Ron Geesin – Music From The Body (1970)

Ron Geesin『Music From The Body』について

『Music From The Body』は、スコットランド出身の作曲家、演奏家、サウンド・アーキテクトとして知られるRon Geesinが手がけた1970年の作品だ。映画『The Body』のオリジナル・スコアとして制作されており、ジャンル表記でもElectronic、Rock、Stage & Screen、スタイルではSoundtrack、Musique Concrète、Avantgardeが並ぶ。映画音楽でありながら、通常のサウンドトラックよりも実験性の強い内容として位置づけられる1枚。

Ron Geesinは独学で音楽を身につけた人物で、Pink Floydの『Atom Heart Mother』では共作者としても知られる。そうした経歴を踏まえると、このアルバムもロックの文脈と前衛音楽の文脈の両方にまたがる作品として見えてくる。映画のための音楽でありつつ、音そのものの構造を組み替えるような発想が前に出る作りだ。

作品の背景

本作は映画『The Body』のための音楽で、クレジット上ではTony Garnettがプロデュース、Roy Battersbyが監督、A Kestrel Film、M.G.M.-E.M.I. Distributorsからの公開となっている。録音物としては、Abbey Road Studiosでマスタリングされたことが記されている点も重要だ。英国の音楽制作環境の中でまとめられた、1970年らしい実験音楽寄りのサウンドトラックといえる。

また、マスターノートでは「Give Birth to a Smile」にPink Floydの残るメンバー、David Gilmour、Nick Mason、Richard Wrightが未クレジットで参加しているとされる。GeesinとPink Floydの接点を考えるうえで、ひとつの具体的な手がかりになる。

音の印象

実際の聴感としては、曲の並びの中でメロディを前面に出す場面と、断片的な音響処理や反復が中心になる場面が行き来する構成が目立つ。映画の場面に合わせた機能性を保ちながら、単独のレコードとしても成立するように、音の切り替えや質感の差がはっきりしている印象だ。ロック楽器の存在感と、具体的な音響操作が同居しているところが、この作品の核になっている。

とくに「Give Birth to a Smile」は、このアルバムの中でも語られやすい曲だ。Pink Floyd周辺の空気を感じさせる要素を含みつつ、Geesin自身の作家性の中に収まっている。映画音楽でありながら、単なる挿入曲ではなく、作品全体の性格を示す場面になっている。

同時代とのつながり

1970年前後の英国では、ロック、電子音楽、前衛音楽、映画音楽の境界が今よりもゆるやかだった。Ron Geesinの仕事は、その境界線上にある。Pink Floydの周辺、Musique Concrète、実験的なサウンドトラックといった文脈で見ると、同時代の進行形の感覚がよく伝わる。比較対象としては、映画音楽の枠を押し広げた同時代の英国系実験音楽、あるいはロックの側から音響実験へ踏み込んだ作品群が思い浮かぶ。

この作品の位置づけ

Ron Geesinのキャリアの中では、映画音楽家としての側面と、実験的な作曲家としての側面が交差する代表的な仕事のひとつと見られる。Pink Floydとの関係でも知られる人物だが、本作ではその周辺情報に留まらず、Geesin自身の発想が前に出ている。のちの映像音楽やサウンド・アートにつながるような、音を素材として組み立てる姿勢が確認できる作品だ。

盤の見どころ

今回のUK盤については、ラベルに顔のある仕様で、Garrod & Lofthouse Ltd.による印刷・製造が記されている。こうした初期プレス周辺の情報も、当時の英国盤らしさを示す要素になっている。作品内容と同じく、パッケージ面でも1970年前後の英国の制作物としての空気を持つ1枚だ。

まとめ

『Music From The Body』は、Ron Geesinの実験性と映画音楽の機能性が重なったサウンドトラック作品だ。Pink Floydとの接点、Abbey Roadでのマスタリング、英国の映画制作との結びつきなど、周辺情報も含めて当時の音楽文化の交差点にある。ロック、電子音楽、前衛音楽のあいだを行き来する1970年の英国作品として、ひとつの輪郭がはっきりしている。

トラックリスト

  • A1 – Our Song
  • A2 – Sea Shell And Stone
  • A3 – Red Stuff Writhe
  • A4 – A Gentle Breeze Blew Through Life
  • A5 – Lick Your Partners
  • A6 – Bridge Passage For Three Plastic Teeth
  • A7 – Chain Of Life
  • A8 – The Womb Bit
  • A9 – Embryo Thought
  • A10 – March Past Of The Embryos
  • A11 – More Than Seven Dwarfs In Penis-Land
  • A12 – Dance Of The Red Corpuscles
  • B1 – Body Transport
  • B2 – Hand Dance – Full Evening Dress
  • B3 – Breathe
  • B4 – Old Folks Ascension
  • B5 – Bed-Time-Dream-Clime
  • B6 – Piddle In Perspex
  • B7 – Embryonic Womb-Walk
  • B8 – Mrs. Throat Goes Walking
  • B9 – Sea Shell And Soft Stone
  • B10 – Give Birth To A Smile

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2026.08.09
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