Steve Hillage – L (1976)

Steve Hillage『L』(1976年)

Steve Hillageのソロ作『L』は、1976年に発表されたアルバムだ。Gongでの活動を経て、ソロ・ギタリストとしての輪郭がさらにはっきりしてくる時期の作品で、UKのプログレッシブ・ロックと実験的な音響感覚が前面に出ている。後年のアンビエント寄りの仕事や、System 7での活動を知っていると、この時点ですでにエコーやリバーブを活かしたギターの処理がかなり意識されていることがわかる。

作品の位置づけ

Hillageは、Uriel、Egg、Arzachel、Kevin Ayers周辺の活動を経てGongに参加し、Daevid Allen流のグリッサンド・ギターを吸収しながら独自の演奏へ進んだ人物だ。『L』は、その流れの中でソロ・アーティストとしての個性を固めていく初期の重要作として位置づけられる。Gong的なサイケデリック感覚を残しつつ、より整理されたバンド・サウンドと、ギターの音色そのものを聴かせる作りになっている。

音の印象

この時期のHillageのギターは、速いフレーズを並べるだけではなく、音の伸びや残響で空間を作るところが特徴だ。歪みの質感も含めて、単なる技巧派というより、音響の流れを組み立てるプレイヤーという印象が強い。シンセサイザーとの重なりもあり、ロックの推進力と実験性が同じ場に置かれている感じがある。

同時代の文脈で見ると、HawkwindやGong、あるいはCamelや初期のYes周辺のプログレと並べて語られることがあるタイプの作品だが、『L』はよりギターの処理に焦点がある。のちのアンビエント・テクノやニューエイジ寄りの感触を先取りしているようにも聴こえる。

収録曲と代表曲

『L』には、のちにHillageの代表曲として知られる「Hurdy Gurdy Glissando」が収録されている。この曲は、タイトルどおりグリッサンドを軸にした演奏で、Hillageのギター表現を端的に示す一曲だ。メロディをなぞるというより、音の滑りと持続で印象を作る曲で、彼のソロ活動を語るうえで外せない存在になっている。

制作とリリース情報

US盤はPresswellでのプレス。プロモーション盤にはゴールドのDJスタンプやタイミング・ストリップが付くものがあり、一部にはTodd RundgrenのUtopiaの写真が同封されるものもある。クレジット上でも「Todd Rundgren’s Utopia appear by courtesy of Bearsville Records」と記されており、当時のUSロック/プログレ周辺のつながりが見える。

同時代とのつながり

Steve Hillageはこの時代、演奏技術だけでなく、音色や残響の扱いで個性を出していた。のちにSimple Mindsのプロデュースで知られる一方、The Orbに自身の音源をサンプリングされたことをきっかけにSystem 7へつながっていく流れを見ると、『L』の時点で既にロックの枠を越える要素があったことがわかる。1976年という年のプログレ作品としては、構築性と実験性のバランスに特徴があるアルバムだ。

まとめ

『L』は、Gongを経たSteve Hillageが、ソロ・ギタリストとしての言語を固めていく途中の重要作だ。ギターのグリッサンド、残響、シンセとの絡み、そして「Hurdy Gurdy Glissando」に代表される演奏の組み立て方。そのあたりに、この人の後年まで続く核がはっきり出ている作品といえる。

トラックリスト

  • A1 – Hurdy Gurdy Man (6:32)
  • A2 – Hurdy Gurdy Glissando (8:54)
  • A3 – Electrick Gypsies (6:24)
  • B1 – Om Nama Shivaya (3:33)
  • B2 – Lunar Musick Suite (11:59)
  • B3 – It’s All Too Much (6:26)

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2026.07.09