Daddy Longlegs – Oakdown Farm (1971)
1969年にアメリカからイギリスへ渡ってきたバンド、Daddy Longlegsの2枚目のアルバム。1971年、ヴァーティゴの“大渦巻き”ラベルから出た一枚で、ジャケットのデザインはヒプノシス。ヴァーティゴといえばプログレやハード・ロックのイメージが強いけれど、ここで鳴っているのはカントリーやブルースの色が濃いロック。レーベルのカタログの中ではかなり毛色の違う存在だ。
イギリスに渡ったアメリカ人バンド
結成は1968年のアメリカ。ギター/ボーカルのSteve Hayton、ドラムのClif Carrison、ベースとクラリネットのKurt Palomakiの3人が母体で、1969年にイギリスへ拠点を移している。ワーナー・ブラザースと契約し、ボーカルにMoe Armstrongを迎えてシングル「High Again」とデビュー・アルバム『Daddy Longlegs』を発表。1969年12月にはアイルズベリーの名物クラブ、Friarsのステージにも立っている。
ただ、このラインナップは長続きしない。ArmstrongとHaytonが抜け、残ったCarrisonとPalomakiは、オーストリア生まれのピアニスト/ボーカリストPeter Arnesenと、アメリカ出身のギタリストGary ‘Norton’ Holdermanを迎えて再出発。この新しい4人で契約したのがヴァーティゴで、ヴァーティゴと契約した最初期のアメリカ人アクトのひとつとされる。
サウンド・テクニクスでの録音
録音は1971年1月、ロンドン・チェルシーのサウンド・テクニクス。ニック・ドレイクやフェアポート・コンヴェンション、ジョン・マーティンらが録音したことで知られるスタジオで、エンジニアはJerry Boys。アビー・ロードでキャリアを始め、のちにブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの録音を手がける人物だ。
プロデューサーはTod Lloyd。エグゼクティヴ・プロデューサーにはバンドのマネージャーだったTim Sharmanの名前があり、制作はBeppo Productions名義。曲の出版も、ワーナー系の3曲を除いてBeppo Musicになっている。
3人のシンガーが分け合う12曲
全12曲で、リード・ボーカルが曲ごとに入れ替わるのが特徴。A面の「Rubber Tyre」「Please Believe Me」「Lonely Way」「Sweet Louise」はArnesenが歌い、いずれもArnesenとLarry Dean Spearmanの共作。「Double Decker」はPalomakiの作詞作曲で、本人が歌っている。
A面ラストの「Wheeling & Dealing」からB面の「Clara Bell」までは、Holdermanが自作曲中心にリードを取る流れ。「Rusty Door」はCarrison、Holderman、Palomakiの3人の共作だ。B面後半はCarrisonの「Night Shift」とArnesenの「Moog」が切れ目なく続き、盤面では5曲に見えて実は6曲という構成。締めの「Boogie」はトラディショナルをHoldermanがアレンジしたもの。4人全員がソングライターとしてクレジットされている。
ヴァーティゴの中の異色作
見開きの未ラミネート・ジャケットに大渦巻きラベルという、いかにも初期ヴァーティゴらしい装い。それでいて中身はアメリカ南部の匂いのするカントリー・ロックなので、レーベルの流れで聴くと意外に感じるかもしれない。ヴァーティゴ作品を振り返るレビューでも、カタログの中では浮いたカントリー寄りの一枚として扱われている。一方で、オリジナル盤はコレクターズ・アイテムとして長く探されてきた。1993年にはRepertoireからCD化もされている。
その後のDaddy Longlegs
メンバーの出入りはこの後も続く。Arnesenはアルバムのあとほどなく脱退し、元GraciousのベーシストTim Wheatleyと、よりポップ寄りのバンドTaggettを結成。残ったHoldermanとPalomaki、Carrisonの3人はポリドールに移り、1972年に『The Three Musicians』を発表した。続く『Shifting Sands』の時点ではPalomakiも抜けていて、度重なるメンバーチェンジの末にバンドは幕を閉じている。Arnesen、Holderman、Palomaki、Carrisonの4人で残したアルバムは、この『Oakdown Farm』1枚きり。
トラックリスト
- A1 - Rubber Tyre
- A2 - Double Decker
- A3 - Please Believe Me
- A4 - Lonely Way
- A5 - Sweet Louise
- A6 - Wheeling & Dealing
- B1 - Rusty Door
- B2 - Gambling Man
- B3 - Clara Bell
- B4 - Night Shift
- B5 - Moog
- B6 - Boogie