Stud – Stud (1971)

ロリー・ギャラガーを擁した伝説的ブルース・ロック・トリオ、テイスト(Taste)の解散直後、その強力なリズムセクションを担っていたリチャード・マクラッケンとジョン・ウィルソンが、元ブロッサム・トウズ(Blossom Toes)のジム・クリーガンと合流して結成したグループがスタッド(Stud)だ。1971年にデッカ傘下のデラム(Deram)レーベルから発表された本作『Stud』は、ハードなブルース・ロックの熱気とプログレッシブ/ジャズ・ロック的な実験性が交錯する、バンドの出発点を記録したセルフタイトル作である。

テイスト分裂と新バンド結成の経緯

1970年8月、第3回ワイト島フェスティバルで圧倒的な熱狂を巻き起こしたテイストだったが、バンド内部ではマネジメントとの金銭トラブルや音楽的な主導権をめぐる軋轢が表面化していた。結果としてバンドは1970年の大晦日をもって正式に解散。ロリー・ギャラガーが自身のソロ・プロジェクトを立ち上げる一方、北アイルランド出身のベーシストであるリチャード・マクラッケンとドラマーのジョン・ウィルソンは、新たな音楽活動の母体を模索することになった。

そこで声をかけられたのが、英国サイケデリック・ポップ/プログレッシブ・ロックの名グループとして知られたブロッサム・トウズのギタリスト兼ボーカリスト、ジム・クリーガンだった。ブロッサム・トウズ解散後のクリーガンと、百戦錬磨のリズム隊であるマクラッケン&ウィルソンが意気投合し、3人編成のバンド「スタッド」が立ち上げられた。

コマンド・スタジオでの録音とファミリーからの客演

レコーディングはロンドンのコマンド・スタジオ(Command Studios)で行われ、プロデューサーにはビリー・ケネディ、エンジニアにはバリー・エインズワースが起用された。デッカのアンダーグラウンド/プログレッシブ専門部門として先鋭的な作品を送り出していたデラムからのリリースとなった。

本作の基本編成はクリーガン、マクラッケン、ウィルソンのトリオだが、スタジオにはゲストとしてプログレッシブ・ロック・バンド、ファミリー(Family)のジョン・ワイダー(ヴァイオリン)やポリ・パーマー(ヴィブラフォン)が参加した。とりわけジョン・ワイダーは、この録音セッションを通じてグループとの結びつきを深め、本作のリリース直後となる1971年6月には正式メンバーとして加入することになる。

ブルース・ロックの枠組みを超えた音楽性と楽曲展開

アルバムの全体像は、テイスト直系のタイトなドライヴ感と、クリーガンが持ち込んだ牧歌的なフォークやアコースティック感覚、さらにはフリー・ジャズ的なアプローチが同居する多彩な内容となっている。

A面オープニングの「Sail On」は、歪んだエレクトリック・ギターのリフとジャジーな跳躍感を持つリズム隊が牽引するナンバーで、ブルース・ロックの骨格にジャズ・ロック的な変拍子を潜り込ませた展開を見せる。続く「Turn Over The Pages」はクリーガン単独作による繊細なアコースティック・ナンバーで、ブロッサム・トウズ時代を想起させるメロディアスで温かみのある歌唱が前面に出ている。

A面後半を占める12分超の大作「1112235」ではバンドの実験性が一気に噴出する。アヴァンギャルドなフリー・フォームから重厚なハード・ロックのアンサンブルへと移行し、中間部ではジョン・ウィルソンによる手数の多いドラム・ソロをフィーチャーしながら、変幻自在のジャム・セクションを構築していく。

B面はテイストを彷彿とさせるヘヴィなグルーヴと静かなジャズ・パートが交差する「Harpo’s Head」で幕を開け、続く大曲「Horizon」へと連なる。「Here – Part 1」と「There – Part 2」の2部構成から成る約11分のこのトラックには「For Piet」という献辞が添えられており、ジョン・ワイダーのヴァイオリンとポリ・パーマーのヴィブラフォン、アコースティック・ギターが織りなす空間的な導入から、後半はファンキーなベースラインに乗せたジャズ・ロックへと展開する。ラストを飾る小品「Song」では、再び素朴なアコースティックの音像へと立ち返り、アルバムを静かに結んでいる。

70年代初頭の過渡期をとらえた記録とメンバーの足跡

スタッドは本作ののち、ジョン・ワイダーを加えた4人編成でドイツのBASFレーベルへ移籍し、セカンド・アルバム『September』(1972年)などを発表して解散に至った。商業的な大ヒットには結びつかなかったものの、メンバー個々の力量を活かした枠にとらわれないアレンジは、英国ロックがブルース・ロックからプログレッシブ/ジャズ・ロックへと拡散していく1970年代初頭の空気を克明に反映している。

ギタリストのジム・クリーガンはスタッド解散後、ファミリーへの参加を経てスティーヴ・ハーレイ&コックニー・レベルで活動し、後年にはロッド・スチュワート・バンドの中核ギタリスト兼ソングライターとして「アイ・ワズ・オンリー・ジョーキング」などの名曲を手がけることになる。その華々しいキャリアの前夜、卓越した演奏技術を持つミュージシャンたちが純粋な創作意欲を持ち寄って制作された記録として、本作の残した足跡は興味深い。

トラックリスト

  • A1 - Sail On (4:12)
  • A2 - Turn Over The Pages (4:17)
  • A3 - 1112235 (12:20)
  • B1 - Harpo's Head (7:35)
  • Horizon (11:07)
  • B3 - Song (2:33)
2026.11.01
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