く知られ、バンドの認知を押し上げた一曲だ。続く「Lavender」も同時期の代表曲として語られることが多く、このアルバムが“曲単位でも覚えられている”作品であることを示している。
演奏面では、Steve Rotheryのギターが旋律を明確に引っぱり、Mark Kellyのキーボードが和声と装飾を支え、Pete TrewavasとIan Mosleyのリズムが場面転換を作る。Fishの歌は、メロディをなぞるだけでなく、台詞のように曲の場面を動かしていくタイプで、このアルバムではその特徴がかなりはっきり出ている。
曲の流れとアルバム構成
この作品は、単独のヒット曲だけでなく、曲間のつながりや組曲的な構成で聴かれることが多い。前後の曲が切れ目なく印象をつないでいくため、1曲ごとの輪郭とアルバム全体の流れが両方残るタイプの作りだ。
- 「Kayleigh」: 代表曲として最も知られる曲
- 「Lavender」: 80年代Marillionを象徴する人気曲のひとつ
- 「Heart of Lothian」: バンドの演奏力と展開の多さが出る曲
- 「Blind Curve」: 長尺で組曲的な性格が強い構成
2017年盤について
2017年盤は、オリジナルの1985年盤からかなり時間を置いて出た再発盤と考えられる。こうした再発では、オリジナル盤の入手性を補う形で流通することが多く、ジャケットや収録内容は基本的に作品本体をそのまま伝えるものだ。
再発盤を手にする場合、まず大事なのは音源のクレジットやカッティング情報を確認することだが、この作品については、まずアルバム本編そのものの価値が中心になる。1985年当時のプログレ・アルバムとしての存在感が、そのまま残るタイトルだ。
まとめ
『Misplaced Childhood』は、MarillionのFish期を代表する一枚であり、1980年代プログレの中でもよく話題に上る作品だ。代表曲「Kayleigh」を軸にしつつ、アルバム全体でひとつの流れを作る構成が印象に残る。バンドの演奏、Fishの語り口、メロディの運び方がまとまっていて、Marillionというバンドの特徴がかなり分かりやすく表れたアルバムといえる。
Twink – Think Pink (1970)
Twink『Think Pink』について
Twinkは、英国のドラマー/ソングライター/シンガー、John Charles Edward Alderの名で知られる人物である。The Fairies、The Pretty Things、Tomorrow、Pink Fairiesといった60〜70年代英国アンダーグラウンドの重要バンドを渡り歩いた人で、その活動の流れの中で1970年に発表されたのが『Think Pink』だ。タイトルの段階からして、いかにも当時のロンドン・アンダーグラウンドらしい手触りがある作品で、British psychedeliaの文脈で語られることが多い。
この盤は2020年の50周年リマスター盤で、オリジナルの1970年作を現在の形で聴ける再発盤にあたる。レコードとしてはカナダ盤で、収録内容はオリジナル・アルバムを軸にしながら、リマスターで音の輪郭を整えた形と見てよさそうだ。
作品の位置づけ
『Think Pink』は、Twinkのキャリアの中でも大きな節目にあたる1枚である。ドラマーとしての活動が先行していた人物が、自身の名義で色を出したアルバムとしても重要で、単なる伴奏者ではなく、当時のサイケデリック・ロックの空気を自分の作品としてまとめた印象が強い。
背景には、Ladbroke Grove周辺のアンダーグラウンド・シーン、そしてHawkwind周辺の人脈がある。制作面では友人のMick Farrenが関わり、Paul RudolphやSteve Peregrin Tookらが参加している。特にSteve Peregrin Tookは、T. Rexの初期を知る人にはおなじみの名前で、こうした人脈だけでも当時の英国ロックの交差点にある作品だと分かる。
サウンドの印象
実際に聴くと、派手なロック・バンドの完成形というより、セッション感や実験性が前に出る作りである。曲ごとに演奏の温度が変わり、直線的に盛り上がるというより、音の配置やリフの反復、声の置き方で引っ張る場面が多い。ドラマーの作品らしく、リズムの立ち上がりがはっきりしている一方で、曲の展開はきっちり整えすぎず、ラフさも残している。
プロト・パンクの荒さと、サイケデリック・ロックの浮遊感、その中間にあるような手触りもある。Pink FairiesやTomorrow、さらには同時代のHawkwind周辺を思わせる部分はあるが、Twink自身の音としてまとまっているのが面白いところだ。
同時代との関係
1970年という年は、英国ロックが60年代的なサイケデリアから次の段階へ移る時期で、重さを増すハードロックや、より長尺で実験的なプログレッシブ・ロックも強くなっていった。その中で『Think Pink』は、そうした大きな流れに飲み込まれながらも、地下シーンの感覚を保っている作品として聴ける。
比較の軸としては、The Pink Fairies、Tomorrow、初期のHawkwindあたりが浮かぶ。いずれも大きく売れた主流ロックとは別の場所で、自由度の高い演奏や反商業的な空気を持っていたバンドだ。『Think Pink』もその延長線上にあるが、Twink個人の名前が前に出るぶん、より私的な記録としての性格も感じさせる。
曲について
この作品はアルバム全体で流れを聴くタイプの内容で、特定の大ヒット曲で知られる盤ではない。とはいえ、タイトル曲「Think Pink」を中心に、アルバムの輪郭を覚えやすい構成になっている。曲名の並びや演奏の切り替わりからも、当時のサイケデリック・ロックらしい自由な組み立てが見て取れる。
2020年リマスター盤として
2020年の50周年リマスター盤は、オリジナル盤の時代性を保ちながら、音の見通しを整えた再発として位置づけられる。盤面表記やインサートの扱いなど、細部は再発盤らしい仕様になっている。オリジナルの空気をそのまま封じ込めたというより、現在の再生環境で聴きやすくした版、と見るのが自然だろう。
まとめ
『Think Pink』は、Twinkという人物が英国アンダーグラウンドの中心付近で積み上げてきた経験を、1970年時点でひとつの作品にしたアルバムである。ドラマー主導の作品でありながら、演奏の荒さ、サイケデリックな広がり、仲間たちの気配が同居している。英国サイケ、Ladbroke Grove周辺、Pink FairiesやHawkwindの流れに関心があると、作品の輪郭がつかみやすい1枚だ。
トラックリスト
- A1 – The Coming Of The One (5:30)
- A2 – Ten Thousand Words In A Cardboard Box (4:30)
- A3 – Dawn Of Magic (1:44)
- A4 – Tiptoe On The Highest Hill (5:19)
- A5 – Fluid (4:08)
- B1 – Mexican Grass War (5:30)
- B2 – Rock And Roll The Joint (2:32)
- B3 – Suicide (4:26)
- B4 – Three Little Piggies (3:15)
- B5 – The Sparrow Is A Sign (2:24)
関連動画
- Twink – Think Pink ( 1970 UK Prog Rock, Psychedelic Rock ) Full Album
- Twink “Think Pink” 1970 *The Coming Of The Other One*
- Twink “Think Pink” 1970 *Ten Thousand Words In A Cardboard Box*
- Twink “Think Pink” 1970 *Dawn Of Magic*
- Twink “Think Pink” 1970 *Tiptoe On The Highest Hill*
- Twink “Think Pink” 1970 *Fluid*
- Twink “Think Pink” 1970 *Mexican Grass War*
- Twink “Think Pink” 1970 *Rock An’ Roll The Joint*
- Twink “Think Pink” 1970 *Suicide*
- Twink “Think Pink” 1970 *Three Little Piggies*
Wigwam – Lucky Golden Stripes And Starpose (1976)
Wigwam『Lucky Golden Stripes And Starpose』(1976)
フィンランドのプログレッシブ・ロック・バンド、Wigwamが1976年に発表した作品。
アートロックとプログレッシブ・ロックの要素を軸にした、バンド後期の一枚として位置づけられるアルバムである。
Wigwamは1968年結成のフィンランドのバンドで、同国のロック史では重要な存在として知られている。
この時期の編成には、Jim Pembroke、Jukka Gustavson、Pekka Pohjola、Pekka Rechardt、Måns Groundstroem、Esa Kotilainen、Pave Maijanenら、フィンランドのロック/ジャズ系シーンでも名前の挙がるメンバーが並ぶ。
演奏面の情報だけ見ても、キーボード、ギター、ベース、ドラムに加えて複数の参加者が関わる構成で、バンドの作り込みの強さがうかがえる。
作品の位置づけ
1976年作ということで、Wigwamのキャリアの中でも70年代中盤の流れにあるアルバム。
前作までの流れを受けつつ、英国のVirginからも流通した作品で、フィンランド国内ではLove Records盤、国外ではVirgin盤として出回った。
同じタイトルでも、Love盤とVirgin盤ではカバーアートが異なる点が特徴になっている。
オリジナル盤の仕様としては、エンボス加工の単独ジャケットに、大きく折りたたまれた歌詞インサート/ポスターが付属する形。
Virgin盤は6面折りの歌詞ポスター、Love盤は歌詞と写真ディスコグラフィー入りのインナーが付く構成で、装丁面でも資料性のある一枚になっている。
サウンドの印象
内容は、ロックを基調にしながら、プログレッシブ・ロックらしい展開とアレンジの組み込みが目立つタイプ。
Wigwamは、同時代の英国プログレに接続しながらも、単純に英国勢の模倣に収まらないところが持ち味で、HawkwindやJethro Tullのような直線的な比較よりは、よりメロディと構成を詰めたバンドとして語られることが多い。
この作品でも、演奏の密度、キーボードの配置、曲の組み立てにその傾向が出ている。
実際に聴くと、派手さだけで押すよりも、各パートの受け渡しや曲中の切り替えで聴かせる場面が多い。
Jim Pembrokeのヴォーカルを軸にしながら、Pekka PohjolaやPekka Rechardt、Esa Kotilainenらの個性が曲の輪郭を作る流れ。
フィンランドのバンドらしい湿度のある空気感と、英国プログレ由来の構成感が同居している印象である。
時代背景と比較
1976年は、プログレッシブ・ロックが70年代前半のピークから少し形を変えていく時期。
その中でWigwamは、過度に大仰になりすぎず、アートロック寄りの整理された感覚と、プログレの長い流れを両立させている。
Genesis、Yes、King Crimsonといった英国勢の文脈に置かれやすい一方で、北欧圏ならではの落ち着いた組み立てが目立つグループでもある。
まとめ
『Lucky Golden Stripes And Starpose』は、Wigwamの70年代中盤を代表する一枚として見やすい作品。
ロック、アートロック、プログレッシブ・ロックの要素が、演奏力と構成力の両方でまとめられている。
盤の仕様も含めて、当時の英国流通盤とフィンランド盤の違いが残る、記録性の高いアルバムである。
トラックリスト
- A1 – Sane Again
- A2 – International Disaster
- A3 – Timedance
- A4 – Colossus
- A5 – Eddie And The Boys
- B1 – Lucky Golden Stripes And Starpose
- B2 – June Maybe Too Late
- B3 – Never Turn You In
- B4 – In A Nutshell
関連動画
Patto – Patto (1970)
Patto / Patto(1970年・UK)
Pattoのデビュー作にあたるPattoは、1970年にUKで登場した作品だ。もともとTimeboxに在籍していたMike Pattoを中心に、Ollie Halsall、Clive Griffiths、John Halseyらが合流してPattoへと改名した流れの中で生まれたアルバムで、バンド名そのものを掲げた最初の一枚という位置づけになる。
ジャンルとしてはRock、スタイルとしてはProg RockとHard Rockに分類されている。実際にバンドの成り立ちを見ても、60年代末の英国ロックから70年代初頭のプログレ/ハードロックへ接続する時期の作品として捉えやすい。派手な看板を立てるというより、演奏力を前に出して押していくタイプのバンド像が見える作品だ。
バンドの輪郭
Pattoは1970年にイングランドで結成された英国のプログレッシブ・ロック・バンドで、ヴォーカルのMike Pattoを核に、Timebox由来のメンバーを加えて始動した。ラインナップにはOllie Halsallのギターとヴィブラフォン、Clive Griffithsのベース、John Halseyのドラムが並ぶ。のちにBernie HollandやMichael McCarthyの名もクレジットに見えるが、このアルバム時点の基本線は、Patto、Halsall、Griffiths、Halseyの4人組として押さえておくのが自然だ。
作品の位置づけ
このPattoは、バンドの出発点をそのまま刻んだ一枚として見やすい。Timeboxから名前を変えて新しい形を打ち出した直後の記録であり、以後のPattoの方向性を示す入口になっている。UK産のプログレッシブ・ロックが拡張していく時期の中で、サイケデリック寄りの流れやハードなバンド演奏が交差するあたりに置けるアルバムだ。
演奏面の注目点
Pattoの名前を押し出した作品だけに、中心はMike Pattoの歌とOllie Halsallのプレイに集まりやすい。Halsallは後年まで語られることの多いギタリストで、ここでもバンドの色を作る重要な存在として機能している。リズム隊のまとまりも含めて、曲ごとの展開を追うより、バンド全体の推進力で聴かせるタイプのアルバムという印象が強い。
盤について
このレコードはUK盤として流通している。レーベル表記や盤面の仕様に違いがある個体も見られるため、コレクションとしてはプレス違いの確認がポイントになりやすい。とはいえ作品そのものは、1970年当時のPattoの出発点を示す内容として理解しておけばよさそうだ。
同時代の文脈
同じ時代のUKロックで言えば、プログレッシブ・ロックの構成感と、ハードロックの押し出しをまたぐ位置にいる。派手なコンセプト性よりも、演奏の密度やリフの手触り、ボーカルの存在感で勝負する流れが見える。そうした意味で、当時の英国ロックの中でも、バンドの身体感覚が前に出る作品として置ける。
Pattoというバンド名をそのまま冠した初期作として、まずはここから彼らの輪郭が立ち上がる。1970年のUKロックの空気を、演奏主体で切り取った一枚だ。
トラックリスト
- A1 – The Man (6:12)
- A2 – Hold Me Back (4:40)
- A3 – Time To Die (2:54)
- A4 – Red Glow (5:15)
- B1 – San Antone (3:07)
- B2 – Government Man (4:20)
- B3 – Money Bag (10:04)
- B4 – Sittin’ Back Easy (3:42)
関連動画
Patrice Witt – For D’js And Long Highways (1982)
Patrice Witt『For D’js And Long Highways』について
Patrice Wittはフランスのキーボーディスト/作曲家で、For D’js And Long Highwaysは1982年にフランスでリリースされた作品だ。ジャンルはElectronic、Jazz、Rock、スタイルはProg Rock、Ambient、Fusionに位置づけられている。ひとことで言えば、キーボードを軸にしたインストゥルメンタル寄りの作品として受け止めやすい1枚で、同時代のプログレッシブ・ロックやフュージョンの流れの中に置くと見通しがつきやすい。
作品の位置づけ
このアルバムは、Patrice Wittにとってソロ名義の初期作にあたる。ジャケットには「Vent D’Estのピアニストによる初のソロ・アルバム、Pierre Moerlen参加」といった内容のステッカーが付くものもあるようで、バンド活動とは別に、キーボード奏者としての個性を前面に出した作品として扱われていることがわかる。1982年という時期を考えると、プログレの語法とエレクトロニックな質感、ジャズ由来の演奏感覚が近い距離で並ぶ時代性も見えやすい。
音の輪郭
この作品の核にあるのは、キーボードのフレーズと音色の組み立てだろう。ロックの推進力、ジャズの流れ、エレクトロニックなレイヤーが重なり、派手な歌ものというよりは、演奏と構成の変化で聴かせるタイプの内容として捉えられる。フュージョンの手触りもあり、当時のフランス周辺のプログレ/インストゥルメンタル作品と並べて語られることがありそうだ。
同時代の比較対象としては、キーボード主導のプログレや、ジャズ・ロックの延長にある作品群が思い浮かぶ。Pierre Moerlenの参加がクレジットされる点からも、リズム面にしっかりした推進力が入る構図が見えてくる。こうした背景を踏まえると、単なるソロ・キーボード作品というより、バンド的な緊張感を持ったインスト作品として受け取られやすい。
リリース情報
- アーティスト: Patrice Witt
- タイトル: For D’js And Long Highways
- オリジナルリリース年: 1982年
- リリース国: フランス
- アーティストの国: フランス
- ジャンル: Electronic / Jazz / Rock
- スタイル: Prog Rock / Ambient / Fusion
まとめ
For D’js And Long Highwaysは、1982年のフランスで生まれた、キーボード奏者Patrice Wittのソロ作品だ。プログレ、アンビエント、フュージョンの要素が同居し、同時代のインストゥルメンタル作品の流れの中で見ていける内容。派手なヒット曲で押すというより、演奏の組み立てや音色の変化で輪郭を作るタイプのアルバムとして記憶されやすい1枚だ。
トラックリスト
- A1 – On The Edge Of Time (4:23)
- A2 – Just The Sound Of Your Name (4:50)
- A3 – Mandragore (3:20)
- A4 – Blind Eyes (3:56)
- A5 – Dreams Of Sun (5:40)
- B1 – Catfish (3:18)
- B2 – Crying Guitar Reggae (3:08)
- B3 – Gypsy Queen (2:50)
- B4 – You’re Just Seventeen (4:06)
- B5 – Exodus Space Flight To Cygnus X1 (5:22)
関連動画
King Crimson – Lizard (1970)
King Crimson「Lizard」について
King Crimsonの「Lizard」は、1970年に発表されたプログレッシブ・ロックの重要作です。もともと初期King Crimsonは、Robert Frippを中心に、Ian McDonald、Greg Lake、Michael Giles、Peter Sinfieldらが参加した編成で出発し、1969年のデビュー作で強い印象を残しました。その流れの中で作られた本作は、初期King Crimsonの中でも特に組曲的な構成が目立つ一枚です。
この日本盤は1971年リリースの初期国内盤で、見開きジャケット仕様。Rock Age obi付きのファースト・イシューで、インサートも封入されています。ライナーノーツの日付は「1971.3.11」となっています。
作品の位置づけ
「Lizard」は、King Crimsonの中期以降の重厚なサウンドへ直結するというより、初期の実験性と室内楽的な構成感が強く出た作品として位置づけられることが多いアルバムです。バンドの編成変化が続いていた時期の作であり、Robert Frippを軸にしながらも、楽曲ごとの色がはっきり分かれている印象があります。
同時代のプログレッシブ・ロックの文脈では、YesやGenesisのようなメロディ志向の展開とは別に、より不安定な和声やジャズ寄りの動き、劇的な構成を前面に出したタイプとして聴かれることが多い作品です。Keith Tippettの参加も、このアルバムの音の輪郭を形づくる要素になっています。
聴きどころ
本作の中心は、組曲的に展開する長尺曲「Lizard」になる。パートごとに場面が切り替わる構成で、ロックのリズム感だけで押し切るというより、ブラスやピアノを含むアレンジで進んでいくのが特徴です。曲単位でのまとまりより、全体を通してひとつの組曲として聴く感覚が強い作品といえます。
また、アルバム全体としては、硬質なギターの響きと、アンサンブルの混線する感じが同居しています。派手なヒット曲で押すタイプではなく、曲の流れや音の配置を追う楽しさがある一枚です。
日本盤としての魅力
この日本盤初期プレスは、当時の国内発売の仕様をそのまま味わえる点がまず目を引きます。見開きジャケットや帯、インサートを含めて、1970年代初頭の日本盤らしい作りです。オリジナル盤の年代は1970年ですが、こちらは1971年の国内流通盤として手元に置くタイプのリリースになります。
まとめ
「Lizard」は、King Crimsonの初期の実験精神を強く映したアルバムです。バンドの歴史の中では、編成の揺れが続く時期の作品でありながら、組曲構成、ジャズ的な要素、室内楽的な処理がひとつの形になっているのが面白いところです。初期プログレの中でも、かなり個性の出たタイトルとして語られる一枚です。
トラックリスト
- A1 – Cirkus (Including: Entry Of The Chameleons) (6:28)
- A2 – Indoor Games (5:38)
- A3 – Happy Family (4:15)
- A4 – Lady Of The Dancing Water (2:43)
- Lizard (22:24)
関連動画
Novela – Exciting Mini (Unreleased Takes and Limited Edition) (1984)
Novela『Exciting Mini (Unreleased Takes and Limited Edition)』
1984年に日本で登場した、Novelaのミニ・アルバム。大阪で結成された日本のプログレッシブ・ロック/ハード・ロック・バンドらしく、速い展開と鍵盤を前に出した編成がはっきりしている作品だ。タイトルどおり、未発表テイクを含む内容で、当時のバンドの演奏感をコンパクトに切り取った一枚になっている。
バンドの立ち位置
Novelaは1979年に大阪で結成されたバンドで、1986年まで活動した。もともとプログレッシブ・ハード・ロック・バンドSchéhérazadeのメンバー4人と、山水館の元メンバー2人から始まった経歴を持つ。日本の70年代末から80年代前半にかけてのプログレ/ハード・ロックの流れの中で、テクニカルな演奏と劇的な展開を持つバンドとして語られることが多い。
作品の内容
この盤はミニ・アルバムで、未発表テイクを収録しているのが大きな特徴。加えて、インサートとポスターが付属し、クリア・ヴィニール仕様という点もコレクター向けの要素として目を引く。1984年のオリジナル盤として見た場合、Novelaの活動期の中盤にあたる時期の記録という位置づけになる。
収録曲の細部まではここで触れられる情報が限られるが、バンドの持ち味であるギターの切り込み、キーボードの前面に出るアレンジ、そしてリズム隊の推進力は、この時代のNovelaをそのまま示す要素として受け取れる。日本のプログレッシブ・ロックが80年代に入ってもなお、演奏面の密度を保っていたことを感じさせる内容だ。
同時代の文脈
日本のプログレ/ハード・ロックでは、同時代にアースシェイカーや44マグナムのようなハード・ロック勢が存在し、プログレ方面ではアングラ系の色合いを持つバンドも少なくなかった。Novelaはその中でも、よりシンフォニックな鍵盤の使い方と、メタリックなギターを両立させたタイプとして捉えられることが多い。
クレジット
- アーティスト: Novela
- タイトル: Exciting Mini (Unreleased Takes and Limited Edition)
- オリジナル・リリース年: 1984年
- リリース国: 日本
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock, Hard Rock
Novelaのディスコグラフィーの中では、アルバム本編とは少し違う角度から当時のバンド像を見せる一枚。未発表テイクという性格もあり、作品としてのまとまりより、活動期の断片を記録した資料性が前に出る盤だ。
トラックリスト
- A1 – Metal Fantasy
- A2 – Limited Express
- B1 – Lunatic (Live Version)
- B2 – Harukana-Toki No Hate Ni (Live Version)
関連動画
Il Rovescio Della Medaglia – Contamination (1973)
Il Rovescio Della Medaglia『Contamination』
イタリアのプログレッシブ・ロック・バンド、Il Rovescio Della Medagliaが1973年に発表したアルバム。バンド初期のハード・ロック寄りの作風から一歩進み、キーボードを加えた編成でシンフォニックな方向へ寄った作品として知られている。イタリアン・プログレの中でも、演奏の密度と構成の切り替えがはっきりした一枚だ。
バンドの流れの中での位置づけ
Il Rovescio Della Medagliaは1970年ごろ、ローマで結成されたグループ。1971年の『La Bibbia』、1972年の『Io come io』では、硬質なギターを軸にしたサウンドにプログレ的な要素を少しずつ取り入れていた。そこから本作『Contamination』では、Franco Di Sabatinoのキーボードが加わり、音の中心がより多層的になっている。
この作品では、アルゼンチン出身の作曲家との協働も行われており、バンド単独のハードさよりも、組曲的な展開や管弦楽的な組み立てが前に出ている。グループにとっては、初期2作とは明確に方向の違う3作目という位置づけになっている。
1973年オリジナル盤の特徴
1973年のオリジナル・リリースは、イタリア国内盤として出たもの。バンドは当時、非常に大音量のライブでも知られており、その勢いがスタジオ作品にも通じている。ギター、ベース、ドラムにキーボードが重なることで、リフ主体の硬さと、展開の多い構成が並立している。
また、この時期のバンドは国外展開も意識していて、英語詞版も制作され、複数の国で発売されている。イタリアン・プログレの中でも、国内市場だけでなく海外流通を見据えた動きがあった作品として見られる一枚だ。
2015年盤について
2015年盤は、デジタル・リマスターを施した180グラム盤としてリリースされている。オリジナル盤の年代とは別に、再発盤として音質面の見直しが行われた形だ。アナログ盤としての重量盤仕様になっている点も、この再発の特徴になっている。
曲の印象と聴きどころ
本作は、派手な単発ヒットを前面に出すタイプではなく、アルバム全体の流れで聴かせる構成。キーボードが入ったことで、ギターの押し出しだけではなく、音の層そのものを動かす場面が増えている。硬めの演奏と、組曲的に場面が変わる展開の両方が目に入る内容だ。
イタリアン・プログレの同時代作品と比べると、演奏の力感を保ちながらも、よりシンフォニックな作りへ踏み込んだ位置にある。初期のハード・ロック色を残しつつ、より構成重視のアルバムへ移った転換点として捉えられる。
メンバー
- Franco Di Sabatino
- Gino Campoli
- Pino Ballarini
- Enzo Vita
- Stefano Urso
作品データ
- アーティスト: Il Rovescio Della Medaglia
- タイトル: Contamination
- オリジナル・リリース年: 1973年
- 盤のリリース年: 2015年
- リリース国: Italy
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock
トラックリスト
- A1 – Absent Minded
- A2 – Orphan Me
- A3 – Johann’s Rock
- A4 – Another Name Am I
- A5 – Crazy Baby
- A6 – Lost Myself Today
- B1 – Johann
- B2 – Scotched
- B3 – I Can Fly
- B4 – Contamination
- B5 – Isolation Ward
- B6 – For The Love Of Anna
- B7 – Bach Lives
関連動画
Harris Chalkitis – Marita (1975)
Harris Chalkitis「Marita」
「Marita」は、フランスで1975年にリリースされたHarris Chalkitisの作品。作曲、編曲、歌唱、マルチインストゥルメンタリストとして知られるHarris Chalkitisが、パリのBarclay Studiosで1975年4月から5月にかけて録音した一枚である。ジャズ、ロック、ファンク、ポップ、フォークの要素をまたぐ作風で、ジャズロック、ジャズファンク、プログレッシブ・ロック、ディスコの文脈でも語られる作品になっている。
作品の輪郭
Harris Chalkitisは1945年にカイロで生まれ、幼少期に家族とともにギリシャへ移った人物。作曲家、オーケストレーター、シンガー、マルチインストゥルメンタリストとして活動し、後年はQueen Samanthaのプロデュースでも知られるほか、Demis Roussos、Mireille Mathieu、Dalidaなどの作曲も手がけている。その経歴を踏まえると、「Marita」も単独の歌手作品というより、作編曲の手腕が前面に出るタイプのレコードとして位置づけやすい。
録音はパリのBarclay Studios。℗表記も1975年のBarclayで、フランス盤として同年の空気をそのまま閉じ込めた資料性のあるレコードといえる。ジャズ寄りのリズム感、ロックの推進力、ファンクのうねり、そして当時のポップ/ディスコの感触が並ぶところに、この時代のヨーロッパ制作らしい混ざり方が見える。
サウンドの印象
この作品のポイントは、ジャンルの切り替えがはっきりしていること。ジャズ・ロックやジャズ・ファンクの文脈では演奏の密度が前に出やすく、プログレッシブ・ロックの要素では展開の組み立てが目立つ。そこにディスコ的なビート感や、ポップ、フォーク、ワールド・ミュージックの要素が重なっているため、単一の型に収まらない作りになっている。
実際に聴くと、歌ものとしての輪郭と、編曲の細かい動きの両方が見えやすいタイプの作品になりそうだ。メロディを追いながらも、伴奏のリズムや管弦の配置に耳が向く盤だろう、という印象である。
時代背景とつながり
1975年という年は、ヨーロッパのポップスやフュージョン、ディスコ前夜のサウンドが交差していた時期。フランス制作のレコードとして見ると、シャンソン的な歌心と、当時の国際的なソウル/ファンク感覚の接点にある作品とも捉えやすい。Harris Chalkitisの後年のプロデュースワークや大衆歌謡への関わりを考えても、この時期の仕事は彼の幅広い作曲・編曲感覚を示す一枚といえる。
代表曲やヒット曲として広く知られる定番曲の情報は見当たらないが、制作年、録音場所、参加した音楽的文脈をたどると、70年代フランス盤の中でも作り手の個性が出る作品として見ていける。
盤について
この盤は1975年のフランス盤。ラベルにはMade in Franceの表記があり、当時のBarclay系プレスとして出回ったものだとわかる。プレスリングの仕様も1975年のフランス国内プレスに特徴的なものとされている。
Harris Chalkitisのキャリアを追ううえで、「Marita」は、作曲家・編曲家としての感覚と、当時のフランス録音の空気が重なる一枚として押さえておきたい作品である。
トラックリスト
- A1 – Marita (3:45)
- A2 – Funny She Loves Me (2:18)
- A3 – Right On Moving (2:49)
- A4 – Always On My Mind (2:37)
- A5 – Without You (4:15)
- B1 – Introduction Moog (0:59)
- B2 – Glory Of A Love Song (3:25)
- B3 – Morning Sunshine (2:47)
- B4 – New York City (3:47)
- B5 – With A Smile (2:35)
- B6 – Let Me Go My Way (2:42)