Naxatras – V (2025)

ギリシャ・テッサロニキの地下シーンから頭角を現し、アナログ・テープによる一発録音のサイケデリック・ジャムで世界中のヘヴィ・サイケ/ストーナー信奉者を熱狂させてきたカルテット、ナクサトラス(Naxatras)。キーボードを正式導入してプログレッシヴ・ロックへの飛翔を遂げた前作『IV』(2022)を経て、2025年2月に完全自主制作で放たれた待望の通算5作目『V』は、彼らのコズミック・スペース・ロック叙事詩が映画的な壮大さと構築美の頂点へと到達した傑作である。

星々のゲートウェイと古代の要塞:SF的伝承を紡ぐトータル・コンセプト

付属のインサートに刻まれた暗号めいた散文が示す通り、本作は星々の彼方に聳える古代要塞「シタデル(The Citadel)」と、時空の狭間でゲートウェイを見守る存在「スペースキーパー(Spacekeeper)」を巡るSF神話を描いたコンセプチュアルな作品だ。全8曲・トータル42分というヴァイナル・フォーマットに最適化されたタイトな構成の中に、寸分の隙もないスペイシーな物語世界が凝縮されている。

初期の泥臭いストーナー・リフから脱皮し、ピンク・フロイドやアラン・パーソンズ・プロジェクト直系のスペーシーなシンセ・テクスチャーと、地中海・中東音楽のエキゾチックな旋律美を融合。帯付きの美麗なアートワークも含め、彼らのトータル・アートとしての美意識が遺憾なく発揮されている。

オリエンタルなフルートが舞う「Spacekeeper」から、怒涛の終曲「The Citadel」へ

静謐な星屑の瞬きを描く「Celestial Gaze」で幕を開けると、先行シングルとなった「Spacekeeper」ではムーグ・シンセサイザーのパルスとエキゾチックなフルートが交錯し、リスナーを時間軸の外側へとトリップさせる。ジョン・デリアスの伸びやかなギタートーンは、デヴィッド・ギルモアを思わせる至福のサステインを響かせ、広大な宇宙空間を旅するような浮遊感をもたらす。

さらにヘヴィなリフがうねる「Breathing Fire」や、乾いた砂塵の彼方に蜃気楼を映し出す「Sand Halo」を経て、アルバムはクライマックスの表題曲「The Citadel」へと雪崩れ込む。ホークウィンド直系の力強いドライブ感と、幾重にも重なるシンセのファンファーレが炸裂するフィナーレは、現代スペース・ロック屈指の昂揚感を誇る。

現代ヨーロッパ・サイケデリック・シーンが到達した最高峰の銀河旅行

ジャム・バンドとしての野生味を失うことなく、高度な作曲術とヴィンテージ・プログレッシヴの格式を手に入れたナクサトラス。重厚なドラムとベースのグルーヴを土台に、光と闇が交錯する音響絵巻を描ききった本作『V』は、2020年代のヘヴィ・サイケデリア/ネオ・スペース・ロックを代表する金字塔として長く語り継がれるだろう。

トラックリスト

  • A1 - Celestial Gaze (5:05)
  • A2 - Spacekeeper (5:09)
  • A3 - Numenia (5:09)
  • A4 - Utopian Structures (5:29)
  • B1 - Breathing Fire (5:17)
  • B2 - Legion (4:51)
  • B3 - Sand Halo (6:01)
  • B4 - The Citadel (5:55)
2026.05.02
この記事をシェア