Mythos – Mythos (1972)

西ベルリンのバンド、Mythosが1972年にOhrから出したデビュー作。中心にいるのはギター、シタール、フルート、シンセ、ヴォーカルまで一人でこなすStephan Kaskeで、ベースのHarald Weisse、ドラムのThomas Hildebrandとのトリオ編成。Ohrのカタログでは22枚目にあたる1枚で、見開きジャケット仕様。A面は短いオープニングと組曲、B面は17分半の1曲だけという、いかにも72年のドイツらしい構成になっている。

同級生トリオから「Kraftwerk」名義、そしてMythosへ

KaskeとWeisse、Hildebrandは、もともとアビトゥーア(大学入学資格試験)を控えた学校の同級生。独学で楽器を覚えた3人で、最初は「The Lovely People」というバンド名だったらしい。Kaske本人の後年のインタビューによれば、1968年から70年頃には西ベルリンで年に100本以上のライヴをこなしていたそうで、70年1月からは西ドイツ各地にも出ていくようになった。

面白いのは名前をめぐる話。Discogsのプロフィールによると、1970年11月のライヴ・デビューは「Kraftwerk」名義だったという。ところが同じ頃、デュッセルドルフでRalf HütterとFlorian Schneiderが同じ名前で活動していることを知り、改名してMythosに落ち着いたようだ。デュッセルドルフ側のKraftwerkも1970年にデビュー作を出したばかりで、ドイツの東西両端で同じ名前のバンドがほぼ同時に動き出していたことになる。

ライヴでの評判がOhrの目に留まり、契約が決まる。ニーダーザクセン州で開かれ「ドイツのウッドストック」とも呼ばれたLangelsheimのフェスティバルでは2日間ともオープニングを務め、FamilyやColosseumのサポート、ベルリンでのHumble Pieの前座も経験している。

Ohrとディーター・ディルクスのスタジオ

Ohrは1970年にRolf-Ulrich Kaiserが立ち上げたレーベルで、Metronomeを親会社に持ち、Tangerine DreamやKlaus Schulzeのデビュー作、Ash Ra Tempel、Guru Guru、Embryo、Popol Vuhなどを世に出している。同じ1972年にはTangerine Dream『Atem』やAsh Ra Tempel『Join Inn』も同レーベルから出ている。

録音は1971年10月から11月、ケルン近郊シュトンメルンのDierks-Studioで行われ、プロデュースはDieter Dierks。Ohr周辺のバンドが数多く録音したスタジオで、Dierksは後にScorpionsの作品を長く手がける人物でもある。Kaskeによると、Ohrと契約してから数か月後にこのスタジオが押さえられ、アルバムは1972年の春に世に出た。Dierksとの関係は続き、2作目『Dreamlab』も彼のプロデュース。

A面:ヘンデルのフルートから組曲へ

幕開けの「Mythoett」は3分ほどの小品で、Kaskeのフルートがヘンデルの「王宮の花火の音楽」を引用するところから始まる。クラシックの素材をロックの編成に持ち込む手つきは、当時のドイツのバンドの中でもかなりストレートな部類だろう。

続く「Oriental Journey」から「Hero’s Death」への流れは、2曲合わせて17分を超えるA面のメイン。前半はKaskeのシタールが主役で、メロトロンも使われているようだ。後半の「Hero’s Death」ではギターのリフが重くなり、ぐっとハードな展開へ。シタールもフルートもギターも、すべてKaskeの演奏。

B面「Encyclopedia Terrae」

B面をまるごと使う「Encyclopedia Terrae」は約17分半、CDなどではパート1(10分強)とパート2(7分強)に分けて表記されることもある。SF的な世界観とエコロジーのテーマが最もはっきり出ている曲で、爆撃音や兵士の行進のような戦争の効果音まで盛り込まれている。Kaske自身、当時の歌詞はSF、ドラッグ、反戦、そして自分たちの世代の夢や感情を扱っていたと語っている。AllMusicのレビューでは、この曲がアルバムのハイライトとして挙げられている。

エフェクトを通したヴォーカルが多く、全体のトーンは明るいものではない。英Record Collector誌のレビューでは、地球の過去と未来を暗く描いた作品として紹介されていた。

その後のMythos

このトリオは3年ほどで解散。Kaskeは別のメンバーとバンドを組み直したものの録音には至らず、その後Mythosの名前を復活させて1975年に『Dreamlab』を発表する。1976年にはSven Dohrow(ギター)、Eberhard Seidler(ベース)、Ronny Schreinzer(ドラム)を迎えてヘヴィな方向へ舵を切り、Venusから『Strange Guys』(1978年)、『Concrete City』(1979年)を出した。1980年にKaskeはベルリンで録音スタジオを始め、Skyからソロ作を発表。DohrowとSchreinzerはThe Twinsを結成し、シンセポップへ進んでいる。ドラムのHildebrandは後にMetropolisでも叩き、2021年に亡くなった。

Mythosという名前は2000年代以降も続き、プラネタリウムや教会、アート・イベントでの演奏も行っている。オリジナルのOhr盤のほか、SpalaxからのCD化、Wah Wahからの500枚限定アナログ、近年のOhr名義での再発など、何度も再発されている。

トラックリスト

  • A1 - Mythoett (3:00)
  • A2.1 - Oriental Journey
  • A2.2 - Hero's Death (17:42)
  • B - Encyclopedia Terrae (17:31)
2026.11.06
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