Vangelis – Heaven And Hell (1975)

Vangelis / Heaven And Hell

ギリシャ出身の作曲家、Vangelisによるアルバム「Heaven And Hell」。オリジナルは1975年の作品で、この日本盤は1976年にRVCから発売されたプレスになる。電子音楽を軸にしながら、現代音楽的な構成や実験的な手触り、さらにオーケストラ的な広がりまで含んだ作品で、Vangelisの初期代表作のひとつとして知られている。

作品の位置づけ

Vangelisは、Aphrodite’s Childのメンバーとして知られたのち、ソロで独自の音楽を築いていった人物。この「Heaven And Hell」は、そのソロ期における大きな節目のような1枚で、シンセサイザーを中心に据えた作りながら、単なる電子音の実験に留まらない内容になっている。後年の映画音楽で広く知られる前段階にある作品として見ると、作曲家としての輪郭がかなりはっきり出ている盤だと思う。

特に、クラシック寄りの構成感と、当時のプログレッシブ・ロック周辺で共有されていたダイナミックな展開が同居しているのが印象的。電子音楽という枠に入る作品ではあるが、音の置き方や曲の流れは、いわゆるシンセポップ的なものとはかなり違う。

聴きどころ

このアルバムでよく触れられるのが、組曲的な流れを持つタイトル曲「Heaven and Hell」。アルバム全体の核になる曲で、パートごとに表情が変わり、静かな部分と強く押し出す部分の落差がある。旋律の分かりやすさと、音響的な広がりが両立している点がポイントだろう。

実際に聴くと、音の重なり方はかなり立体的で、シンセの持続音、打楽器的な音、旋律線がぶつかり合いながら進む感覚がある。派手なメロディで押し切るというより、音の層が少しずつ積み上がっていくタイプの作り。ヘッドホンで聴くと、左右の配置や残響の使い方が見えやすい盤でもある。

また、Vangelisらしいメロディの明快さもあるので、前衛寄りの電子音楽に振れ切ってはいない。難解さよりも、構成の大きさや音色の変化で引っ張る作品という印象だ。

同時代の文脈

1970年代半ばは、シンセサイザーを前面に出した作品が徐々に増えていった時期で、電子音楽とロック、クラシックの境界がかなり揺れていた。「Heaven And Hell」もその流れの中にあるが、クラウトロック系の反復感や、英国プログレ周辺の大作主義とも少し距離を取りつつ、独自の組み立てをしている。

同時代のアーティストでいうと、電子音の使い方ではKlaus SchulzeやTangerine Dreamの名前が思い浮かぶし、構成の大きさではイエスやエマーソン・レイク・アンド・パーマーのようなプログレ勢とも比較されやすい。ただしVangelisの作品は、演奏の技巧を見せる方向より、音楽全体の流れを設計する方向に重心がある。

日本盤について

この日本盤は帯付きで、歌詞インサートが日本語と英語の両方で付属する仕様。RVC Corporationによる日本製プレスで、℗1976 RCA Recordsのクレジットが入っている。オリジナルの1975年作品に対して、こちらは1976年の日本盤として流通したものになる。

日本盤ならではの情報としては、帯や解説、インサートの存在が大きい。英語詞ではない作品なので、歌詞というよりは、作品の構成やタイトルの意味を確認する補助として機能するタイプの付属物だろう。

まとめ

「Heaven And Hell」は、Vangelisのソロ作の中でも、電子音楽・現代音楽・実験性・オーケストラ的なスケール感がまとまっている1枚。のちの映画音楽で広く知られる前に、彼がどのように大きな音の設計をしていたのかを見せる作品でもある。タイトル曲を中心に、1970年代の電子音楽の広がりをそのまま体現しているような内容だ。

トラックリスト

  • A1 – Heaven And Hell (Part 1) (16:59)
  • A2 – So Long Ago, So Clear (5:46)
  • B – Heaven And Hell (Part 2) (21:15)

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2026.08.31
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