C. B. Busser – Warship-Suite (1980)

スイスのプログレッシブ/ブルース・ロックバンド「Whipping Post」を中心となって率いたマルチ奏者、クルト・ビュッサー(Curt Büsser)によるソロプロジェクト「C. B. Busser」。1978年に多重録音を駆使して制作したデビュー作『Movies』に続き、1980年に自主レーベルのMusk Projectからリリースされたソロ第2作が本作『Warship-Suite』だ。

西暦3000年の地球を描いたSFトータル・コンセプト

アルバムタイトルが示す通り、本作はLP両面を通じてひとつの物語を描き出す組曲形式のコンセプト・アルバムとなっている。ジャケット裏面には西暦3000年の世界を舞台にしたSFストーリーが記されており、一度荒廃した地球へ人類が二度目の入植を果たした未来の情景が綴られている。

「環境が変わり、顔ぶれが変わり、問題が変わっても、ひとつだけ変わらないものがある。それが戦争だ」という一節から物語は幕を開ける。旧スペインにあたる地域「North-Sambronia」の統治者ソルガン王(King Solgan)が率いる軍艦が、略奪品や富を積み込んで嵐の海を母港へと航海していく設定だ。A面の「Warship (Intro)」や「Only Sea…Land!」で航海と寄港の様子が描かれ、中盤の「The Battle」、そしてB面ラストの「The Last Battle」へと続く構成になっている。

前衛の聖地サンライズ・スタジオとエティエンヌ・コノの参加

本作のレコーディングは、1979年1月から2月にかけてスイス・キルヒベルク(Kirchberg)のサンライズ・スタジオ(Sunrise Studios)で行われた。同スタジオはヘンリー・カウ(Henry Cow)やアート・ベアーズ(Art Bears)、ユニヴェル・ゼロ(Univers Zéro)といったヨーロッパのRIO(反対運動ロック)勢が数々の歴史的録音を残した場所としても知られている。

スタジオ主宰者でありエンジニアのエティエンヌ・コノ(Etienne Conod)自身が本作の録音に携わっており、特殊音響効果(Special sound effects)のクレジットにもその名を連ねている。プライベート・プレスながらも、スタジオの音響空間を活かした広がりのあるサウンドプロダクションが施されている背景には、コノによるエンジニアリングの存在があったようだ。

多重録音による構築とゲスト陣のアンサンブル

基本編成はビュッサー自身の一人多重録音だ。全曲の作曲・編曲はもちろん、ギター、ベース、各種シンセサイザー、ボーカル、パーカッションに至る大半のパートを自ら演奏し、ジャケットデザインまで手がけている。ヴィンテージ・プログレ愛好家の間ではメロトロンの使用盤として語られることもあったが、実際にはストリング・シンセサイザーを中心としたキーボードの多重レイヤーによってシンフォニックな空間が作られている。

全編を一人で完結させるのではなく、劇的な場面にはゲスト奏者を招いている点も興味深い。「Ship In The Morning Dew」や「The Battle」ではゲオルク・クレー(Georg Klee)によるフルートが導入され、「Ship In The Morning Dew」でのケトルドラム(ティンパニ)や「The Battle」の全編で鳴り響くドラムとパーカッションはプミ・ブルナー(Pumi Brunner)が担当している。さらに「Love And Hate」では”The Greatest Sunrise”と名付けられたコーラス隊が加わり、楽曲ごとに表情を変えるアンサンブルのアクセントとなっている。

自主レーベルMusk Projectからのプライベート・プレス

本作は大手レコード会社からではなく、スイスの自主レーベル「Musk Project」のカタログ番号MP 806として自主制作盤(プライベート・プレス)の形態で流通した。当時プレスされた枚数はごくわずかで、母体バンドであるWhipping Postの活動の合間にビュッサーが情熱を注ぎ込んだパーソナルな自主制作プログレとして、ヨーロッパのコレクター市場で長らく知る人ぞ知る存在として扱われてきた一枚だ。

トラックリスト

  • A1 - Warship (Intro)
  • A2 - Only Sea...Land!
  • A3 - Ship In The Morning Dew
  • A4 - Love And Hate
  • A5 - The Battle
  • B1 - Happy Faces
  • B2 - The Last Battle
2026.10.28
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