Mandrill – Beast From The East (1975)
パナマにルーツを持ち、ニューヨーク・ブルックリンのストリートで結成されたウィルソン3兄弟(カルロス、ルー、リック)を中心に、ジャズ、ラテン、アフロ・カリビアン、ロック、ファンクを縦横無尽に混交させた雑食性ミクスチャー・ファンクの先駆者、マンドリル(Mandrill)。ポリドール(Polydor)黄金期を経てユナイテッド・アーティスツ(United Artists)へ移籍した彼らが、1975年に発表した通算6作目のアルバムが、この『ビースト・フロム・ジ・イースト(Beast From The East)』だ。
東海岸の野性とフィリー・ソウルの洗練が交錯するサウンド
西海岸のサンタナ(Santana)やタワー・オブ・パワー(Tower of Power)の爽快感に対し、ニューヨーク・イーストコーストのタフで混沌としたゲットーの熱気を体現し続けてきたマンドリル。アルバム名『Beast From The East(東からの野獣)』が誇示するように、本作は彼らのルーツである強靭なストリート・ファンクの切れ味を前面に押し出した一枚となっている。
レコーディングはカリフォルニア州バーバンクのケンズン・レコーダーズに加え、フィリー・ソウルの聖地であるフィラデルフィアのシグマ・サウンド・スタジオ(Sigma Sound Studios)でも敢行。流麗なストリングスやフィリー特有の洗練されたグルーヴを吸収しつつも、骨太なホーン・セクションとワイルドなパーカッションが炸裂する独自のアンサンブルを構築している。
カリプソ・ディスコから故郷パナマへのオマージュまで
アルバムの冒頭を飾る「Disco Lypso」は、当時急速に台頭していたディスコ・ビートと、カリブ海伝統のカリプソのリズムを大胆に融合させた先駆的なクロスオーバー・ナンバー。陽気なスティール・ドラム調のパーカッションと祝祭感あふれるコーラスが躍動する。
続く「Honey-Butt」や「Livin’ It Up」では、うねるスラップ・ベースと歪んだロック・ギター、分厚いブラス・リフが一体となったマンドリル節全開の重量級ヘヴィ・ファンクを展開。また、B面に収められた「Panama」は、ウィルソン兄弟の生まれ故郷への熱い郷愁とアフロ・キューバン・リズムへの深い敬意が込められた名曲であり、哀愁を帯びたフルートと熱狂的なコンガの乱れ打ちが胸を打つ。さらに、シンセサイザーのスペーシーな響きを取り入れたジャズ・ファンク「Aqua-Magic」や「Synthia Song」など、70年代半ばらしいコズミックな音響実験も聴き逃せない。
ヒップホップ世代を魅了し続ける無敵のブレイクビーツの宝庫
パブリック・エナミー(Public Enemy)やカニエ・ウェスト(Kanye West)、エミネム(Eminem)ら数多くのヒップホップ・プロデューサーからサンプリングの宝庫として崇められてきたマンドリル。ジャンルの境界線を軽々と踏み越え、人種や文化のハイブリッドをグルーヴへと昇華させた本作は、70年代レア・グルーヴ/ラテン・ファンクの豊かなダイナミズムを余すところなく捉えた傑作だ。
トラックリスト
- A1 - Disco Lypso (4:01)
- A2 - Honey-Butt (4:57)
- A3 - Livin' It Up (4:22)
- A4 - Love Is Happiness (4:50)
- B1 - Ratchet (Como Se Va La Cosa) (3:09)
- B2 - Dirty Ole Man (3:21)
- B3 - Panama (3:48)
- B4 - Aqua-Magic (4:12)
- B5 - Synthia Song (3:09)
- B6 - Peaceful Atmosphere (0:42)