Vanilla Fudge – Rock & Roll (1969)
Vanilla Fudge『Rock & Roll』について
Vanilla Fudgeの『Rock & Roll』は、1969年にUSのAtlantic/Atco系レーベルから出た作品だ。New Yorkで結成されたバンドによる3作目のアルバムで、重いオルガン、厚みのあるギター、ゆったりしたテンポ感を軸にした当時のバンド像がそのまま出ている。もともとカバー曲で存在感を示してきたグループだが、この時期の彼らは既成曲を大きく作り替えるやり方で知られていて、本作もその流れにある。
作品の位置づけ
1965年に結成されたVanilla Fudgeは、60年代後半のアメリカン・ヘヴィ・サイケデリック・ロックを語るうえで外せない存在だ。『Rock & Roll』は、その初期の代表的な時期に置かれる1枚で、バンドの編成はCarmine Appice、Mark Stein、Vince Martell、Tim Bogertの4人を軸にした時代のもの。ここでの演奏は、後のハードロックやプログレ寄りの重厚なアレンジにもつながる、Vanilla Fudgeらしい骨格をはっきり示している。
同時代のロックの中では、The BeatlesやThe Doors、Iron Butterflyなどと並べて語られることが多いタイプの音像だが、Vanilla Fudgeはとくに「ポップな曲を引き延ばして重く鳴らす」手つきで独自性を出している。曲そのものよりも、曲の構造とバンドの鳴りで聴かせるアルバムといえる。
収録曲とクレジット
レーベル表記では、A1、A2、A4、B1がCotillion-Vanilla Fudge名義、A3がScreen Gems-Columbia、B2がUnited Artists、B3がGood Songsの管理下にある。アレンジは基本的にVanilla Fudgeによるもので、「Lord In The Country」の冒頭ファンファーレのみCharles Morrowの編曲とされている。録音はニューヨークのAtlantic Recording Studios。
また、この盤はステレオ録音で、RIAAの高域ロールオフ特性に留意するよう記載がある。1969年当時のアナログ盤らしい表記で、印刷や製造もU.S.A.表記のオリジナル仕様になっている。
音の印象
実際に聴くと、まず耳に入るのは低音の押し出しとオルガンの存在感だ。ギターが前に出すぎるというより、キーボードとリズム隊が厚みを作り、その上にボーカルが乗る作りになっている。テンポは落ち着いていて、各曲の展開も急がない。60年代ロックの中でも、ビート感より重量感を優先した鳴り方だと受け取れる。
一方で、ただ重いだけではなく、カバー曲を素材にしながらフレーズの間を長く取り、曲の輪郭を変えていくやり方が目立つ。原曲を知っていると、どこを伸ばし、どこを強調しているかが聴きどころになる。Vanilla Fudgeの録音に共通する、ゆっくりした進行の中で緊張感を保つ感覚が、このアルバムでもはっきりしている。
同時代とのつながり
1969年は、重いロックの表現が広がっていく時期だ。アメリカではブルース・ロックやハードロックの輪郭が固まりつつあり、イギリスではより轟音寄りのバンドも出てきていた。そんな中でVanilla Fudgeは、サイケデリックな感覚と大きなアンサンブルを結びつける役回りに近い。後の重厚なロックに先行する要素が、すでにかなり明確に入っている。
このバンドは、後年の再編や人員の入れ替わりもあるが、『Rock & Roll』の時点では初期メンバーの強い個性が作品全体を支えている。ベースのTim BogertとドラムのCarmine Appiceのリズムの組み方は、この時代のVanilla Fudgeを語るうえで重要なポイントだ。
まとめ
『Rock & Roll』は、Vanilla Fudgeの初期スタイルをそのまま刻んだ1969年作だ。派手な技巧を前面に出すというより、既成曲をバンドの音で作り替える姿勢、そして重たいアンサンブルの作り込みが見どころになっている。60年代末のアメリカン・サイケデリック・ロックの一断面として、バンドの立ち位置がわかりやすい1枚だ。
トラックリスト
- A1 – Need Love (4:57)
- A2 – Lord In The Country (4:30)
- A3 – I Can’t Make It Alone (4:45)
- A4 – Street Walking Woman (6:00)
- B1 – Church Bells Of St. Martins (4:40)
- B2 – The Windmills Of Your Mind (8:52)
- B3 – If You Gotta Make A Fool Of Somebody (6:00)