King – Bitter Sweet (1985)
ニューロマンティックの仕掛人バージェスと刻んだ、80s UKブルーアイド・ソウルの華麗なる結実
1985年、ドクターマーチンのブーツをトレードマークに掲げ、大ヒット曲「Love & Pride」でMTV世代の熱狂を一身に浴びたUKコヴェントリー出身の5人組バンド、キング(King)。カリスマ的ボーカリストのポール・キング(Paul King)をフロントに擁する彼らが、デビュー作『Steps in Time』の勢いそのままに同年末にリリースしたセカンド・アルバムが『Bitter Sweet』(CBS 86320)である。前作以上のソウルフルな歌唱表現と、ファンク/ニューウェイヴが融合した高純度のポップ・サウンドが詰まった彼らの最高傑作にしてラスト・アルバムだ。
名匠リチャード・ジェームス・バージェスによるタイトな音響設計
本作のプロデュースを手掛けたのは、スパンダー・バレエの初期作品を手掛け「ニューロマンティック」の命名者としても知られるリチャード・ジェームス・バージェス(Richard James Burgess)。シンセドラムのパイオニアでもあるバージェスは、エイドリアン・リリーホワイト(Adrian Lillywhite)のシャープなドラムとトニー・ウォール(Tony Wall)のグルーヴィなスラップ・ベースを軸に、極めてタイトで抜けの良いリズム・セクションを構築した。
さらにエンジニアには、後にトーク・トークの諸名盤を手掛ける名匠フィル・ブラウン(Phill Brown)を起用。サセックスのPark Gate Studiosとロンドンの名門Wessex Studiosで録音・ミックスされたサウンドは、きらびやかな80年代特有のシンセ・レイヤーをまといながらも、生楽器のダイナミクスと温かみを損なわない見事な音響バランスを誇っている。
「Alone Without You」から「The Taste Of Your Tears」へ:広がる音楽的レンジ
アルバムの冒頭を飾る「Alone Without You」は、全英チャート8位を記録したキャッチーなアンセム。跳ねるようなホーンセクションとジム・ランツベリー(Jim ‘Jackal’ Lantsbery)のカッティング・ギター、そしてポール・キングのソウルフルなハスキーボイスが炸裂する、80年代中葉のUKブルーアイド・ソウルを代表する名曲だ。
一方で、ドラマティックなストリングスとピアノが哀愁を誘うバラード「The Taste Of Your Tears」(全英11位)や、ダークなニューウェイヴ感覚を漂わせる「Torture」、ファンキーな推進力を持つ「These Things」など、単なるアイドル的バンドの枠を大きく踏み越えた音楽的成熟が刻まれている。
短い閃光を放ち駆け抜けたバンドの記念碑的アナログ盤
スタイロルージュ(Stylorouge)とロブ・オコナーによる印象的なジャケット・デザインを含め、ヴィジュアルと音楽性が完全にシンクロしていた当時のKing。本作の発表後、バンドは惜しまれつつ解散へと向かい、ポール・キングはソロ活動を経て人気VJへと転身していくが、80年代中盤の英国ポップ・ミュージックが持っていたエネルギーと洗練が本作には濃密に凝縮されている。
パンク通過後のストリート感覚と、モータウン/ファンクへの純粋なリスペクトが交差した、今こそアナログの豊かな鳴りで聴き返したい名盤である。
トラックリスト
- A1 - Alone Without You (3:35)
- A2 - Platform One (3:05)
- A3 - I Cringed, I Died, I Felt Hot (4:56)
- A4 - (KFAD) Wait For No-One (3:37)
- A5 - 2 M.B. (3:38)
- B1 - These Things (4:34)
- B2 - The Taste Of Your Tears (4:03)
- B3 - Torture (4:29)
- B4 - Sugar Candy Mountain Buddhas (3:51)
- B5 - Mind Yer Toes (4:07)