Kansas – Power (1986)
Kansas『Power』について
Kansasの『Power』は、1986年に発表された作品で、バンドの80年代後半の動きを知るうえで外しにくい1枚です。Kansasは1973年にカンザス州トピカで結成されたアメリカのロック・バンドで、プログレッシブ・ロック寄りの構成感と、AORやハードロックの要素を行き来してきたグループとして知られています。
この『Power』は、そうしたKansasの長い活動の中でも、80年代型の録音感や曲づくりが前面に出た時期の作品として位置づけられる盤です。盤面のクレジットには、デジタル録音・マスタリング、そしてDirect Metal Masteringの表記があり、音の輪郭を強く意識した作りになっていることがうかがえます。
作品の輪郭
本作のスタイルは、Pop Rock、Prog Rock。Kansasらしい楽曲の組み立てを保ちながら、当時のロック・アルバムらしい整った音像に寄せた内容です。ジャケット内袋にはクレジットと歌詞が載ったカスタム仕様のグレーのインナー・スリーブが付属しており、作品としてのまとまりを意識した装丁になっています。
制作クレジットには、Crawford Communications、Ricky Keller Studios、M.O.R. Studiosでのプリ・プロダクションが記されています。こうした複数スタジオの関与も含めて、バンド単独のライヴ感だけで押し切るというより、録音と編集の精度を重視した時代の作品という印象が残る内容です。
Kansasというバンドの中での位置づけ
Kansasは、70年代中盤の代表作で知られる一方、80年代には編成や音楽性の変化を重ねながら活動を続けてきました。『Power』は、その流れの中で1986年に出たアルバムで、当時のバンドがどのように自分たちの持ち味を現代化していたかを見る手がかりになる作品です。
メンバー表記には、Steve Walsh、Rich Williams、Phil Ehart、Kerry Livgren、Robby Steinhardt、Dave Hope、John Elefante、Billy Greer、Tom Brislin、Zak Rizvi、Joe Deninzon、Ronnie Plattら、時期をまたいだ名前が並びます。Kansasというバンドが長く続いてきたこと、そして時代ごとに人員が入れ替わりながらも活動を保ってきたことが、この情報だけでも伝わってきます。
音の作りと盤の特徴
リリースノートには「Digitally recorded and mastered to insure highest audio fidelity. Therefore, play this record loud.」という記述があり、音質面へのこだわりが前面に出ています。さらにDirect Metal Masteringの表記もあるため、カッティング段階での解像感やレンジ感を意識した盤と考えられます。
また、レーベルや関係者への謝辞が非常に多く、録音・制作・周辺スタッフを含めた大きな体制で作られたことがわかります。Yamaha Drums、Zildjian Cymbals、Remo Drum Heads、Peavey Amps、Ernie Ball、Lexicon、DiMarzio、JBL、Paul Reed Smith Guitarsなど、機材名も多く並んでおり、当時のスタジオ制作の現場感が残るクレジット構成です。
曲と聴きどころ
本作の具体的な収録曲名まではここでは触れませんが、Kansasの作品群の中で80年代らしい整ったサウンドと、バンドの持つ演奏力が交差するポイントとして聴かれることが多い一枚です。特に、Steve Walshのボーカル、Rich Williamsのギター、Phil Ehartのドラムといったバンドの核になる要素は、Kansasらしい緊張感を支える部分として注目しやすいところです。
もしKansasの代表曲群が70年代の長尺構成や変拍子の印象で語られやすいとすれば、『Power』は、そうしたイメージを保ちながらも80年代の録音美学に寄せた時期の記録として見ると、位置づけが掴みやすい作品です。
同時代の文脈
1986年という年は、プログレッシブ・ロックの初期的な文法がそのまま主流だった時代ではなく、よりコンパクトでラジオ適性のあるロックが強かった時期です。その中でKansasのようなバンドは、長年のバンド・サウンドを残しつつ、時代の音作りに合わせていく必要がありました。
その意味で『Power』は、クラシックなプログレ寄りの感覚と、80年代のポップ・ロック/ハードロックの制作感が重なる地点にある作品として見やすい盤です。Kansasのキャリアを追ううえでは、70年代の代表作とはまた違う表情を確認できるタイトルです。
盤情報
- アーティスト: Kansas
- タイトル: Power
- リリース年: 1986年
- リリース国: US
- ジャンル: Rock
- スタイル: Pop Rock, Prog Rock
- 仕様メモ: グレーのカスタム・インナー・スリーブ、歌詞・クレジット掲載
- 録音・マスタリング: デジタル録音、Direct Metal Mastering表記
Kansasの歩みの中でも、80年代の制作意識がはっきり出た作品として、音の質感やクレジットの細部まで含めて見ると面白い1枚です。
トラックリスト
- A1 – Silhouettes In Disguise (4:26)
- A2 – Power (4:25)
- A3 – All I Wanted (3:20)
- A4 – Secret Service (4:42)
- A5 – We’re Not Alone Anymore (4:16)
- B1 – Musicatto (3:30)
- B2 – Taking In The View (3:06)
- B3 – Three Pretenders (3:50)
- B4 – Tomb 19 (3:46)
- B5 – Can’t Cry Anymore (4:01)