Black Widow – Black Widow (1990)
1970年、黒魔術の儀式と悪魔崇拝を前面に押し出した衝撃作『サクリファイス(Sacrifice)』によって、ブラック・サバスと並びオカルト・ロックの開祖として英国音楽界を震撼させたブラック・ウィドウ(Black Widow)。スキャンダラスなパブリック・イメージが先行した彼らが、ギミックを削ぎ落とし、純粋な音楽集団としての高度なアンサンブルを証明すべく1971年に英CBSより放った勝負作が、このセルフタイトル2ndアルバム『Black Widow』(通称『Black Widow II』)である。本作は1990年に独Repertoire Recordsが初期の豪華見開きジャケットを忠実に再現してリイシューした名盤だ。
オカルトの呪縛からの解放と、ジャズ/フォーク・プログレへの音楽的深化
悪魔儀式を取り入れた過激なステージ演出によって世間を騒がせた前作の反動から、バンドはあえて黒魔術的なモチーフを封印。ギタリスト兼メイン・ソングライターのジム・ギャノン(Jim Gannon)を中心に、初期キング・クリムゾンやジェスロ・タル、オーディエンス(Audience)らと共鳴する、格調高くプログレッシヴなソングライティングへと舵を切った。
クライヴ・ジョーンズ(Clive Jones)の吹き鳴らすフルートとサックス、ズート・テイラーの重厚なハモンド・オルガンと繊細なピアノ、そしてキップ・トレヴァーのソウルフルなヴォーカル。彼らが織りなすアンサンブルは、ハードロックの枠組みを超え、英国トラッド・フォークの哀愁とスモーキーなジャズ・ロックの語法が美しく溶け合っている。
9分に迫る長編「Tears And Wine」から、哀愁の物語「Mary Clark」へ
アルバムの冒頭を飾る9分近い大作「Tears And Wine」は、本作の音楽的成熟を象徴する屈指の名演だ。静謐なアコースティックの爪弾きとメランコリックなフルートから始まり、やがてジム・ギャノンによるブルージーで流麗なロング・ギター・ソロが炸裂する展開は、70年代初頭のブリティッシュ・アンダーグラウンド屈指の美しさを誇る。
続く「The Gypsy」のエキゾチックな疾走感、哀愁のメロディが胸を締め付ける叙情詩「Mary Clark」、そしてドラマティックな展開美を見せる「Legend Of Creation」に至るまで、全編を通じて一切の無駄がない。扇情的な仕掛けを排したことで、個々のプレイヤーの卓越した技量と楽曲自体の豊かさが白日のもとに晒されている。
ギミックの影に隠れていた、真の英国プログレッシヴ・ロックの逸品
当時は前作のオカルト路線を期待したファンを困惑させ、商業的には不当に低迷したものの、時を経た現在ではブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック草創期の名作として極めて高い評価を獲得している。ドイツの名門Repertoireによる本作のアナログ復刻は、彼らが単なるキワモノではなく、一流の音楽的知性と叙情性を備えた真のプログレッシヴ・バンドであったことを鮮烈に物語っている。
トラックリスト
- A1 - Tears And Wine
- A2 - The Gypsy
- A3 - Bridge Passage
- A4 - When My Mind Was Young
- A5 - The Journey
- B1 - Poser
- B2 - Mary Clark
- B3 - Wait Until Tomorrow
- B4 - An Afterthought
- B5 - Legend Of Creation