SBB – SBB (1978)
ポーランドのプログレッシブ・ロック/ジャズ・ロックを代表するトリオ、SBB(ユーゼフ・スクシェク、アポストリス・アンティモス、イェジー・ピョトロフスキ)が、1978年にチェコスロバキアの国営レーベルSupraphonから発表したスタジオ・アルバム。LPの両面にそれぞれ約19分台の大作を1曲ずつ配した構成で、A面曲のタイトルから『Wołanie O Brzęk Szkła(ガラスの鳴る音を求めて)』の通称や、オレンジ色を基調としたアートワークから「オレンジ・アルバム」の愛称でも親しまれている。
プラハ・モザルテウム・スタジオでの集中セッション
1970年代半ばから東欧各国で精力的なツアーを展開し、チェコスロバキア国内でも熱狂的な支持を集めていたSBBは、同国の主要青年雑誌『ムラディー・スヴィエト(Mladý svět)』の音楽企画「Diskotéka Mladého světa」と連動する形で本作の制作に乗り出した。録音は1977年4月12日から22日にかけて、プラハの名門スタジオ「モザルテウム(Studio Mozarteum)」にて実施。チェコ側のプロデューサーとして実力派音楽家のヤン・スパレニー(Jan Spálený)とクヴェトスラフ・ロフレデルが監修にあたり、エンジニアのフランチシェク・ジェジーチェクらとともに濃密なレコーディングが進められた。
両面を占める2編の長大シンフォニック組曲
本作には短い楽曲は一切なく、A面とB面に長大な組曲が各1編のみ収められている。ジャケットには各曲のポーランド語原題とチェコ語訳題が併記された。
A面を占める「Wołanie O Brzęk Szkła(チェコ語題:Touha Po Zvonění Střepů)」は、詩人ユリアン・マテイ(Julian Matej)の詩をテクストに用いた約19分の大曲。ユーゼフ・スクシェクが駆使するミニモーグ・シンセサイザー、フェンダー・ローズ、クラビネットの多彩なレイヤーと、ギリシャ系ギタリストのアポストリス・アンティモスによる鋭利なギターワークが緻密に組み合わされている。
B面の「Odejście(チェコ語題:Odchod)」も19分を超える大作で、スクシェクのメロディアスなボーカルとミニモーグの抒情的なリード、イェジー・ピョトロフスキのダイナミックなドラミングがアンサンブルを牽引する。ジャズ・ロック的な鋭いインプロヴィゼーションと、東欧特有の哀愁を帯びたシンフォニック・ロックの質感が高度に融合した展開を見せる。
西側輸出盤『Slovenian Girls』への展開
Supraphonから発売されたオリジナル盤はチェコスロバキア市場向けにプレスされたものだったが、本作の録音マスターテープは翌1979年に西ドイツの独立系レーベルOmnibusへライセンス提供された。西ドイツ盤ではチェコの著名写真家ヤン・サウデク(Jan Saudek)による写真を採用した別ジャケットに刷新され、アルバム名も『Slovenian Girls』へと改題されてリリースされた。東側体制下の国境を越えた制作体制と、その後の西側流通という多面的な背景を持つ作品となっている。
トラックリスト
- A - Wołanie O Brzęk Szkła = Touha Po Zvonění Střepů (19:05)
- B - Odejście = Odchod (19:40)