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Metamorfosis – Papallones I Elefants (1982)

スペイン・カタルーニャ地方のタラゴナおよびレウス出身のミュージシャンたちによって1979年に結成されたインストゥルメンタル・プログレッシヴ・ロック・バンド、メタモルフォシス(Metamorfosis)。結成当初は「カンパニーア・オリーバ・ネグラ(Companyia Oliva Negra)」の名で活動を開始し、ほどなくメタモルフォシスへと改名。彼らが唯一残したスタジオ・アルバムが、1982年に自主レーベルのアポロ・レコーズ(Apolo Records)からリリースされた『Papallones I Elefants(蝶と象)』である。ニューウェイヴやシンセポップが欧州の音楽シーンを席巻していた1982年という時期にありながら、1970年代カタルーニャの地中海ジャズ・ロック(ロック・ライエタ)やシンフォニック・ロックの語法を純粋培養したような大作志向のアンサンブルを記録した一枚として知られる。

バルセロナの名門モラレーダ・スタジオでの録音と自主制作盤の仕様

本作のレコーディングは、バルセロナにあった名門「Estudios Moraleda(モラレーダ・スタジオ)」で行われた。エンジニアリングとミキシングは、同スタジオの主幹であるアルベルト・モラレーダ(Albert Moraleda)とリカルド・カサルス(Ricard Casals)が担当。プロデュース名義には宗教系・文化系の視聴覚レーベルであるAVE(Audiovisuales Evangélicos)がクレジットされ、レコード番号「LPS-8209」を冠してアポロ・レコーズから自主配給された。製造はバルセロナ郊外のプレス工場Sonic, S.A.が担っている。

1982年のオリジナルLPには歌詞のないインストゥルメンタル作品ながら専用のインサートが封入されており、ジャケットのアートワークおよびカバーデザインはギタリストのルイス・ガルシア(Luis García)自らが手がけた。タイトルにある「蝶(カタルーニャ語でPapallones)」と「象(Elefants)」のモチーフが描かれたスリーブは、繊細な叙情性と重量感あるアンサンブルの対比というアルバム全体の音楽性をそのまま視覚化したものだろう。

ツイン・ギターと多層キーボードが交錯する大曲主体の楽曲構成

全5曲からなる本作は、最小でも6分台、長大なトラックは13分を超えるという全編インストゥルメンタルの長編構成をとる。コンポジションはキーボード奏者のジャウマ・モンクシ(Jaume Montcusí)が4曲を手がけ、ギタリストのルイス・ガルシアが1曲を提供した。バンドの編成は、モンクシのシンセサイザー/ピアノ類に加え、ルイス・ガルシアとジョアン・ラモス(Joan Ramos)によるツイン・ギター、ジョルディ・パパセイト(Jordi Papaseit)のベース、ジョアン・M・グリマウ(Joan M. Grimau)のドラムスおよびパーカッションという5人編成である。

A面冒頭を飾る表題曲「Papallones I Elefants(蝶と象)」(11分07秒)は、澄んだアコースティック・ギターのアルペジオと柔らかなシンセのコード進行による静謐な導入から幕を開ける。そこからリズム隊が突如として変拍子のビートを刻み始め、アイスバーグ(Iceberg)やペドロ・ルイ・ブラス率いるドロレス(Dolores)など同郷の先達を思わせる鋭利なツイン・ギターのインタープレイへと急展開していく。続く「Un Joc Als Cinc Anys(5歳の頃の遊び)」(6分23秒)では、ラテン・パーカッションを交えた軽快なジャズ・フュージョンのグルーヴの上で、モンクシの流麗なピアノとメロディアスなギター・フレーズが交錯する。A面ラストの「Pèl A Pèl Per Al Pròxim Dia(翌日へ少しずつ)」(9分20秒)は、アコースティックな温もりとテンポチェンジを繰り返すドラマティックな構築美が特徴的なトラックだ。

B面は13分を超える2つの大作によって占められている。ルイス・ガルシアが単独で作曲した「Morir Per Viure(生きるために死ぬ)」(13分23秒)は、アルバム中で最もダークかつ緊迫感に満ちた展開を見せる。重厚なベースラインとディストーションを効かせたロングトーンのギター・ソロが空間を切り裂き、シンフォニックなキーボードのレイヤーが緊張感を高めていく。ラストの「El Reflex Del Teu Mirall(お前の鏡の反射)」(13分11秒)はモンクシのペンによる楽曲で、クラシカルなピアノのアルペジオからダイナミックなアンサンブルへと発展し、アルバムの締めくくりにふさわしい重層的なインタープレイを描き出している。

時代との乖離と後年の再評価

本作が世に出た1982年のスペインは、フランコ独裁政権崩壊後の民主化の熱気とともにマドリードを中心とするムービダ・マドリード(La Movida Madrileña)と呼ばれるパンク/ニューウェイヴ・ムーブメントが全国的な主流となっていた。70年代半ばにカタルーニャのセラニタ(Zeleste)界隈を席巻したロック・ライエタの波はすでに収束に向かっており、小規模インディレーベルからの完全インストゥルメンタル盤という形態もあって、発表当時に商業的な成功を収めることは難しかったようだ。

バンドは本作を唯一の遺作として解散に至ったが、1970年代の高度なプログレッシヴ・ロックと地中海ジャズ・ロックの美点を保ったまま80年代初頭に結実した希少なドキュメントとして、後年の中古レコード市場でカルト的な人気を獲得。2010年にはフランスのプログレッシヴ・ロック専門レーベルMandalaから紙ジャケット仕様でCDリイシューされたことで、広く再評価の光が当てられることとなった。

トラックリスト

  • A1 - Papallones I Elefants = Mariposas Y Elefantes (11:07)
  • A2 - Un Joc Als Cinc Anys = Un Juego A Los Cincos Años (6:23)
  • A3 - Pèl A Pèl Per Al Pròxim Dia = Poco A Poco Para Próximo Día (9:20)
  • B1 - Morir Per Viure = Morir Para Vivir (13:23)
  • B2 - El Reflex Del Teu Mirall = El Reflejo De Tu Espejo (13:11)
2026.10.31
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