REO Speedwagon – Nine Lives (1979)
REO Speedwagon『Nine Lives』(1979)
アメリカ・イリノイ州シャンペーン出身のロック・バンド、REO Speedwagonが1979年に出したアルバムが『Nine Lives』である。70年代を通じて地元シーンから支持を積み上げてきた彼らの、80年代の大きな商業的成功へつながる直前の作品でもある。
REO Speedwagonは、バンド名を車名「REO Speed Wagon」から取ったことで知られる。発音はメーカー名のように一語ではなく、文字を一つずつ読んで「R-E-O」とした、という由来も有名だ。『Nine Lives』は、そのバンドの70年代後半の活動をそのまま切り取ったような1枚で、ハードロック寄りの骨太な演奏が中心になっている。
作品の位置づけ
1979年の『Nine Lives』は、REO Speedwagonにとってアルバム単位での存在感を保ちながら、翌年の『Hi Infidelity』へつながっていく時期の作品として見られることが多い。『Hi Infidelity』は1980年作で、全米トップ40ヒットを4曲生んだ代表作として知られているが、『Nine Lives』はその直前の段階で、バンドの演奏力と曲作りの地力が前面に出た内容になっている。
クレジットを見ると、当時の主要メンバーであるKevin Cronin、Gary Richrath、Neal Doughty、Alan Gratzer、Gregg Philbinらに加え、後年のメンバー名も並んでいる。REO Speedwagonというバンドの人員の入れ替わりを含む長い歴史の中でも、1979年時点の時代感が反映された作品といえる。
音の印象
録音はSound CityのStudio AとKendun RecordersのStudio D、ミックスもKendun RecordersのStudio Dで行われている。ファンキーさやAOR的な流れよりも、ギターを軸にした直線的なロックの手触りがはっきりしている印象だ。派手に作り込むというより、バンドの音を前に出した作りで、1970年代末のアメリカン・ハードロックの空気が濃い。
実際に聴くと、演奏のまとまりと曲ごとの押し出しのバランスがこの時代らしい。Gary Richrathのギターはリフとリードの切り替えがわかりやすく、Kevin Croninの歌はメロディを保ちながらもロック・バンドの前に立つ声として機能している。派手な変化球より、ストレートに進む曲が多く、アルバム全体の流れも読みやすい。
曲とクレジット
収録曲の出版社クレジットを見ると、A1、A2、A3……といった形で作家・出版社がきっちり分かれており、バンド内外の楽曲提供が混ざった構成になっている。A5にはArc Music Corp.、B4にはLarge Musicのクレジットがあり、完全な自作曲集というより、当時のバンドが持っていたレパートリーをアルバムとしてまとめた印象がある。
また、ゲートフォールド仕様のジャケットで、プリント入りインナー・スリーブにアートワークとクレジットを収めている点も1979年盤らしい。LPとして手に取ったときの情報量が多い作りで、当時のロック作品らしいパッケージングになっている。
同時代の文脈
1979年のアメリカン・ロックは、ハードロック、アリーナ志向、AORの入り口が重なっていた時期で、REO Speedwagonもその流れの中にいる。バンドの音は、同時代の堅実なアメリカン・ハードロック・バンドと並べて語られることが多く、70年代末のロック・バンドの標準的な強さを感じさせる。
この『Nine Lives』は、後の大ヒット作のような知名度ではないものの、REO Speedwagonが80年代に入っていく直前の姿を確認できる1枚として位置づけやすい。バンドの基礎体力、曲の骨組み、演奏の癖がそのまま記録されたアルバムである。
まとめ
『Nine Lives』は、REO Speedwagonが1979年に出したハードロック色の強いアルバムで、翌年の大きな成功の前段にある作品だ。Sound City録音、Kendunでのミックス、ゲートフォールド仕様のLPという情報からも、当時のロック・アルバムとしての作りが見えてくる。バンドの70年代末の実像を知るうえで、ひとつの節目になるタイトルである。
トラックリスト
- A1 – Heavy On Your Love (3:34)
- A2 – Drop It (An Old Disguise) (3:12)
- A3 – Only The Strong Survive (3:51)
- A4 – Easy Money (3:59)
- A5 – Rock & Roll Music (2:54)
- B1 – Take Me (3:29)
- B2 – I Need You Tonight (3:34)
- B3 – Meet Me On The Mountain (4:04)
- B4 – Back On The Road Again (5:37)