Tempest – Tempest (1973)
英国ジャズ・ロックの雄コロシアム(Colosseum)の解散後、稀代の名ドラマーであるジョン・ハイズマン(Jon Hiseman)とベーシストのマーク・クラーク(Mark Clarke)が中心となって1972年に結成したTempest(テンペスト)。1973年に名門Bronze Recordsから発表されたセルフタイトルのデビュー作『Tempest』は、プログレッシブ・ロックとハードロックが超絶技巧の火花を散らすブリティッシュ・ロックの歴史的快作だ。
初期アラン・ホールズワースの神懸かり的な閃光
本作の最大のハイライトとして語り継がれているのが、若きアラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)の存在だ。イアン・カー率いるニュークリアス(Nucleus)の『Belladonna』などでジャズ界隈の注目を集めつつあったホールズワースが、ハードロックのフォーマットでその異次元のレガート奏法と予測不能なスケール展開を全開にした、極めて貴重な初期のスタジオ記録である。
フロントには元ジューシー・ルーシー(Juicy Lucy)の力強いヴォーカリスト、ポール・ウィリアムス(Paul Williams)を配し、ハイズマン自らのプロデュースのもと、1972年10月から11月にかけてロンドンのAIR Studiosで録音。エンジニアにはデニー・ブリッジスとジョン・パンターが名を連ねている。
複雑怪奇なリフとポリリズムが渦巻くアンサンブル
アルバムの幕を開ける「Gorgon」からして凄まじい。ヘヴィで複雑な変拍子リフの合間を、ジョン・ハイズマンの怒涛のシンバルワークとポリリズミックなドラミングが埋め尽くし、中間部ではホールズワースの流麗極まりないギターソロが火を噴く。ハードロックの重量感とジャズ・ロックのスリリングな展開が完璧に同居した名演だ。
「Foyers Of Fun」や「Dark House」で見せる変拍子の切れ味、クラークのうねるベースラインとホールズワースの不協和音スライドの絡み合いも聴き手を圧倒する。さらにアルバムを締めくくる6分超の大曲「Upon Tomorrow」は、ハイズマンとコロシアム時代の盟友デイヴ・クレム・クレムプソン(Dave Clempson)の共作によるナンバー。アコースティック・ギターの叙情的な導入から、ホールズワースがエレクトリック・ヴァイオリンとギターの双方で哀愁あふれる劇的なソロを紡ぎ出していく。
奇跡のラインナップが遺した一瞬の結晶
本作のリリース後、バンドにはパットー(Patto)の怪腕ギタリストであるオリー・ハルソール(Ollie Halsall)が加入し、一時的にツインギター編成となるものの、ギターの役割分担を好まなかったホールズワースとウィリアムスが脱退。バンドはセカンド・アルバム『Living in Fear』(1974年)をハルソールとのトリオ編成で制作したのち解散に至る。
後にソフト・マシーン(Soft Machine)やゴング(Gong)、トニー・ウィリアムス・ライフタイム、そしてU.K.へと駆け上がっていくホールズワースの驚異的なギターワークと、ジョン・ハイズマンの強靭なビートが正面からぶつかり合った本作。70年代英国プログレッシブ・ハードロックの最高峰として、いまなお色褪せない熱量を放っている。
トラックリスト
- A1 - Gorgon (5:41)
- A2 - Foyers Of Fun (3:38)
- A3 - Dark House (5:00)
- A4 - Brothers (3:35)
- B1 - Up And On (4:18)
- B2 - Grey And Black (2:26)
- B3 - Strangeher (4:07)
- B4 - Upon Tomorrow (6:15)