Rainman – Rainman (2021)

オランダのビート/ガレージ・ロック・シーン「ネーデルビート(Nederbeat)」の最高峰として知られる伝説的バンド、Q65。そのギタリスト兼メイン・ソングライターであったフランク・ナイエンス(Frank Nuyens)が、バンドの解散・活動休止期に「レインマン(Rainman)」名義で1971年にネグラム(Negram)から発表した唯一のソロ・アルバム。2021年にミュージック・オン・ヴァイナル(Music On Vinyl)から「50周年記念盤」として180g重量透明グリーン盤で限定復刻されたのが、この『レインマン(Rainman)』だ。

粗暴なガレージ・ビートから、内省的で牧歌的なアシッド・フォークへの転身

「The Life I Live」や傑作『Revolution』(1966年)で聴かせたQ65の荒削りで暴力的なR&Bビートとは打って変わり、本作でフランク・ナイエンスが提示したのは、雨空のように仄暗く、そして温かなアコースティック・シンガーソングライター/フォーク・ロックの世界だ。

アコースティック・ギターの爪弾きとメランコリックなハーモニカの音色、そしてナイエンスの素朴で飾らないボーカルが全編を包み込む。ニック・ドレイク(Nick Drake)やティム・ハーディン(Tim Hardin)、ドノヴァン(Donovan)といった英米のフォーク/アシッド・フォークの先達からの影響を色濃く感じさせつつも、低地国オランダ特有の湿り気を帯びた哀愁とノスタルジーが独自の気品を与えている。

盟友ジェイ・バーの作詞と、オランダ・ロックの名手たちが紡ぐアンサンブル

本作の大きな魅力となっているのが、Q65の盟友ドラマーであり優れた詩人でもあったジェイ・バー(Jay Baar)の存在だ。ナイエンスが作曲した繊細なメロディに対し、バーが内省的な詩を提供し、楽曲の深みを決定づけている。さらにバー自身もドラムスで参加しているほか、キュ―ビー+ブリザーズ(Cuby + Blizzards)で活躍した名ドラマー、ディック・ビークマン(Dick Beekman)らオランダ・ロック界の名手が集結。ハーグのGTBスタジオおよびハールレムのボヴェマ・スタジオで録音された音像は、アンプラグドな親密さとサイケデリックな揺らぎが同居する見事なアンサンブルを描き出している。

タイトル曲「Rainman」の静謐なイントロから、切々とした歌声が胸を打つ「Natural Man」、どこかドノヴァンを思わせる軽妙なフォーク・ポップ「Don’t」、そして哀愁のフルートとアコースティック・リフが絡み合う名曲「Vicious Circle」へと続く前半部は息を呑む完成度だ。また、米フォーク界の名匠ティム・ハーディンの代表曲「Don’t Make Promises」のカバーも秀逸で、原曲の痛切さをナイエンス流の優しいフォーキー・サイケへと見事に昇華させている。

半世紀の時を経て輝きを増す、ダッチ・フォーク・サイケの至宝

B面でも「Money Means Nothing At All」や「Get You To Come Through」など、商業主義に背を向けたかのようなピュアなフォーク・ロックが展開される。当時のオランダ本国でもメガヒットには至らず、長らくサイケ/フォーク愛好家の間で「失われた名盤」として語り継がれてきた本作。半世紀を経た2021年のリイシューによって、フランク・ナイエンスという類まれなソングライターが残した最も誠実で美しい個人的な歌が、時代を超えて再び静かに鳴り響いている。

トラックリスト

  • A1 - Rainman
  • A2 - Natural Man
  • A3 - Don't
  • A4 - Vicious Circle
  • A5 - Don't Make Promises
  • A6 - You Will Be Freed By Me
  • B1 - Money Means Nothing At All
  • B2 - Get You To Come Through
  • B3 - She Told Me So
  • B4 - They Didn't Feel
  • B5 - The Joy That Is Inside
2026.04.29
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