Holger Czukay – Full Circle (1982)
Holger Czukay『Full Circle』について
『Full Circle』は、Canの元ベーシストとして知られるHolger Czukayが1982年に発表した作品である。ジャンル表記ではElectronic、Rock、スタイルではDub、Electro、Experimental、Krautrockにまたがる内容とされていて、いわゆるロックのアルバムというより、編集、音響処理、断片的な構成を前面に出したソロ作品という位置づけが見えやすい。
Holger Czukayは、Karlheinz Stockhausenに学んだ経歴を持ち、Canでは演奏だけでなく録音やエンジニアリング面でも重要な役割を担った人物である。その後のソロ活動でも、ラジオ音源の使用やサンプリング的な手法で独自性を示してきたが、『Full Circle』もその延長線上にある作品として捉えられる。
作品の輪郭
このアルバムは、Holger Czukayによる「Radio painting」として紹介されている。クレジットには、彼自身が「Editing and processing」を手がけたとあり、録音された素材を組み替え、加工し、音の断片を配置していく作りが中心になっていることがうかがえる。R.P.S.は「Radio Pictures Series」の略とされている。
収録曲のうち、How Much、Where’s The Money、Trench Warfare、Twilight World は、ヨーロッパで先に12インチ・シングルとして発表されていた。アルバムではそれらの素材がまとまり、ひとつの作品として再構成されている。
1982年という位置づけ
1982年の時点で、Holger CzukayはすでにCanのメンバーとして、そしてソロの実験的な作家としても一定の位置を築いていた。『Full Circle』は、その活動の中でも、バンド演奏の延長というより、音響の編集や放送由来の素材を扱う方向をよりはっきり示す作品に見える。
同時代の文脈で見ると、クラウトロックの残響を引き継ぎながら、ダブや電子音楽、実験音楽の手法が交差する地点に置ける内容である。Can周辺の流れを思わせる一方で、一般的なロックの展開や歌を軸にする作りとは距離がある。
収録曲に触れながら
曲名だけでも、Where’s The Money や Trench Warfare のように、断片的な言葉を置いたタイトルが目につく。ここでも、メッセージを一直線に伝えるというより、語句、リズム、音色、編集の感触を並べる発想が前に出ている印象がある。
Twilight World のような曲名は、アルバム全体のラジオ断片的な構成と相性がよく、Holger Czukayが得意とした「素材の再配置」という作法を思わせる。聴感としては、演奏の巧さを見せる作品というより、音の切り貼りや距離感そのものを聴かせるタイプのアルバムとして受け取られやすいだろう。
日本盤としての『Full Circle』
今回の盤は日本で1982年に出たもの。価格表記は¥2,500となっている。作品自体はオリジナル年と同じ1982年のリリースで、後年の再発盤ではない。
Holger Czukayのソロ作品の中でも、『Full Circle』は、Can以後の実験性をそのまま持ち込みつつ、ラジオ音源や編集の感覚を強く打ち出した一枚として見てよさそうだ。クラウトロックの文脈、ダブ的な処理、電子音の扱いが交差する、彼らしい作品である。
トラックリスト
- A1 – How Much Are They? (4:48)
- A2 – Where’s The Money? (5:02)
- A3 – Full Circle R.P.S. (No. 7) (10:58)
- B1 – Mystery R.P.S. (No. 8) (8:47)
- B2 – Trench Warfare (6:45)
- B3 – Twilight World (4:20)
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Neuronium – Supranatural (1987)
Neuronium『Supranatural』(1987)
Neuroniumの『Supranatural』は、1987年にUKでリリースされた電子音楽作品だ。バルセロナを拠点に活動してきたNeuroniumにとっては、ミシェル・ウイゲンを中心とする体制が定着した時期のアルバムで、クレジット上は Neuronium 名義ながら、実質的にはウイゲンの意志が強く反映された一枚として位置づけられる。
Neuroniumというグループ
Neuroniumは1976年に、キーボード/シンセサイザーのMichel Huygen、キーボード/シンセサイザー/ギターのCarlos Guirao、マルチ楽器奏者のAlbert Giménezによって結成された。初期にはEMI-Harvestから『Quasar 2C361』(1977年)と『Vuelo Quimico / Chemical Flight』(1978年)を発表し、その後も編成を変えながら活動を継続している。
Huygenはこのプロジェクトの音楽を「psychotronic music」「cosmic electronic music」と表現しており、少なくともプロフィール上は、電子音響を中心に据えた宇宙的なイメージの作品群として整理できる。
『Supranatural』の位置づけ
本作は1986年12月から1987年3月にかけてバルセロナで録音され、1987年6月に最終ミックスが行われた。クレジットには「Issued under licence from Michael Huygen」とあり、Neuroniumという名称がMichel Huygenの登録商標であることも記されている。つまり、この時期のNeuroniumは、グループ名でありながらHuygenの主導性が強いプロジェクトとして見えてくる。
1980年代のNeuroniumは、初期メンバーの変動を経て、HuygenとSanti Picóの組み合わせが中心になっていく流れにある。『Supranatural』もその時代の延長線上にある作品として捉えやすい。
音の印象
ジャンル表記はElectronic、スタイルはElectro、Ambient。実際の音像も、その枠組みを外れない。シンセサイザーのレイヤーを軸に、リズムを強く前面へ出すというより、音の持続や空間の広がりで聴かせるタイプの作品として受け取れる。電子音楽としての構造がはっきりしていて、派手な展開や大きな歌メロを中心に置く作りではない。
同時代のヨーロッパの電子音楽、たとえばVangelisや、よりアンビエント寄りのシンセ作品を好む文脈と並べて語られやすいタイプでもある。実際、NeuroniumはVangelisとのコラボレーション作『A Separate Affair』の存在でも知られており、1980年代のスペイン発電子音楽の流れを考えるうえで外せないグループだ。
この時期のNeuroniumらしさ
『Supranatural』では、バンドというよりも、Huygenの制作ユニットとしてのNeuroniumが前に出ている。録音地がバルセロナであること、そしてUK盤として出ていることからも、ローカルな制作環境と国際流通の両方を持った作品として見てよさそうだ。
Neuroniumのディスコグラフィーの中では、初期のEMI-Harvest期とはまた違う、より後年の成熟した電子音響の局面に置ける一枚。1980年代半ばのNeuroniumを追うなら、その流れを確認できる作品として重要な位置にある。
補足
- 録音: 1986年12月〜1987年3月、スペイン・バルセロナ
- 最終ミックス: 1987年6月
- リリース: 1987年、UK盤
- 名義: Neuronium
- 主な表記: Electronic / Electro / Ambient
派手なヒット曲で押す作品ではなく、シンセサイザー主体の構築感をじっくり聴かせるアルバムだといえる。
トラックリスト
- A1 – When The Goblins Invade Madrid (3:35)
- A2 – Digitron (3:55)
- A3 – Priorite Absolue (6:43)
- A4 – Europe Is Europe (5:44)
- B – Sundown At Tanah Lot (17:30)
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Three Angry Poles – Motorcycle Maniac (1986)
Three Angry Poles / Motorcycle Maniac(1986)
Three Angry Polesの「Motorcycle Maniac」は、1986年にベルギーで出た作品です。メンバーはLuc Van Acker、Jean-Marc Lederman、Didier Moensの3人。Electronicを軸に、EBMとElectroの感触を持つ、80年代中盤のベルギーらしい一枚として見ておきたい作品です。
作品の輪郭
タイトルからも分かる通り、バイクや速度感を連想させる語感を持つ作品ですが、内容は単なる勢い頼みではなく、当時の欧州エレクトロ/EBMの文脈にある、機械的なリズムと直線的なビートが前面に出た作りです。ベルギーはこの時期、Front 242をはじめとするEBMの重要な産地として知られていて、この作品もその空気の中に置くと見えやすいです。
Luc Van Ackerはベルギーのエレクトロ/インダストリアル周辺で知られる人物で、Jean-Marc Ledermanも同じく80年代ベルギーのシーンで存在感を持つミュージシャンです。3人の名前が並ぶだけでも、当時のローカルな実験性とクラブ向きの硬さが同居するイメージが立ちます。
音の特徴
この時代のEBMらしく、打ち込みの反復、乾いたシンセ音、ベースの押し出しが核になっているタイプです。メロディを大きく歌い上げるというより、リズムの反復と音色の質感で引っ張る方向性。Electroの要素もあるので、完全に無機質へ寄り切るというより、フックのあるビート感が残るのもポイントです。
聴感としては、ロックのバンド編成よりも、クラブやダンスフロアを意識した設計に近い印象を持ちやすい作品です。ギターの主張で押すのではなく、シーケンスとドラムマシンの推進力で前へ進む感じ。80年代半ばのベルギー製ダンス・エレクトロの空気がそのまま残っているような手触りです。
同時代の文脈
1986年という時期は、EBMがひとつの形式として固まりつつあった頃です。Front 242、The Neon Judgement、Nitzer Ebbのような名前が思い浮かぶ時代で、Three Angry Polesもその周辺にある作品として整理しやすいです。とはいえ、彼らは大きなアルバム作品で知られるというより、ベルギーのシーンの中で短く鋭い存在感を残すタイプのプロジェクトとして見られます。
その意味では、「Motorcycle Maniac」は、当時のEBM/Electroの最前線にある、ベルギー産の1枚として位置づけられる作品です。クラブ、シンセ、機械的反復というキーワードでつながる時代性がはっきりしています。
リリース時のポイント
この作品には「Dedicated to the spirit of Ecstasy.」というリリースノートが付いています。スピードや移動のイメージを呼び込む一文で、タイトルとあわせて作品全体のイメージを補強している形です。レコードとしては1986年当時の空気をそのまま抱えた初出作品として見るのが自然です。
まとめ
「Motorcycle Maniac」は、1986年のベルギー産Electronic作品として、EBMとElectroの交差点に置きやすい一枚です。Three Angry Polesという名義のもと、Luc Van Acker、Jean-Marc Lederman、Didier Moensの3人が、80年代中盤の機械的なダンス音楽の感覚を凝縮した作品、と捉えられます。
ベルギーEBMの文脈に触れるときに、Front 242などと並べて見たくなるタイプのタイトルです。
トラックリスト
- A – Motorcycle Maniac (4:43)
- B1 – It’s All Over (3:59)
- B2 – 5 A.M. (3:51)
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Logic System – Logic (1981)
Logic System『Logic』(1981)について
Logic Systemは、細野晴臣らとの仕事でも知られるシンセサイザー・プログラマー、松武秀樹のプロジェクトである。1981年に発表されたこの『Logic』は、その名義での初期作のひとつで、国産シンセ・ポップ/エレクトロの流れの中に置ける作品だ。
松武秀樹は、1970年代に富田勲のアシスタントとして活動を始め、その後はYMOのシーケンス・プログラミングやモジュラー・シンセのオペレーションで広く知られるようになった人物。YMOの正式メンバーではないが、周辺の制作現場では重要な役割を担ってきた。Logic Systemは、そうしたバックグラウンドがそのまま前面に出たプロジェクトとして捉えやすい。
作品の位置づけ
『Logic』は、松武秀樹が手がけたシーケンサー主導の音作りを、ソロ・プロジェクトの形でまとめた初期の一枚。1980年代前半の日本では、YMO以後のテクノポップ、シンセポップ、エレクトロが広がっていた時期で、その中でこの作品も同時代の空気を共有している。
同じ時代の国産エレクトロ作品と比べると、演奏の手触りよりも機械的な精度やプログラミングの組み立てに目が向くタイプの作品として語られることが多い。松武秀樹の経歴を踏まえると、単なる“YMO周辺”ではなく、シーケンスと音色設計そのものを主役に置いた記録として見えてくる。
音の印象
この作品は、シンセの音色と反復するリズムパターンが軸になっている。細かく刻まれるシーケンス、電子音のレイヤー、メロディの処理が前に出ていて、当時の日本の電子音楽らしい整理された構成が感じられる。派手に押し切るというより、パターンの積み重ねで進む作り。
実際に聴くと、音の配置がかなり明快で、各パートの役割が見えやすい。松武秀樹がプログラマーとして培った感覚が、そのまま作曲とアレンジに反映されている印象がある。
同時代の文脈
1981年という時期は、YMOの影響が国内外に広がり、電子音楽がポップスの現場にも深く入り込んだタイミングでもある。『Logic』は、その流れの中で、シンセサイザーの操作技術やシーケンス技法を前面に出した作品として受け取れる。
比較対象としては、YMO周辺の作品や、当時の日本のテクノポップ、さらに同時代のエレクトロ寄りの制作物が挙がることが多い。とはいえ、Logic Systemは“バンド”というより、松武秀樹の制作思想をそのまま提示するプロジェクトという性格が強い。
リリース情報と現物の特徴
日本盤として1981年に出たオリジナル作品で、帯とインサート付きでリリースされた記録がある。日本オリジナル盤らしい仕様で、当時の国内流通盤としての体裁が整っている。
まとめ
『Logic』は、松武秀樹がYMOの周辺で培ったシーケンサー/シンセの技術を、Logic System名義でまとめた初期の重要作のひとつ。1981年の日本の電子音楽がどこに向かっていたかを、制作の仕組みごと伝える一枚として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – Intro (0:40)
- A2 – Unit (4:50)
- A3 – Domino Dance (4:15)
- A4 – (天変地異) Convulsion Of Nature (3:00)
- A5 – XY? (4:15)
- B1 – Talk Back (4:15)
- B2 – Clash (Chinjyu Of Sun) (4:15)
- B3 – Person To Person (4:15)
- B4 – Logic (4:15)
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Severed Heads – Dead Eyes Opened (1984)
Severed Heads「Dead Eyes Opened」について
Severed Headsは、1979年にシドニーで始まったオーストラリアのグループだ。初期はテープループやノイズ寄りの電子音を使ったインダストリアル色の強い作品で知られ、その後は4/4のリズムやメロディ、ドラムマシンを取り入れて、エレクトロやシンセポップに接近していく流れがある。
「Dead Eyes Opened」は、その転換期を代表する曲として扱われることが多い。1984年にシングルとして広く知られるようになり、Severed Headsがダンス・ミュージック寄りの文脈でも語られるきっかけになった楽曲だ。
作品の位置づけ
この曲は、1983年のカセット作品「Since The Accident」に収められた“つなぎ”のような短い楽曲から発展したものだという。もともとはC-60の空きを埋めるために最後に加えた曲だったが、シドニーの非商業ラジオ局でよく流れ、12インチ・シングル化が求められた。
つまり、バンドの中では偶然性の強い入口から、代表曲の一つへ上がっていった作品という見方ができる。Severed Headsの、実験音楽からポップ寄りの構成へ移っていく流れを示す曲でもある。
曲の内容と録音
12インチ版では、Tom EllardとプロデューサーのPatrick GibsonがM SquaredスタジオでマルチトラックをEQやディレイ処理に通して仕上げたとされる。リズムはTR-808、シンセはSH-1、上昇するような音やストリングスにはKORG PolySix、ソロにはCasiotoneをオクターバー・ペダル経由で使っている。
曲の語りは、BBCラジオ番組「Scales of Justice」でEdgar Lustgartenが読んだ「Death on the Crumbles (1924)」の音源を使ったものだ。実際の1924年の二重殺人事件に触れる内容で、犯罪ルポの声と機械的なビートがぶつかる構成になっている。
実際に聴くと、テンポは一定で、打ち込みの輪郭がはっきりしている。声の引用が前に出る一方で、低音のリズムと電子音が曲を引っ張るので、ポップな耳当たりと不穏さが同じ曲の中に並ぶタイプだ。
B面の収録曲
この盤のB面には、Tom Ellardによるソロ曲「Bullet」と「Mount」が収められている。どちらも1982年にTerse Tapesで録音されたものだという。A面の「Dead Eyes Opened」に比べると、より個人的な電子音楽のスケッチとして聴ける構成だ。
1984年当時の文脈
Severed Headsは、同時代のインダストリアルやエレクトロの流れの中でも、Throbbing Gristleのような初期実験性と、後のEBMやシンセポップの整ったビート感のあいだに位置するグループとして見られやすい。NettwerkやVolitionといったレーベル周辺で活動し、北米でも流通していた点も含めて、地下的な電子音楽が少し広い層に届いていく時期の作品だ。
Severed Headsの中では、「Dead Eyes Opened」は初期の実験色と、後のダンス志向が交差する代表例といえる。のちの活動を知っていると、ここで既に“曲として機能する電子音楽”へかなり踏み込んでいるのがわかる。
2014年盤について
このレコード盤は2014年リリースのものだが、音源そのものは1984年の作品として扱われる。盤には折りたたみ式の新聞紙ポスターが付属し、片面にArt UnitのスカルTシャツを着たバンド写真、もう片面にライナーノーツとプレス記事が載っている。
再発盤としては、当時の資料性を強めた仕様という印象がある。音源の価値だけでなく、当時のバンドの見え方やメディア反応まで含めて残そうとした形だ。
まとめ
「Dead Eyes Opened」は、Severed Headsが実験音楽からエレクトロ/シンセポップの文脈へ広がっていく中で、特に知られるようになった楽曲だ。犯罪番組の音声サンプル、TR-808のリズム、古いシンセの音色がまとまっていて、1980年代前半の電子音楽の動きがそのまま刻まれているような1枚だ。
トラックリスト
- A – Dead Eyes Opened (6:35)
- B1 – Bullet (2:45)
- B2 – Mount (2:17)
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Memory Control One – Counter (2008)
Memory Control One「Counter」について
Memory Control Oneは、イタリアのElectro/Discoプロジェクトで、Francesco BoscoloとBeppe Lodaによるユニットだ。2008年にリリースされた「Counter」は、その活動の中でも2008年時点の空気をそのまま閉じ込めた作品として捉えやすい。
作品の輪郭
ジャンル表記はElectronic、スタイルはTrance、Electro、Italo-Disco。こうした並びからも、シンセサイザーを軸にしたダンス寄りの電子音楽として整理しやすい1枚だ。イタリアという土地と、Italo-Discoの文脈が自然につながるところも、このユニットの特徴として見えてくる。
Francesco BoscoloとBeppe Lodaという2人の名前が並ぶあたり、単なる匿名的なエレクトロ・プロジェクトというより、制作の手触りや選曲感覚がはっきり出るタイプの作品として受け取りやすい。Beppe Lodaはイタリアのディスコ/ダンス文脈で知られる人物でもあり、その背景を踏まえると、「Counter」にはディスコの延長線上にある電子音楽の感覚が通っているように見える。
2008年という時点での位置づけ
2008年は、Italo-Discoの再評価や、エレクトロ・サウンドの更新がいくつも重なっていた時期だ。「Counter」も、その流れの中で置くと理解しやすい。80年代のディスコ感を参照しつつ、より硬質な電子音や反復を前に出した作りが想像しやすい作品だ。
同時代の文脈で言えば、レトロなディスコの要素をそのまま復刻するというより、ElectroやTranceの要素を通して現在形に組み直すタイプのプロジェクトとして見ると、輪郭がつかみやすい。派手な歌ものというより、ビートやシンセの動きに耳が向く作品として受け取られることが多そうだ。
聴きどころのイメージ
実際に聴くと、リズムの押し出し方やシンセの反復に耳が残りやすいタイプの作品として感じられるかもしれない。メロディを強く前に出すというより、トラック全体の推進力で聴かせる印象だ。Italo-Disco由来の明確なコード感と、Electroの機械的な輪郭、そのあいだを行き来する作りが見どころになりそうだ。
代表曲や大きなヒット曲として広く知られた1曲を挙げるのは難しいが、アルバム全体の流れの中で、反復と展開のバランスをどう作るかがこの作品の核になっているように見える。
まとめ
「Counter」は、イタリア発のElectro/DiscoプロジェクトであるMemory Control Oneの2008年作として、Trance、Electro、Italo-Discoの要素を横断する1枚だ。Francesco BoscoloとBeppe Lodaという制作陣の背景も含めて、イタリアのダンス・エレクトロの流れをたどるうえで押さえやすい作品と言えそうだ。
トラックリスト
- A – Counter (6:06)
- B – Counter (B. Loda Elettro Monster Version) (6:15)
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Nile Rodgers – Adventures In The Land Of The Good Groove (1983)
Nile Rodgers『Adventures In The Land Of The Good Groove』(1983)
Nile Rodgersが1983年に発表した『Adventures In The Land Of The Good Groove』は、ギタリスト、ソングライター、プロデューサーとして知られる彼のソロ作のひとつだ。Chicでの活動や、Bernard Edwardsとの共同作業で築いたディスコ以降のダンス・ミュージックの流れを、そのまま80年代初頭のエレクトロ/ファンクへつないでいく作品として位置づけられる。
作品の輪郭
ジャンルはElectronic、Funk / Soul、スタイルはElectro、Funk、Boogie。タイトル通り、グルーヴを軸にした作りで、リズムの推進力が前に出る内容だ。Nile Rodgersらしいカッティング・ギターの処理と、シンセや打ち込みの質感が重なり、ディスコの延長線上にありながら、より80年代的な機械感も見える。
サウンドの印象としては、ベースとドラムの反復がしっかり土台を作り、その上でギターが細かく刻まれる構成が目立つ。華やかさよりも、ビートの連続性と身体的なノリが前面に出るタイプのアルバムだ。
アーティストの流れの中で
Nile Rodgersは1952年生まれのニューヨーク出身。1970年代後半のディスコ・シーンでChicの一員として重要な役割を担い、その後はDiana Ross、David Bowie、Madonna、Duran Duran、Grace Jonesなど、多くのアーティストのプロデュースでも知られる。そうした経歴を踏まえると、この作品も単なるソロ名義のアルバムというより、彼の持つグルーヴ設計の感覚を前面に出した一枚として見えてくる。
1983年という時期は、ディスコの流れを受けたファンクやブギーが、エレクトロやポップの要素と結びついていく時代でもある。このアルバムも、その同時代的な空気の中に置くと分かりやすい。Chicの洗練されたリズム感を引き継ぎながら、より80年代の音像へ寄せた印象がある。
この時期の文脈
同時代のファンク/ダンス系の作品と比べると、派手な歌モノというより、演奏とプロダクションの組み立てで聴かせるタイプに近い。The SystemやShalamar周辺の80年代初期のブラック・コンテンポラリー、あるいはブギー寄りのダンス・サウンドと並べて語られることもありそうだ。
タイトル曲を含むアルバム全体が、Nile Rodgersの仕事の核である「踊れるリズムの精度」を示している。ヒット曲を前面に押し出すというより、彼のギターとプロダクションの感覚をまとまった形で聴ける内容になっている。
まとめ
『Adventures In The Land Of The Good Groove』は、Nile Rodgersのディスコ以後の展開を、1983年のエレクトロ/ファンク/ブギーの文脈で捉えられる作品だ。グルーヴ主体の構成、カッティング・ギターの存在感、80年代初頭らしい音の輪郭。そのあたりが、この時期の彼らしさとして見えてくる。
トラックリスト
- A1 The Land Of The Good Groove (5:05)
- A2 Yum-Yum (5:36)
- A3 Beet (4:13)
- A4 Get Her Crazy (6:14)
- B1 It’s All In Your Hands (4:50)
- B2 Rock Bottom (5:50)
- B3 My Love Song For You (4:24)
- B4 Most Down (5:37)
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Telex – Sex (1981)
Telex『Sex』について
『Sex』は、ベルギーのエレクトロニック・ディスコ・ポップ・バンド、Telexが1981年に発表したアルバム。Marc Moulin、Dan Lacksman、Michel Moersの3人によるユニットで、シンセサイザーとリズムマシンを軸にしたサウンドで知られるグループだ。Telexの作品の中では3作目にあたり、80年代初頭のエレクトロ/シンセ・ポップの流れの中に置きやすい一枚になっている。
サウンドの輪郭
この時期のTelexは、ディスコの躍動感と、機械的な打ち込みの感触を重ねた作りが特徴的だ。音の配置は比較的シンプルで、電子音の粒立ちや反復するビートが前に出る。歌やメロディも、過度に感情を押し出すというより、無機質さを含んだ軽いユーモアとともに進んでいく印象がある。
ジャンル表記としてはElectronic、Electro、Synth-pop、Experimentalとされており、ダンス・ミュージックの要素と実験的な感触が同居する作品として捉えやすい。Kraftwerk以降のヨーロッパ産エレクトロニック・ポップの文脈に並べて語られることも多いタイプの音だ。
Telexというバンドの位置づけ
Telexは1978年に結成され、ベルギー発のエレクトロニック・ディスコ・ポップを代表する存在のひとつ。最初期のシングル「Twist A Saint Tropez」「Moskow Diskow」「Rock Around The Clock」はヨーロッパでヒットし、12インチ盤もダンスクラブ、とくにアメリカで広く回ったとされる。
『Sex』は、そうした初期の話題性を経て制作されたアルバムで、バンドのシングル中心の印象とは少し違う、アルバム作品としてのまとまりを持つ時期の記録でもある。Telexのディスコ的な側面と、電子音楽としての構築感が、よりはっきり同居している時期と見てよさそうだ。
時代背景と比較の視点
1981年という時期は、シンセ・ポップやエレクトロが欧州のポップスの中で存在感を強めていく頃。Telexの音は、同時代のニュー・ウェイヴやダンス・ミュージックとも接点を持ちながら、より機械的で、少し距離を置いたような質感がある。ベルギーという地域性も含めて、英米のメインストリームとは少し違う角度から80年代初頭の電子ポップを捉えた作品と言えそうだ。
代表曲について
Telexの代表曲としては、やはり初期シングルの「Twist A Saint Tropez」「Moskow Diskow」「Rock Around The Clock」がよく挙がる。バンドの名前を広く知らしめた楽曲群であり、クラブ向けの12インチ文化とも相性がよかった。『Sex』も、こうした初期の流れを受けながら、よりアルバム単位の構成でTelexらしさを示した作品として見ることができる。
ひとこと
『Sex』は、Telexの電子音ポップが持つ軽さ、機械感、そしてダンス・ミュージックとの接点がまとまった1981年のアルバム。ベルギー発のエレクトロ・ポップが80年代初頭にどう鳴っていたかを知るうえで、ひとつの手がかりになる作品だ。
トラックリスト
- A1 Brainwash (4:20)
- A2 Drama Drama (3:57)
- A3 Haven’t We Met Somewhere Before? (4:06)
- A4 Long Holiday (2:12)
- A5 The Man With The Answer (3:15)
- B1 Carbon Copy (6:34)
- B2 Exercise Is Good For You (3:35)
- B3 Dream-O-Matic (4:13)
- B4 Sigmund Freud’s Party (2:53)
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Warp 9 – Fade In, Fade Out (1986)
Warp 9「Fade In, Fade Out」について
Warp 9の「Fade In, Fade Out」は、1986年に発表された作品。ニューヨークのエレクトロ・シーンを背景に登場したグループが、Motownでよりソウル寄りの方向へ進んだ時期の一枚として位置づけられる。
アーティストとしてのWarp 9は、Strikers解散後にMilton “Boe” Brownが参加したことから始まり、のちにKatherine JoyceとChuck Wansleyがボーカルを担う形へ移行した。Lotti GoldenとRichard Scherは制作と楽曲面を支え、メンバーにはAda Dyer、Carolyn Harding、Richard Scher、Lotti Golden、Milton Brown、Kathrine Joyce、Chuck Wansleyがクレジットされている。
サウンドの印象
ジャンル表記はElectronic、Funk / Soul、スタイルはElectro。打ち込みを軸にしたリズムと、ファンク由来の跳ねる感触、ソウル寄りの歌の組み合わせが、この作品の中心にある。初期エレクトロに見られる機械的なビート感を残しつつ、モータウン期らしい整理された録音の空気も感じられる構成。
同時代のニューヨーク・エレクトロや、シンセを前面に出したR&Bの流れの中で聴かれることが多そうな内容。Afrika Bambaataa周辺のエレクトロや、クラブ志向のファンクと並べて語られる場面も想像しやすい。
作品の位置づけ
Warp 9にとっては、初期のエレクトロ色から、よりソウルフルな表現へと寄った時期を示すタイトル。グループの編成やボーカルの変化も含めて、サウンドの方向性が少し広がった段階として見える。
1986年のUS盤として出たこの「Fade In, Fade Out」は、80年代半ばのエレクトロ/ファンク/ソウルの接点をそのまま切り取ったような一枚。派手にジャンルを飛び越えるというより、当時の空気の中で電子音と歌の比重を調整していく流れが感じられる作品。
トラックリスト
- A1 Skips A Beat (3:50)
- A2 Dirty Looks (5:41)
- A3 Big Fun (5:18)
- A4 Reach For Your Star (5:25)
- B1 The Cutting Edge (5:31)
- B2 King Of Hearts (5:25)
- B3 You’ll Get Over It (4:32)
- B4 To The Last Drop (5:00)
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Material – For A Few Dollars More (1983)
Material『For A Few Dollars More』
Materialは、Bill LaswellとMichael Beinhornを中心に、1970年代末ごろから活動を始めたアメリカの実験的なバンドだ。パンク、ジャズ、ファンク、ノイズ、エレクトロを横断しながら、同時にプロデュース・ユニットとしても機能していたグループで、この『For A Few Dollars More』は1983年の作品になる。
ジャンル表記はElectronic、スタイルはElectro。Materialの中でも、打ち込みのリズムと低音の処理が前に出やすい時期の流れにある一枚として見える。硬めのビート、反復するフレーズ、音数を絞った構成など、当時のエレクトロ周辺の感触が感じられる内容。
サウンドの印象
録音の雰囲気は、音の輪郭がはっきりしたタイプ。リズムが先に立ち、その上にベースやシンセ、断片的な演奏が重なる構成が想像しやすい。Materialらしく、演奏のうまさを前面に出すというより、音の配置そのものを組み替えていくような作りが特徴になりやすい。
メンバーには、Bill Laswell、Michael Beinhornのほか、Bootsy Collins、Bernie Worrell、Nile Rodgers、Fred Frith、Sonny Sharrock、Ginger Baker、Robbie Shakespeareなど、多方面のミュージシャンが名を連ねている。ファンク、ロック、ジャズ、ダブ、レゲエなどの周辺から人が集まっている点も、Materialの作品を追うときの大きな見どころだ。
Materialの中での位置づけ
1983年時点のMaterialは、バンドとしての顔と、制作ユニットとしての顔が重なっている時期にあたる。アーティスト名義でありながら、実験的なアレンジやプロデュースの発想がそのまま作品に出やすいのがこのグループの面白さだ。のちに90年代へ進むと、よりワールド、インド、アフロ、アンビエント、ダブ寄りの方向へ広がっていくが、この時期はエレクトロやファンクの要素が比較的はっきり見える段階といえる。
同時代とのつながり
1980年代前半のニューヨーク周辺では、ヒップホップ、エレクトロ、ファンク、アートロックが近い距離で交差していた。Materialもその流れの中に置ける存在で、Afrika BambaataaやHerbie Hancock、Nona Hendryxなど、周辺のアーティストとの関係からも、当時のクロスオーバーな空気が伝わってくる。
『For A Few Dollars More』は、そうした時代の電子音楽とバンド・サウンドの接点を、Materialらしい方法で切り取った作品として捉えられる一枚だ。
トラックリスト
- A For A Few Dollars More (Special Long Version) (7:27)
- B For A Few Dollars More (3:50)