David J – Etiquette Of Violence (1983)

David J『Etiquette Of Violence』について
『Etiquette Of Violence』は、UKのミュージシャン、David Jによる1983年の作品。ロックを軸にしながら、オルタナティヴ・ロック、ニュー・ウェイヴ、実験的な要素を含む一枚として位置づけられる。David Jはイングランド・ノーサンプトン出身のベーシスト、David John Haskinsとして知られ、UKのポストパンク以降の文脈ともつながる存在。
サウンドの印象
この作品は、リズムの輪郭を保ちながらも、一般的なロックの直進性だけに寄らない作りになっている。ベースを土台にした推進力、ニュー・ウェイヴ寄りの乾いた質感、実験的な処理が重なる構成。録音の空気感も、過度に装飾的ではなく、音の配置や間が前に出るタイプの印象。
ギターやリズムの動きが単純に押し切るというより、細かなフレーズの積み重ねで展開していくタイプの作品として捉えやすい。ロックの形式の中に、80年代初頭らしいひねりが入っている感じ。
アーティストの中での位置づけ
David Jにとっては、ベーシストとしての背景がそのまま反映された作品のひとつと見られる。バンド的な感覚とソロ的な表現のあいだを行き来するような立ち位置で、彼の音楽性を確認しやすい時期の記録とも言えそうだ。
同時代のUKシーンでいうと、ポストパンクからニュー・ウェイヴへ向かう流れの中に置いて聴ける内容。Bauhaus周辺に通じる緊張感や、当時の実験的なロックの感触を思わせる部分もある。
まとめ
『Etiquette Of Violence』は、1983年のUKロックの空気を背景にしつつ、オルタナティヴ、ニュー・ウェイヴ、実験性を重ねた作品。David Jの音楽的な輪郭が、比較的わかりやすく見える一枚として捉えられる。
トラックリスト
- A1 I Hear Only Silence Now (3:13)
- A2 No One’s Sending Roses (2:35)
- A3 The Fugitive (2:34)
- A4 Betrayal (3:29)
- A5 Joe Orton’s Wedding (2:30)
- A6 The Promised Land (2:27)
- B1 ‘With The Indians Perminent’ (2:49)
- B2 Say Uncle (3:49)
- B3 Disease (2:43)
- B4 Roulette (2:56)
- B5 Saint Jacqué (3:01)
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Plat Du Jour – Plat Du Jour (1977)

Plat Du Jour『Plat Du Jour』について
Plat Du Jourは、フランス・ルーアン出身のグループで、1974年に結成され、1977年に活動を終えた。ジャズ、ロックを土台に、サイケデリック・ロック、アヴァンギャルド、実験音楽、プログレッシブ・ロックの要素を組み合わせたバンドとして知られている。
この『Plat Du Jour』は1977年の作品で、2016年にイタリアで盤としてリリースされたもの。6人編成で、François Ovide、Alain Potier、Jacques Staub、Olivier Pedron、Vincent Denis、Rodolphe Moulinが参加している。
サウンドの印象
音の中心には、ジャズ寄りの動きとロックの推進力があり、その上にサイケデリックな感触や変則的なフレーズが重なるタイプの作品といえる。リズムは一定の整い方だけに寄らず、場面ごとに組み替わるような進み方が見えやすい。録音の雰囲気も、時代相応の生々しさを残した質感で、演奏の細部が前に出る印象。
ギター、鍵盤、リズム隊の絡み方に、当時のフランスの実験的なロックやプログレの流れが感じられる構成。演奏の展開を追う楽しさがあり、即興性と作曲性のあいだを行き来するような作りになっている。
この作品の位置づけ
Plat Du Jourの活動時期は1974年から1977年までで、この作品はその終盤にあたる時期の記録。グループとしてのスタイルが、サイケデリック、プログレ、ジャズの要素をどう混ぜていたかを見せる内容として捉えやすい。
同時代の文脈では、フランスの実験ロックやジャズ・ロックの周辺に置いて見るとわかりやすい。演奏の組み立て方や曲の進め方には、欧州のプログレやアヴァンギャルド寄りの作品群と通じる部分がある。
まとめ
『Plat Du Jour』は、フランスの地方都市ルーアンから出てきたバンドが、1970年代半ばのロックとジャズの交差点で鳴らしていた音をまとめた作品。派手な装飾よりも、演奏の組み合わせや流れそのものに耳が向く一枚。
トラックリスト
- A1 5 & 11 (6:35)
- A2 Autoroute (4:45)
- A3 Zilbra (4:50)
- B1 Totem (8:05)
- B2 L’Homme (4:45)
- B3 Rock’n’ Speed (5:50)
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Spectre Folk – The Blackest Medicine (2007)

Spectre Folk『The Blackest Medicine』
Spectre Folkは、Magik MarkersのPete Nolanを中心に動いていたUSのユニットで、ノイズやサイケデリックな感触を含んだフォーク/エクスペリメンタルの流れに位置づけられるプロジェクトだ。『The Blackest Medicine』は2007年の作品で、同年にUSでリリースされている。
作品の輪郭
この作品は、フォークの枠に収まりきらない編成と音の組み立てが印象に残る一枚。アコースティックな要素を軸にしつつ、ノイズや歪みが前面に出る場面もあり、歌と音響の境目を行き来するような作りになっている。リズムはきっちり前へ進むというより、曲ごとに揺れ方を変えながら進行するタイプで、録音の空気感も含めて、まとまりすぎない手触りがある。
ジャンル表記としてはFolk, World, & Countryに置かれているが、実際の印象はExperimentalとFolkの交差点に近い。一般的なフォーク・ロックの流れというより、同時代のUSアンダーグラウンドで見られる、即興性やノイズ感を含んだ音作りを思わせる内容だ。
アーティストの位置づけ
Spectre Folkは、Pete Nolanによるソロのノイズ/ギター7インチから始まり、その後に複数のメンバーを迎えて展開していった。アーティスト紹介にある通り、Nolanは『Blackest Medicine』と『Compass, Blanket, Lantern, Mojo』の2枚分に相当する作品を先に出しており、『The Blackest Medicine』はその流れの中にある重要な一作として見える。
参加メンバーにはSteve Shelley、Aaron Mullan、Samara Lubelski、Mark Ibold、Brian Sullivan、Violet Ray Nolan、Eben Bull、Peter Meehanらの名前が並ぶ。こうした顔ぶれからも、単独のフォーク作品というより、複数の演奏者が関わるプロジェクトとしての性格がうかがえる。
音の印象
- フォークを土台にした構成
- ノイズや歪みを含む質感
- 整いすぎない録音の空気
- 曲によって揺れ幅のあるリズム感
2000年代USの実験的なフォークやノイズ寄りのサイケデリック作品を思わせる流れの中で、Spectre Folkはかなり個性的な位置にいる。『The Blackest Medicine』も、その輪郭がはっきり出ているタイトルとして受け取れそうだ。
関連情報はBandcampでも確認できる。
https://spectrefolk.bandcamp.com/
トラックリスト
- A1 The Blackest Medicine (5:14)
- A2 Like So Many Ships (4:13)
- A3 Space Station Zebra (3:07)
- A4 Brooklyn Tree Beats (8:26)
- B1 23 Sprague Street (6:35)
- B2 Highway Kind (2:43)
- B3 Radio Pika (6:58)
- B4 29 Palms (5:09)
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Scattered Order – Career Of The Silly Thing (1985)

Scattered Order「Career Of The Silly Thing」について
Scattered Orderは、1979年にシドニーで結成されたポストパンク・バンド。本作「Career Of The Silly Thing」は1985年の作品で、電子音とロックを行き来しながら、ニューウェイブ、アートロック、シンセポップ、実験性を横断する内容になっている。
作品の輪郭
バンドのプロフィールを踏まえると、Scattered Orderはオーストラリアのポストパンク/インダストリアルの流れの中で重要な役割を担ってきたグループ。欧米の先鋭的な音楽を独自に受け止めつつ、周辺のアーティストとともにコミュニティを形成していった経緯がある。本作も、その延長線上にある1枚として捉えやすい。
サウンド面では、電子的な質感とバンド演奏のぶつかり方が印象に残る。硬質なリズム、ざらついた音像、少し距離を置いた録音の空気感。整いすぎない構成の中に、反復や変則的な展開が入り込み、ニューウェイブの枠に収まりきらない手触りがある。
同時代とのつながり
1980年代半ばという時期を考えると、ポストパンクが細分化し、シンセポップやアートロック、実験音楽の要素が混ざり合っていった頃。本作もそうした流れの中で、ロックの骨格に電子音や異物感を差し込むタイプの作品として見えてくる。派手さよりも、音の配置や質感の変化で引っ張るタイプのアルバムという印象。
アーティストの中での位置づけ
Scattered Orderは長い活動の中で作風を広げてきたバンドだが、「Career Of The Silly Thing」は、初期のポストパンク的な緊張感と、実験的な志向が重なる時期の記録として置けそうな作品。バンドの変化と持続、その両方が見えやすい1枚。
クレジット
- アーティスト: Scattered Order
- タイトル: Career Of The Silly Thing
- オリジナルリリース年: 1985
- 盤のリリース年: 1986
- ジャンル: Electronic, Rock
- スタイル: New Wave, Art Rock, Synth-pop, Experimental
トラックリスト
- A1 1,000 Gene Autrys
- A2 Tost Rust Host
- A3 Cut You Up
- A4 The Galaxy Is Dead
- A5 Life On A Bed
- A6 No Mattresses In Heaven
- B1 Career Of The Silly Thing
- B2 Escape Via Cessnock
- B3 4 Or 5
- B4 Remember May 12th
- B5 The Little Eye
- B6 The Entire Combine/Capital Of Sweden
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Skullcap – Snakes Of Albuquerque (2025)

Skullcap『Snakes Of Albuquerque』
USのトリオ、Skullcapによるデビュー録音が『Snakes Of Albuquerque』。2025年の作品で、ジャズとロックを土台にしながら、フリー・インプロヴィゼーション、クラシカルな感触、変則的なリズム感を重ねた内容になっている。編成はパワー・チェロ・トリオという形で、名前の通りチェロを軸にしたアンサンブルの存在感が大きい作品といえる。
作品の輪郭
プロフィールにある通り、ここではロック、ジャズ、即興、そして作曲的な要素がひとつの流れの中で扱われている。メロディの分かりやすさを残しつつ、演奏の展開は読み切れない方向へ進みやすいタイプの音像で、実験性と聴きやすさのあいだを行き来する印象がある。タイトルにもある地名のイメージをそのまま音に置き換えたような、具体的な場面転換を含む作りを想像させる。
サウンドの特徴
この作品の要点は、リズムの組み立て方にありそうだ。拍をまっすぐに置くというより、ずらしたり折り返したりしながら進むタイプの演奏が想像される。そこにチェロ由来の厚みと、ロック寄りの推進力、ジャズ的なフレーズ感が重なる構図。質感としては、緻密さと生々しさが同居する方向で、録音も演奏の細部が見えやすいタイプに感じられる。
位置づけ
Skullcapにとっては初めての記録となる作品で、バンドの基礎線を示す一枚と見てよさそうだ。ジャズとロックの境界をまたぐ試みは珍しくないが、ここではチェロ・トリオという編成がその境界を少し独特な角度から見せている。同時代の実験的なプログレ、モーダルな感覚を含むインストゥルメンタル作品の流れの中でも、かなり演奏主体の立ち位置にある。
簡単な印象
- US発のジャズ/ロック作品
- フリー・インプロヴィゼーションと作曲性の併走
- 変則的で動きの多いリズム感
- チェロを軸にした厚みのあるアンサンブル
- 実験性のあるプログレ寄りの感触
『Snakes Of Albuquerque』は、ジャンルの枠をまたぎながらも、演奏の手触りで押していくタイプのアルバムとして捉えやすい。ジャズ、ロック、モーダルな感覚、そして即興の要素が、ひとつのトリオ編成の中でどう組み合わさるかに注目したい作品だ。
トラックリスト
- A1 Pine Trees Of Tennessee (5:35)
- A2 Rt. 40 (3:13)
- A3 Bear Out There (3:28)
- A4 Journey To The Sunset (3:22)
- A5 Snakes Of Albuquerque (4:28)
- B1 700 Miles (1:07)
- B2 Orange Sky (4:22)
- B3 Just Passin’ Thru (1:56)
- B4 Desert Turtles (6:20)
- B5 Ambrosia Burger (1:31)
Siglo Cero – Latinoamérica (1970)

Siglo Cero『Latinoamérica』
Siglo Ceroは、1969年にボゴタで結成されたコロンビアのプログレッシブ・ロック・バンドで、1970年に唯一のLPを残したグループとして知られている。その作品が『Latinoamérica』で、ジャズ、ロック、ラテンの要素を重ねた、実験性の強い内容になっている。
作品の位置づけ
バンドにとっては、短い活動の中で残された代表作という位置づけになる。プログ・ロック、ジャズ・ロック、サイケデリック・ロックの流れに、ラテン的なリズム感を持ち込んだ点が、この作品の輪郭をはっきりさせている。
サウンドの印象
演奏は、ギターや鍵盤を軸にしながらも、一定の型に収まりきらない動きがある。リズムは直線的になりすぎず、ところどころで揺れを含み、打楽器的な推進力も感じられる。録音は現代的に整った質感ではなく、時代相応のざらつきと空気感が残るタイプで、そこにサイケデリックな響きが重なっている。
曲によっては、ジャズ寄りのフレーズが前に出たり、ロックの骨格が強く出たりと、要素の切り替わりが見えやすい。まとまりよりも展開の変化が印象に残るタイプの作りで、70年代初頭の実験的なラテン・ロックの空気をそのまま閉じ込めたような盤面。
同時代の文脈
1970年前後は、ロックがジャズやラテン音楽と交差しながら、各地でプログレッシブな方向へ広がっていった時期でもある。『Latinoamérica』も、その流れの中で生まれた作品として見ると、地域性と当時の実験精神が重なった一枚として捉えやすい。
盤について
ここで触れているのは2018年盤で、作品そのもののオリジナルは1970年。オリジナルの時代感を持った音像を、後年のリリースで手に取れる形になっている。
- アーティスト: Siglo Cero
- タイトル: Latinoamérica
- オリジナル・リリース年: 1970年
- 盤のリリース年: 2018年
- 国: Portugal
- メンバー: Jaime “Patrón” Rodríguez, Roberto Fiorilli, Humberto Monroy
- ジャンル: Jazz / Rock / Latin
- スタイル: Experimental, Psychedelic Rock, Prog Rock, Jazz-Rock
トラックリスト
- A Viaje 1 (16:00)
- B Viaje 2 (16:00)
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Patrick Moraz – Future Memories II (1984)

Patrick Moraz『Future Memories II』について
『Future Memories II』は、スイス出身のキーボード奏者 Patrick Moraz による1984年の作品。プログレッシブ・ロックやジャズの文脈で知られる彼が、ソロ活動の中で電子音楽の側面を強く押し出した一枚として位置づけられる作品です。ジャンル表記は Electronic、スタイルは Dark Ambient、Abstract、Modern Classical、Experimental。タイトルからも、すでに音の設計図そのものに意識が向いている印象があります。
サウンドの印象
この作品は、リズムで押し切るタイプというより、音の質感や空間の作り方に重心があるように見えます。電子音のレイヤーが前面に出て、輪郭のはっきりしたフレーズと、ぼんやりとした残響が行き来するような構成が想像されます。暗めの空気感、即興的な断片、現代音楽寄りの響きが重なった、硬質で実験的な手触り。
録音の雰囲気も、華やかなポップス的な抜けよりは、内省的で閉じた空間を思わせる方向。電子楽器の冷たさと、クラシカルな構造感が同居するタイプの作品として受け取れます。
Patrick Morazという人物
Patrick Moraz は1948年生まれのスイス人キーボード奏者で、Mainhorse、Refugee、Yes での活動でも知られています。のちには Moody Blues にも加入しており、プログレッシブ・ロックの周辺で幅広く活動してきたミュージシャンです。そうした経歴を踏まえると、この『Future Memories II』も、ロックのバンド編成から離れたところで、鍵盤と電子音の可能性を掘り下げた作品として見ることができそうです。
時代背景と作品の位置
1984年という時期は、電子音楽がさまざまな方向へ分岐していた時代。シンセサイザーの普及で音作りの自由度が増し、アンビエントや実験音楽、現代音楽寄りのアプローチも、以前より広く展開されていました。その流れの中で、この作品もまた、ジャンルの境界をまたぎながら、暗い響きや抽象性を前面に出した一作として置けそうです。
Patrick Moraz のソロ作品群の中でも、電子的な探索を強く感じさせるタイトル。バンド時代のダイナミズムとは別の場所で、音そのものを組み立てていく姿勢が見える作品です。
トラックリスト
- A1 Heroic Fantasy (6:54)
- A2 Video Games (How Basic Can You Get) (4:07)
- A3 Satellite (6:39)
- A4 Navigators (7:18)
- B1 Flippers (4:17)
- B2 Pilot’s Games (6:54)
- B3 Chess (6:19)
- B4 After The Year After… (2:30)
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Cabaret Voltaire – The Voice Of America (1981)

Cabaret Voltaire「The Voice Of America」
Cabaret Voltaireの「The Voice Of America」は、シェフィールド出身のこのグループが、ニュー・ウェイヴ、インダストリアル、実験電子音楽の要素を前面に出していた時期の作品です。1980年作として知られる一枚で、のちのエレクトロニック・ミュージックの流れを先取りするような、硬質で攻撃的な音作りが印象に残ります。
作品の輪郭
Cabaret Voltaireは、もともとダダ的なパフォーマンス性と音響実験を出発点にしたグループです。この作品でも、その背景ははっきりしています。ビートは機械的で、反復が強く、ドラムやベースの動きも単純なロックの枠には収まりません。ノイズや加工音、テープ処理を思わせる質感が前に出ていて、録音全体にもざらついた空気がまとわりついています。
音の組み立ては、ダンスミュージックの推進力と、インダストリアルらしい冷たさのあいだを行き来する感じです。メロディを強く押し出すというより、リズムの圧力、音の断片、空間の詰まり具合で聴かせるタイプの作り。シンセやエフェクトの使い方にも、実験音楽寄りの感触があります。
Cabaret Voltaireの中での位置づけ
Cabaret Voltaireは1970年代から活動し、初期の実験性を保ちながら、のちにはポップ、ダンス、テクノ、ダブ、ハウスへと接続していきます。その流れの中で「The Voice Of America」は、初期のインダストリアル・サウンドを代表する時期の作品として位置づけられる一枚です。後年のより開いたダンス志向の作品と比べると、こちらはまだ緊張感の強い時代性が濃い印象です。
同時代のイギリスのアンダーグラウンドでは、ポスト・パンク以降の実験性と、機械的なビートへの関心が少しずつ広がっていました。その文脈の中で、この作品は、ロックの編成を使いながら電子音楽的な感覚を押し出していく流れの一例として捉えやすいです。
日本盤としての見どころ
こちらは日本リリースの盤。Cabaret Voltaireの初期重要作として、国内でどう受け止められていたかを含めて、当時のエレクトロニック/インダストリアルの空気を感じられるタイトルです。荒い質感と反復の強さ、そして録音の冷えた雰囲気が、この時期のCabaret Voltaireらしさをよく示しています。
- アーティスト: Cabaret Voltaire
- タイトル: The Voice Of America
- オリジナル作品年: 1980年
- リリース国: Japan
- ジャンル: Electronic
- スタイル: New Wave, Industrial, Experimental
初期Cabaret Voltaireの、音の切り貼り感と機械的な推進力がまとまって見える作品です。
トラックリスト
- A1 The Voice Of America / Damage Is Done
- A2 Partially Submerged
- A3 Kneel The Boss
- A4 Premonition
- B1 This Is Entertainment
- B2 If The Shadows Could March? /1974
- B3 Stay Out Of It
- B4 Obsession
- B5 News From Nowhere
- B6 Messages Received
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Pictures – Pictures (1983)

Pictures / Pictures(1983年)
Picturesは、UKのユニットPicturesによる同名作品。Freeezのサイド・プロジェクトとして位置づけられるグループで、メンバーはJohn RoccaとAndy Stennett。電子音楽を軸に、ジャズやロックの要素を重ねた作りになっている。
作品の輪郭
ジャンル表記としてはElectronic、Jazz、Rock、スタイルとしてはSynth-pop、Experimental、Prog Rock。こうした並びからも、シンセを前面に出した80年代初頭らしい質感と、型にはまりきらない構成志向が見えてくる。リズムは機械的な推進力を持ちながら、フレーズの運びにはジャズ寄りの柔らかさも感じられる組み合わせ。
録音の雰囲気は、過度に厚塗りではなく、音の輪郭を見せるタイプ。シンセの音色、リズムの反復、ギターや鍵盤の配置が、それぞれ独立しつつまとまっていく印象がある。派手さよりも、構成と音色の切り替えで聴かせるタイプの作品といえる。
時代背景と位置づけ
1983年という時期は、UKでシンセポップが広く浸透していた頃で、同時に実験性やプログレ的な組み立てを持つ作品もさまざまな形で残っていた。Picturesもその流れの中にあり、ダンス寄りの感覚と、アルバム単位での展開を意識した作りが同居している。
Freeez周辺の文脈を踏まえると、クラブ感覚や都会的なビートの延長線上にありながら、より自由な発想で音を組み立てたプロジェクトとして見えてくる。1980年代初頭のUKエレクトロニック作品の中でも、ジャンルの境目に置かれた一枚という印象。
ひとことで言うと
シンセポップの輪郭を持ちながら、ジャズやプログレの要素を差し込んだUK発の1983年作。整ったビートと実験的な構成が並ぶ、Picturesという名義の出発点として捉えやすい作品。
トラックリスト
- A1 Lullabye (4:12)
- A2 Nursery Rap (0:32)
- A3 Dancing Mind To Mind (5:00)
- A4 Skrahs (3:30)
- A5 Battle Of The Leaves (8:15)
- B1 Black Tiger (4:55)
- B2 Loneliness (5:02)
- B3 Child In A Sweet Shop (4:05)
- B4 Adventure Lost (4:40)
- B5 Voodoo (3:47)
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Larry Fast – Metropolitan Suite (1987)

Larry Fast『Metropolitan Suite』
1987年にカナダで登場した、Larry Fastによる電子音楽作品。シンセサイザーを軸に活動してきた作家らしく、ここでも電子音の質感そのものを前に出した内容として受け取れる。ジャンルはElectronic、スタイルはExperimentalとAmbient。タイトルからも、ひとつの都市的な景色を音で組み立てるような印象がある。
アーティストについて
Larry Fastは、シンセサイザー奏者・作曲家として知られるアメリカのミュージシャン。1975年から1987年にかけてのSynergy名義によるシンセ作品群でよく知られ、同時にPeter Gabriel、Foreigner、Nektar、Bonnie Tyler、Hall & Oatesなどの作品にも関わってきた。電子音楽の制作と、ポップ/ロック作品の現場、その両方にまたがる経歴が特徴的な人物だ。
『Metropolitan Suite』の位置づけ
1987年という時期は、FastにとってSynergy名義のシンセ作品群がひと区切りを迎える時期でもある。『Metropolitan Suite』は、その流れの中で出てきた作品として見ると、作家の電子音楽的な関心がまとまった形で表れているように感じられる。カナダでのリリースという点も含め、活動の広がりがうかがえる一枚。
サウンドの印象
この作品は、リズムを強く押し出すタイプというより、音の重なりや空気感で進むタイプとして捉えやすい。シンセの音色は輪郭がはっきりしつつ、空間に溶けるような響きも持ち、アンビエント寄りの静けさと実験的な構成が同居している印象。録音の雰囲気も、派手な装飾よりは、音そのものの配置や持続感を意識したものとして受け取れる。
同時代の文脈
1980年代後半の電子音楽では、シンセサイザーを使った作品がポップ寄りにも実験寄りにも広がっていた。『Metropolitan Suite』も、その時代の流れの中で、メロディーの分かりやすさより音響の組み立てを重視する方向に置かれる作品として見えてくる。AmbientやExperimentalの要素が前に出るあたりに、当時の電子音楽の幅広さが感じられる。