Peter Murphy – Love Hysteria (1988)
Peter Murphy『Love Hysteria』
Peter Murphyの『Love Hysteria』は、1988年にUKでリリースされたソロ2作目のアルバムである。元Bauhausのヴォーカリストとして知られるMurphyが、バンド解散後の活動をさらに押し進めた時期の作品で、ソロ名義ならではの作曲とサウンドの輪郭が見えやすい一枚になっている。ジャンル表記としてはRockに加え、Alternative Rock、Art Rockが付いている。
作品の位置づけ
Peter Murphyは、Bauhausの中心人物としてポストパンク、ゴシック・ロックの文脈で語られることが多いが、ソロではその枠に収まりきらない音作りを展開している。『Love Hysteria』は、その流れの中で、前作に続いてバンド時代のイメージを引きずりつつも、よりソロ・アーティストとしての表現を前に出した作品といえる。1988年という時期を考えると、当時のUKロックがより広いオルタナティヴの方向へ開いていく中で出てきたアルバムでもある。
録音と制作
レコーディングはJacob StudiosとAbbey Roadで行われ、ミックスもAbbey Roadでまとめられている。クレジット上では、Beggars Banquet Music Ltd、Momentum Music Ltd、さらに一部楽曲でEMI Music LtdやVirgin Music (Publishers) Ltdが関わっている。インナー・スリーブには歌詞とクレジットが印刷されており、イングランド製の盤として流通している。
また、Howard HughesがE.G. Records提供でクレジットされているのも、この時代のUKロック作品らしい情報の一つである。制作面の記録が比較的はっきり残っている盤で、スタジオ作としての性格が見えやすい。
サウンドの印象
実際に聴くと、Murphyの低く伸びる声がまず前面に出る。バンドの勢いで押すタイプというより、声の存在感を軸に曲を組み立てていく印象が強い。ギターやリズム隊は、前に出すぎず後ろに引きすぎず、楽曲ごとの緊張感を保つ役割を担っている。
Bauhaus時代の鋭さを連想させる場面はあるが、ここではそのまま再現するのではなく、より整えられた構成の中で鳴っている。音の置き方に余白があり、ヴォーカルの抑揚やフレーズの間がそのまま楽曲の表情になっているのがわかる。
同時代の文脈
1980年代後半のUKでは、ポストパンク以後の表現が、アートロックやオルタナティヴ・ロックの形で再編されていく流れがあった。『Love Hysteria』も、その周辺に位置づけやすい作品である。Bauhausのような出自を持つアーティストが、バンドの看板を離れてどこまで自分の声を保てるか、その試みの一つとして見ることができる。
比較の対象としては、同時代のUKのダークな質感を持つ作品群や、ポストパンク由来のソロ作品が思い浮かぶ。とはいえ、このアルバムは単純に暗さを売りにするのではなく、曲の作り込みと歌の主導性で聴かせるタイプである。
代表曲について
本作からは「All Night Long」がシングルとして知られている。アルバム全体の中でも比較的耳に残りやすい曲で、Murphyのソロ活動を追う入口として触れられることが多い。ほかにも、曲ごとにテンポや質感を変えながら、アルバム単位で流れを作っている印象がある。
まとめ
『Love Hysteria』は、Peter MurphyがBauhausのフロントマンという出自を持ちながら、ソロ・アーティストとして自分の歌と構成を前に出した1988年の作品である。Abbey Roadでの録音・ミックス、UK盤らしいクレジットや製造情報も含めて、当時の英国ロックの文脈が濃く出ている一枚である。
トラックリスト
- A1 – All Night Long
- A2 – His Circle And Hers Meet
- A3 – Dragnet Drag
- A4 – Socrates The Python
- B1 – Indigo Eyes
- B2 – Time Has Got Nothing To Do With It
- B3 – Blind Sublime
- B4 – My Last Two Weeks
- B5 – Fun Time