Robert Wyatt – Shipbuilding / Memories Of You / Round Midnight (1982)
Robert Wyatt『Shipbuilding / Memories Of You / Round Midnight』について
Robert Wyattの1982年の7インチ・シングル。収録曲は「Shipbuilding」「Memories Of You」「Round Midnight」の3曲で、UK Rough Tradeから出た作品です。Robert WyattはSoft Machineの創設メンバーとして知られ、その後はソロでも、ジャズやロックの境界をまたぐ作品を続けてきた人。このシングルも、その流れの中にある一枚です。
作品の位置づけ
1982年といえば、Wyattのソロ活動がかなりはっきりした輪郭を持っていた時期です。Soft Machine以後のキャリアの中でも、彼はジャズ、ポップス、カバー曲、政治性のある楽曲を自然に並べていくタイプで、このシングルもそうした持ち味がよく出ている一枚です。特に「Shipbuilding」は、彼の代表曲としてよく挙げられる楽曲で、Robert Wyattの名前を広く印象づけた曲のひとつと言えます。
収録曲
- Shipbuilding
- Memories Of You
- Round Midnight
「Shipbuilding」は、戦争と造船業を結びつけた内容の曲として知られ、落ち着いた歌唱と、曲の持つ冷たい手触りが印象に残る曲です。Robert Wyattらしい、感情を大きく押し出しすぎない歌い方が曲の内容と合っています。
「Memories Of You」はスタンダード寄りの曲想で、Wyattの声の細い響きが前に出るタイプの楽曲。「Round Midnight」はセロニアス・モンクで有名なジャズ・スタンダードで、Wyattがこの時期にジャズの語法を自分のポップス感覚の中へ取り込んでいたことがわかる選曲です。
サウンドの印象
全体としては、派手に展開するタイプではなく、音数を絞った中で曲の輪郭を見せる作りです。Robert Wyattの声は、強く張るというより、言葉の意味やメロディの線をそのまま運ぶ感じがあるので、この手の楽曲では特に存在感がある。ジャズ・ロックやアート・ロックの文脈で語られるのも納得できる内容です。
ジャケットと盤の仕様
1982年のオリジナル盤は、赤ラベルの盤として知られています。ジャケットにはStanley Spencerの絵画《Shipbuilding On The Clyde : Riveters》の一部が使われており、造船所の労働を描いたイメージが「Shipbuilding」というタイトルときれいに結びついています。レーベル表記ではA面が「A Clangwinstello Production」となっています。
なお、1983年には複数の別スリーヴによる再発も出ていますが、1982年盤はその前の初期仕様。赤いラベルの盤と、のちの再発との違いがある点は、このシングルのコレクション面でよく話題になります。
同時代の文脈
Robert Wyattの1980年代前半の仕事は、単なるプログレの延長ではなく、もっと歌もの寄りの感覚と、ジャズや室内楽的な響きが混ざったものとして受け取られやすいです。Rough Tradeからのリリースという点も含めて、当時の英国インディー/オルタナティブの空気とも接続している作品です。John CaleやChris Cutler周辺の、政治性や実験性を持ちながらも曲として成立させる系譜と並べて語られることもあります。
まとめ
『Shipbuilding / Memories Of You / Round Midnight』は、Robert Wyattの代表曲「Shipbuilding」を軸に、ジャズ・スタンダードも並べた1982年のシングル。Soft Machine以後のWyattが、ロック、ジャズ、ポップスを自分の声でつないでいく、その感触がよく出た一枚です。ジャケット、選曲、歌唱のまとまりが強く、Robert Wyattというアーティストの輪郭をつかむうえで重要な作品のひとつと言えます。
トラックリスト
- A – Shipbuilding
- B1 – Memories Of You
- B2 – Round Midnight