Can – Can (1978)

Can『Can』について

Canは、1960年代末にケルンで結成されたドイツの実験音楽/ロック・バンドである。ジャキ・リーベツァイトの一定したリズム、イルミン・シュミットの鍵盤、ホルガー・シュカイの編集的なベース/テープ処理、マイケル・カローリのギターを軸に、サイケデリック・ロック、スペース・ロック、実験音楽を行き来する作風で知られる。

本作『Can』は1978年に登場した作品で、バンド名をそのまま冠したタイトル盤。レーベルや流通の事情で別名義でも出ているが、中心にあるのはCanの1980年代以前の活動をまとめる形の音源群である。録音はInner Space Studio、ミックスはベルリンのHansa-Tonstudiosで行われている。2010年盤は180グラム仕様の再発盤。

作品の位置づけ

Canのディスコグラフィの中では、1970年代後半の時期を示す一枚として見やすい。初期の強い即興性と編集感覚、リズムの反復、音の断片をつなぐ構成といった、バンドの特徴がそのまま残っている時期の記録である。

Canはクラウトロックの代表格として語られることが多く、Neu!、Faust、Amon Düül II などと並べて言及されることも多い。とはいえ、単純に同時代のドイツ産ロックというだけではなく、ロック、ファンク、ミニマルな反復、ノイズ処理、映画音楽的な場面転換が同居する点に独自性がある。

この盤で聴こえるCanらしさ

Canの音は、派手なソロや分かりやすい展開より、反復の中で少しずつズレや変化が起きる構造に特徴がある。本作でもその手触りは変わらず、リズムが前に出る場面、空間の広がりを感じる場面、断片的な歌やフレーズが差し込まれる場面が並ぶ。

実際に聴くと、演奏がきっちり固定されているというより、各パートが互いに様子を見ながら進む感じがある。ジャキ・リーベツァイトのドラムは拍を強く主張しすぎず、一定の推進力を保ちながら曲の輪郭を作る。そこにホルガー・シュカイの低音や編集的な処理が重なり、イルミン・シュミットの鍵盤が空間を埋める。ロックでありながら、曲の中心が常に少しずつ動いている印象である。

メンバーと時代背景

Canの中核は、イルミン・シュミット、ホルガー・シュカイ、ジャキ・リーベツァイト、マイケル・カローリの4人。そこにマルコム・ムーニーやダモ鈴木が加わった時期には、即興と反復のバランスがさらに際立った。1970年代後半のCanは、初期の荒さを残しつつも、より構成の意識が見える段階にある。

この時代のCanは、英国や米国のロックとは別の流れで語られることが多い。プログレッシブ・ロックのように大仰な組曲へ向かうわけでもなく、ハードロックのようにリフを前面に出すわけでもない。むしろ、反復、断片、空気感、ミックスの処理によって曲を成立させる点が重要である。

代表曲との関係

Canの代表曲としては、国際的に知られたポップ・サティア「I Want More」や、「Halleluwah」「Vitamin C」「Mother Sky」などが挙げられることが多い。本作はそうした広く知られた代表曲中心の編集盤というより、バンドの語法そのものを確認するための一枚として捉えやすい。

そのため、Canの名前だけを知っている場合でも、単発の名曲集とは違う聴き方になる。曲単位の強さより、セッション的な流れ、バンド内で共有されている反復の感覚が前面に出る。

再発盤について

2010年の盤は180グラム仕様の再発盤である。オリジナルの1978年盤とは発売時期が異なるため、音源そのものの時代と、手元にあるレコード盤の製造年は分けて見ておく必要がある。ジャケットやプレス仕様は再発盤ならではの要素で、内容面はオリジナルの作品を基にしている。

まとめ

『Can』は、Canというバンドの輪郭をそのまま示すようなタイトル盤である。クラウトロックの文脈、反復と即興のあいだを行き来する演奏、映画音楽にも通じる場面転換など、グループの核が見えやすい。

1970年代ドイツの実験ロックを知るうえで、Canの位置を確認するための一枚として整理できる内容である。

トラックリスト

  • A1 – All Gates Open (8:16)
  • A2 – Safe (8:36)
  • A3 – Sunday Jam (4:17)
  • B1 – Sodom (5:42)
  • B2 – A Spectacle (5:48)
  • B3 – E.F.S. Nr. 99 (“Can Can”) (3:16)
  • B4 – Ping Pong (0:25)
  • B5 – Can Be (3:00)

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2026.07.03