Atoll – L’Araignée-Mal (1975)
Atoll『L’Araignée-Mal』について
Atollは、1972年にフランス・メスで結成されたプログレッシブ・ロック・バンドだ。フランス産らしい構成の細かさと、シンフォニックな展開をあわせ持つグループとして知られている。中心人物はアンドレ・バルゼとクリス・ベヤで、70年代を通じて編成を変えながら活動した。
『L’Araignée-Mal』は1975年の作品で、Atollの初期を代表するアルバムのひとつに位置づけられる。バンドがまだ勢いのある時期に作った作品で、のちの変化の前に、当時のAtollの輪郭をつかみやすい一枚だ。
作品の輪郭
このアルバムは、演奏の切り替わりが多く、曲の中で場面が次々に変わっていくタイプの作品だ。リフで押す部分と、鍵盤を中心に組み立てる部分の往復があり、フランスのプログレに特有の組曲感が出ている。英米系のプログレと比べると、演奏の運びにやや硬質な感触があり、同時代のフランス勢の中でも構成の密度を意識した作りに感じられる。
Atollは、マグマのような強い独自性を前面に出すタイプとも、キャメルのような流麗さを軸にするタイプとも少し違い、曲の展開そのものを丁寧に積み上げていく印象がある。『L’Araignée-Mal』でも、その作り方がはっきり出ている。
盤について
ここでの盤は1979年の日本盤。オリジナルは1975年の作品で、日本盤は後年の再発にあたる。ジャケット、インサート、帯にコレクション名が入り、当時の国内再発シリーズとしてまとめられているのが特徴だ。
インサートには「European Rock Collection 1800, Prologue for european rock by Hiroshi Takami」と記され、裏帯にはシリーズの他作品が並ぶ。裏ジャケット左下には価格表記として「¥1,800」。盤面やジャケットの表記も含め、70年代末の日本で欧州ロックを紹介する文脈の一枚だ。
Atollの中での位置
Atollはアルバムごとに編成が変わりやすいバンドで、この作品もその流れの中にある。70年代フランス・プログレの中では、後期のより洗練された作風に向かう前段階として見ることができる。バンドの方向性を確認する意味でも、初期Atollを知る入口としても扱われることが多い。
参加メンバーには、ジャン=ピエール・クラレス、リシャール・オーベール、ディディエ・オッフェマン、アラン・ゴッゾ、ジャン=リュック・ティヨ、ミシェル・タイエ、クリスティアン・ベヤ、ローラン・ジャンネ、アンドレ・バルゼ、ブルーノ・ジェアン、ジャン=ジャック・フレティ、パトリック・キッフェル、リュック・セラ、ロール・ライニンガーらの名前が見える。クレジットの幅広さからも、当時のバンドの流動的な状態がうかがえる。
同時代とのつながり
1975年という時期は、フランスのプログレが一通り成熟し、各バンドが独自の色を強めていた頃だ。Atollもその流れの中で、英米の大手プログレとは別の文法で作品を組み立てている。大きく伸びるメロディより、展開の切り替えやアンサンブルの組み方に耳が向くタイプの作品として受け取れる。
タイトルの『L’Araignée-Mal』は、作品全体にある緊張感と複雑さをそのまま示すような題名だ。Atollの初期らしい、曲の構成を追う楽しさが前に出るアルバムである。
トラックリスト
- A1 – Le Photographe Exorciste
- A2 – Cazotte N°1 (Instrumental)
- A3 – Le Voleur D’Extase
- B1 – Imaginez Le Temps
- B2 – L’Araignée-Mal
- B3 – Les Robots Débiles
- B4 – Le Cimetière De Plastique