Devendra Banhart – Ma (2019)
Devendra Banhart「Ma」について
Devendra Banhartは、テキサス生まれのベネズエラ系アメリカ人シンガーソングライター/ヴィジュアル・アーティスト。フォークを軸にしながら、カントリー、トラディショナル、サイケデリックな感触を行き来してきた人で、2019年作の「Ma」もその流れの中にある作品だ。
タイトルの「Ma」は、アーティスト自身の表現の中でもかなり端的な一作という印象がある。大きく飾り立てるというより、歌とアコースティックな響きを中心に置いた作りで、声の近さや弦の鳴り方が前に出るタイプのアルバム。フォークの基本形に沿いながら、曲ごとの輪郭を丁寧に見せる構成になっている。
サウンドの特徴
本作は、いわゆる派手なバンドサウンドよりも、素朴な質感が印象に残る。ギターや歌の距離感が近く、演奏の細部が聴き取りやすい。フォークの枠組みの中で、メロディの運びや言葉の置き方に重心がある作りだ。
Devendra Banhartの作品群の中では、実験性の強い側面よりも、歌そのものを見せる方向に寄っている時期の一枚として捉えやすい。初期から続くフォーク・リファレンスを踏まえつつ、より落ち着いた視点でまとめられたアルバムという見方もできる。
作品の位置づけ
2019年の「Ma」は、Devendra Banhartのディスコグラフィの中で、フォーク・シンガーとしての輪郭をあらためて確認できる作品だ。派手な話題性よりも、曲作りと歌唱のバランスに目が向く内容で、彼の作家性を知るうえで分かりやすい一枚になっている。
同時代のフォーク周辺の動きと比べても、アコースティックな編成やパーソナルな歌詞の置き方に耳が向くタイプで、フォーク・リバイバル以降の流れの中にある作品として整理しやすい。Cat PowerやIron & Wineのように、歌の質感を軸に聴かれるアーティスト群と並べて語られることもある。
まとめ
「Ma」は、Devendra Banhartのフォーク志向がまっすぐに出た2019年作。音の数を詰め込むより、歌と演奏の距離感を保ちながら、曲の輪郭を見せるアルバムだ。フォーク、ワールド、カントリーの要素を背景に持ちながら、全体としてはかなりストレートな歌ものとして聴ける内容になっている。