Jethro Tull – A (1980)
Jethro Tull『A』について
Jethro Tullの『A』は、1980年に発表された13作目のスタジオ・アルバム。ブリティッシュ・ロックの文脈の中で、フルートを前面に出したイアン・アンダーソンの歌と演奏で知られるこのバンドが、80年代の入口で出した作品だ。録音は1980年5月16日から6月6日まで行われ、同年8月29日にUK、9月1日にUSで発売された。
バンドのキャリアの中では、70年代後半までのフォーク色や組曲的な長尺曲とは少し違う、より引き締まったバンド・アンサンブルが目立つ時期の作品として位置づけられる。メンバーにはイアン・アンダーソンに加え、マーティン・バレ、デイヴ・ペッグ、ジョン・グラスコック、ドン・エイリー、エディ・ジョブソン、そしてギターにトニー・アイオミが参加しているのが大きな特徴だ。
作品の輪郭
『A』はロックを基調にしたアルバムで、プログレッシブ・ロックの要素を残しながらも、80年という時代に合わせて音の整理が進んだ印象を受ける。演奏は密度がありつつ、過度に長大化しない構成でまとまっている。Jethro Tullらしいフルートの存在感は保たれつつ、ギター、キーボード、リズム隊の役割分担がはっきりした作りになっている。
実際に聴くと、70年代中期の大作主義とは違う、バンドとしての機動力が前に出る。音数は多いが、各パートの動きが比較的追いやすく、アレンジの整理されたアルバムという印象が強い。
同時代の流れの中で
1980年のロック界では、70年代プログレの大作路線が少しずつ姿を変えていった時期でもある。Jethro Tullもその流れの中で、従来のスタイルをそのまま繰り返すのではなく、よりコンパクトな曲作りへ寄っている。プログレッシブ・ロックの文脈では、YesやGenesisなどと同じく、70年代的な語法を80年代に持ち込む動きの一つとして見られることが多い。
その一方で、Jethro Tullは単なる“プログレ・バンド”というより、ブリティッシュ・ロックの中でフォーク、ブルース、室内楽的な感触を織り込んできたグループでもある。『A』では、その幅広さが比較的コンパクトな形で表れている。
注目曲とエピソード
このアルバムでは、タイトル曲の「A」が作品名と同じく中心的な存在として語られることが多い。アルバム全体の顔役として扱われやすい曲で、80年時点のバンドの方向性を示す一曲になっている。
また、トニー・アイオミの参加もこの作品の重要な話題だ。Black Sabbathのギタリストとして知られる彼が関わっていることで、Jethro Tullの中でも少し異なる硬質な感触が加わっている。メンバー表を見ても、当時のバンド編成が流動的だったことがわかる。
まとめ
『A』は、Jethro Tullが70年代の延長線上にいながら、1980年の空気に合わせて輪郭を整えたアルバム。フルート主体の個性はそのままに、バンド・サウンドを前に出した構成が印象に残る作品だ。プログレッシブ・ロックの流れを追う上でも、Jethro Tullのディスコグラフィーをたどる上でも、ひとつの節目として見えてくる。
トラックリスト
- A1 – Crossfire (3:51)
- A2 – Fylingdale Flyer (4:27)
- A3 – Working John, Working Joe (5:01)
- A4 – Black Sunday (6:33)
- B1 – Protect And Survive (3:22)
- B2 – Batteries Not Included (3:47)
- B3 – Uniform (3:30)
- B4 – 4.W.D. (Low Ratio) (3:37)
- B5 – The Pine Marten’s Jig (3:23)
- B6 – And Further On (4:19)