Ivor Cutler – Velvet Donkey (1975)
Ivor Cutler『Velvet Donkey』について
『Velvet Donkey』は、スコットランド出身の Ivor Cutler による1975年作。詩人、歌手、語り手、作家としても知られるCutlerらしい、短いフレーズや語り口を軸にした作品で、ロックの枠に収まりきらない作りが目立つアルバムだ。ジャンル表記では Rock、スタイルでは Abstract、Minimal とされているが、実際には歌というより、言葉の間合いと小さな音の配置を聴く作品という印象が強い。
Ivor Cutlerという人物像
Cutlerはグラスゴー生まれ、ロンドンで没した英国の異才。ユーモアと奇妙な視点を持つ作品で世代をまたいで支持を集め、ビートルズのジョンとポール、哲学者バートランド・ラッセル、ジョン・ピールらにも愛好者がいたとされる。音楽家であると同時に、児童書・大人向けの本も書き、学校教師としての経歴も持つ。そうした背景が、そのまま作品の話し方や視点に出ている人だ。
作品の位置づけ
『Velvet Donkey』は1975年のオリジナル作品。Cutlerのディスコグラフィーの中でも、彼の独特な語りと小規模な編成がはっきり出る時期の一枚として見られる。派手なバンド・サウンドで押すタイプではなく、声、言葉、間、そして最小限の伴奏で成立する構成。ロックの文脈に置かれながらも、フォーク、前衛、朗読劇の要素が混ざるような立ち位置にある。
内容と聴こえ方
この作品では、メロディを強く前面に出すというより、Cutlerの発話そのものが中心になる。リズムは控えめで、演奏も必要最小限に近い。音の数が少ないぶん、言葉の切れ目や、少し間を置いた言い回しが耳に残る。実際に聴くと、楽曲というより短い小品が連なっていく感触があり、1曲ごとの長さ以上に、全体の流れで印象が決まるタイプのアルバムだ。
彼の作品は、同時代の英国の実験的なフォークや、語りを重視したアウトサイダー的な音楽と並べて語られることがある。たとえば、歌の形式を借りながら内容をずらすやり方や、日常の言葉をそのまま作品化する姿勢には、一般的なシンガーソングライターとは違う距離感がある。
再発盤について
この盤はVirginのミッドプライス再発盤。後年の別再発とは異なり、緑と赤のVirginラベルで「Made in England」表記がある。盤のクレジットでは、Fred Frithが参加している曲について「自身のアレンジを用いた」と記されている。Frithらしい、既成の歌の形から少しずらした関わり方がうかがえる部分だ。ランアウトはスタンプ刻印。
関連する要素
- 1975年オリジナル作品
- 英国の異才 Ivor Cutler の代表的な一枚として語られやすい作品
- 言葉、間、最小限の演奏が中心の構成
- Fred Frithの参加クレジットあり
- Virgin再発盤、英国プレス表記
『Velvet Donkey』は、派手な展開よりも、声の置き方と語りの温度で聴かせるアルバムだ。Ivor Cutlerという人物の輪郭をつかむうえで、かなり分かりやすい入口になっている。
トラックリスト
- A1 – If Your Breasts
- A2 – I Got No Common Sense
- A3 – Useful Cat
- A4 – Oho My Eyes
- A5 – The Dirty Dinner
- A6 – Yellow Fly
- A7 – Mother’s Love
- A8 – The Meadows Go
- A9 – Phonic Poem
- A10 – Life In A Scotch Sittingroom Vol.2 Ep.2
- A11 – Birdswing
- A12 – Nobody Knows
- A13 – Uneventful Day
- A14 – Little Black Buzzer
- A15 – Bread And Butter
- B1 – A Nuance
- B2 – Go And Sit Upon The Grass
- B3 – The Even Keel
- B4 – Pearly Gleam
- B5 – The Best Thing
- B6 – Life In A Scotch Sittingroom Vol.2 Ep.7
- B7 – Once Upon A Time
- B8 – There’s Got To Be Something
- B9 – The Purposeful Culinary Implements
- B10 – Gee, Amn’t I Lucky
- B11 – The Curse
- B12 – I Think Very Deeply
- B13 – I, Slowly
- B14 – Sleepy Old Snake
- B15 – Titchy Digits
- B16 – The Stranger