Craft – Craft (1984)
Craft『Craft』について
Craftは、UKのインストゥルメンタル・プログレッシブ・ロック・トリオによる1984年作。メンバーはWilliam Gilmour(キーボード)、Martin Russell(ベース)、Grant McKay Gilmour(ドラム)の3人で、元Gryphon周辺の流れをくむ人物たちによるプロジェクトとして知られている。バンド名と同じタイトルを付けたこの1枚が、彼らの名義では中心的な作品になっている。
作品の位置づけ
1980年代前半の英国プログレは、70年代の大作志向とは少し距離を置きながらも、シンフォニックな構成やクラシック由来のフレーズを保った作品が残っていた時期。Craftのこのアルバムも、その流れの中にある1枚として整理しやすい。演奏主体の作品で、歌ものではなく、楽器のレイヤーと展開で聴かせるタイプの作品である。
サウンドの特徴
このアルバムでは、ギター的な音色がAria S.B. 900のベースギターとカスタム・ペダルボードで作られている点が面白い。通常のギター編成とは少し違う発想で音を組み立てているため、弦の鳴り方や音の厚みが独特に感じられる。キーボード主体のシンフォニックな進行の中に、ベース由来の音が前に出てくる場面があり、編成の少なさを音色の工夫で補っている印象がある。
実際に聴くと、派手なリフで押すよりも、フレーズの積み重ねや和声の移り変わりで曲を進める作りが目につく。テンポ感も極端に速いわけではなく、各楽器の音が整理されているため、構成の変化を追いやすいタイプの作品である。
同時代の文脈
同時代の英国シンフォニック・ロックと比べると、70年代の大編成バンドほどの豪華さはない一方で、室内楽的なまとまりがある。キーボードの使い方や展開の作り方には、Genesis系の組み立てや、英国プログレの伝統に通じる部分がある。ただし、演奏人数が少ないぶん、音の配置はよりコンパクトで、トリオならではの密度になっている。
ジャケットと初期盤の仕様
ジャケットには、The Twelve Signs of the Zodiac の6つの図像を参照したアートが使われている。1984年当時のオリジナル盤は、マットなややバフ色の単色寄りのスリーブで、汚れが付きやすい仕様だったという。初回には片面12インチのインサートと、Shanghai/Butt Recordsのカタログ入り内袋が付属していた。後発プレスでは、光沢のあるカバーになり、インサートなしの仕様が確認されている。
代表曲について
収録曲の中では、アルバム全体の流れの中で印象を残す曲が中心になるタイプで、単独で大きくヒットしたシングル曲が前面に出る作品ではない。曲ごとの派手な分かりやすさより、通して聴いたときの組み立てに意味があるアルバムとして捉えやすい。
まとめ
Craftの『Craft』は、少人数編成でシンフォニックなプログレを組み立てた1984年の英国作。キーボードとベース、ドラムを軸にしながら、ギター的な音色の作り方に工夫があるのが特徴で、80年代プログレの中でも編成と音作りの発想が見えやすい一枚である。
トラックリスト
- A1 – Aries (5:52)
- A2 – Taurus (3:44)
- A3 – Gemini (7:00)
- B1 – Cancer (6:52)
- B2 – Leo (8:29)
- B3 – Virgo (2:24)