Fischer-Z – Red Skies Over Paradise (1981)
Fischer-Z「Red Skies Over Paradise」について
「Red Skies Over Paradise」は、英国のニューウェイヴ/ロック・バンド、Fischer-Zが1981年に発表した3作目のスタジオ・アルバムだ。録音は1980年12月5日から15日、ミックスは12月16日から24日にかけて行われ、翌1981年3月にリリースされている。John Wattsを中心にしたクラシック編成の最後の時期にあたる作品でもある。
Fischer-Zは1976年にロンドンでJohn WattsとSteve Skolnikによって結成されたバンドで、初期ニューウェイヴの文脈の中に位置づけられる存在だ。本作もその流れの中にありつつ、単なる時代の音ではなく、政治性の強い歌詞や冷戦を想起させるモチーフが目立つアルバムになっている。
作品の位置づけ
このアルバムは、バンドのキャリアの中でも転機にあたる1枚だ。マスターノートによれば、キーボーディストのSteve Skolnikが離脱した後も含め、クラシックなラインナップとしては最後のアルバムとなっている。Fischer-Zの初期を代表する時期の締めくくりとして見られることが多い作品だろう。
タイトルの「Red Skies Over Paradise」からも分かる通り、内容は軽快なポップ感だけでは終わらない。政治、社会、国際情勢の空気が楽曲の背景に入っている。80年代初頭の英国ニューウェイヴには、The Jam、XTC、Gang of Fourあたりと同時代的に、日常の感覚と時事性を結びつけるバンドが少なくなかったが、Fischer-Zもその一角にいる。
サウンドと聴きどころ
クレジットを見ると、John Wattsがリード・ボーカル、ギター、キーボードを担当し、James Stevensonがベースとベース・ペダル、コーラス、Mike Bennがドラムとコーラスを担っている。演奏編成はシンプルだが、歌とリズムの推進力で引っ張るタイプのアルバムだ。
実際に聴くと、まず耳に残るのはJohn Wattsの語りかけるような歌い口と、曲ごとに言葉を前へ押し出す構成だ。ニューウェイヴらしい硬質さがありながら、ギターの刻みやリズムの進行は比較的わかりやすく、メロディも追いやすい。派手な装飾よりも、歌詞の輪郭と曲の運びを優先した作りという印象がある。
アルバム全体では、政治的な題材を扱いながらも、ただ重苦しく沈む方向ではなく、テンポ感を保った曲で聴かせる場面がある。冷戦を思わせるイメージや、当時の国際的な緊張感が、タイトルとジャケットにも反映されているのが特徴だ。
代表曲について
本作からは、タイトル曲「Red Skies Over Paradise」が特に重要な曲として挙げられることが多い。アルバムのテーマをそのまま象徴するような曲名で、作品全体の空気を端的に示している。Fischer-Zの中でも、この時期の政治性とメロディ感を同時に伝える代表的な楽曲のひとつだ。
また、John Wattsの筆致は、直接的なメッセージを持ちながらも、説明しすぎないところに特徴がある。言葉の選び方が比較的具体的で、曲の中で状況を切り取っていく感じがある。そうした書き方が、アルバム全体の緊張感につながっている。
UK盤としての仕様
このUK盤は、内袋に10インチの親指穴があり、歌詞とクレジットが印刷されている。ラベル上では、A面にJohn Watts名義で全曲がクレジットされ、B面では全トラックに対して同じくJohn Wattsがクレジットされている。ランアウトはほぼスタンプで、BILBO TA1PEのみエッチング表記となっている。
録音とミックスの時期が明記されている点からも、制作過程を比較的きっちり追える作品だ。1981年という年のUKニューウェイヴの空気を、そのままスタジオ作品として閉じ込めたような一枚と言える。
まとめ
「Red Skies Over Paradise」は、Fischer-Zの初期を代表する3作目であり、政治性の強い歌詞とニューウェイヴ期らしい推進力を備えたアルバムだ。クラシック編成の最後の作品という位置づけ、冷戦を想起させるタイトルとビジュアル、そしてJohn Wattsの書く言葉の強さが印象に残る。
80年代初頭の英国ロック/ニューウェイヴの中で、Fischer-Zがどの位置にいたかを知るうえでも見ておきたい作品だろう。
トラックリスト
- A1 – Berlin (4:35)
- A2 – Marliese (3:52)
- A3 – Red Skies Over Paradise (4:32)
- A4 – In England (2:43)
- A5 – You’ll Never Find Brian Here (2:08)
- A6 – Battalions Of Strangers (5:05)
- B1 – Song And Dance Brigade (3:03)
- B2 – The Writer (3:22)
- B3 – Bathroom Scenario (3:50)
- B4 – Wristcutters Lullaby (2:47)
- B5 – Cruise Missiles (4:17)
- B6 – Luton To Lisbon (1:56)
- B7 – Multinationals Bite (5:38)