Can – Delay 1968 (1981)

Can『Delay 1968』について

Canは、1960年代後半にケルンで結成されたドイツの実験的ロック・バンドで、クラウトロックを語るうえで外せない存在だ。『Delay 1968』は、その初期Canの断片をまとめた作品で、録音は1968年から1969年、Schloss Nörvenichで行われている。後のCanに比べると、バンドの輪郭が固まりきる前の空気がそのまま残っている時期の記録として見える。

リリースは1981年。オリジナル盤はドイツ盤で、Spoonから出ている。ジャケットはフル・グロスのシングル・スリーブで、スパインには「CAN DELAY 1968 SPOON 012」とある。掲載情報では、黒地に白文字のラベルが使われている。

初期Canの位置づけ

Canは、マルコム・ムーニー、のちにダモ鈴木をフロントに据えた時期に特に知られるが、この『Delay 1968』はそうした完成形の少し前、メンバーが音の方向を探っていた段階の資料的な意味合いが強い。初期のCanは、のちの即興、反復、ノイズ、ファンク的なリズム感へ向かう前提をすでに含んでいて、その流れをたどるうえで重要なタイトルだ。

同時代のドイツの実験音楽やクラウトロック周辺と比べても、Canはロックの編成を保ちながら、テープ編集や長い反復、リズムの粘りを前面に出していく点で独特だ。NEU!やFaust、Amon Düül IIなどと並べて語られることが多いが、Canはよりバンド演奏の生々しさと編集作業の両方が前に出る印象がある。

内容の性格

『Delay 1968』は、完成された代表作というより、録音時点の実験の手触りを伝える作品だ。公式ディスコグラフィの中でも、初期の素材や未発表音源に近い位置づけで見られることが多い。ここでは、後年の『Monster Movie』『Tago Mago』『Ege Bamyasi』のような強い定型よりも、音が立ち上がる瞬間や、演奏の継ぎ目そのものに耳が向く。

Canの代表曲としてまず挙がるような「I Want More」のようなポップ寄りの曲は、この作品には入っていない。一方で、バンドの核になる演奏感、つまりJaki Liebezeitのリズム、Irmin Schmidtの鍵盤、Michael Karoliのギター、Holger Czukayの編集感覚へつながる要素は、初期の段階で確認できる。

聴きどころとして見えるもの

実際に聴くと、後年のCanにある「曲の形に収まらない推進力」が、まだ荒い輪郭のまま出ているのが分かる。リズムが前へ進むというより、同じ場所を回り続けながら少しずつ密度を上げていく感触。ギターやキーボードも、旋律を強く押し出すというより、音の層を足していく役割に寄っている。

Canの魅力は、派手な展開よりも、反復が続く中で微妙なズレが生まれるところにあるが、この時期の録音はその性格がまだ初期衝動に近い形で残っている。クラウトロックの中でも、即興性と構築性の境目をそのまま見せるタイプの記録だ。

メンバーと背景

  • Irmin Schmidt
  • Holger Czukay
  • Jaki Liebezeit
  • Michael Karoli
  • Malcolm Mooney
  • Damo Suzuki
  • そのほかの参加メンバーとして David Johnson、Rosko Gee、Rebop Kwaku Baah などの名前も挙がる

Canはその後、各メンバーがソロや別プロジェクトでも活動し、1990年代以降も再評価が進んだ。録音アーカイブの豊富さでも知られていて、『Delay 1968』のような作品は、その蓄積の中で初期の姿を確認できる一枚として位置づけられる。

まとめ

『Delay 1968』は、Canの完成形ではなく、完成へ向かう途中の記録だ。1968年から1969年にかけての録音を1981年にまとめたもので、クラウトロック、サイケデリック・ロック、実験音楽の境界をまたぐ初期Canの姿が見える。代表曲を楽しむ盤というより、Canがどのようにして独自の音へ移っていったかをたどるための作品、という見方がしやすい。

トラックリスト

  • A1 – Butterfly (8:20)
  • A2 – Pnoom (0:26)
  • A3 – Nineteen Century Man (4:18)
  • A4 – Thief (5:03)
  • B1 – Man Named Joe (3:54)
  • B2 – Uphill (6:41)
  • B3 – Little Star Of Bethlehem (7:09)

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2026.08.09
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