Keith Christmas – Stimulus (1969)

エセックス州コルチェスター近郊のウィヴンホー生まれのシンガー・ソングライター、Keith Christmasのデビュー作。1969年11月にRCA Victorから出たLP(SF 8059)で、Sandy Robertonの制作会社September Productionsとの契約を通じてのリリース。バックを務めたのは、元The ActionのメンバーたちによるMighty Baby。

建築学生、ブリストルのフォーク・シーンから

Christmasはもともとバース大学で建築を学ぶ学生。当時の建築学部はブリストルのKings Weston Houseに置かれていて、その縁でブリストルのフォーク・シーンに出入りするようになった。録音のために大学からロンドンまで車で通い、終わればバースに戻って勉強を続ける、という生活だったらしい。本人いわく、そのせいでロンドンでの付き合いはあまり広がらなかったそうだ。

同じ1969年には、ベッケナムのパブThree TunsでDavid Bowieと出会っている。BowieはそこでBeckenham Arts Labを主宰していて、Christmasのギターを気に入り、アルバム『Space Oddity』への参加を頼んだ。Christmasは「Letter to Hermione」「God Knows I’m Good」「An Occasional Dream」でアコースティック・ギターを弾いていて、これもリハーサルなしでその場でパートを考えたものだったという。

初対面のMighty Babyと4トラックで

プロデュースはSandy Roberton。アコースティック系のアーティストを何組もマネジメント・録音していた人物で、このセッションにMighty Babyを呼んだのも彼だった。参加メンバーはエレキ・ギターのMartin Stone、ベースのMike Evans、ピアノのIan Whiteman、ドラムのRoger Powellで、さらにペダル・スティールでMatthews Southern ComfortのGordon Huntleyが加わっている。

後年のインタビューでChristmasが語っているところでは、彼はMighty Babyのメンバーとは録音当日まで一度も会ったことがなかった。しかもリハーサルなし。とりあえず自分が弾き始めて、バンドがそこにバッキングを付けてくれるのを期待するというやり方だったそうだ。スタジオに入ること自体これが初めてで、本人は「バンドは最高だった」「みんな楽しみすぎた」と振り返っている。

録音機材は4トラック。ベースとドラムで1トラック、ヴォーカルとアコースティック・ギターはその場でミックスして別の1トラック、という具合にまとめて録っていく方式で、後からのリミックスはできない。録音の時点でバランスを決め切る必要があった。ロンドン・チェルシーのSound Controlで録られたとする資料もある。

収録曲とサウンド

収録はA面に「Travelling Down」「Bedsit Two-Step」「Roundabout」「Ice Man」、B面に「I Know You Can’t Lose」「Metropolis」「Trial & Judgement」の全7曲。Christmasのアコースティック・ギターと歌を軸に、Martin StoneのエレキとIan Whitemanのピアノ、Gordon Huntleyのペダル・スティールが重なる編成。

この方向性は本人にとっては不本意だったようで、Christmasは後にこのアルバムを認めない姿勢を見せている。レビューの中にも、カントリー寄りに作り込みすぎたプロダクションを指摘するものがある。インタビューでも、初期の曲は「いかにも若者が書いたもの」で、昔のアルバムは聴き返さないと語っていた。

その後のキャリア

1970年には第1回のグラストンベリー・フェスティバルに出演し、同年に2作目『Fable of the Wings』を発表。ジャケット写真は、彼がよくジャムっていたブリストルのアシッド・ロック・バンドMagic Muscleのスクワット(占拠物件)の中で撮られている。1971年の『Pigmy』ではRobert Kirbyが合唱と弦のアレンジを担当した。

70年代にはThe Who、King Crimson、Ten Years After、Frank Zappa、Roxy Musicのサポートも務め、その後はEmerson, Lake & Palmerが立ち上げたManticoreに移籍。『Brighter Day』(1974年)、そしてBooker T. & the M.G.’sのSteve CropperとDonald “Duck” Dunnを迎えてアメリカで録音した『Stories from the Human Zoo』(1976年)を出している。同じManticore周辺では、Pete SinfieldがプロデュースしたEsperantoの『Danse Macabre』(1974年)でも歌った。

1976年以降しばらく演奏から離れ、80年代後半にブリストルへ戻ってからはソロやブルース・バンドRed Houseで活動を再開。2019年の『Life, Life』まで作品を出し続け、Bowieゆかりのベッケナムのイベントにも出演している。

『Stimulus』はその後Talking ElephantからCD化され、これが初のCD化。ボーナスとして1969年12月のライヴ音源(「Buddwing」「Examinations Rag」など)と、フェスや海賊ラジオで親しまれたという「The Ballad of Robin Head」のスタジオ録音が追加されている。

トラックリスト

  • A1 - Travelling Down
  • A2 - Bedsit Two-Step
  • A3 - Roundabout
  • A4 - Ice Man
  • B1 - I Know You Can't Lose
  • B2 - Metropolis
  • B3 - Trial & Judgement
2026.11.06
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