Peter Gabriel – So (1986)
Peter Gabriel『So』について
Peter Gabrielの『So』は、1986年に発表された5作目のソロ・アルバムだ。元Genesisのリード・シンガーとして知られる彼が、ソロ活動で大きく存在感を広げた時期の代表作としてよく挙げられる作品である。ロックを軸にしながら、ファンク、ソウル、ワールド・ミュージックの要素も取り込んだ構成で、80年代のポップ・ロックを語るうえでも外せない一枚になっている。
作品の位置づけ
このアルバムは、Peter Gabrielのソロ作の中でも特に広く知られたタイトルだ。前作までで築いてきた実験性を保ちながら、曲の輪郭やリズムの推進力をより明確にした印象がある。制作は1985年2月から12月にかけて行われ、録音とミックスは主にイングランドのReal World Studiosで進められた。アルバム全体に、スタジオ作品としての完成度の高さが見える。
収録曲と代表曲
『So』を語るとき、まず挙がるのが「Sledgehammer」だ。ファンキーなビートとホーン・セクション、そして印象に残るコーラスが前面に出た楽曲で、Peter Gabrielの代表曲として定着している。映像作品と結びついて語られることも多いが、音だけで聴いてもリズムの押し出しが強く、アルバムの中でも特に分かりやすい存在だ。
「Big Time」もよく知られた1曲で、タイトル通りの勢いを持つ。ベースとドラムの動きがはっきりしていて、80年代のメインストリーム寄りの感触が強い。アルバムの流れの中では、作品のポップな側面を示す曲として機能している。
一方で「Red Rain」や「Mercy Street」のような曲では、より内省的な側面が前に出る。「Red Rain」はオープニング曲としてアルバムの入口を作り、「Mercy Street」は静かな展開の中で緊張感を保つ。どちらも、派手さだけでは終わらない構成力を感じさせる。
聴きどころとして見える点
実際に聴くと、まずリズムの作り込みが目立つ。ドラムやパーカッションの配置が細かく、各曲のグルーヴをかなり明確に支えている。そこにシンセやギター、ホーン、コーラスが重なり、音数は多いのに、曲ごとの役割が整理されている印象だ。
また、ゲスト参加の多さもこの作品の特徴だ。クレジットを見ると、Kate Bush、Stewart Copeland、Youssou N’Dour、P P Arnold、Jim Kerrなど、多彩な顔ぶれが並ぶ。個々の曲に異なる色が出る理由として、こうした参加陣の存在は大きい。
同時代の文脈
1986年という時代を考えると、『So』は80年代中盤のポップ・ロックの中で、かなり洗練されたサウンドを持つ作品として置ける。シンセやサンプル的な質感を使いながらも、歌や演奏の芯が弱くなっていない点が印象的だ。広い意味では、当時のスタジオ志向のロック、あるいはアート・ロックの流れの中にあるアルバムと言える。
Genesisの流れと比較して聴くと、Peter Gabrielがソロで見せた方向性は、バンド時代のプログレ的な構築感を引き継ぎつつ、より直接的なポップ性へ向かったものとして見えやすい。かといって単純なヒット狙いに寄り切っていないところが、この作品の面白さだ。
盤の情報について
このUS盤は1986年のオリジナル仕様で、Specialty Records Corporationのプレスを示す刻印や、Artisanのロゴが見られる。カスタム印刷のインナー・スリーブが付属し、歌詞とクレジットが掲載されている。ジャケット裏面にはGeffen Records、Warner Bros. Recordsのクレジットが記載されている。
なお、後年のリマスター盤では「Sledgehammer」や「Red Rain」に音の違いがあることが知られているが、この1986年盤はその当時のオリジナル・ミックスで聴ける版として位置づけられる。
まとめ
『So』は、Peter Gabrielのソロ作の中でも、曲の強さとアレンジの緻密さがはっきり出たアルバムだ。代表曲の「Sledgehammer」をはじめ、ポップに開いた楽曲と、静けさや緊張感を持つ楽曲が同居していて、1980年代の彼の到達点のひとつとして見られる作品である。
トラックリスト
- A1 – Red Rain
- A2 – Sledgehammer
- A3 – Don’t Give Up
- A4 – That Voice Again
- B1 – In Your Eyes
- B2 – Mercy Street
- B3 – Big Time
- B4 – We Do What We’re Told (Milgram’s 37)