Pink Floyd – A Nice Pair = ナイス・ペア (1974)
Pink Floyd『A Nice Pair = ナイス・ペア』について
『A Nice Pair』は、Pink Floydが1960年代に発表した初期2作『The Piper at the Gates of Dawn』と『A Saucerful of Secrets』をまとめた2枚組コンピレーション盤である。1974年にオリジナル作品として登場し、バンドのサイケデリック期からプログレッシブ・ロックへの移行を、1セットでたどれる編集盤になっている。
Pink Floydはロンドン出身のバンドで、のちに世界的な成功を収めるが、この時期はまだSyd Barrett在籍期の色が強い。実験性の高い音作り、曲ごとの展開の変化、音響効果の使い方が前面に出た時代で、後年の大作志向とはまた違う、初期ならではのまとまりがある。
収録内容と位置づけ
この作品は、1967年作『The Piper at the Gates of Dawn』と1968年作『A Saucerful of Secrets』の編集盤。収録曲は単なる抜粋ではなく、初期Pink Floydの流れを追いやすい並びになっている。Syd Barrettの独特な筆致が残る曲と、Roger Waters、David Gilmour、Richard Wright、Nick Mason体制へ移る過程が、同じ2枚組の中で見えてくる構成である。
代表曲としては「Astronomy Domine」「See Emily Play」「Interstellar Overdrive」「Set the Controls for the Heart of the Sun」などが挙げられる。特に「Astronomy Domine」は初期Pink Floydを象徴する曲として知られており、宇宙的なモチーフと歪んだギター、浮遊感のあるオルガンが印象に残る。
内容面のポイント
初期Pink Floydの魅力は、曲の完成度だけでなく、音そのものの配置にある。ギターやオルガンがメロディを追うというより、音響の層を作っていく感覚が強い。Syd Barrettの時期は、ポップな感触と実験的な展開が同居していて、同時代の英国ロックの中でもかなり個性がはっきりしている。
一方で『A Saucerful of Secrets』では、バンド全体の方向性が少しずつ変わっていく様子も聴き取れる。サイケデリック・ロックの手触りを残しつつ、のちのプログレッシブ・ロックにつながる長尺の構成や、テーマの組み立て方が見えてくる。
日本盤について
この日本盤はToshiba EMIからのライセンス盤で、ゲートフォールド仕様のジャケット、帯、印刷された内袋、20ページのブックレット付き。日本語ノーツには立川直樹のクレジットがある。ジャケットや付属物を含めて、当時の輸入盤とは違う見せ方になっているのが特徴である。
また、UK盤では特価2.50ポンドで販売された2枚組という位置づけがあり、発売当時から編集盤としての性格がはっきりしている。収録内容は初期2作のまとめであるため、オリジナルアルバムをそのまま再現する盤ではない。
同時代の文脈
1960年代後半の英国ロックでは、The BeatlesやThe Rolling Stonesのような主要グループがスタジオ作品の可能性を広げていた時期で、Pink Floydはその中でもサイケデリック寄りの実験性を強く押し出していた。特にロンドンのアンダーグラウンド文化と結びついた音作りは、同時代の他のロックバンドと比べてもかなり個性的である。
その後のPink Floydが大作志向、コンセプト志向を強めていくことを思うと、『A Nice Pair』はその出発点を確認するための編集盤として位置づけやすい。初期の奇妙さ、遊び心、音響実験がまとまって入っている点に、このタイトルの役割がある。
まとめ
『A Nice Pair』は、Pink Floydの初期2作を一気にたどれる2枚組コンピレーションで、Syd Barrett期のサイケデリックな感触と、次の段階へ進むバンドの輪郭が見える作品である。代表曲の「Astronomy Domine」や「See Emily Play」を含み、初期Pink Floydの入口としても、バンド史を整理する盤としても重要な一枚になっている。
トラックリスト
- The Piper At The Gates Of Dawn = 夜明けの口笛吹き
- A1 – Astronomy Domine = 天の支配 (4:07)
- A2 – Lucifer Sam = ルーシファー・サム (3:04)
- A3 – Matilda Mother = マチルダ・マザー (3:05)
- A4 – Flaming = フレイミング (2:42)
- A5 – Pow R. Toc H. = パウ・R・トック・H (4:22)
- A6 – Take Up Thy Stethoscope And Walk = 恋の聴診器 (3:03)
- B1 – Interstellar Overdrive = 星空のドライヴ (9:40)
- B2 – The Gnome = 地の精 (2:12)
- B3 – Chapter 24 = 第24章 (3:40)
- B4 – Scarecrow = 黒と緑のかかし (2:09)
- B5 – Bike = バイク (3:22)
- A Saucerful Of Secrets = 神秘
- C1 – Let There Be More Light = 光を求めて (5:31)
- C2 – Remember A Day = 追想 (4:25)
- C3 – Set The Controls For The Heart Of The Sun = 太陽讃歌 (5:20)
- C4 – Corporal Clegg = コーポラル・クレッグ (4:06)
- D1 – A Saucerful Of Secrets = 神秘 (11:47)
- D2 – See Saw = シーソー (4:30)
- D3 – Jugband Blues = ジャグバンド・ブルース (2:57)