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Popol Vuh – Quiche Maya (1973)

ノルウェーのプログレッシブ・ロック・バンド、ポポル・ヴー(Popol Vuh)が1973年にポリドール(Polydor)から発表したセカンド・アルバム『Quiche Maya』。ドイツのフローリアン・フリッケ率いる同名グループとの重複を避けるため、のちにバンドはポポル・エース(Popol Ace)へと改名することになるが、本作はノルウェーのポポル・ヴー名義として世に出た最後のオリジナル・アルバムにあたる。

ブラスロックからの純化とスタジオ録音

バンドの源流は、1960年代のビート・グループであるヴァンガーズ(The Vanguards)やクイヴァーズ(The Quivers)のメンバーが合流して結成されたアルマン・スンペ(Arman Sumpe D.E.)にある。当時は大型のホーン・セクションを配したジャズ・ロック/ブラス・ロック編成だったが、ホーン隊の脱退を機にロック・アンサンブルとしての純化が進められ、ポポル・ヴーへと改称された。

1972年にリリースしたセルフタイトルのデビュー作は、ノルウェーのグラミー賞にあたるスペッレマン賞(Spellemannprisen)のポップ/ロック部門を受賞するなど高い評価を獲得。その評価を受け、1973年秋にオスロのロジャー・アルンホフ・スタジオ(Roger Arnhoff Studio)に入って制作されたのが本作だ。エンジニアはオラ・ヨハンセン(Ola Johansen)が務め、バンド自身がセルフ・プロデュースとアレンジを担当している。

マヤ神話の聖典とバンド改名の背景

バンド名「Popol Vuh」およびアルバム名『Quiche Maya』は、古代マヤ文明のキチェ族(K’iche’)に伝わる創世神話の聖典『ポポル・ヴフ(評議会の書 / 人々の書)』に由来している。古代文明の文献から着想を得たネーミングだったが、ほぼ同時期に西ドイツでもヴェルナー・ヘルツォーク監督作品の音楽などで知られるフローリアン・フリッケの同名グループが活動していた。

二つのポポル・ヴーがヨーロッパ市場で並立したことから混乱が生じ、バンドは国際的な展開を見据えて次作『Stolen From Time』(1975年)に向けて「ポポル・エース(Popol Ace)」への改名を余儀なくされた。本作はその改名直前、バンドのルーツであったマヤ神話のモチーフをタイトルに掲げた重要な転換点の記録となっている。

5人編成によるソリッドなアンサンブルと楽曲展開

デビュー作に参加していたフルート/サックス奏者のピョッケン・アイデ(Pjokken Eide)が抜け、本作では5人編成のタイトな布陣となった。ギタリストのアルネ・シュルツェ(Arne Schulze)が主要なコンポーザーとして楽曲の大半を手がけ、キーボードとギターを兼ねるピート・クヌートセン(Pete Knutsen)がメロトロンやモーグ・シンセサイザー、エレピを操り構築感のある音像を作り上げている。

オープニングの「Queen of All Queens」はアルネ・シュルツェによる楽曲で、ドライヴ感のあるギターリフとダイナミックなリズムセクション、ヤーン・テイツゲン(Jahn Teigen)の力強い歌唱が牽引する。続く「Dark Nights」はテイツゲン自身が単独で作曲を手がけたナンバーで、ハード・ロック寄りのアプローチが際立つ。

アルバム最長となる7分55秒の「Mrs. Randalie」では、繊細なピアノとアコースティック・ギターによる静寂から重厚なメロトロンとバンド・アンサンブルが押し寄せるドラマチックな構成を展開する。「Music Box」ではアコースティックのアルペジオとオルガンを軸にした落ち着いた表情を見せる。

レコードのB面では、ドラマーのトール・アンドレアセン(Thor Andreassen)が作詞面で存在感を示している。アルネ・シュルツェ作曲の「Yesterday」や「Milk-White Satin-Dressed Departure」では叙情的なメロディラインを前面に出し、ピート・クヌートセンが曲を書いた「Between You And Me」は親しみやすいコンパクトな構成を持つ。ラストの「Get Up」はメンバー全員の共作クレジットとなっており、ファンキーなベースラインとジャム・セッション的なグルーヴが交錯する構成となっている。

特製バッグと当時のオリジナル盤仕様

ノルウェーのポリドールからリリースされた初回オリジナルLP(カタログ番号: 2382 038)は、パッケージ面でも特徴的な仕様が施されていた。オッタル・オラウッセン(Ottar Olaussen)がデザインした特製のプラスチック製キャリーバッグ(持ち手付きの黒いビニール袋)に包まれて店頭に並んだ。

ジャケット自体も薄手のボードに細かな格子状の筋が入ったテクスチャード加工が施され、表面にはかすかな光沢感がある。歌詞が印刷された茶色の専用インナースリーブが封入されているなど、当時の装丁にも独自の工夫が見られる。

トラックリスト

  • A1 - Queen Of All Queens (3:36)
  • A2 - Dark Nights (4:00)
  • A3 - Mrs. Randalie (7:55)
  • A4 - Music Box (4:16)
  • B1 - Yesterday (5:13)
  • B2 - Milk-White Satin-Dressed Departure (4:46)
  • B3 - Between You And Me (3:16)
  • B4 - Get Up (6:00)
2026.11.03
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