The Gun – Gun Sight (1969)
1968年にシングル「Race with the Devil」を全英トップ10に送り込み、鮮烈なデビューを飾ったロンドン出身のトリオ、ザ・ガン(The Gun)。翌1969年にCBSから発表されたセカンド・アルバムにして彼らのラスト作となったのが『Gun Sight』だ。ジャケット表面の表記は『Gun Sight』だが、背表紙や英盤CBSのレーベル上では『Gunsight』と一語で記されている。
ガーヴィッツ兄弟の多彩な音楽性とアプローチの拡張
メンバーはエイドリアン・ガーヴィッツ(ギター、ボーカル)とポール・ガーヴィッツ(ベース、ボーカル)の兄弟に、ドラマーのルイ・ファレル(Louis Farrell)を加えた3人編成。本作発表時のクレジットでは、兄弟はファミリーネームであるエイドリアン・カーティス(Adrian Curtis)、ポール・カーティス(Paul Curtis)名義で記載されている。プロデュースは前作に引き続きジョン・グディソン(John Goodison)が担当した。
前作でのストレートかつ疾走感あふれるプロト・ハードロック/ヘヴィサイケ路線から一歩踏み出し、本作では管弦楽器のオーケストレーションやアコースティック・サウンドを大幅に取り入れているのが特徴だ。オープニングを飾る「Head In The Clouds」では、ブラスセクションとエイドリアンのギターリフが絡み合い、サイケデリックな広がりを見せる。一方、「Dreams And Screams」や「Situation Vacant」では、歪んだファズギターと強靭なベースラインが前面に出たトリオ編成ならではの重厚なリフワークが展開される。
アルバム後半には、アコースティック・ギターによる爪弾きが印象的なインストゥルメンタル「Lady Link」(Part OneおよびPart Two)が配置され、カントリー・ブルース風の「Hobo」や「Oh Lady You」、長尺の展開を持つラストの「Long Hair Wild Man」へと緩急をつけながら繋がっていく。ハードなリフ一辺倒にとどまらない、ガーヴィッツ兄弟のソングライティングの幅広さが前面に出た構成となっている。
ロジャー・ディーンからヒプノシスへ:ジャケットの変遷
デビュー・アルバムのアートワークはロジャー・ディーンが手がけた初期のイラストレーションとして知られるが、本作『Gun Sight』ではデザイン集団ヒプノシス(Hipgnosis)がカバージャケットの撮影とデザインを担当した。荒涼とした情景を捉えた見開きジャケットは、後のピンク・フロイド作品などで見られるシュールレアリスムやコンセプチュアルな作風へと繋がる、初期ヒプノシスの記録としても興味深い。
スリー・マン・アーミー、そしてベイカー・ガーヴィッツ・アーミーへの布石
「Race with the Devil」のような明確なヒットシングルが出なかったこともあり、本作は商業的な成功には恵まれず、バンドは1970年に解散を迎えた。しかし、エイドリアンとポールの兄弟はこの後、バディ・マイルズらとのセッションを経てスリー・マン・アーミー(Three Man Army)を結成。さらに1970年代半ばには元クリームのジンジャー・ベイカーを迎えてベイカー・ガーヴィッツ・アーミー(Baker Gurvitz Army)を始動させる。ハードロックとメロディアスな展開を融合させた彼らのサウンドの礎として、60年代末の熱気がパッケージされた一枚だ。
トラックリスト
- A1 - Head In The Clouds
- A2 - Drown Yourself In The River
- A3 - Angeline
- A4 - Dreams And Screams
- B1 - Situation Vacant
- B2 - Hobo
- B3 - Lady Link Part One
- B4 - Oh Lady You
- B5 - Lady Link Part Two
- B6 - Long Hair Wild Man