Karen Dalton – Shuckin’ Sugar (2022)
Karen Dalton『Shuckin’ Sugar』について
Karen Daltonは、1960年代初頭のグリニッジ・ヴィレッジ・フォーク・シーンで活動したアメリカのフォーク/ブルース歌手、バンジョー奏者。Cherokeeの血を引き、十二弦ギターとロングネック・バンジョーを手に、ブルース、フォーク、カントリー、ポップス、モータウンまでを歌った人物として知られている。
『Shuckin’ Sugar』は、2022年に初めて世に出た録音をまとめた作品で、1963年に残された3本のオープンリール・テープをもとにした編集盤。The Atticでの2回分の完全な演奏と、翌2月に録音された公民権擁護団体COREのためのベネフィット公演を含む内容になっている。全体としては、Karen Daltonの初期の姿をそのまま切り取ったアーカイブ作品という位置づけになる。
作品の内容
帯文によると、ここにはKaren Daltonのソロ演奏7曲とデュエット5曲が収められている。演奏順も、できるだけ当時の流れに近づけて並べられているとのこと。録音はThe Atticでの演奏が中心で、B1のみBoulderのU.M.C. Ballroom録音とされている。
この作品の大きな特徴は、未発表だった演奏がまとまって聴ける点にある。帯文では「6曲はこれまで歌ったことのない曲」と説明されており、Karen Daltonのレパートリーの幅を知る手がかりにもなっている。
Karen Daltonのディスコグラフィーの中で
Karen Daltonは、録音作品が多いタイプのアーティストではない。だからこそ、1963年の現場を収めた本作は、彼女の活動初期を知るうえで重要な資料性を持つ。すでに知られているアルバムでは、後年のスタジオ録音から彼女の声や解釈の個性が伝わるが、『Shuckin’ Sugar』では、もっと生々しい会場の空気と、当時のレパートリーの運びが見えやすい。
共演者のRichardとの関係についても、帯文では1962年にKarenがColoradoへ呼び寄せ、以後デュオで活動していたことが記されている。山で馬に乗り、DenverやBoulderのパーティーや会場で歌ったという記述からも、この時期の生活と演奏が近い場所にあったことがうかがえる。
同時代の文脈
1960年代前半のフォーク・リバイバルの中では、当時の歌い手たちが伝承曲やブルースを自分の声で歌い直していく流れがあった。Karen Daltonもその文脈にいるが、帯文ではPeter, Paul and Maryが象徴するような時代の空気の中で、彼女が自然に枠を押し広げていたと語られている。
比較対象として名前が挙がりやすいのは、同じグリニッジ・ヴィレッジ周辺で活動したフォーク系の歌い手たちや、ブルースとフォークの境界をまたいだアーティストたち。Bob Dylan、Fred Neil、Holy Modal Roundersといった名前が彼女の周囲にあったことも、当時のシーンとの近さを示している。
収録曲の印象
曲名から確認できるものでは、冒頭の「Trouble In Mind」が目を引く。帯文では、この曲での立ち上がりが「jaw-dropping」と表現されており、早い段階から彼女の歌の個性が強く出る構成になっている。録音全体も、単なる珍品というより、当時の演奏の流れと歌の運びをそのまま残した資料としての性格が強い。
代表曲や大ヒット曲を前面に置くタイプの内容ではなく、むしろ未発表の演奏、初出の歌、当時のレパートリーの断片が並ぶことに意味がある作品。Karen Daltonという歌い手の輪郭を、既発のアルバムとは別の角度から見せる内容になっている。
2022年盤について
2022年盤は、Record Store Day 2022向けの限定3500枚、Transparent Natural Vinyl仕様。オリジナルの1963年録音を、2022年に初めてアナログ盤としてまとめたものになる。ジャケットや帯の説明も含めて、発掘音源としての性格がはっきりした一枚。
Karen Daltonのファンにとっては、初期の姿を具体的にたどれる記録。1960年代フォークの周辺を聴く人にとっても、当時の空気をそのまま残した音源として見どころのあるタイトルだと思う。
トラックリスト
- A1 – Trouble In Mind (4:03)
- A2 – If You’re A Viper (2:02)
- A3 – When First Unto This Country (2:38)
- A4 – Shiloh Town (3:13)
- A5 – Shuckin’ Sugar Blues (3:06)
- A6 – Every Time I Think Of Freedom (2:42)
- B1 – Ribbon Bow (3:08)
- B2 – Blues Jumped The Rabbit (3:34)
- B3 – Lonesome Valley (3:25)
- B4 – When I Get Home (3:01)
- B5 – In The Pines (3:52)
- B6 – Katie Cruel (2:42)