The Moody Blues – In Search Of The Lost Chord (1968)
The Moody Blues『In Search Of The Lost Chord』について
イギリス・バーミンガム出身のThe Moody Bluesが1968年に発表した3作目のスタジオ・アルバムが『In Search Of The Lost Chord』である。バンドはもともとR&B色の強いグループとして出発したが、この時期にはサイケデリック・ロックとシンフォニック・ロックの方向へ大きく寄っていく。グループの持つ管弦的な広がりと、楽曲単位での実験性がはっきり出た作品として知られる。
日本盤は1971年リリース。白と赤のDSSレーベルで、ラベル面にdeep grooveがあるプレスである。オリジナルの1968年盤とは発売時期が異なり、日本市場向けの再発盤として流通したものになる。
作品の位置づけ
『In Search Of The Lost Chord』は、The Moody Bluesが単なるポップ・ロック・バンドから、アルバム単位で世界観を作るグループへと進んでいく流れの中にある。前作『Days of Future Passed』で見せたオーケストラとの接近を、ここではよりバンド内部の演奏とスタジオ処理で発展させた形だ。
この時期の中心人物は、Justin Hayward、John Lodge、Ray Thomas、Mike Pinder、Graeme Edgeの布陣である。とくにPinderのキーボード、Thomasのフルートやハーモニカ、Haywardのギターと歌が、作品の色を決めている。
音の印象
全体としては、曲ごとのつなぎや短い小品を交えながら進む構成で、1曲ごとの完成度とアルバム全体の流れが同時に意識されている。ロックのバンド演奏を軸にしつつ、フルート、キーボード、コーラス、語りの要素が入ることで、曲の輪郭が単なるギター・ロックよりも広くなる。
実際に聴くと、激しく押すタイプの演奏よりも、音の重なりや展開の切り替えに耳が向く作りである。曲間の移動や、アコースティックな質感とエレクトリックな質感の行き来が多く、1960年代後半の英ロックらしいスタジオ志向が強い。
代表曲と聴きどころ
このアルバムでは、「Ride My See-Saw」が代表曲としてよく知られている。John Lodgeの作曲による曲で、ライブでも重要な位置を占めた。推進力のあるリズムと、コーラスのまとまりがはっきりした1曲で、アルバムの中でもロック色の強い場面である。
そのほかにも、瞑想的な曲調、語りを含む曲、短いインタールード的なパートが並び、作品全体にひとつの章立てのような感覚がある。1曲単位で切り出すより、アルバムを通して聴いたときに輪郭が見えやすいタイプの作品だ。
同時代との関係
1968年という時代を考えると、The Moody Bluesは英ロックの中でも、サイケデリックな感覚を持ちながら、より整った構成とメロディを保っていたグループとして見られることが多い。Pink Floydの初期のような即興性や、The Beatles後期のスタジオ実験とも近い空気はあるが、The Moody Bluesは終始バンドの曲作りと演奏のまとまりが軸になっている。
シンフォニック・ロックという見方では、のちのプログレッシブ・ロックに接続する要素も感じられる。とはいえ、ここでの焦点は技巧の誇示よりも、メロディと音色の組み合わせにある。
日本盤について
1971年の日本盤は、オリジナルの1968年盤から数年を経たリリースである。白と赤のDSSレーベル、そしてラベル面のdeep grooveといった仕様が、当時の国内プレスらしさを示している。ジャケットやラベルの見た目も含めて、オリジナル盤とは別の時代の流通物として楽しめる1枚だ。
まとめ
『In Search Of The Lost Chord』は、The Moody Bluesが1960年代後半に築いた独自のアルバム表現を、ひとつ前へ進めた作品である。代表曲「Ride My See-Saw」を含みつつ、アルバム全体では実験性とメロディの両立がはっきりしている。バンドの転換点として見ても、60年代英ロックの流れの中で見ても、位置づけのはっきりした作品だ。
トラックリスト
- A1 – Departure
- A2 – Ride My See-Saw
- A3 – Dr. Livingstone, I Presume
- A4 – House Of Four Doors (Part 1)
- A5 – Legend Of A Mind
- A6 – House Of Four Doors (Part 2)
- B1 – Voices In The Sky
- B2 – The Best Way To Travel
- B3 – Visions Of Paradise
- B4 – The Actor
- B5 – The Word
- B6 – Om