Lily – “V.C.U.” (We See You) (1973)
Lily『V.C.U. (We See You)』について
『V.C.U. (We See You)』は、ドイツ・フランクフルト周辺で活動していたプログレッシブ/ジャズ・ロック系バンド、Lilyのアルバム。オリジナルは1973年作で、ベルリン系ではなくフランクフルトのローカル・シーンから出てきたバンドらしい、演奏重視の作品として知られている。2012年盤はMalesch Records/Long Hairからの再発で、オリジナル盤はBellaphonから出たもの。
バンドの流れとしては、もともとThe Modsを起点に、のちにMonsunとしてまとまり、1973年の録音時にBellaphon側の意向でLily名義になった、という経緯がある。つまりLilyは完全に新しい始まりというより、60年代半ばから続くバンドの変遷の一段階という位置づけになる。
アルバムの背景
レコーディングは1973年、Dierks Studioで行われた。メンバーはWilfried Kirchmeier、Manfred-Josef Schmid、Klaus Lehmann、Manfred Schlagmüller、Hans-Werner Steinberg。中心人物としては、ギターのManfred-Josef Schmidとベース/ヴォーカルのWilfried Kirchmeierが核になっている。
バンドは1972年春のデモ録音でプロデューサーのPeter Haukeに注目され、FrankfurtのZoom Clubでのライヴを経て契約に至ったとされる。1973年1月にDierks Studioで3日間のセッションを行い、その成果がこのアルバムになった。Bellaphonは彼らを“glitter rock”寄りに売り出そうとし、国際的で華やかな名前としてLilyを採用した、という経緯も残っている。
作品の位置づけ
『V.C.U. (We See You)』は、バンドにとって最初のアルバムであり、同時に最も知られる時期の記録でもある。発売当時は大きなセールスにはつながらず、販売数は多くなかったとされる。その後、1973年末にSchmidが脱退し、バンドは徐々に縮小していくため、この作品は初期Lilyのまとまりを示す一枚として見られることが多い。
1970年代前半のドイツ産ロックという文脈では、いわゆるクラウトロックの流れの中に置かれる作品で、同時代の実験性や演奏の切り込み方を持ちながら、メロディや曲の進行にはよりロック・バンドらしい感触もある。ジャズ・ロック、プログレッシブ・ロック、サイケデリック・ロックの要素が交差するあたりが、この時期のドイツのバンドらしいところ。
再発盤について
2012年盤は2011年ライセンス表記の再発で、ジャケットや付属資料を含めて当時の作品を現在の流通で聴ける形にしたもの。オリジナル盤との大きな違いは、再発盤としての入手性の高さと、インサート付きである点。内容そのものは1973年録音のアルバムをそのまま収めたものとして扱える。
聴きどころとして見える点
実際に耳を通すと、バンド名義の変遷や売り出し方の印象とは別に、フランクフルトのローカル・バンドがスタジオでしっかり組み上げた演奏盤という印象が残る。管楽器を含む編成と、ギター、ベース、ドラムの連携が軸になっていて、歌ものだけに寄らない構成が特徴的だろう。
また、英語圏の派手なグラム・ロックとは少し距離があり、ドイツ国内のプログレ/ジャズ・ロックの文脈で聴くと、当時の空気感が見えやすい一枚だと思える。
まとめ
Lilyの『V.C.U. (We See You)』は、Monsunから続く流れの中で1973年に形になった、ドイツ産プログレッシブ/ジャズ・ロックのアルバム。オリジナル盤はBellaphonから、2012年にはMalesch Records/Long Hairによる再発盤が出ており、70年代前半のドイツ・ロックの一断面を伝える作品として位置づけられる。
トラックリスト
- A1 – In Those Times (9:12)
- A2 – Which Is This (4:25)
- A3 – Pinky Pigs (6:35)
- B1 – Doctor Martin (4:37)
- B2 – I’m Lying On My Belly (Including “Tango Atonale”) (5:57)
- B3 – Eyes Look From The Mount Of Flash (9:42)