Andwella – World’s End (1970)
北アイルランド・ベルファスト出身のシンガー・ソングライター/マルチ奏者デイヴ・ルイス(David Lewis)率いるアンドウェラズ・ドリームが、バンド名を「アンドウェラ(Andwella)」へと短縮し、新興インディー・レーベルのリフレクション・レコード(Reflection Records)から1970年8月にリリースしたセカンド・アルバム。1969年のデビュー作『Love and Poetry』で聴かせた英国サイケデリック・ポップ/ロック路線から、トラフィックやザ・バンドなどの影響を反映したアーシーなルーツ・ロック、スワンプ、ソウル色の濃いアンサンブルへと音楽性を大きくシフトさせた過渡期の重要作である。
トライデント・スタジオでの録音と制作体制
レコーディングは、ロンドン・ソーホーのトライデント・スタジオ(Trident Studios)で行われた。エンジニアを担当したのは、のちにエルトン・ジョンやハリー・ニルソン、初期クイーンの作品などを手掛ける名手ロビン・ジェフリー・ケイブル(Robin Geoffrey Cable)。プロデュースにはリフレクション・レコードの創設者であるアンドリュー・キャメロン・ミラーをはじめ、ジョン・ホーキンス、そしてデイヴ・ルイス自身が名を連ねている。
メンバー編成は、リードボーカル、ギター、ピアノ、フルートを兼任するデイヴ・ルイスを中心に、新加入のキーボーディストであるデイヴ・マクドゥーガル(オルガン、ピアノ)、前作から続投したナイジェル・スミス(ベース)、ゴードン・バートン(ドラムス)の4人編成。鍵盤楽器の厚みが増したことで、前作のサイケデリックな浮遊感から一転し、リズム隊と有機的に絡み合う骨太なバンド・サウンドが構築されている。なお、デイヴ・ルイスは同年、自身のプライベート・デモ盤『Songs of David Lewis』を録音したほか、リフレクション所属のフォーク・シンガーであるデヴィッド・バクスターのアルバム『Goodbye Dave』(1970年)にアンドウェラのメンバーを引き連れてバッキング参加・プロデュースを務めるなど、旺盛な制作活動を展開していた。
楽曲構成と多彩なアレンジメント
アルバムに収録された大半の楽曲はデイヴ・ルイスのペンによるものだが、唯一の例外がB面冒頭を飾る「World’s End Part I」である。このインストゥルメンタル曲は、ホリーズのヒット曲「He Ain’t Heavy, He’s My Brother」の共作者としても知られるアメリカの作曲家/編曲家ボビー・スコット(Bobby Scott)が作編曲を担当。壮大なオーケストレーションが施されたインストから、ルイスのソウルフルなボーカルとバンド演奏が炸裂する「World’s End Part II」へと切れ目なく繋がるドラマティックな構成が取られている。
アルバム全体を通して、楽曲ごとに多彩なアレンジが施されているのも特徴だ。「Michael Fitzhenry」ではデイヴ・ルイス自らが吹くフルートを前面に押し出したジャズ・ロック的なアプローチを試みているほか、ピアノの旋律が際立つバラード「Lady Love」、ホーン・セクションやゴスペル風のバック・コーラスを交えた「Reason For Living」や「Shadow Of The Night」など、英国的な叙情性とアメリカ南部ルーツ・ミュージックのアーシーな手触りが交錯する構成となっている。
「Hold On To Your Mind」とザ・ロフトでの再評価
オープニング・トラックの「Hold On To Your Mind」は、パーカッシブなリズムとうねるようなグルーヴが印象的なナンバー。ローリング・ストーンズの「Sympathy for the Devil」を彷彿とさせるこのトラックは、後年になって意外な文脈から高い再評価を受けることとなった。
1970年代初頭のニューヨークにおいて、デヴィッド・マンキューソ(David Mancuso)が自宅アパートメントで主宰していた伝説的な会員制アンダーグラウンド・パーティー「ザ・ロフト(The Loft)」において、マンキューソ自身によってクラシックとしてヘヴィ・プレイされた事実がある。ジャンルレスで音響重視の選曲を行っていたザ・ロフトのフロアにおいて、本作の持つ泥臭くもダンサブルなグルーヴが見出され、ロック・リスナーのみならず初期クラブ・カルチャーの文脈からも重要な1曲として語り継がれている。
パッケージ仕様とリイシューの動向
1970年8月にリリースされた英国オリジナル盤(Reflection / REF. L6)には、大型の折りたたみポスター(foldout poster)が封入されており、短命に終わったレーベルのカタログの中でもひときわ入手困難なコレクターズ・ピースとして知られている。また、アメリカではダンヒル/ABC(Dunhill / ABC)から配給された。
長年にわたりオリジナルのアナログ盤は希少価値の高い状態が続いていたが、近年では米国のアーカイヴ・レーベルであるヌメロ・グループ(The Numero Group)が手掛けたボックスセット『To Dream』に収録されるなど、バンドの全貌を体系的に捉え直す公式な再発・アーカイヴ化が進められている。
トラックリスト
- A1 - Hold On To Your Mind
- A2 - Lady Love
- A3 - Michael Fitzhenry
- A4 - I'm Just Happy To See You Get Her
- A5 - Just How Long
- B1 - World's End Part I
- B2 - World's End Part II
- B3 - Back On The Road
- B4 - I Got A Woman
- B5 - Reason For Living
- B6 - Shadow Of The Night