Anthony Phillips – Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion (1980)
Anthony Phillips『Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion』(1980)について
Anthony Phillipsは、Genesisの初期メンバーとして知られる英国のマルチ奏者だ。1970年にGenesisを離れたあと、ソロ活動ではギターだけに限らず、キーボードや作曲面も含めて幅広い仕事を続けている。1970年代後半からはソロ作や映像音楽、コラボレーションを重ねていて、この『Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion』は、その流れの中にある1980年の作品になる。
タイトルの通り、「Private Parts & Pieces」シリーズの第2作目。シリーズ名からもわかる通り、まとまった楽曲集というより、個人的なスケッチや断片、既発表曲の周辺にある素材まで含めた構成になっている。Anthony Phillipsの作曲家としての手触りを、アルバム単位で追いやすい一枚という位置づけだ。
作品の性格
この作品は、プログレッシブ・ロックの文脈に置かれることが多い。Genesis初期のようなバンド的な推進力というより、アコースティック楽器や室内楽的な組み立て、細かな音の配置を聴かせるタイプの内容で、Anthony Phillipsらしい繊細な作り込みが前面に出る。
収録曲の中でも特に目を引くのが「Scottish Suite」だ。リリースノートでは、この曲にかなり長い副題が付けられている。実際の曲名以上に、作品側の遊び心や言葉の感覚が表れている部分だろう。なお、この曲は1976年6月にSend BarnesとOlympic Studiosで録音されたとされている。
録音と制作の背景
本作には、曲ごとに録音時期や場所の幅がある。1977年11月から12月にかけてのトラックは、Essex Studios、the Farmyard、Trident Studiosで録音されたとされる。それ以外の曲は、North SeaのVICAR’S mobile oil rig上のSlick Soundで録音され、Ralph Bernascone Aquasports Ltd.の協力を受けたという記載がある。録音現場としてはかなり特殊で、制作メモを読むだけでも、この時期のAnthony Phillipsがスタジオ外の環境も含めて素材を集めていたことがうかがえる。
仕上げはAtmosphere Soundsで曲順が整えられ、マスタリングはTrident、その後Sterling Soundでリマスターされたとある。US盤としては、Passport Recordsから1980年にリリースされ、JEM Recordsが製造・流通を担っている。
同時代とのつながり
1980年前後の英国プログレ周辺では、Genesisのような大きなバンドが人気を保つ一方で、ソロや周辺プロジェクトではより内省的で細密な作品が増えていく。Anthony Phillipsもその流れの中で、派手なロックの外側にある作曲の断片や、アコースティック中心の組曲的な発想を深めていった人物だ。
比較対象として名前が挙がりやすいのは、やはりGenesis関連のソロ作や、同時代の英国プログレ勢だろう。とはいえ、この作品はバンド的な演奏の競り合いより、作曲者自身のメモや素描をまとめた感覚が強い。
作品のメッセージ
ジャケットやライナーノート周辺にも、作品の姿勢が出ている。アルバムは「beauty, lyricism and grandeur in art」を支持する人々に捧げられており、冷笑的な知性主義や不協和音の潮流に対抗する、という趣旨が記されている。ここには、Anthony Phillipsがこの時点で何を大事にしていたかが比較的はっきり見える。
また、「SCOTTISH SUITE」と『The Geese and the Ghost』収録の「HENRY」との類似について、「entirely uncoincidental」と書かれているのも興味深いところだ。過去作とのつながりを意識しながら、素材を別のかたちで発展させている姿勢がうかがえる。
この盤について
- アーティスト: Anthony Phillips
- タイトル: Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion
- オリジナルリリース年: 1980年
- リリース国: US
- レーベル表記: Passport Records
- ジャンル: Rock
- スタイル: Prog Rock
Anthony Phillipsのソロ活動の中では、作曲の断片、録音環境の多様さ、そしてシリーズ作品としての連続性がよく見える一枚だ。Genesisの元ギタリストという経歴だけでなく、ソロ作家としての輪郭を追ううえでも、かなり重要な位置にある作品といえそうだ。
トラックリスト
- N.O.R. Side
- Scottish Suite (15:15)
- A2 – Lindsay (3:50)
- A3 – K2 (8:53)
- A4 – Postlude: End Of The Season (0:32)
- S.O.R. Side
- B5 – Heavens (4:22)
- B6 – Spring Meeting (3:52)
- B7 – Romany’s Aria (0:50)
- B8 – Chinaman (0:41)
- B9 – Nocturne (4:05)
- B10 – Magic Garden (1:56)
- B11 – Von Runkel’s Yorker Music (0:41)
- B12 – Will O’ The Wisp (3:30)
- B13 – Tremulous (1:06)
- B14 – I Saw You Today (4:34)
- B15 – Back To The Pavilion (2:51)