The Doors – Other Voices (1971)
The Doors『Other Voices』レビュー
The Doorsの『Other Voices』は、1971年10月18日に発表された7作目のスタジオ・アルバム。ジム・モリソンが1971年7月に亡くなったあと、残ったレイ・マンザレク、ロビー・クリーガー、ジョン・デンスモアの3人で制作された作品で、バンドにとって大きな転機となる1枚だ。アルバムの中では、マンザレクとクリーガーがリード・ヴォーカルも分担している。
作品の位置づけ
『Other Voices』は、モリソン在籍時のThe Doorsとは明らかに性格の違うアルバムとして知られている。制作はモリソンの死の前から始まっていたが、完成の時点では彼は不在だった。レコードとしては、オリジナルのThe Doorsが次の段階へ進もうとした記録であり、同時に“ジム・モリソン抜きのThe Doors”という現実に向き合った作品でもある。
この時期のThe Doorsは、サイケデリック・ロックやブルース・ロックの文脈に置かれながらも、前作までのようなモリソンの強い存在感に依存しない形を探っている。結果として、オルガン主体のアレンジや、ギターと鍵盤のやり取りは残しつつ、ヴォーカルの印象はかなり変わっている。
聴きどころ
このアルバムでは、マンザレクとクリーガーの歌が中心になるため、The Doorsの“声”そのものが変わったように感じられる。モリソンの語りかけるような低音や、長いフレーズで引っ張る感覚とは異なり、曲ごとの輪郭が比較的はっきりしている。
実際に聴くと、バンドがモリソン不在の穴を埋めようとしている様子が伝わる。演奏はいつものThe Doorsらしく、オルガンの配置やリズムの進め方には独特の粘りがある一方で、ヴォーカルの中心が分散したぶん、曲の表情がより直接的に見える。ブルース寄りの土台は残りつつ、前作までの緊張感とは少し違う方向に進んでいる印象だ。
同時代の流れの中で
1971年という時期のThe Doorsは、60年代末のサイケデリック・シーンを引きずりながら、70年代のロックの空気へ移っていく途中にいる。アメリカのロック・バンドとしては、ブルースを土台にしつつ、鍵盤を前面に出したサウンドで独自の場所を築いていた。そういう意味では、同時代のブルース・ロック勢や、オルガンを軸にしたロック・バンドと比べても、かなり個性的な立ち位置にある。
ただし『Other Voices』では、バンドの看板だったモリソンの不在がそのまま作品の性格になっているため、従来のThe Doorsをそのまま期待すると印象は変わるかもしれない。バンドとしては続いているが、作品の重心はかなり組み替えられている。
制作と収録メンバー
クレジット上はレイ・マンザレク、ジム・モリソン、ロビー・クリーガー、ジョン・デンスモアの4人が中心。とはいえ、レコード制作時にはベースやパーカッションで複数のセッション・ミュージシャンが加わっている。レイ・ネオポリタン、ジェリー・シェフ、ジャック・コンラッド、ウィリー・ラフ、ヴォルフガング・メルツらが参加し、エミル・リチャーズのマリンバ、フランシスコ・アグアベラのパーカッションもクレジットされている。
オリジナル盤はゲートフォールド仕様で、内側には3人のメンバーのモノクロ写真が入る。ライナーには「New Magic In A Dusty World」と記されたカンパニー・インナー・スリーブと歌詞シートが付属する仕様。スリーブでは作曲クレジットが3人にまとめて記され、各曲ごとの作家名はレーベル面で確認する形になっている。
代表曲について
『Other Voices』は、The Doorsの中でも代表曲で語られることが多いアルバムではないが、バンドの転換点としては重要な1枚だ。モリソン時代の有名曲群とは別の文脈で聴く作品で、The Doorsという名前のまま、バンドがどこまで進めるかを示した記録でもある。
ひとことで
『Other Voices』は、ジム・モリソンの死の直後に残った3人が作った、The Doorsの次の一歩を刻んだアルバム。モリソン期の延長ではなく、別の形でThe Doorsの音を続けようとした1971年作として聴ける1枚だ。
トラックリスト
- A1 – In The Eye Of The Sun (4:48)
- A2 – Variety Is The Spice Of Life (2:50)
- A3 – Ships W/ Sails (7:38)
- A4 – Tightrope Ride (4:15)
- B1 – Down On The Farm (4:15)
- B2 – I’m Horny, I’m Stoned (3:55)
- B3 – Wandering Musician (6:25)
- B4 – Hang On To Your Life (5:36)