Orchestral Manoeuvres In The Dark – Dazzle Ships (1983)
Orchestral Manoeuvres In The Dark『Dazzle Ships』について
Orchestral Manoeuvres In The Dark、通称OMDの『Dazzle Ships』は、1983年にリリースされた4作目のスタジオ・アルバムだ。電子音楽を軸にしたポップ・バンドとして知られるOMDの中でも、実験性が前に出た作品としてよく語られる1枚である。シンセサイザー主体の楽曲に加えて、放送音声やタイプライター、短波ラジオの音なども取り込んでいて、当時のバンドの制作姿勢がそのまま表れた内容になっている。
作品の位置づけ
OMDは1978年にイングランドのウィラルで結成された。Andy McCluskeyとPaul Humphreysを中心に始まり、1980年代前半にはUKチャートでも存在感を強めていた。そんな流れの中で出た『Dazzle Ships』は、前作までのヒット路線から少し距離を置き、より前衛的な方向へ振れたアルバムとして位置づけられることが多い。
同時代のシンセ・ポップが持っていた整ったメロディや機械的なリズム感をベースにしながら、テープ編集やノイズ、断片的な音素材を組み合わせている点が特徴だ。New WaveやMusique Concrèteの要素も見える内容で、単純に「聴きやすいポップ作」では収まらない。
タイトルとアートワークの由来
タイトルの『Dazzle Ships』は、第一次世界大戦時の迷彩艦「Dazzle Ships」から取られている。これは船の大きさや進行方向を敵に分かりにくくするため、断片的な線や面で塗装された軍艦のことだ。アートワークもこの発想を引き継いでいて、Peter SavilleがEdward Wadsworthの絵画『Dazzle Ships In Drydock At Liverpool (1919)』に着想を得たとされる。
初回のスリーブはゲートフォールド仕様で、地図の穴から内側のスリーブが見える作りになっている。視覚面でも、音の断片化や配置の妙をそのまま形にしたようなデザインだ。
収録曲とよく知られた曲
このアルバムには、のちにシングルとしても扱われた曲がいくつかある。中でも「Genetic Engineering」は、OMDらしいメロディ感と機械的な推進力が両方出ている代表曲のひとつとして知られる。「Telegraph」や「Radio Waves」も、短波ラジオや通信というモチーフがそのまま音に落とし込まれていて、作品全体のテーマとつながっている。
一方で、B面に近い感触の実験的な小品や、断片的な音響パーツも多く、アルバム単位で流れを追うと、曲ごとの役割がかなりはっきりしている印象だ。ポップソングとしての輪郭と、コラージュ的な構成が同居している。
録音・制作のクレジット
クレジットを見ると、録音はThe Gramophone Suite、Gallery Studio、Mayfair Studioで行われ、ミックスはThe Manor Studios、マスタリングはThe Master Roomとなっている。使用楽器の欄にはRoland Drumatix、Korg MS-20、Roland SH-09、SH-2、Emulator Synthesiser、Prophet 5、Oberheim OB-X、Solina String Machineなど、当時の電子音楽制作を象徴する機材が並ぶ。
さらに、Speak & Spell machine、short wave radio、typewriterまで記載されていて、音色の選び方がこの作品の性格をよく示している。タイプライターや通信機器を楽器の延長として扱う発想は、まさにこのアルバムならではだ。
盤の仕様について
このヨーロッパ盤は1983年リリースで、印刷は西ドイツのMohndruck Graphische Betriebe GmbHによるもの。カットアウト仕様のスリーブに、プリントされたインナー・スリーブが付く形になっている。ラベル面では一部の曲に1981年表記が見られるが、アルバム自体は1983年作として捉えるのが自然だ。
また、Virgin Recordsの表記や、当時の流通事情を反映したAriola Group of Companiesの配給クレジットも確認できる。盤ごとの細かなカタログ番号違いがある点も、初期プレスらしい要素だ。
OMDの中での意味
OMDはその後、より大きなポップ・ヒットを獲得していくが、『Dazzle Ships』は商業的なわかりやすさよりも、制作上の実験が前に出た時期の記録として残る作品だ。バンドの作品群の中では、シンセ・ポップの枠内でどこまで音の構造を崩せるかを試したアルバム、と見られることが多い。
電子音楽、ニュー・ウェイヴ、ポップの接点にある1983年の1枚として、OMDの制作意図や当時の空気がかなりはっきり入った作品である。
トラックリスト
- A1 – Radio Prague (1:18)
- A2 – Genetic Engineering (3:37)
- A3 – ABC Auto-Industry (2:06)
- A4 – Telegraph (2:57)
- A5 – This Is Helena (1:58)
- A6 – International (4:24)
- B1 – Dazzle Ships (2:21)
- B2 – The Romance Of The Telescope (3:27)
- B3 – Silent Running (3:34)
- B4 – Radio Waves (3:45)
- B5 – Time Zones (1:49)
- B6 – Of All The Things We’ve Made (3:27)