E-I-E-I-O – Land Of Opportunity (1986)
80年代半ばのアメリカ中西部インディーズ・シーンにおいて、パンクの荒削りな衝動とアメリカン・ルーツ・ミュージックの哀愁をこれほど見事な純度で交差させた作品は他にないだろう。ウィスコンシン州ミルウォーキー出身の5人組バンド、E-I-E-I-Oが1986年に名門Frontier Recordsから放った鮮烈なデビュー・アルバム『Land Of Opportunity』は、いわゆる「カウパンク(Cowpunk)」や「ルーツ・ロック」の枠組みを遥かに凌駕する瑞々しい輝きを放ち続けている。
西海岸名門Frontierからの越境と、スティーヴ・バーリンによるプロデュース手腕
LAのハードコア・パンクやペイズリー・アンダーグラウンドの震源地として知られるFrontier Recordsが、中西部ミルウォーキーの泥臭いバー・バンドに白羽の矢を立てたという事実自体が、本作の特異な立ち位置を物語っている。プロデュースを手掛けたのは、当時Los Lobosでグラミー賞を獲得し、自身もThe Blastersなどでルーツ・ロックの最前線を走っていたスティーヴ・バーリン(Steve Berlin)と、ブライアン・ウィルソンやビーチ・ボーイズの作品で名高い名匠マーク・リネット(Mark Linett)だ。
バーリンの手腕は、バンドがライヴハウスで鍛え上げてきた荒削りな突進力を一切スポイルすることなく、ロカビリーやカントリー、フォークの伝統的な語法を鮮烈なインディー・ロックのダイナミズムへと研ぎ澄ませた点にある。さらに「Blue Mountaintop」には名匠T・ボーン・バーネット(T-Bone Burnett)がアコースティック・ギターで客演するなど、当時のルーツ・リバイバル最前線の重鎮たちが惜しみない信頼を寄せたプロダクションが施されている。
痛快なジャングル・ギターと哀愁のソングライティング:全曲捨て曲なしの熱量
オープニングを飾る「This Time」のイントロが鳴り響いた瞬間、胸のすくようなジャングリーなギターリフと跳ね回るビートが聴き手の心を掴む。スティーヴ・サマーズの伸びやかでどこか切なさを帯びたヴォーカルと、ロブ・ハーディング、マイク・ホフマンの鋭利なツイン・ギターが織りなすアンサンブルは、カントリーの軽妙さとガレージ・パンクの火花を同時に散らす。
息もつかせぬ疾走感で駆け抜ける「Go West Young Man」、ほろ苦いメロディが胸を打つバラード「Hello Heartache」、そして中西部の労働者階級のリアルな息遣いを切り取った「Hey, Hey, Round Here」に至るまで、全編にわたって一切の緩みがない。同じくウィスコンシン州から同時期にメジャーへ進出したBoDeansと並び称されながらも、E-I-E-I-Oの楽曲にはより生々しいストリートのざらつきと、純粋なロックンロールの気骨が宿っている。
90年代オルタナ・カントリーの夜明けを告げた隠れた金字塔
インディー・レーベルからのリリースという流通の制約もあり、本作は商業的な大ヒットには結びつかなかったものの、のちにアンクル・トゥペロ(Uncle Tupelo)やウィルコ(Wilco)、ジェイホークス(The Jayhawks)らが切り拓く「オルタナ・カントリー(No Depression)」ムーヴメントの決定的な先駆者として、今日ますますその歴史的評価を高めている。レコードの溝から立ちのぼる、80年代アメリカン・インディーズが持っていた無垢なエネルギーと豊かな音楽的土壌を体感する上で、絶対に素通りできない名盤である。
トラックリスト
- A1 - This Time
- A2 - Hello Heartache
- A3 - Get Back To Arkansas
- A4 - Tear It Down
- A5 - Me And Jesus Christ
- B1 - Go West Young Man
- B2 - Every Word True
- B3 - White Lines, Blue Skies, Black Top
- B4 - Blue Mountaintop
- B5 - Middle Of November