Tracie Young – Far From The Hurting Kind (1984)
Tracie Young『Far From The Hurting Kind』について
Tracie Youngは、1965年生まれのイングランド出身のポップ・シンガー。『Far From The Hurting Kind』は1984年に登場した作品で、今回の日本盤も同じ1984年のリリースとして扱われる1枚だ。ジャンル表記はElectronic、スタイルはSynth-pop。80年代前半らしい、打ち込み主体のポップ・サウンドを軸にした時期の作品として見ておくと分かりやすい。
この作品は、Tracie Youngのキャリア初期を知るうえで重要な位置にある。彼女はのちに英国ポップ・シーンの文脈で語られることが多いが、ここではまず、10代後半の若い声が前面に出ることが大きな特徴になっている。曲調はシンセのリズムとメロディを中心に組み立てられ、当時の英ポップらしい軽快さと、少し直線的な推進力がある。
日本盤のタイトル表記
この日本盤の帯に出るタイトルは「恋のしぐさ」。英題の『Far From The Hurting Kind』とはかなり印象が違うが、日本語タイトルとしては内容の受け取りやすさを意識した表記になっている。副題のように見えるこの日本語名は、「Gestures of love」という意味合いで案内されている。
サウンドの印象
実際に耳にすると、80年代前半のシンセポップらしく、音の輪郭がはっきりした作りが目立つ。ドラムは乾いた鳴り方で、ベースラインは前に出すぎずに曲を支える役回り。Tracie Youngのボーカルは、音数の多い編曲の中でも埋もれにくいタイプで、曲のフレーズをそのまま素直に運ぶ場面が多い。
この時期の英シンセポップと比べると、極端に実験的な方向へ振るというより、歌ものとしての分かりやすさが優先されている印象だ。近い文脈としては、同時代の女性ボーカルを配したUKポップや、ラジオ向けのシンセポップ作品群を思わせる場面がある。音の作りは80年代前半の空気をよく映している。
作品の位置づけ
Tracie Youngにとっては、シンガーとしての輪郭を示す初期の一作として見られる作品だろう。1984年という時期は、シンセサイザーとリズムマシンを土台にしたポップが広く浸透していた頃で、この作品もその流れの中にある。若い声質と整ったアレンジの組み合わせが、この時代の英国ポップらしさをそのまま伝えている。
ヒット曲・代表曲について
この作品については、広く知られた代表曲を一曲だけ強く押し出すというより、アルバム全体の流れで聴かれるタイプの印象がある。曲ごとのキャラクターを、シンセ主体の編曲とボーカルの相性で追っていく楽しみ方が合っている。
まとめ
『Far From The Hurting Kind』は、1984年の英国シンセポップを背景にしたTracie Young初期の作品として整理できる。日本盤では「恋のしぐさ」というタイトルで紹介されており、当時のポップ作品らしい分かりやすい手触りと、若い女性ボーカルのまっすぐな表情がポイントになっている。80年代前半の電子音ポップをたどるうえで、Tracie Youngという名前を押さえる入口になる1枚だ。
トラックリスト
- A1 – (I Love You) When You Sleep
- A2 – Soul’s On Fire
- A3 – Nothing Happens Here But You
- A4 – I Can’t Hold On ‘Till Summer
- A5 – Dr. Love
- B1 – Thank You
- B2 – Moving Together
- B3 – Spring, Summer, Autumn
- B4 – What Did I Hear You Say
- B5 – Far From The Hurting Kind