Renaissance – Illusion (1971)
Renaissance『Illusion』について
Renaissanceの『Illusion』は、1971年に発表された2作目のスタジオ・アルバムである。ロンドンで結成されたこのバンドは、ロックにフォークやクラシック音楽の要素を組み込む方向を早い段階から打ち出しており、本作もその流れの中にある作品として位置づけられる。のちに知られるアニー・ハズラム期の壮大なプログレ色とは少し違い、初期Renaissanceの輪郭をつかむうえで重要な1枚という印象が強い。
作品の位置づけ
『Illusion』は、オリジナル・メンバーを中心にした初期編成で制作された最後期の作品のひとつである。バンドはこの後、メンバー交代を重ね、1973年以降はアニー・ハズラム、マイケル・ダンフォード、ジョン・タウト、ジョン・キャンプ、テリー・サリヴァンを軸にした編成へ移っていく。そう考えると本作は、Renaissanceがまだ初期段階にいた時期の記録として聴かれることが多い。
この時期のRenaissanceは、同時代のプログレッシブ・ロック勢の中でも、派手な技巧だけに寄らず、アコースティックな感触や歌曲性を残している点が特徴的である。King CrimsonやYesのような鋭さとは別の方向で、長いフレーズの展開や、フォーク寄りの旋律が前に出るタイプの作品として捉えやすい。
録音と盤の情報
本作はOlympic StudiosとIsland Studiosで録音されている。今回のドイツ盤は1982年リリースの盤で、オリジナルの1971年盤とは別のプレスである。非見開きジャケット仕様で、70年代後半から80年代初頭に使われた青いセンター・レーベルが確認できる。マトリクスはエッチング主体で、「Made in Germany」の刻印はスタンピングという仕様になっている。
オリジナル盤と比べると、外装は簡素な作りになっている。見開きではないぶん、ジャケットの印象はかなり違って見える。
サウンドの印象
『Illusion』では、アコースティック・ギター、ピアノ、オルガン、そしてハーモニーを軸にした楽曲が中心になる。初期Renaissanceらしい、楽器の音数を詰め込みすぎない進め方で、曲が少しずつ形を変えながら展開していく。Keith Relfの関わりがあるためか、単なる後年のシンフォニック路線とは少し違い、ロックバンドとしての芯が残っているのもこの時期らしい。
実際に聴くと、派手な見せ場を連続させるというより、曲の骨格を丁寧に組み立てていく印象がある。ハードな歪みや大仰なオーケストレーションを前面に出すタイプではなく、旋律とアンサンブルの流れで聴かせる作りである。
メンバーと制作背景
このアルバムには、Keith Relf、Jim McCarty、Louis Cennamo、John Hawken、Jane Relfといった初期メンバーが参加している。さらに、後にバンドの中心的存在となるMichael Dunfordが本作で初登場している点も見逃せない。ここでの参加は、のちのRenaissanceの作風へつながる入口としても重要である。
Keith RelfとJim McCartyは、元々ブルース・ロックの文脈にいた人物であり、そこからロック、フォーク、クラシック寄りの要素をまとめようとしたのが初期Renaissanceの出発点だった。『Illusion』は、その実験がまだ進行形だった時期の記録とも言える。
同時代の文脈
1971年という時期は、英国のプログレッシブ・ロックが広く展開していた時代である。その中でRenaissanceは、複雑な構成を持ちながらも女性ヴォーカルを軸にした歌ものの感触を持ち、同系統のバンドの中でも少し異なる立ち位置にあった。後年のシンフォニック・ロックの流れに近い部分もあるが、この時点ではまだ初期のフォーク・ロック的な手触りが残っている。
まとめ
『Illusion』は、Renaissanceの初期像を知るうえで外せないアルバムである。のちの華やかな編成になる前の、バンドが音の方向性を探っていた段階がそのまま刻まれている。初期Renaissance、そしてKeith Relfの関わった時代を確認する作品として、1971年のオリジナル・リリースとあわせて押さえておきたい1枚である。
トラックリスト
- A1 – Love Goes On
- A2 – Golden Thread
- A3 – Love Is All
- A4 – Mr. Pine
- B1 – Face Of Yesterday
- B2 – Past Orbits Of Dust