Pink Floyd – Original Motion Picture Soundtrack From The Film “More” (1969)
Pink Floyd『Original Motion Picture Soundtrack From The Film “More”』
Pink Floydが1969年に発表した、Barbet Schroeder監督の映画『More』のサウンドトラック盤である。バンドにとっては3作目のスタジオ・アルバムであり、同時に初の映画音楽作品でもある。サイケデリック期のPink Floydをそのまま記録したような内容で、のちの大作志向とは少し違う、短い曲を中心にした構成になっている。
作品の位置づけ
この時期のPink Floydは、Syd Barrett脱退後の編成を固めつつあった段階にある。中心メンバーはRoger Waters、Nick Mason、Richard Wright、そしてDavid Gilmour。映画音楽という用途があるぶん、通常のアルバムよりも場面ごとの切り替わりがはっきりしていて、楽曲の長さや展開も比較的コンパクトである。
1969年のPink Floydは、実験性の強いサイケデリック・ロックの文脈にありながら、フォーク寄りの曲調や、当時の映画サウンドトラックらしい用途性も備えている。後年の『The Dark Side of the Moon』や『Wish You Were Here』のような統一感の強い作品群とは異なり、この段階ではまだ曲ごとの性格がかなりはっきりしている。
収録曲と聴きどころ
このアルバムには、のちに単独でも語られる曲がいくつか入っている。代表的なのは「Cymbaline」「Green Is the Colour」「Crying Song」あたりで、いずれも映画の空気に沿った、抑えめの演奏が印象に残る。
「Cymbaline」: 物語性のある曲調で、映画音楽としての役割が強い楽曲
「Green Is the Colour」: アコースティックな感触が前に出る曲
「Crying Song」: 短い尺の中でメロディが立つ曲
「The Nile Song」: この作品の中では異質な、硬いギターが前に出る曲
特に「The Nile Song」は、Pink Floydの初期作品の中でもかなり強い音像を持つ曲として知られる。映画サウンドトラックという枠の中で、こうした直線的なロック・ナンバーが入っているのが面白い点である。
同時代の文脈
1969年前後の英ロックでは、映画との接点を持つ作品が少なくないが、『More』はその中でも、バンドの持ち味をそのまま映画用に流し込んだタイプに入る。サイケデリック・ロック、フォーク・ロック、映画音楽の要素が同居していて、同時代の実験的な作品群、たとえば関連性のあるアート・ロックやプログレッシブ・ロックの流れとも地続きに感じられる。
ただし、この時点ではまだ巨大なコンセプト作品というより、楽曲単位の密度や色分けが前に出る。Pink Floydが後に築く“アルバム全体で聴かせる”形式への途中経過として見ると、位置づけが分かりやすい。
US盤の再発について
ここでの盤は、USのHarvest再発盤として出たもの。オリジナルのUS盤はTowerからのリリースで、再発盤ではレーベル表記やプレス工場が異なる。記録上、Winchester plantでプレスされたことが示されている。
また、ラベル上の表記に「B2」の曲名の綴り違いがあり、サイドBのランアウト表記も通常のものと異なる点がある。こうした細かな差は、当時の再発盤らしい個体差として見ておくとよい。
まとめ
『More』は、Pink Floydの初期サウンドを映画のためにまとめた作品である。サイケデリックな曲、フォーク寄りの曲、やや硬質なロックが同居し、のちの大規模なアルバム作品とは違う、1969年のバンドの姿がそのまま残っている。代表曲としては「Cymbaline」「Green Is the Colour」「The Nile Song」などが挙げられる。
映画音楽としての機能を持ちながら、Pink Floydらしい音の扱いもすでに見えている作品だといえる。
トラックリスト
- A1 – Cirrus Minor (5:16)
- A2 – The Nile Song (3:24)
- A3 – Crying Song (3:25)
- A4 – Up The Khyber (2:07)
- A5 – Green Is The Colour (2:53)
- A6 – Cymbaline (4:45)
- A7 – Party Sequence (1:10)
- B1 – Main Theme (5:27)
- B2 – Ibiza Bar (3:17)
- B3 – More Blues (2:13)
- B4 – Quicksilver (7:03)
- B5 – A Spanish Piece (1:00)
- B6 – Dramatic Theme (2:11)