• TOP
  • Rock
  • Trúbrot – Mandala (1972)

Trúbrot – Mandala (1972)

アイスランドの初期ロックシーンを牽引したスーパーグループ、トゥルーヴロート(Trúbrot)が1972年に発表した通算4作目にして最後のスタジオアルバムが本作『Mandala』だ。国内の人気ビートグループであったフリョウマル(Hljómar)とフラワーズ(Flowers)の主要メンバーが集結して1969年に結成された彼らは、本国で確固たる人気を誇りながら、サイケデリックロックやプログレッシブロックの潮流を取り入れた実験的な音作りを推し進めていった。

コペンハーゲン録音と自主レーベル設立の経緯

ロンドンのモーガン・スタジオで録音された前作『Lifun』(1971年)は、アイスランド初のトータルコンセプトアルバムとして高い評価を獲得した。その後、1972年初頭に入るとバンドは公の場でのライブ活動を一旦休止し、新たな楽曲制作へと専念する期間を設けている。曲が出揃った段階で彼らが録音場所に選んだのは、デンマークのコペンハーゲンだった。

このセッションには、グンナル・ソールザルソン(Gunnar Þórðarson / ギター、フルート、ボーカル)、ルーナル・ユーリウスソン(Rúnar Júlíusson / ベース、ボーカル)、マグヌース・キャルタンソン(Magnús Kjartansson / ピアノ、オルガン、ボーカル)、グンナル・ヨクル・ハーコナルソン(Gunnar Jökull Hákonarson / ドラムス)の4名が参加した。さらに現地のスタジオミュージシャンを起用し、ストリングスやブラスセクションをふんだんに導入した豪華なアレンジが施されている。

ところが、海外での長期スタジオワークと管弦セクションの起用により制作費が大幅に膨らんでしまい、アイスランド国内の既存レーベルが提示額に難色を示したようだ。そのためバンドは自ら自主レーベル「Trúbrot」(カタログ番号 TR 1)を立ち上げ、自主制作・自主流通の形でレコードを世に送り出す決断を下す。オリジナルLPの見開きジャケット裏面に、当時アイスランド航空(Flugfélag Íslands)の広告が大きく刷り込まれていたのも、遠征やレコーディングに関わる多額の費用を支援・協賛で補うための苦肉の策だったと伝えられている。

洗練された楽曲構造と多彩なアンサンブル

大作志向や組曲構成が前面に出ていた前作『Lifun』と比較すると、本作『Mandala』は3分前後のコンパクトな楽曲を中心に構成されている。全編英語詞で歌われ、サイケデリックロックの浮遊感とプログレッシブロック的な緻密さに加え、後期ビートルズやバッドフィンガーを思わせるポップなソングライティングの巧みさが際立つ。

アルバムの冒頭を飾るタイトル曲「Mandala」は、グンナル・ソールザルソンのフルートとハモンドオルガンが絡み合うイントロから始まり、変拍子を交えたリズム隊のドライブ感と哀愁を帯びたメロディが同居するナンバー。続く「My Friend & I」や「Down By The Water」では、ホーンセクションとコーラスワークが重なり、スワンプやブラスロックのテイストも顔を覗かせる。

A面ラストの「Drifting」は、フェイザーのかかったエレクトリックピアノとアコースティックギター、そしてフルートが漂うメロウなサイケバラード。一方、B面でもオルガンのリフが牽引する「Rise & Shine」や、流麗なギターソロとボーカルの掛け合いが印象的な「All I Wanna Do」、短いインストゥルメンタル「Scezio Pan」に至るまで、多重録音された鍵盤群とブラスが各曲の輪郭をくっきりと描き出している。

バンドの終焉と後年の再評価

多彩な音楽性を凝縮した『Mandala』を完成させたものの、制作過程での財政的な負担や方向性の変化も重なり、トゥルーヴロートは翌1973年に活動に終止符を打った。解散後、ベーシストのルーナル・ユーリウスソンは自らレコードレーベル「Geimsteinn」を設立して数多くの国内作品を手掛け、ギタリストのグンナル・ソールザルソンはソロ活動や映画音楽、作編曲家としてアイスランド音楽界の重鎮となっていった。

自主プレスだったオリジナルのTR 1盤は流通枚数が限られていたため、長らくサイケ/プログレコレクターの間で幻の一枚とされていたが、1996年にGeimsteinnからCD化され、2000年代以降にはドイツのShadoks Musicなどからもアナログ再発が行われた。アイスランドのロック黎明期において、海外の最新プロダクションに挑んだ彼らのスタジオワークの記録として、興味深い足跡を残している。

トラックリスト

  • A1 - Mandala (4:27)
  • A2 - My Friend & I (3:09)
  • A3 - Down By The Water (3:02)
  • A4 - Coming Your Way (2:35)
  • A5 - Drifting (3:39)
  • B1 - Rise & Shine (3:10)
  • B2 - Today (2:30)
  • B3 - Mr. Moonshine (3:05)
  • B4 - Pleasent Daydreams (3:01)
  • B5 - All I Wanna Do (4:01)
  • B6 - Scezio Pan (1:42)
2026.10.24
この記事をシェア